俺の名は薩陣 磨男。至って普通の高校生だ。そんな俺にも彼女はいる・・・いや、いた。
正直、こんな事になるとは俺も思ってもいなかった。
7月19日──終業式を終えた俺は、颯爽と家に帰宅した。
「ただいま」
と言って、靴を脱いでリビングに向かう。
「お帰り、磨男」
そう言ったのは、テーブルでお昼を食っている男・薩陣 孝夫。俺の親父だ。
そしてその隣で同じ様にお昼を食っている美少女が、俺の人生を根本から破壊した張本人、高良 美紀だ。
美紀は俺の高校の先輩で、今年卒業して大学に通っている頭の良い彼女だ。その美紀が、何故親父の隣で飯を食っているのだろうか?
「おい、美紀。何故お前が親父の隣で昼食を摂っている?」
すると親父が顰めっ面で言って来た。
「磨男、義母さんに向かって何だその口の訊き方は?」
む、今何と言った?このクソは。
「頼む、今の台詞もう一回言ってくれ」
「義母さんに向かってその口の訊き方は何だと言ったんだ」
義母さん・・・義母さんだと!?
「どう言う事だそれ!?美紀は俺の彼女だって、親父も知ってるだろ!?」
「ごめん磨男。私、孝夫さんと結婚したの。だから今日から貴方のお義母さんよ」
これは何か冗談だろうか?
「じょ、冗談だよな?」
俺の顔が引き攣る。
「冗談じゃねえさ。今日正式に届けを出して来た」
その時、俺の心の中で何かがブチブチと音を立てて切れた。
今、俺の前にはLif○ ○ardが三枚。選択肢は三つ。どれを選ぶかによって今後の俺の人生を左右する。どうする俺!?
1、素直に受け入れる
2、親父を殺す
3、美紀を殺して自分も死ぬ
さて、どれを選ぶか・・・。
俺は目を瞑り、カードを適当にシャッフルして一枚引いた。
抜かれたのは3のカード。美紀と共にあの世行くだ。今ならまだ間に合う。もう一度シャッフルして引き直すか?って、言ってる傍からカード消えちまったよ!
仕方ねえ、計画を立てよう。先ず、どうやって殺すか、だ。
俺は脳をフル活動させて考えた。最初に言っておくが俺は、こう言う犯罪を考えるのは得意なのだ。
「親父、美紀・・・じゃなかった。義母さんと二人きりで話したいから、席外してくれないか?」
俺は取り敢えず親父をリビングから追い出す事にした。
「解った。俺は上に行ってるぞ」
「ああ」
俺は親父が廊下の階段を上がっていったのを確認すると、美紀に向き直った。
「美紀・・・・・・」
俺は真剣な顔で美紀を見つめる。
「何?磨男」
「あのさ、何で親父と結婚して俺の義母になったんだ?」
「何でって、孝夫さんの事が大好きだから」
待て待て、何だそりゃ!?
「じゃ、じゃあよ、何で俺と交際してたんだ?」
「あー、それは、単なる遊び」
ふざけんなっ、お前は抹殺決定だ!
