第三章/三頁目
「……んっ? 何をやったの?」
お姉ちゃんの顔を見れない。
どんな表情をしているのだろう。
もしかすると、いつも通りの無愛想な表情のままなのかもしれない。
どちらにせよ、そんな冷静な態度で何を言っているのか。
「セックス」
淡白な声で即答された。
何を言っているのだろう。この人は。
心の底から湧き上がる熱。脈動と心音の速さが変わっていた。
「お姉ちゃんも武内君もまだ中学生だったんだから、そんなの嘘に決まってるよ」
「中学生でもする人はいるんだよ。絵理香」
無情なる苛立ちが様々な事柄に向けられた。
お姉ちゃんが彼としていたこと。
彼が私にそれを黙っていたこと。
彼がそれを知ってて私としたこと。
それらに苛立ちを感じた時、彼が口にした『好き』という言葉に疑念を覚えてしまった。
「何で、私達が合作作りを始めようって時にこんなこと言うの? 別に言わなくてもいいじゃん」
下唇を強く噛み締めていた。
自然と握っていた拳は爪が皮膚に食い込むくらい握っていた。
「絵理香は、本当に書くことの楽しさを知ったつもりでいるの?」
「そうだよ。武内君と一緒に知ったんだから」
そうだ。私は知ったんだ。彼と一緒に書くことの楽しさを知ったんだ。
「武内君武内君って――絵理香は書くことの楽しさを知ったんじゃなくて、武内君と一緒にいることの楽しさを知っただけなんじゃないかしら?」
お姉ちゃんが立ち上がった。
「作家として言わせてもらうけど、二人で一緒にプロになるなんて考えが甘いよ」
扉で立ち止まっていた私。すれ違い際、お姉ちゃんはこう告げた。
「一人で戦えない人間にプロはなれないよ」
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