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作者:山野ねこ
――――【讒】さん・ざん・そし(る)人を落とし入れるための悪口。讒言。



 知らぬ間に設定された、携帯電話の待ち受け画像を前に、藤江は車内でひとり困惑していた。

 出がけに探していた携帯を、珍しく娘が見つけ、手渡してきたのはこんなイタズラを仕掛けていたからだったのだ。

 藤江は苦い顔で、触れたことのないボタンをいくつか押しては唸り声を上げた。

 大体、通話しか機能がないような仕事用の携帯電話だ。待ち受けを変更することができることなど、いまのいままで知らなかった。

 そんな藤江にいきなり待ち受けを元に戻すことなど、難易度が高すぎるだろう。それらしい画面へは辿り着くが、次に触れたボタンでやはり最初の画像に戻ってしまう。

 藤江のこの声を聞いたものは、真の地獄を見る――仲間内ではそう噂されている、腹の減った熊のような唸り声を上げ、藤江はこれでもかと眉間の皺を深める。

 しかし、その泣く子も黙る、目黒署の鬼刑事が凝視するものが何か、もしそれを知り得る人間がいたのなら、その人は笑いを堪えることなどできないだろう。そして、鬼の目にも涙だな、などという暢気な感想を浮かべるに違いない。

 それもそのはず、渋い顔の藤江が見つめる画像は、双子の兄妹がこちらを覗き込むように笑っている可愛らしいもので、体操服に赤白帽という出で立ちから推測するに、運動会のときのものだろう。

 小さい手でつくった小さなピースを頬につけ、おどけたように大きく開けた口からは、いまにも「おじいちゃん!」と藤江を呼ぶ、元気な声が聞こえてきそうだ。

 子供たちの名前は結と航太。今年、揃って幼稚園に上がったばかりの、藤江にとっての初孫である。刑事という忙しい職業柄、あまり構ってやることはできないが、それは孫たちの母親――娘の明菜が生まれたときも同じだった。

『いまから面倒見てないと、定年退職してから孫に遊んでもらおうとしたって、相手してもらえないんだからね?』

 今朝のやりとりを思い出せば、そんなことを言われたような気はする。しかし、藤江が答えたのは、ああ、とか、わかってる、とかいう普段と変わらぬ、気のない返事だっただろう。

 だから、この待ち受けは孫をもっと可愛がってやって欲しいという明菜の無言の抗議なのかもしれない。

 けれど、いまのところ藤江にそんな暇はない。現に、一昨日までの小火騒ぎが、昨日やっと一段落し、久しぶりの定時出勤となった今日である。春休みだか何だかで家へ遊びにきている孫たちの相手をしている時間など、まるでない。

 それどころか、刑事になってからいままでというもの、働きづめで働いてきたのだ。孫どころか、娘と遊んでやった思い出さえ、思い出そうにも一つもない。

 未練がましく、しばらく手の中の携帯を眺めると、藤江はそれをくたびれた背広のポケットに滑り込ませた。署の若いやつに聞けば、すぐに解決する問題かもしれないが、それでは格好がつかないだろう。かといって、ひょんなことから孫の待ち受けを見られても言い訳に困る。

 しかし、そんなもやもやした気分は、署に入った瞬間に響いた、男の怒鳴り声で吹き飛んだ。

「こっちにしたら、とんだとばっちりですよ! だから名誉毀損で、さっさと逮捕してくださいって言ってるんです!」

 受付の前で若い男が騒いでいる。尋常ならぬ様子に、どうされましたか、と藤江は早足で男に近づき、あくまで礼儀正しく声をかけた。間違っても、開口一番、騒ぐんじゃない、などと声を荒げることはしない。

 というのも、最近はボイスレコーダーや携帯でやりとりの音声を録音し、うっかり失言でもすれば、鬼の首を取ったかのように警察の落ち度を強調してくるやっかいな輩がいるからである。

 警察といえども、税金で雇われた公務員だ――上層部からのお達しもあり、罪人ならともかく、大声を出しているくらいならば、できるだけ穏やかに注意をするに留まらざるを得ないことになる。