「そうか。それじゃあ俺も今から最高の遊びをお前としよう」
俺はそう言って、台所に入った。
「美紀、ちょっと来てくれ!」
俺はそう言って、素早く引き戸を開け、包丁を取り出して閉めた。
「磨男、どうしたの?」
グサッ!──俺は何をされるのかも知らずに台所に入って来た美紀の腹を包丁で刺した。
「うっ!」
と、呻き声を上げてその場に倒れた。
「す、磨男、どう・・・して・・・?」
「美紀、お前が全て悪いんだ」
「な・・・に・・・言っ・・・て・・・る・・・の・・・?」
美紀は腹を押さえながら、途切れ途切れ言った。
「俺はさ、お前に告白される前は、別にお前の事など何とも思って無かった。けど、1年前のあの日、お前に告白されてから少しずつだが、お前を意識する様になって、気が付いたら付き合ってた。で、俺も今年18で、そろそろお前との結婚事を考え始めてた矢先、お前は親父と結婚した。今はそれがとても許せない。安心しろ。俺も直ぐ、お前の後追う」
俺はそう言って、一階にある俺の寝室へと行き、毛布を持って来て微かに息をしている美紀をそれに包んだ。向かう先は、美紀に告白された高校にある校庭の桜の木の下だ。
俺は毛布で包んだ美紀を抱え、家の外へ出た。幸い、親父は部屋の中にいて、バレる事は無かった。どうせ食後の昼寝でもしてるんだろう。
俺はそのまま学校に向かった。校庭に人の気配は無い。
俺は美紀を桜の木の下に置くと、毛布を外して包丁を抜いた。
「ご・・・め・・・ん・・・」
美紀はそう呟き、息絶えた。残るは俺だ。
(親父、美紀は渡さない。美紀は俺の物だ)
俺は躊躇う事無く、彼女を刺した包丁で、自分の腹を刺した。
グサッ!──と、肉に包丁が刺さる音がする。
俺は呻き声を上げる事無く、美紀の横に仰向けに寝転がった。
俺の意識が段々と遠くなって行く。
(もう、この世とはおさらばか・・・。辛いもんだな、死ぬってのは・・・)
そして、俺は完全に意識を失った。
俺が目を覚ますと、そこは真っ白で何も無い世界。隣には、美紀が可愛い顔をして眠っていた。
(それにしても此処は一体・・・?)
俺は腹を触った。傷が無い。包丁も無い。此処があの世なのだろうか?
「起きろ美紀」
俺は徐に美紀を揺すった。
「ん・・・もう朝?」
と、美紀は目を擦り、起きた。
「こ、此処何処?私確か、磨男に殺されたと思ったんだけど・・・」
美紀はそう言って、腹を触った。勿論、傷なんかある訳が無い。
「あれ、無い。って事は生きてる?」
「バーカ、此処はあの世だよ」
俺は美紀にそう言ってやった。
美紀は俺の声に振り向くと、起き上がって俺の胸倉を掴み、頬を三回ひっぱたいた。
パンパンパンッ!──と、辺りに音が木霊する。
「痛え、何すんだよ!?」
「それはこっちのセリフ!あんた、よくも私を殺してくれたわね!」
「それはお前が親父と結婚したからだ!」
「大好きな人と結婚して何が悪い!?」
「悪いだろ!俺をその気にさせておいて、何の断りも無く!その上俺との交際は遊びだった。最低の行為だ!」
「だからって、何で私を殺すのよ!私じゃなくてお父さん殺せば良かったでしょ!?あんたのお父さんには大量の生命保険掛けてたんだから・・・」
「保険?お前俺の親父殺そうとした訳!?信じられん!」
「お父さんだけじゃないよ?」
「他にもいるのか、お前に填められた奴?」
「ぎょうさんおるで」
「お前と心中して正解だったわ」
「それとこれとは話しが別!」
絶望だ、こいつは人の命など何とも思っちゃいねえ。
俺は雰囲気を変える為、話しを変える事にした。
「兎に角、此処から動こうぜ?」
「そうね」
俺達はすっくと立ち上がり、この真っ白で何も無い世界を宛てもなく彷徨い始めた。
何処へ言っても、あるのは白い空間のみ。半ば諦め掛けていると、目の前に大きな川が見えた。その前には人が立っていた。
その人はお辞儀をし、
「ようこそ天界へ。此処は死者の魂が必ず渡る三途の川。暫くしたら渡し船が来ますので、少々お待ち下さい」
俺は目の前の奴に聞いた。
「これ渡ると何処に着くの?」
「地獄です」
そいつは微笑しながら言った。
「再生の無い苦痛だけの世界があなたを待ってますよ」
その言葉は美紀に向けられた様だった。
「あの、俺は?」
「はい、天国です」
「何で?何で美紀と一緒じゃねえんだ?」
「それはですね、そいつが連続殺人犯だからですよ」
と、美紀を指差す。
何言ってんだこいつ?美紀が連続殺人犯?
