第一章/八頁目
消灯された部屋に差し込む光は、月のような自然的な光だけではなく、家から漏れる人工的な光も含まれていた。
網戸の状態だから余計に光が入り込みやすい。
だけど、俺は、この清涼感のある夏の夜が好きだった。
蚊が紛れ込む時もあるが、それはそれで夏を感じさせてくれる。
呆然と天井を見上げ、団扇を使って涼んでいた。
携帯電話を傍らに置き、先輩に言われた事を考えていた。
送られてきたあのメールには、数回改行された後に文章が続いていた。
武内君がこの作品を楽しく書いてるなら、私はこれ以上何も言えない。
人が楽しいと思いながら作っている作品を汚すことなんて、私には恐ろしくてできない。
だけど、武内君がこの作品を楽しく書いていないのなら、私はこの作品を読む気にはなれない。
前にも言いましたが、私は、あなた達に“書くことの楽しさ“を知ってほしいの。
自分の書きたい作品を書いてこそ、私の言う“書くことの楽しさ“が分かるはずよ。
「書くことの楽しさか……」
正直、俺は、先輩から送られてきたこのメールを見るまで、それが分からなかった。
分からなかったということは、既に書くことの楽しさを感じてなかったわけで、つまり、それは流行り物を継ぎ接ぎして作ったあの設定が、俺にとって書いてて楽しくないことになるわけで。
俺が書いてて楽しいと思える作品。
一から自分で考えろということなのだろうか。
でも、何から考えていけばいいのかが分からない。
俺は一瞬、先輩にメールを送ろうかと思った。
だけど、もう時間が時間なので送らずに素直に寝ることにした。
原作を担当する身になるかもしれない俺がこんなんじゃ、合作なんて夢のまた夢だ。
次の日。俺は、大学ノートを一冊購入してから学校に行った。
授業中に書きたい設定とかが浮かんだらメモしとこうと思ったからだ。
机には教科書とノートと筆記用具を置く。これだと完全に授業を受けているように見えるだろう。
後は、たまに横を通る教師の視線を振り払えば完璧だ。
俺は、ノートを開いた。
まだ何も書かれていない。行線だけの入った真っ白なノート。
今からここに何を書こう。
この時、俺は少しだけ書くことの楽しさを感じていた。
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