 まあ、藤江の場合、その丁寧さが却って恐ろしい、という声もちらほら風の噂で聞くのだが。

「だから――」

 その風聞違わず、振り向いた男は藤江を認めると、少々顔を引きつらせた。しかし、その次の瞬間、何かに気づいたようにあっと声を上げる。同時に藤江も、おや、と眉をしかめた。

「あんた、あのときの刑事さんだよね? ちょっと助けてくださいよ」

 男が、急に砕けた口調になる。

 常識で考えれば、年上にアンタ呼ばわりしながら、助けてくださいはないものだとは思うが、昨今関わり合いになる若者はそんなものだから藤江もいちいち気にとめることはない。

 それよりも、藤江が不審に思ったのは男の憔悴具合だった。半月、いやもうひと月は経っただろうか。前に一度会ったときに比べ、男はひどくやつれている。一体何があったのだろう――。

「これ」

 しかし、藤江に考えるひまも与えず、男は持参してきたらしい紙切れを藤江に突き出した。

 上の端にインターネットのアドレスらしきアルファベットが並んでいる。ウェブサイトの文章、たぶんブログのような一ページをプリントアウトしたようなものだろう。

「ここですよ、ここ」

 藤江が細かい文字に目を細めていると、男はいらいらしたように紙を叩いた。ページの下部、そこにきめの粗い画像が印刷されている。その画像に並んだ、寒川俊太、その文字を見て、藤江はやっとこの男の正体を思い出した。

「これって名誉毀損でしょ、ねえ」

 そこに印刷されているのは、男の名刺だった。氏名、会社の所属、それから電話番号までが載っている。

「あの女、俺を陥れて死んだんですよ」

 男が声を大きくする。

 しかし、瞬間、藤江の頭に浮かんだのは、目の前の男のことではなかった。それは藤江の娘と同じ年頃の母子の、無残な姿だった。


     *


 三十代と見られる母親と、赤ん坊の無理心中――その日、藤江を現場に呼んだのは、寒空にたちこめた暗澹たる雲のような情報だった。

 どんなに悲惨な現場でも、勤続三十年にもなる刑事に、想像できないようなものはない。その日も同様に、だらりと張られたブルーシートの向こう側を覗く前に、藤江はすでにそこに横たわるものの様子を正確に想像できた。

 しかし、いざ向こう側を覗き、胸が少しも痛まないのかといえば、話は別だった。

「藤江さん」

 そこへシートの向こうから、刑事になりたての新人の女性警官、雪村亜矢が姿を現わす。

 藤江と組んでいた吉田という刑事がヘルニアで入院し、そのまま事務方に移行したため、急遽新人である彼女と組むことになったのだ。

「状況は?」

 シートの向こうへちらりと目を遣る。やはり想像した以上でも以下でもないものが、大人しくただ散らばっていた。

「自宅マンションは十一階だったそうです」

 何かを堪えるような声で、雪村が報告した。

「死亡したのは三十二歳の松崎祐理さん――母親ですね――と、八ヶ月の祐貴くんと見られます」

「夫や、母親の両親は?」

 雪村の動揺には気づかぬふりで、藤江は聞き返す。刑事なら誰もが通る道だ。そして一人で乗り越えなければならない道でもある。

「夫のほうは、会社に連絡を入れました。それから……松崎祐理の両親はすでに亡くなっていて、夫の両親、つまり義理の両親は北海道にいるそうです」

「北海道か……飛行機の距離だな」

「部屋には精神科の診察券があって、どうやら母親は育児ノイローゼって言うんですか、鬱を患っていたみたいで……そりゃあ周りに頼る人がいなくて大変だったんでしょうけど――」

 でも、こんなこと――雪村の口から、堪えていたつぶやきがぽつりと漏れた。

 見上げた曇り空の隙間から、お情け程度の光が差し込む。始まったばかりの冬の寒さは、老いた骨身に特別に凍みる。十一階の立ち入り禁止のテープが張り巡らされたベランダに、鑑識の職員たちが動き回っている。