「毎年毎年送られて来るんですよ。その女に騙されて殺された男達が沢山ね。あなたもその女の殺害候補でしたよ?」
なっ、俺が美紀の殺害候補!?美紀目、親父だけでなく俺をも・・・。
「しかし解らん。何故同じ殺人を犯した俺が天国なんだ?」
「神様からのお礼です。その女を殺して連続殺人を止めた。だからあなたは天国行きにしてくれたのです」
「じゃあ、此処で美紀とはマジでお別れ?」
「はい、そうです」
再び微笑するそいつ。
「そうか。所であんた何者だ?」
「私ですか?私はこの三途の川の番人、天使 美香。よろしく」
すると、川の向こうから渡し船がやって来た。
「地獄行きの渡し船です。高良 美紀さん、あの船に御乗り下さい。そして再生の無い苦痛を味わえ、人の命を何だと思ってんだ!?」
突然、美香の顔が鬼に成った。金棒を持ってる鬼と同じ鬼だ。
美紀は脅える様子も無く、渡し船へと乗る。
「では出発でーす」
と、美香の顔が元に戻る。
渡し船は出航した。さらば俺の愛しき美紀。
「さて、磨男くん」
美香は俺の方を向いて歩み寄ってきた。
「磨男くん、私に見覚え無い?」
「いや、全然」
「ひっ、ひどい!もう忘れちゃったの!?」
美香は泣き出した。一体何のことだ?俺には思い出す事が出来ない。
「小さい頃、磨男くん私に言ったのに」
何をだ、俺何を言ったんだ!?
「磨男くん、私のお婿さんになる、って」
まてまてっ、一体何の話しだ!?
「磨男くん、ホントに覚えて無いの?小学校の時、私にそう言ってくれたんだよ?一緒にお風呂にも入ったし、同じベッドで一緒に朝まで過ごした事もあるんだよ?」
美香の言葉で、当時の記憶を思い出すのに時間は掛からなかった。
「まさかお前、俺の幼馴染みで可愛いだけが取り柄の天使 美香か!そう言われてみれば一緒にお風呂入ったし、同じベッドで朝まで一緒に寝た記憶がある!しかしそのお前が何故此処に?」
「死んだの」
「は?」
「中学入って直ぐ、車に轢かれたの。あたしがいけないんだ。磨男くんの事考えて歩いてたから、信号が赤な事に気付かなくて。エヘッ」
と、舌を出して頭を小突く美香。
俺はその美香を見て、胸が高鳴った。
「ねぇ、磨男くん。生き返りたくない?」
「生き返れるのか?」
美香は頷いた。
「私ね、次の番人と交代するの。たがら、生き返ってよ?一緒に」
「一緒にって、どうやって?」
「磨男くんの体に磨男くんを入れるだけだもん、簡単だよ」
「そうか。で、あんたはどうするんだ?」
「私は美紀の体に入るよ。それで磨男くんの御嫁さんになる」
「何!?」
「だから、磨男くんの御嫁さんになるって言ったの。磨男くんが婿になるって言ったからだよ?」
「それは解ってる。だが仮に生き返ったとして、美紀は親父と結婚しちゃってるぞ?」
「殺しちゃお?大量の生命保険掛かってんでしょ?」
こいつも美紀と同じか。
「大丈夫、やるのは完全犯罪だから」
その時、俺の前に例のカード出現。選択肢は二つ。
1、天国へ逝く
2、美香と生き返って親父を殺す
俺は目を瞑り、適当にシャッフルして一枚抜いた。
抜かれたのは2のカード。また殺人か。
「じゃあ、行くよ」
美香はそう言って呪文を唱えた。すると、何かに引っ張られる様に、俺の意識は現世へと戻された。
俺が目を覚ますと、そこは校庭の桜の木の下だった。
そう言えば俺、死んだ筈。
俺は腹を触った。傷が塞がってる。包丁は無い。
「あれ?」
俺は起き上がった。隣には美紀が可愛い顔で眠っていた。
待て、俺は美紀を殺した筈!なのに何故その時の傷が無いんだ!?
