第一章/十一頁目
五時間目の授業開始数分前に教室に戻った。
五分前に鳴る予鐘はもう鳴り終わっている。が、教室にいる連中が着席する様子はない。
だけど、山本妹だけは着席していた。礼儀正しいだけなのか。単に話す相手がいないのか。もしくは自ら交流を拒絶しているのか。
そんな山本妹が俺に話しかけたのは、山本なりの精一杯の行動だったのかもしれない。
もうすぐ授業が始まる。
俺は、山本妹に構想ノートを渡そうと考えていた。
言われた時は気づかなかったが、山本妹が俺がノートを書いてることを知っているというのは、つまり俺を見ていたのだろう。
もしかすると、もっとずっと前から、俺が気づかないところで見ていたのかもしれない。
そうじゃなくても、今、俺は山本妹にこのノートを読んでもらいたい。
机の中を探る。山本妹は顔を伏せて寝ている。見られてない。
ノートの表紙を確認する。何となく安心した。
もうすぐ授業が始まる。
教師が入ってきたのと同時に、クラスの連中も着席し始めた。
隣のクラスにいた連中も自分の教室に戻っていく。
山本妹も起きた。渡すなら今しかない。
「や、山本」
知らぬ間に声を出していた。
「なに?」
山本妹はこちらを向かずに返事をしてきた。
一瞬、言うのを躊躇った。が、ここで言わないと先に進めない。
先輩は俺に言った。
花は水をあげなければ成長しない。と。
山本妹の中にある種に俺が水をあげなければ、花は咲かない。
俺は山本妹に、絵理香にノートを渡した。
「ノートを、読んでくれないか?」
そして、授業が始まった。
絵理香はノートを読んでいる。
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