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前世聖女は手を抜きたい よきよき  作者: 彩戸ゆめ
学園生活を満喫します
94/156

94話 氷の精霊

本日2話目の更新です。

 淡々と追い詰めるように言葉を発するアーサーは、火の精霊の守護ではなくて、氷の精霊の守護を受けているかのようだった。もちろん、氷の精霊など存在しないのだが。


「反省している! 今日はそのようなことはない!」

「……だそうだよ、レナリア。安心しておいで」

「は、はい」


 レナリアはチャムのしっぽを持っている手とは反対側の、アーサーとつないでいる手をぎゅっと握る。


 僕に任せなさい、と、その手のぬくもりが言ってくれているような気がした。


 なんとかチャムのことをごまかせたレナリアは、アーサーと並んで席についた。しばらくするとアンナがお茶を運んでくれる。


 アーサーとレオナルドの侍従もそれぞれの主人にお茶を淹れるのだが、セシルの侍従は前に見た人とは違っていた。


 学園に入る時についてきてもらう侍従は、大抵五年間ずっと一緒だとアーサーから聞いていたので、レナリアはどうしたのかしらと思う。


 そういえば最近護衛についている人も変わっていたような気がする。


 よく分からないが、何かあってセシルの世話をする人の入れ替わりがあったのかもしれない。


 レナリアは運ばれてきたお茶を飲みながら、分からないようにスミレの砂糖漬けを膝の上のフィルとチャムにあげて、ほっと息を吐いた。


「お花の香りがして、あまーい」

「ほんとだ。これは精霊の好むお菓子だね」


 フィルとチャムはスミレの砂糖漬けを食べて大絶賛している。


 ちらりと横を見ると、アーサーの膝の上でもフラムがスミレの砂糖漬けにチャレンジしていた。どうやら気に入ったらしく、膝の上ではずんでいる。


「さて。早速だが本題に入ろう。まずは、何があったのかを詳しく教えてほしい。セシルから大体の話は聞いたが、セシルが牧場に到着するまでのことを話してくれないか?」


 レオナルドにうながされて、レナリアはリッグル牧場に行ってからのことを詳細に説明した。


 レナリアが選んだのが白いリッグルだったこと。

 そこへアンジェたちがきて、突然白いリッグルを譲れと言ってきたこと。


 そしてリッグル自身がレナリアを選んだことによって、報復のつもりなのかいきなりリッグルに火魔法で攻撃してきたこと。


「ふむ……。しかし、なぜリッグルが助かったんだ? あの場で回復魔法を使えるのは司教とロイドとアンジェだが、その三人が回復魔法を使ったとは考えられない。一体誰がリッグルを回復させたのか」


 話を聞いたレオナルドは、レナリアが回復魔法を使ったとは夢にも考えていないようだ。


 セシルはレオナルドに何も言っていないのだろうかと、チラリとそちらを見ると目が合って微笑まれる。


 その微笑みが、かつて見たマリウス王子の微笑みに重なって見えて、レナリアは反射的に目を逸らす。


「霧の聖女のおかげでいいんじゃないでしょうか?」


 優雅にお茶を飲むアーサーが、意味ありげにセシルの方に顔を向けて言った。


「霧の聖女、ねぇ」


 いぶかし気にそう言うと、レオナルドは頭の後ろで手を組み、行儀悪く椅子に背をもたれかけさせた。


「不可解な回復魔力の発動は二回。そのどちらもセシルとレナリアがいる場で起こった。だがどちらも守護精霊はシャインではない。そして私はセシルに回復魔力がないことを知っている」


 そこで言葉を切ったレオナルドは、王家特有のタンザナイトの目を鋭くしてレナリアを見た。


「となると、残る可能性はただ一つになるね」


 レオナルドの問い詰めるような視線にレナリアは固まった。


 そんなレナリアを安心させるように、アーサーの手が膝の上のレナリアの手にそっと重なる。


「これは僕の推測にすぎないのですが……。レナリアを守護してくれているエアリアルはとても特別な存在のようなんです」

「確かに、姿が見えるエアリアルというのは前代未聞の存在だな。今は姿を現わしていないようだが」


 いえ。ちゃんといます。


 ただ私の膝の上で、スミレの砂糖菓子を食べて顔をお砂糖でベタベタにしていますけど。


 レナリアはそう心の中で呟いた。




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