俺は徐に美紀を揺すった。
「美紀、起きろ」
美紀は目を開け、
「手に入れたぞ生身の体!」
と、叫んだ。
「あ、成功したんだね」
美紀は俺に気付くとそう言った。
「成功?」
「復活の呪文」
無印のドラ○エですか
「因みに私は美紀じゃなくて美香だよ」
「ふうん・・・って、マジで!?」
美紀改め美香は頷く。
そうか、あれは全部ホントだったのか。
「それじゃ、お父さん殺しに行きましょ」
美香はすっくと立ち上がると、俺に手を差し出した。
俺は美香の手を掴んで立ち上がった。
「美香、ホントにやるのか?」
「当然よ、大量の保険金が手に入るんだもん」
どうしよう、俺。止めるか?
俺は運命を左右する例のカードを出した。って一枚。書かれているのは、一緒に親父殺して保険金の山分け、だ。
「強制かよ!」
俺は叫んだ。
「うん、強制だよ」
そうか、強制か。って、美香にこの妄想のカードが見えてんのか?
「美香、このカード見えてんの?」
俺は試しに、妄想で出したカードを美香に見せた。普通なら見える筈も無いが美香は、
「見えるよ」
「何故見えるんだ?」
「だって、その妄想のカードに書かれてるの、私の思考だもん」
「はい?」
俺は混乱した。
「美紀を殺す時も、磨男くんはそのカード使ったんだよね?」
「使った」
「それね、私が3番を選ぶ様に仕向けたの。生身の体が欲しかったから。ごめんね、こうでもしないと美紀を乗っ取れなくて」
成る程な。俺の運命はこいつによって操られていたってか。と言う事は、川の前で選んだのもこいつの思考か。
「美香、一体何の目的があってこんな事?」
「先刻言ったでしょ?私は磨男の妻になりたいの。だからその為にはどんな手段でも使うわ。磨男は他の誰にも渡さない。私の物よ」
美香は真剣な表情でそう言った。
「美香、気持は嬉しいけど、俺やっぱ美紀の方が・・・」
「見た目が美紀なら問題ないでしょう?因みに拒否権は無いわ。磨男の運命は私が握ってるんだから」
俺、幼馴染みに自由奪われたよ・・・。
「そう言う事だから、お父さん殺し手伝って貰うわよ。言っとくけど、もし逃げたりしたら、あんた殺すから」
美香は物凄い形相で俺を睨み付けた。
一瞬にして、美紀の美貌が崩れた。
「解った解った。そこまで言うなら美香の奴隷になってやるよ」
「じゃあ決まりね!早速殺しに、レッツゴー!」
美香はそう言って、俺と共に自宅へ向かった。これからどうなるんだ俺?
俺は美香と家にあがるなり、
「ただいま」
と言った。すると親父が階段から降りて来て、
「二人とも出かけてたのか。何処言ってたんだ?」
と、言った。
「磨男とあなたを殺す計画を立ててのよ」
バカだこいつ。自分から言ってるよ。
「冗談きついよ美紀」
こいつ信じてねえ!
「それじゃあ、孝夫さん。お夕飯作るから部屋で待って下さいね」
「ああ」
親父は返事をすると階段を上がって言った。
「で、どうやって殺すんだ?」
「ハシリドコロ食わせる。丁度ベランダの植木にあるから」
「待て、何で知ってんだ?」
「美紀の記憶を読んだのよ」
「成る程ね。で、その掌は何だ?」
「ベランダからハシリドコロ持って来いって言ってんのよ」
「俺が取りに行くの?」
美香は笑顔で頷いた。
「めんどいな」
俺はベランダにハシリドコロを取りに行った。
「美香、取って来たぜ」
俺はそう言って、台所にいる美香にそれを渡した。
「ありがとう」
美香はそう言って、ハシリドコロを水で軽く濯ぎ、フライパンに入れて他の野菜や肉と共に炒め始めた。
「これ孝夫に食わせる奴だから、磨男くんは間違っても食べないでね?」
「俺もバカじゃねえ。ハシリドコロにアルカロイドと言う毒が入ってる事ぐらい知ってるわ。ま、親父は知らねえみたいだけどな」
「それにしても私達、踏み込んじゃいけない領域に入っちゃったね」
