第三章/二頁目
午後八時過ぎ。
彼が帰った後、私はお風呂に入った。
湯船が沸く間、シャワーで体を流す。
焼き付く感触。重い物を持った後に軽い物を持った時に起こる感覚。あの感覚に似たものが焼き付いていた。
彼に私の下着姿を見られるだけでも恥ずかしかった。本番になるにつれて上から下までゆっくりと下着を脱がされていって。
そうなるにつれ、その行為も激しくなっていた。
入れられた時は痛かったけれど入ってからは痛くなくて、むしろ気持ち良さで入れられている感覚がなかった。
彼が上手かったのかは分からないけれど、処女だった私を痛がらせることなく出来るんだから、下手ではないのだろう。
今まで、彼は私とは違う世界にいた。
彼は女友達との付き合いもあって、私は男友達一人いなくて、女友達は女友達でも彼との付き合いがあったような女友達ではない。
私の知らない彼はいる。
だから、私は初体験だったけど彼は昔、私の近くいる“誰か“と済ませていたのかもしれない。
――私の近くいる誰かと。
ガチャ、と、扉の開く音が――誰かが帰ってきた?
でも、まだ帰ってくるには早いような。
私は湯船から上がった。
バスタオルで体を拭いて巻いて、リビングに向かった。
扉を開けたその先には、
「あ、お姉ちゃん帰ってたんだ?」
お姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんは今、一番脂が乗ってる作家と言っても過言ではない。
何故なら、お姉ちゃんは『巌流賞』というその年に最も輝いた作品に送られる賞を受賞したのだ。
ちなみに自宅から仕事場へ通っている。自宅だと集中できないらしい。
お姉ちゃんは椅子に座りながらお茶を飲んでいた。
「ありがとうね。お姉ちゃん」
「何が?」
「お姉ちゃんのおかげで、私達、合作作れそうなんだ」
「……そう。それは良かったわ」
「お姉ちゃんが文藝部の頃の武内のことを教えてくれてなかったら、きっと書けなかった……」
今ごろ、彼と合作を書くことなんできなかった。
「……絵理香、知ってる?」
「何が?」
「――文藝部を辞めた日、私、武内君とヤったの」
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