「いまのところ、聞き込みで不審な物証は出てません。隣の部屋の住人も、救急車が来るまで何も気がつかなかったと」

「そうか。それなら、通報通り――」

「ええ。無理心中だと思います」

 どうにもやるせない空気が、白い息と共に吐き出される。

 日本は世界一の自殺大国だ。殺人や傷害よりも、自殺の現場を目にすることの方が多いと言っても過言ではない。

 しかし、自殺なら刑事の出る幕ではなかった。踵を返し、歩き出そうとすると、雪村がふとつぶやくように言った。

「そういえば、警部のとこのお孫さん、おいくつでしたっけ。うちは姉のところに小学生の姪が二人いて……」

 雪村はまだぎりぎり二十代だ。その姉なら、ちょうど被害者と同じくらいの年齢だろうか。

「馬鹿。こんな現場で孫のことなんぞ思い出せるか」

 現場を振り返らず、今度こそ歩き出そうとしたときだった。警部、と鑑識官が藤江を呼び止めた。

「母親のポケットの中にこんなものが入っていたんですが……」

 ビニル袋の中に入ったそれは名刺だった。表にはT社の名前と寒川俊太という名前、そして血に染まってわかりにくいが、裏には手書きの文字でこう書いてあった。

『弁償できなくて、本当に済みません』

 藤江と雪村は顔を見合わせた。


     *


『ああ、知ってますよ』

 部屋の写真立てから拝借してきた親子の写真に、寒川俊太は頷いた。

『ってか、弁償金、預かってきたとか? ならさっさと下さい。オレ、急いでるんで』

 無造作に差し出された手を見て、藤江と雪村は戸惑った。

 ゆりかごからお墓まで、皆様のよりよい生活をサポートします――そんな謳い文句が有名なT社は、その文句の通り、ベビー用品から老人介護までを一手に引き受ける企業である。

 ここへ勤める人々は、世間一般よりも高給を取る、エリートと呼ばれる種類の人間だろう。巨大なビルのロビーには、そんな彼らが忙しい様子で行き来している。

 傍目には同じスーツ姿かもしれないが、彼らの着用しているものは安月給の刑事のそれとは明らかに異なるぱりっとしたもので、目の前の寒川のものも、藤江の吊しの何倍もするものに違いなかった。

『弁償? どういうことですか』

 何食わぬ顔で、藤江が聞く。相手に話をさせるのは刑事の定石である。この事件の場合は考えにくいが、下手にこちらから状況を話すことは禁物だ。

『どういうことって……、あのねえ』

 チッ、と舌打ちの音が聞こえた。雪村の眉が一瞬、強気にしかめられる。しかし寒川は気づくことなく、わざとらしいため息をついて話し出した。

『じゃ、手短に言いますけど』

『お願いします』

『山手線でね、朝の通勤ラッシュですよ。警察とか、公務員の人たちはどうか知りませんけど、オレたちサラリーマンは電車にぎゅうぎゅうに詰め込まれて会社に出勤するんです』

 藤江は自身は車通勤だが、公務員だって電車通勤をしている者が大半だろう。そうは思っても沈黙を守る藤江に、寒川はおおげさに声を上げた。

『あの立ってる場所もないくらいのヤバさ、わかります? ドアだって閉まらないくらいに、ぎゅうぎゅうに押し込められて……、ほんっとキツいわけですよ。でさあ、そんなときにですよ、あいつらがのこのこと乗り込んできたわけ』

『この写真――松崎祐理さんと、この子は祐貴くんという名前ですけど、この母子のことですか』

『名前なんか知るわけないじゃないですか』

 雪村の言葉に、寒川は吐き捨てるように言った。

『とにかくその写真の人ですよ、えっと――マツザキさん? 何詰め込んでんのってくらいでっかいトートバッグ抱えて、挙げ句、ぎゃあぎゃあ泣いてる赤ん坊連れてるじゃないですか』

 マジ、勘弁してくれよって話ですよね――寒川は嫌な顔で続ける。

『でさあ、でも乗ってきちゃったもんはしょうがないから、こっちも一応我慢してんだけど。うるさいからイヤホンで音楽聞いてさ。そしたら急に何かくっせえな、と思って。そいで、うるせえ赤ん坊のほうを見たんですよ。そしたらあいつ、何してやがったと思います?』