そう言ってガスを止める美香。
「はい、ハシリドコロ入り野菜炒め完成。磨男くん、御皿出して」
「はいよ」
俺は食器棚から平べたい皿を出すと、台所の上に置いた。
美香はその皿に、たった今出来たばかりの野菜炒めinハシリドコロを盛った。
「これ、テーブルに置いてくれる?」
「イエッサー!」
俺は皿を取り、食卓に置いた。
美香はフライパンを一旦洗い、新しく野菜炒めを作っている。
「磨男くん、孝夫呼んで来て?」
「了解」
美香に促された俺は、二階にの部屋に親父を呼びに行った。
「親父、ご飯出来たって」
「今行く」
親父は扉の向こうで返事をした。
もうすぐ、親父と永久にさよならだ。一寸嬉しい様な悲しい様な・・・。
俺は階段を降り、リビングに向かった。
食卓には、既に三人分の料理がよそってあった。
「美香、どれとどれが無害なんだ?」
「お昼に美紀が座ってた席と隣が無害」
「そうか」
俺はお昼に親父が座っていた席に着いた。そこへ、親父がって来た。
「親父はそこだ」
と、俺は向かい側の席を促す。
「何だよ、さっきは美紀の隣だったのに」
「何処だって良いでしょ?」
と、美香。
「美紀、冷たいな」
そりゃそうだ。別人なんだし。
「頂きます」
親父は箸を取り、ハシリドコロ入り野菜炒めから食し始めた。
「うんっ、美味しい!」
と、発した後、親父を吐気が襲った。
「美紀、何をした!?」
「毒を盛らせて頂きました。どうかしら、ハシリドコロの御味は?因みに、私は美紀じゃなくて美香。磨男くんの幼馴染み」
「何!?美紀はどうした!?」
「磨男くんが殺したわ」
「てめぇが勝手に俺のを取るからいけねえんだ。悪く思うな。ま、向こうで美紀と楽しく暮らせや。再生の無い苦痛がお前を待ってる」
「ハァ・・・ハァ・・・」
どうやら親父は呼吸困難に陥った様だ。
「覚えてるよね、孝夫?」
突然、美香が昔の事を言い出した。
「数年前あんたが車で撥ねた中学生。あれ、私なの」
そうか、それが動機か。
「バ・・・カ・・・な。あの・・・中・・・学・・・ハァ・・・生は・・・ハァ・・・死んだ・・・筈・・・」
「ええ、一度死んだわ。けどね、どうしても磨男くんと結ばれたかったから、彼に美紀を殺害させた。そして、私が美紀の体を乗っ取った。で、今に至る訳」
「そ、そんなオカルト的な話し・・・信じられるか!」
「そう言えば親父、オカルトって全然信じて無えよな。まぁ、それは良いとして、ウザイからとっとと死んでくれよ?」
「俺が・・・死んだら・・・誰が生活費・・・払うんだ?」
「そりゃ当然、美紀が大量に掛けた孝夫の生命保険よ」
「何だ・・・って!?」
「美紀はね、孝夫に多額の保険金を掛けて殺そうとしてたのよ?まぁ、そうする前に磨男が殺害しちゃったけどね。でも問題は無いわ。あんたが死んでくれれば、多額の保険金は私の所に転がり込むから。それよりポケットに手入れて何してんのよ?まさか!?」
美香は慌てて孝夫の手をポケットから出した。すると、携帯電話が握られており、110番に電話が繋がっていた。
「そんなっ、私の計画が!」
「残念・・・だったな。俺は・・・死ぬが・・・お前達は・・・牢獄行きだ・・・」
「嫌、捕まりたくない!折角生身の体手に入れたってのに!」
美香は孝夫の携帯を破壊した。
「磨男くん、逃げるよ!」
美香はそう言って、俺を抱き抱えて家を飛び出した。
外は、パトカーのサイレンが響いていた。
「絶望だ、逃げ場なんて無えぞ!」
美香は空を指差した直後、一気にジャンプして家の屋根に登った。
「お前、すんげえ身体能力だな」
「美紀に感謝して頂戴」
「そうだな」
美香は屋根と屋根を次から次へと飛び移り、パトカーのサイレンから遠ざかって行く。
「これから役所行って戸籍の抹消ね」
「え?」
「決まってるでしょ。美紀と磨男の戸籍を抹消して新しく作るのよ」
