そして、これから
10月11日
頭の中が混乱していたときに、私宛に一通の手紙が届いた。
以前、ジュノーで暮らしていたときに知り合った男からのものだった。
その中身は、最近の魔物の弱くなってきた理由と、リヒタルゼンでの生物研究所の動向が怪しいということが綴られていた。
魔物の弱くなってきた理由。
そうか。
だから、カトリは熱を出したりすることがあったんだ。
そして、その手紙には……。
―――
「……私、先生に言わなかったことがあって」
「言わなかったこと?」
「私……魔法学校に入ろうと思ったのは、先生が教えてくれるってことを知ったから」
「私に?」
「……私。昔、ジュノーに居た」
「カトリの、昔話か」
こくこくと頷き、再び話しかけてくる。
「そこで……。先生と会ったことある」
「えっ? 私と?」
こくこく。
確かに、私はゲフェンの前にはジュノーにいた。生まれはアインベフに近い街のはずれだったが。
「そのとき……。私に色々教えてくれた。魔法のこと。世界のこと」
記憶を思い起こしてみる。
そういえば、昔、ノービスの女の子に、どうしたらいいかと聞かれて……。その女の子には魔法が良いと思って、魔法のことを教えたような、おぼろげな記憶がある。
私もまだ、自身でも幼かった所為もあって、姿さえ覚えていないが、その女の子が、カトリだったのか。
「……そのうち、本で先生の名前を見るようになって。そして、ゲフェンで、先生の姿を見つけたの」
カトリ。
「私はずっと、先生を探してた。だから、もうどこにも行かないで。行くのだったら、私も行く」
カトリの答えは、こうだった。
――――
11月5日
カトリは、人間ではなかった。
人とは違うDNAをもち、血液型、そのほか一切不明。
それは、すべて、カトリが魔物であることを示していた。
人型の魔物は数多くいる。オークとかゴブリンとか有名だ。不思議なことではない。
だが、カトリは普通の女の子だ。ただちょっと無口でたくさん食べることが出来るという。
怪我をすれば血も流すし、喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。
彼女と私とどう違うというのだ。
なにより、私は、カトリに恋をしている。愛している。
たまらなく愛しいと思う。大切にしたいと思う。ずっとそばにいて欲しいと思う。
それの何がおかしいというんだ。
だが、このことを他の研究者が知ったらどうなる?
ここミッドガルドは魔物と人間が戦う世界だ。
私の研究は、こんなことをするために始めたんじゃない。
でも、この研究こそが、彼女と、私を繋げる唯一の未来なのだ。
その為には、私は何だってやろう。
この道は茨の道だ。とてもたくさんの困難が待っているだろう。
だが。
あの娘の笑顔を。
私の愛している女の子のそばにいられる幸せを。
それがこれからずっと送れるだろう。
そう、ずっとカトリはいてくれる。
彼女がいてくれる限り、私はどんなことでもできるだろう……。
――――
この日記はここで途切れている。
日記を書いた研究者の行方は依然としてつかめていない。
彼の研究していた不老不死の技法は永遠の命題になるだろう。
そして、この中で出てきた少女は、今……。
To be continued ...
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