第一章/五頁目
授業中、俺は山本妹と話さない。むこうも話しかけてこない。
クラスの連中が気を利かして隣同士にしたのだが、正直、ありがた迷惑だ。
つまらない授業が一層つまらなくなる。
山本妹は本当に俺のことが好きなのだろうか。
未だにキスも求めてこないし、一緒に帰ろうともしない。
山本妹が積極的な性格でないことは見れば分かる。けど、いくら奥手な性格だからといっても、
告白されてから一度も会話をしたことがない。
というのは、どうかと思う。
いくら先輩きっての願いだからと言っても、正直、これ以上好きでもないやつと付き合うつもりはない。
クラスの連中には悪いが、昼休みに屋上に連れて行って別れを告げよう。
それが一番、お互いのためになる。
午前の授業が終わり、昼休みになった。
クラスの連中が昼食の準備に取り掛かろうとする中、俺は山本妹に声をかけた。
「山本、一緒に昼飯食べないか? 屋上で」
山本妹は机の中に筆記用具等を片付け、バックからコンビニの袋を取り出した。
「行こう」
そっけない返事だった。あまり嬉しそうにも見えない。
山本妹がそそくさと先を急ぎ、俺は後からついていく形になっていた。
廊下にうろついてる連中を横切り、屋上へと続く階段を上がって、固く閉ざされた扉を開けた。
重く軋んだ音が地面を削り、黒板を爪で引っ掻いたような不協和音を生んだ。
白いタイルが一面に広がり、それを囲むように白い柵が並ぶ。
俺が上がってきた場所の上には給水タンクがあった。
当たり前だがベンチはない。地べたに座る形になる。
山本妹はグランド側の柵の前に座っていた。俺はその隣に向かった。
グランドでは早々に昼飯を食い終えた連中が馬鹿みたいに騒いで遊んでいた。サッカーぐらいしか遊べるものはないけど。
とりあえず、腰を下ろす。
終始無言のまま、黙々と昼飯を食べ続ける。
山本妹はサンドイッチを食べていた。その姿を見て、俺は何となく兎を連想した。
俺は持参した弁当を適当に箸で摘みながら食べている。
「何か用?」
唐突に、山本妹から話しかけてきた。一瞬だけ焦った。が、別れ話に持ち込むきっかけができた。
「……急にでなんだけど、変な質問してもいいか?」
「うん」
「山本って、俺のこと好きなの?」
「嫌い」
一瞬、聞き間違えたかと思った。が、聞き間違えではない。
山本妹は俺のことが嫌いだ。
でも、俺は嫌いと言われても構わない。
元々、断るつもりでいた付き合いだから。
だけど、これだけは気になった。
「じゃあ、何で付き合おうとしたんだ?」
「お姉ちゃんに言われたから」
間髪入れずに淡白な声で答えてきた。
先輩は何をしたいのか。
俺は先輩に山本妹と付き合うよう言われた。
山本妹は先輩に俺と付き合うよう言われた。
先輩は俺達をどうしたいのか。
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