「でももう役所は・・・」
「侵入」
「やばいって。ただでさえ警察に追われてる身なんだ」
「じゃあ体を誰かと交換する?」
「そんな事可能なのか?」
「誰が磨男くん生き返らせたと思ってんの?」
「美香様でした」
「そうそう。じゃ、入れ替わると言う方向で」
美香はそう言って、地上に降りた。向かうは最寄り駅。
「それより美香。お前一体何者なんだ?人生き返らせたりとか出来るけど」
「悪魔、魔界に住む悪魔と人間の間に産まれたハーフよ」
「成る程」
「あ、丁度良い所に磨男くん好みの可愛い女子高生発見!」
「どうするつもりだ?まさかとは思わんが俺とそいつを?」
「それしか無いでしょ!後で男の体探すから我慢して!」
美香はそう言うと、呪文を唱え始めた。俺の体からスーッと魂が抜け、光りの球体と成って美香の掌に収まった。
「そこの高校生のお嬢さん?」
美香はそう言って、女子高生に声を掛けた。
「何ですか?」
と、振り向くそいつは、俺のクラスメイトの幸田 子春。目はつり目、髪が長く背中まで伸びている。まさに俺好みのツンデレ少女である。
「その体貰うよ!」
美香はそう言って、俺をその体にぶち込み、代わりに彼女の魂を元俺の肉体にぶち込んだ。
すまない子春、牢獄で暮らす事になるが、我慢してくれ。
「磨男くんはそこで待ってて!もう一つ探して来るから!」
美香はそう言って、元俺の体in子春を捨てて去って行った。
俺と入れ替わった子春は、何が起きたのか解らない様子で現在の俺を見て言った。
「どうなってんの?私が二人・・・?」
「ごめん子春。訳ありでお前と体を交換させて貰った」
「はぁ?」
俺の体は目を点にした。
「あんた誰よ?」
「俺は磨男だ」
「えっ、薩陣くん?」
「そうだ。って事でお前、俺の代わりに牢獄で暮らしてくれ」
「ちょっ、何変な事言ってんのよ?」
俺の肉体はそう言って、俺に掴み掛かった。
「あんたが何しでかしたか知んないけど牢獄なんて嫌よ!今直ぐ返して!」
と、そこへパトカーがサイレン鳴らしてやって来た。
「お巡りさん、助けて!この男私を殺そうとしてるわ!」
俺は思わずそう言った。
「なっ、何言ってるのよ!?」
「薩陣 磨男、高良 美紀殺害容疑で逮捕する」
警察はそう言って、俺の体をパトカーまで引きずって行った。気の毒な子春。
「君、大丈夫だったかい?」
と、お巡りさんが訊ねる。
「ええ、大丈夫です」
「それは良かった。それより、もう一人逃げた女の子がいる筈なんだが、どっちへ行ったか知らないかい?」
その問いに、美香を抱えた少年が現れて言った。
「それってこいつの事ですか?」
そうか、美香の奴男にのされて・・・。
「ご苦労様です」
警察は少年から美香を譲り受けると、パトカーに乗せて去って行った。
「磨男くん、大成功だよ」
「お前美香か?」
少年は頷いた。
「この体、その体の彼氏だそうよ」
「それはまぁ、何と言う偶然でしょう」
「そうね。兎に角、入れ替わりましょう?」
少年はそう言って、呪文を唱えた。すると、俺の魂と美香の魂が入れ替わった。
「お、入れ替わった」
「悪魔を舐めて貰っちゃ困るわよ。それと、私の事は美香じゃなくて子春と呼んでよね?」
「ああ、そうするよ子春。で、俺は何て名乗りゃ良い?」
「曽我 毅。毅と呼ばせて貰うわ。それと、毅は大学生だよ。しかも美紀と同じ所」
「ああ、解った」
俺は美香改め子春を抱き締めた。
「子春、幼い頃の俺との約束だ。結婚しよう」
「はい、喜んで毅の御嫁になります」
こうして俺、薩陣 磨男改め曽我 毅は、目出度く子春と結ばれ、子どもも出来て幸せに暮らしました。目出度し目出度し。
HAPPY END?
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