 さあ、と雪村が気のない返事をする。寒川は、一層声を張り上げた。

『ゲロしてやがったんですよ、そいつ。オレのスーツの腕らへんに。もう、マジ勘弁って感じで、だってこれから会社行くってのに、ゲロくさいスーツで行くなんて絶対無理でしょ』

『それであなたはどうしたんですか?』

 大体の予想は付いたが、辛抱強く藤江は聞く。

『どうしたって、弁償しろって言って、名刺渡してやったんですよ』

 どうだと言わんばかりの顔で寒川が顎を上げる。

『そうですか』

 被害者が寒川の名刺を持っていた理由は分かった。そして、弁償できなくて済みません――と、裏に書かれていた言葉の意味も。

 隣で雪村が小さく息をつく。藤江は写真を引っ込めた。この男の言動の善し悪しは別として、松崎祐理の事件と関係があるとは言えないだろう。これ以上話を聞いても仕方がない。

『スーツだって、一万や二万の安いやつじゃないですよ。クリーニング代にしたって――』

『お話は判りました。ご協力ありがとうございます』

 続く話を遮って、藤江が帰ろうとする。しかし、寒川は不満そうに二人を呼び止めた。

『ちょっと待ってください、オレの弁償の話はどうなるんですか? ちゃんと警察からそのマツザキって人に言ってもらえるんでしょうね?』

『……松崎さんと祐貴くんは死亡しました。あなたの名刺があったので、お話を伺いに来ただけです』

 少々冷たくも聞こえる声音で、雪村は告げる。

『無理心中です』

 さすがの寒川も驚いたように目を見開いている。それ以上はやめておけ、そんな意味を込めて藤江は雪村の肩を叩き、退散を促す。しかし、寒川が驚いたように見えたのは、どうやら別の理由らしかった。

『じゃあオレのスーツは誰が弁償してくれるんですか』

 ややあって、そんな叫び声が藤江の背中に浴びせられたからだ。


     *


『 title 疲れちゃった
 電車のサラリーマンに、祐貴がちょっとミルクを吐いた。電車が揺れて、お腹押されちゃったみたい。出かける前におっぱいあげたのも悪かったんだと思う。私より、ずっと若い男の人だった。みんなが見てる中、すごく怒られて、弁償しろって名刺渡されて。
 外へ出るとろくなことがないな。ああ、死にたい。けど、祐貴に申し訳ない。
 弁償って幾らくらい渡せばいいんだろう。クリーニング代くらいじゃだめなのかな――』


 そんな文章のあとに、載せられた一枚の名刺。その持ち主が、この寒川俊太だった。

「だから、言ったでしょ、あの女、キチガイなんですよ!」

 憔悴しきった顔で寒川は喚いた。

「あんたも知ってるでしょう! 心中だか何だか知らないけど、はっきり言って、オレは何の関わりもないですよ、それなのにオレのせいにして、当てつけみたいに死にやがって!」

「落ち着いてください」

 藤江が言うと、寒川はその場にぺたんと座り込んだ。そして、

「オレが殺したわけじゃないのに、それなのに……」

 と、今度は泣き始める。寒川のポケットの中の携帯がうるさく鳴り響いている。

「どうしたんですか」

 いま出勤してきたらしい雪村が、藤江を見つけて駆け寄ってくる。

「ひと月前の無理心中の件だ」

 藤江は手短に言って紙を渡す。

「これは、誰かのブログですか……」

 雪村が息をのむ。一目見て状況を飲み込んだようだった。嗄れた声で寒川は叫んだ。

「あの女、ブログでオレの名刺を晒してたんですよ! 無理心中はオレのせいだって。オレが弁償しろって言ったから死んだんだって! それがネット上ですげえ拡散されて、オレが叩かれて――ねえ、これって名誉毀損ですよね! どうにかしてくださいよ!」

