第三章/十二頁目
八日目。深夜一時過ぎ。
ネームが完成した。
出来の良し悪しは分からない。が、自分では良く出来た方だと思っている。
いつ以来だろう。こんなに遅くまで起きたのは。
つい数ヶ月前の俺が見たら驚くだろうな。
まさか、漫画を書くために起きているなんて。
静かに自嘲した。
学生カバンにノートを入れて、俺は就寝した。
明日、このノートを絵理香に渡そう。
「――私、進学しないことに決めたから」
お父さんとお母さんが晩酌をしている時、私はそう告白した。
ほろ酔い気分で、しかもテレビを観ていたから聞いていたのか分からない。
私は扉の前に立っていた。お父さんとお母さんの背中が見える。
振り返る様子がない。聞こえなかったのだろうか。
しかし、同じ事を二度も言うのは恥ずかしい。
だけど、言わなきゃ意味がないし、どうすればいいのだろう。
「認められでもしたかったのか?」
お父さん?
「何度言われたって、親の口からは認められないよ」
駄目か……。
でも、私は漫画が書きたい。
漫画家になりたいんだ。
「親に反対されたくらいで諦める程度の志しなら、最初から漫画家なんて目指すんじゃない」
反対を押し切ってでも、私は漫画家になるしかないない。
援助は受けず、一人でやるしかないんだ。
「私、漫画家になるから」
私はリビングを後にした。
もう迷っていられない。
私はこの選択をして後悔してはいない。
「あ、お姉ちゃん……」
お風呂から上がったばかりのお姉ちゃんが扉の横に立っていた。話を聞いていたのだろうか。
「…………」
私は無言で過ぎ去った。
「もう、大丈夫なようね」
背後からお姉ちゃんの声が聞こえた。
階段を上がるのを止めた。
だけど、やっぱり上がった。
胸が熱くなって、自分でもよく分からないけれど泣きそうになっていたから。
だけど、私はお姉ちゃんに一言だけ、こう告げた。
「これが、私が選んだ進路だから」
私は漫画家になる。あわよくば彼と一緒に。
翌日。
「――どうだ?」
授業中、俺は絵理香に完成したネーム見せた。
「うん。これならいけるよ!」
絵理香はノートをカバンの中にしまった。
「楽しみだなー。これを絵にするの」
「期待してるからな。絵理香“先生“」
絵理香は笑っていた。
楽しそうに笑っていた。
その日は二人で帰らず、別々に帰ることに。
早く家に帰って漫画を書きたいと、絵理香が言ってたので。
その感覚は俺にもあった。
ネームやストーリーを作っている時は、早く家に帰って続きが書きたくなっていた。
だから、余計に絵理香の気持ちが分かったのだ。
俺は帰りに本屋を寄っていった。バイト先の近くにある小さな本屋だ。
まだバイトまで時間があるので適当に立ち読みしていこうと。
手に取ったのは、一冊の漫画雑誌だった。
「って、漫画じゃねーのか」
表紙が漫画みたいな絵だったから漫画雑誌だと思っていたが、どうやらそれは、ライトノベルというジャンルの雑誌のようだ。
てか、ライトノベルって何だ?
「…………」
三ヶ月。
絵理香が漫画を書いてる間、俺にはそれだけ時間がある。
どうやらこの雑誌に載ってる賞も十二月に締め切りのようだ。
親父がノートパソコン持ってたから借りてみるかな。
「すいません。これください」
俺も何か書きたかったところだしな。
|