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Remodeling
作:氷室



第七章


「……なんでこうなっちゃったんだろう」
 亮太の改造計画が始まってから数週間後、由香の目の前にあったのは自分が思い描いた完成図とはまるで違うものだった。由香の完成予想図ではさわやかなイケメンとまではいかなくてもそれなりの男ができるはずだった。いや、そうでないと夏休みの大半を改造に費やしたことが報われない。途中で由香も完成図とは違う方向へと向かっていることには気付いていたが、方向を変えることができなかった。
 それらの結果、生まれた作品が今目の前にある。目を背けたくなるような完成品が……。
「これが俺か……。綺麗だなあ……」
 鏡の前で呆けている亮太は劇的に変化していた。そういう点では由香の目論見は成功したのだが、だいぶずれた方向性も加わってしまったことが誤算であった。
 顔のニキビはきれいに消え、鬱陶しい前髪も切った。背中に届く長い髪は手入れも行き届いてさらさらになっている。瓶底眼鏡をやめてコンタクトレンズにした。さらに食事の増量、栄養素の調整をした上に適度な運動も取り入れた。これによって骨が透けそうな痩せきった体が痩せ気味程度になり、おまけに背も伸びるとかなり改善された。だが、その改善は由香の思い描いた改善とは違っていたのである。
「なんで女みたいになっちゃったんだろう……」
 由香は重たいオーラを纏わせたまま呟いた。これでは理紗を見返すどころか変態扱いされてしまうではないか。言外にそのようなことが込められていた。
「今からでも何とかしないと私まで変態を作り出した女っていう嫌なレッテルが貼られるじゃない。ちょっと兄さん、また改造よ。とりあえず端正な顔になることはわかったんだから次はイケメンに……。ちょっと! 何やってるの!?」
 自分まで変なレッテルを貼られては堪らないと再度亮太の改造をしようと決めた由香の目の前に衝撃的な映像が飛び込んできた。スカートをはいて悦に入る亮太だった。
「兄さん! お願いだからスカートなんかはかないで! もう元に戻れなくなっちゃうよ」
 急いで亮太からスカートを脱がそうと由香は亮太に飛び掛る。これが癖になってしまったら平気で外を女物の服で歩きかねない。
「嫌っ! 脱がさないでよ。恥ずかしいよ……」
 空気が凍りついた。試しに女言葉を使ってみた亮太が与えた衝撃は余りにも大きかったようだ。由香は亮太がはいているスカートを持ったまま固まってしまった。そして次には鳥肌になりながら震え始めた。
「キモイからやめて……。それ以上に私の名誉のためにやめて……。お願いします」
 知らない人が見る分には見た目は完全に女性なのだからいいが、このまま外に出れば久坂家の長男が変態になったとして近所に広まるだろう。そこでこうなった過程として自分の名前が出たりしたら……。そのことを考えただけで由香は首を吊りたくなった。
「違う! 私は変態を生産した覚えなんかない。これは全部馬鹿兄さんのせい……。って今度は何をやっとんじゃお前はっ!」
 精神的苦痛に悶える由香を尻目に亮太はいつの間にか由香からスカートを奪還し、さらにオーバーニーを着用していた。
「おおっ、絶対領域だ……」
 スカートとオーバーニーによって作られた絶対領域を見て頬を緩ませる亮太。絶対領域自体に蕩ける男はいるが、自分が着て作った絶対領域に蕩けられても困る。由香はもう怒る気力さえ枯れ果ててしまった。
「由香も見ろよ。絶対領域だぞ。白い太ももが何とも……」
「もういいわ……。女子の制服で学校行ってみて。絶対後悔するから」
 由香はもう荒療治しかないと悟った。ちょうどもうすぐ出校日である。そこで恥をかいて元に戻ればいい。抑圧したばかりに隠れて陰で続けられて癖になるよりもマシであろう。早めに恥をかいてやめてくれるのが一番である。
「マジで!? それじゃ明日女子の制服で行こう。制服貸してね」
「まあ登校する前にお父さんとお母さんに見つかって止められると思うけどね」
 由香はごく当たり前のことを言ったつもりだった。いったいどこの親が息子の女装を見逃すだろうか。まず間違いなく馬鹿なことはやめろと止めるはずである。だが亮太から返ってきた言葉は絶望的なものだった。
「いや、父さんも母さんも綺麗だから女装してもいいって言ってたけど。父さんなんか俺と母さんを両脇に侍らせて寝たいとか言ってたし」
 ここにきて由香はようやく本質を悟った。亮太の馬鹿さ加減は両親の遺伝の産物なのだから止めようがないのだと。そして亮太がこうなったのは全く自分のせいではなく勝手になったのだと。












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