 最後はすがるように寒川は言った。面倒なことになった、と藤江は顔をしかめた。


     *


 ネットに晒すぞ――それは現在流行の脅し文句である、という表現は不謹慎だろうか。

 しかし、昨今メディアを騒がせる事件に、その「晒し」という行為が関わっていることを、いくらネットに疎い藤江も理解している。

 晒し、というのは、例えばこういったことだ。

 電車の優先席で騒いでいる若者たちや、それから禁煙であるはずの場所で煙草を吸っている人――つまりは迷惑行為をしている人間だ――を、見た、怒れる一般人がこっそりと写真に撮り、ネットに流す。この人は、こんな場所でこんな迷惑行為をしていましたよ、ひどいですよね――そう言って、不特定多数の目に触れさせる。

 猫も杓子もネットをする時代、その影響は計り知れない。当然、迷惑行為をした人間は「叩かれる」。つまり、法律の外で社会的制裁が与えられるのである。

 それは個人による社会正義の実現と言えば聞こえがいいだろうか。

 確かに社会の中で、迷惑行為というものは見て見ぬふりをされる傾向がある。なぜか。

 答えは単純だ。皆の守るルールを破り、迷惑行為をするような輩と関わり合いになることなど、できるだけ避けたいと思うのが普通だからだ。

 よほどひどい行為ならば、警察を呼ぶというのも手ではある。

 しかし、現場が電車内なら、すぐにこちらも駆けつけるというわけにはいかないし、煙草程度ならば、到着までにその人がどこかへ行ってしまう可能性も高い。その上、よしんば間に合ったとしても、たいした罪にもならずに、注意だけで終わりということのほうが大半だ。

 それならば、ということなのだろう。迷惑行為を褒め称える人間はいない。写真をネットに流せば、その人物を批判する声が集まり、もしもその人物を知る人でもいれば、効果は格段に跳ね上がる。

 罪にもならないような迷惑行為に、「晒し」がもたらす代償は大きい。時に「晒された」彼らは仕事を追われ、家族や友人の信頼を無くし、家さえも引っ越さなければならないケースも存在する。

 それもたった一人、社会正義に溢れた「誰か」に、迷惑行為を見られてしまったというだけで。

 もし、これがテレビや新聞の報道ならば、対象者の人権に配慮し、顔にモザイクをかけるなり、声を変えるなりの配慮がなされるだろう。加えて、もし事実関係を正したいのなら、取材者は明らかだ。訴え出ることもできる。

 しかし、ネットに「晒された」場合、その晒した「誰か」は完全に「誰か」のままである。

 当然、厳密に言えば「晒し」という行為は名誉毀損や肖像権の侵害に当たるだろう。

 しかし、現実問題として、警察が個人のそういった問題を捜査することはほぼない。警察も国民の血税で雇われている公務員組織なのだ。多数の利益になり得る案件から優先順位をつけざるを得ない。

 寒川の場合も、個人の問題と言えばそうである。しかし、そこには藤江たちを動かすに十分な問題があった。

 それはネットに上げられた名刺に会社名が映っていたことである。それからもう一つ、騒ぎ続ける寒川の身元引受人として現れた人物が、T社の顧問弁護士だったことであった。

「ゆりかごからお墓まで――ですか。確かにそんなこと言ってるのに、社員が無理心中の引き金を引いたなんてことになれば、すごいイメージダウンですよね」

 弁護士から渡された名刺を弄びながら、雪村が肩をすくめる。

「見てくださいよ。母子無理心中って検索するだけで、こんなに寒川さんの名前が出てきますよ」

「……寒川が無理心中を引き起こしたわけじゃないだろう」

 雪村の操る画面をちらと見て、藤江は答える。ずらっと並んだ文字の中には、寒川を非難する向きもあれば、ノイローゼの母親が悪いという意見もある。

 T社としても、寒川の首を切ることができれば切りたいのかもしれないが、事実関係のない者に処分を科すことなどできない。それならば、社としては事実無根、名誉毀損を訴えるしかない。弁護士によって提出された被害届は、そのうちの一手であろう。

