表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vendetta  作者: tama
メグとマサ
17/19

メグ 2012 冬

寒い寒い、冬の夜。

彼の自転車の後ろに乗って、背中に寄り掛かり、冷たい風を感じていた。

寒い…な。

彼は、無言のままペダルを一生懸命漕いでいる。

そんな彼の背中に身を寄せていると、荒い息遣いを感じた。

こんなにも一生懸命になって、私を何処に連れて行こうというのだろう…


彼は、イケメンだ…優しくて、気遣いもできる男の子だ。

だから、クラスの女子の人気も高かった。

告白された時は、私も捨てたもんじゃないなと舞い上がり、ちょっとした優越感に浸りながら、

告白を受け入れた。

惚れた弱み…なのかな、彼は私に尽くしてくれた。

彼に、意地悪な事をして困らせても、許してくれたし、

デートには必ず私より先に、待ち合わせ場所に居てくれたし、

自転車での、学校への送り迎えも毎日してくれた。

バイトを一生懸命やり、私の欲しいものは何でも買ってくれた。

私が言う事は、何でも聞いてくれた…


でも、今日は違った…

彼は私を、殴った。

何度も何度も、私が気を失うまで殴った。

いや彼は、私を殺したつもりなんだろう…

現に私は彼のお腹の前に、両手を回して縛られていた。

彼は、私を自分に括り付けて運んでいるのだ…

途中悪路で、ガタンッと揺れたが、私は唸る事も動く事も出来なかった。

意識があるだけで、体に全く力が入らない。

景色が、どんどん人気のない場所になっていく…これは、裏山への道だなと思い、

理解した。

彼は、私を…私の死体を捨てに行っているのだ。


ああ、なんでこんな事に…私が一体何をした…

したな、いっぱいした…皆の人生を引っかき回した。

これは、罰なんだね…ナオ。




やがて、目的地に着いたのか自転車は止まり、

彼は、私を固定していたロープを外し、抱き抱え近くの草むらにソッと寝かして、

私の頭を優しく撫でた。

前カゴに載せていた、折り畳みのスコップを組み立て、林の中に歩いて行った…

やがて、スコップで穴を掘る音が聞こえてきた…

その音を聞きながら、私は心の中で謝っていた。

ヒナに、ナオに、アキに、ミウに、レンに、タクに…

そして、大好きな彼に…

ごめんなさい。ごめんなさい。

私が居なければ、きっとこんな事にならなかったね。

学校という、小さな世界に復讐の種を撒いた…

復讐…

今ならなんとなく分かるかな…アキもレンも、ナオの復讐で殺されたんだろうなと。




やがて、泥だらけの彼が帰ってきた。

私の墓穴を掘り終えたのだろう…

彼はまた、私の頭を優しく撫で、抱き抱えた。

墓穴に続く道のりを、お姫様だっこしながら、歩いて行く。

私はお姫様だっこなんて、初めてしてもらったなと訳の分からない感慨にふけっていた。

彼は、私を墓穴に仰向けに寝かせると、


「ごめん、メグ。」


そう謝って、土をかけ始めた。

…なんて、惨めな最後なんだろう。

アキ、アンタはどんな最後だった?お腹割かれたんだもんね、苦しかったよね…

レン、アンタは頭を殴られた、どう思った?

ナオ、アンタはあんな仕打ちを受けて、私達の事憎かったよね?


私の最後は、大好きな彼に殺されて、山に捨てられる惨めな最後だよ…

様無いよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