「でも、どうして今頃になって……。祐理さんが亡くなってからもう一ヶ月ですよ」

「たまたま、いま見つかって騒ぎになっただけだろう」

 藤江がブログのコピーを読み返していると、雪村の向かいでパソコンを操っていた菊池がつぶやいた。

「当該ブログは、既に削除済みみたいですね」

 そう言って、再び太い指で軽やかにキーを打ち込み始める。菊池はサイバー専門官を目指す生活安全係の刑事で、三人の子供の父親だ。

 どっしりとしたその体と、愛嬌のあるドングリ眼のミスマッチが女性警官たちに人気で、署内のマスコット的な存在でもある。

「弁護士さんが削除要請をしたと言ってたんですよね? なら、それが通ったんでしょう」

「削除要請ってのは何だ」

 藤江が尋ねる。

「ええとですね……」

 何と言えば、藤江に理解してもらえるだろう――まったく悪気はない菊池の黒目が、くるんと天井を見つめる。

 自分の携帯の待ち受けも変更できない藤江は、黙って答えを待つしかない。しかし、すぐに彼の黒目の位置は元通りに、藤江を映した。

「えっと、ブログを運営している会社があるわけですよね。その会社が管理責任を負っていて、不適当な記事が載っているという判断があれば、管理者権限でそのブログを削除して、閲覧できなくするわけですね」

「じゃ、もう問題は無いってわけか」

「いや、そうでもないですね……。相当、炎上してるし、魚拓もあるみたいですし」

 後半は独り言のように言う。

「魚拓って、釣りをする人が、魚の型を取る?」

 今度は、雪村が聞き返す。

「いえいえ、違いますよ」

 菊池は笑って、パソコンの画面をこちらに向けた。

「例えば――見てください。これが松崎祐理のブログの魚拓です。簡単に言うと、これを見た人が、個人でウェブ上にこのブログを保存してるってことですね」

 幼稚園児でもわかるようにかみ砕きました、といった満足げな顔で菊池は説明する。しかし、藤江の眉間の皺が深まったことに気がつくと、慌てて言葉を添えた。

「つまり、ネット上ではまだ寒川俊太の名刺が閲覧可能です。けど、その情報についてはブログの管理会社の管轄ではないので、こちらが見つけ次第、通報して消していくより他はないかと……」

 それはもちろん僕が対処します、と丸い顔に浮いた汗を拭う。

「そうか」

 藤江は頷いた。

「じゃ、炎上ってやつも――」

「もちろん、本当に何かが燃えてるわけじゃありません。ネット上で騒ぎになることを、炎上という言葉で表すだけで」

「道理でうちの火災犯係が出ないわけだ」

 ネットスラングというやつだろうか。藤江が精一杯の皮肉を言う。面白くないですよ、と菊池がぼそりと突っ込む。それに知らぬふりをして、藤江は言った。

「雪村。松崎祐理のパソコンを提出してもらう。夫の居場所を調べて、訪問を取り付けとけ。実家は――遠かったか? 都内にいると助かるが」

「引っ越したかもしれないですね」

 無残な遺体を思い出したのだろう。雪村の顔が曇る。しかし、その言葉のあとに続いたのは意外なつぶやきだった。

「……相当追い詰められてたみたいですけど、でもそんなことをする人に見えませんでしたけどね」

「誰がだ?」

「誰って、松崎祐理ですよ……。そりゃ、会ったことはありませんけど」

 藤江のしかめっ面に、慌てて雪村は弁解を添える。

「気になって、ちょっと調べたんです」

「調べるって――」

「別に、警察資料とかを漁ったわけじゃないですよ」

 雪村は子供のようにぷっと頬をふくらます。

「ネットです。ブログの残骸とか、フェイスブックを見ただけで」

 そんなことをして何になるんだ、そう言いたげな視線に言い訳するように雪村は言った。

「ふと思い出して検索しただけですよ。姪たちに――久しぶりに姉に会って、何か考えさせられたっていうか。子供ってすごく可愛いじゃないですか。それなのに」

 感情を飲み込むように息をつく。

「それなのに、あんなに可愛い赤ちゃんを道連れに、どうして心中なんてしてしまったんだろうなって、そう思って……」

「考えても仕方がないだろう」

「そうですけど」

 雪村は視線を落とす。

「義理の妹さんと仲が良いみたいで、事件の前日まで楽しそうにやりとりしてたりして……。どうしてですかね」

 これも新人刑事の通る道だ、一ヶ月前にも持った感想を抱き、松崎祐理の夫の連絡先を探す雪村を見ていると、菊池がふと声を上げた。

「和田早苗さんって、この人かな。義理の妹さんのツイッターがあるけど」

「あ、そうですね……、ほら、同じ年に生まれた赤ちゃんもいるんですよ」

 雪村が顔を上げる。

「未来くんだね。けど、誰でも閲覧できる状態で、子供の名前まで実名で載せるのはどうかと思うけどねえ。犯罪利用の温床にもなるってのに」

 ぶつぶつ言いながらキーを叩く。そしてあ、とわざとらしい声を出した。

「あーあ、これはいけないなあ。区民劇場のショーのチケットまで映してる。それも時間や席番号までバッチリ。『ママといっしょ』ってあれかぁ、夕方からやってるテレビの……」

 いけないと言っているのに、面白がっているような声で菊池は憤慨する。

「まったく、意識がない人が多すぎるんですよ。ツイッターなんて知り合いしか見てないから大丈夫、だなんて、どこから出てくるっていう安心感なんですかね。居場所を特定できるって、すごい怖いことなのに」

「警部」

 電話を掛けていた雪村が藤江を呼ぶ。

「松崎祐理の夫に確認したんですが、彼女のパソコンは和田早苗――彼女の義理の妹が持っているそうです」

「そうか」

 藤江は腰を上げた。

「住所メモっとけ。昼飯食ってから、取りに行くぞ」

「はい」

 雪村が慌ててペンを動かしながら返事をした。


     *


「警部……」

 腹を満たしてからの助手席はどうしても眠くなる。閉じかけた藤江のまぶたを、雪村の声が遮った。

「あの、赤ちゃんや子供が、電車とかスーパーで泣いてたら、どう思います?」

「……うるさいと思うかどうか、ってことか?」

「ええ」

 浮かない顔で、雪村はハンドルを握っている。和田早苗のマンションへは車で二十分ほどの距離だった。

「まあ、うるさいとは思うかもしれんが、どうしようもないだろう」

「そうですよね……」

「どうした」

「あの事件の後、姉に会ったんです。で、寒川の弁償の話とか、何となくしゃべってたら……」

 事件のことをあまりぺらぺら話すんじゃない――いつもなら一言添えるお説教を、藤江はため息でごまかす。雪村の声はそれでなくとも重い。

「姉が、わかるなあって言ったんです。いまの社会の中で、子供ってものすごく異質なんだよねって」

「異質?」

「ええ」

 雪村は頷いた。

「ほら、いつも見てるものって普通じゃないですか。当たり前だから、見向きもしませんよね。だけど、少子化のせいなのか、それとも生活時間帯が違うからかも知れませんけど、子供ってあんまり見ないじゃないですか。だから珍しいし、どんなものかよくわからないし」

「まあ、そうだな」

 藤江は孫の顔を思い浮かべる。娘の育児に関わらなかった分、孫なんて余計にわからない。

「だから、姉も子供を連れて電車に乗るのとか、すごく怖いらしいですよ。ちょっと大きな声を出しただけで嫌な顔されるし、何か非常識なことしてるような目でジロジロ見られるしで」

 雪村はますます浮かない顔をした。

「だから、ちょっといい気味かもなって思ってしまった自分もいるんです」

「……寒川のことか」

「ええ。スーツが汚れたのを弁償しろって言うのはまだいいかもしれませんけど、通勤時間帯に乗った親子が迷惑だなんてはっきり言うような人ですよ? そんな法律、どこにもないのに……」

 信号のない横断歩道の前で、雪村はブレーキを踏んだ。歩行者が頭を下げ、足早に渡っていく。

「でも、例えば法律で決められてること……、道路の歩行者優先とかは、守る人なんてほとんどいませんよね」

 たいていの場合、車優先だ。それを無視して歩いていようものならば、クラクションを鳴らされたり――運が悪ければ怒鳴られさえするかもしれない。

「法律と現実の違いだな」

 藤江は小さく頷く。法律よりも、慣習のほうが根強い。仕方のないことではある。

「特に日本人は周りの空気に合わせることが何よりってところがありますし」

「……しかし、忘れるな。俺たちは法の番人だ」

 寒川は松崎祐理の背中を押したかもしれない。けれど、法律で証明できる範囲では、その無理心中に寒川は関係していない。

 けれどいま、あたかもその咎があるかのように寒川は責められている。

 それは松崎祐理が誰もが見る可能性のあるブログに寒川の名刺を載せたからだ。そして、他人の名刺を勝手にネットに上げるという行為は、名誉毀損という法律上の罪に当たる。

「けれど、どうしていまさら彼女のブログが見つかったんでしょう」

「だから、たまたまなんじゃないのか」

「でも、何かどうしてもそこが引っかかるんですよね。だってあのブログをたまたま見た人がいるとしても、一ヶ月も前の事件と結びつけるでしょうか。というか、いま思ったんですけど……」

 眉間に皺を寄せ、雪村が言った。

「あのブログは誰に向けて書かれたものなんでしょう」

「誰に?」

 藤江はいぶかる。

「ブログというのは日記のようなものなんじゃないのか? 日記なら、誰に向けたも何もないだろう」

「いえ、だって……」

 交差点の先に、和田早苗のマンションが見える。その駐車場へ向かってハンドルを切りながら、雪村がつぶやいた。

「本当に個人的なブログだったら、鍵を掛ければいいことじゃないですか」

「鍵? インターネット上のものに鍵が掛けられるのか?」

「ええ。自分や限られた人だけが見られるように、パスワードを設定することもできるし、そもそもブログを公開するとか、非公開にするとか、そんなこともできるはずですよ」

「……あのブログは、松崎祐理の個人的なものだったということか」

「何ですか?」

 藤江の沈黙を気にして、雪村が聞く。

「いや……」

 今朝始まったばかりの事件だ。それなのに、なぜか藤江は、すでに決着が付いた事件を後追いしているような感覚を覚えた。

 根拠はない。いうなれば刑事の勘だ。それは目の前の男が犯人だと確信する瞬間や、こいつは誰かをかばっているとひらめく瞬間に似ている。

 しかし、終わった事件を追いかけているような気がする――それは初めての感覚だった。

 死んだ女が一ヶ月前に残したブログ。そこに載せられた名刺。それから、いまになっての寒川俊太の「炎上」――。雪村の言う通り、偶然、と片付けてしまってはいけないような気がする。

「行きましょうか」

 考え込む藤江を促し、雪村が先に立つ。

 ずいぶん立派なマンションだ。管理人に警察手帳を見せると、エレベーターまで案内してくれる。閉のボタンが押される。そのとき、藤江のポケットの携帯が鳴った。

「何だ」

 答えると、菊池の焦った声が飛び込んできた。

「いま、どこです?」

「和田早苗のマンションに着いたところだ」

 藤江が答えると、ああ、と小さなうめきが聞こえた。

「すいません。ぼくがちゃんと見れば良かったんですけど」

「何だ」

 エレベーターから降り、和田――そう記された表札の前で藤江は立ち止まる。

「彼女のツイッターに『ママといっしょ』のチケットが載ってたって言ったじゃないですか。あれ、よく見たら日付が今日の二時からで……」

 すいません、と菊池はもう一度言う。

「いま、ちょうど二時前ですね」

 隣で聞いていた雪村がため息をつく。

「ってことは、無駄足だったってことですか」

「いや、そうでもないぞ」

 胸騒ぎを覚え、藤江は中を窺った。通路側の小さな曇りガラスからは明かりが漏れている。

「……いるぞ」

「お兄さんから連絡が行ったんでしょうか。それでわざわざ予定をキャンセルして待っててくれたとか」

「パソコンを渡すためだけにか?」

「そうですけど……」

 雪村が首をかしげる。胸の焦燥感の正体を知らぬまま、藤江はインターホンを押す。ややあって、はい、と中から声が聞こえた。藤江はちらりと雪村と視線を合わせる。

「目黒署の藤江と申します。少しお話を伺いたいのですが――」

「……何でしょう」

 ドアスコープから確かめるような物音がして、そのあと中から若い女性が顔を出した。

「和田早苗さんですね」

 藤江と雪村の警察手帳を無言で見つめ、早苗は頷いた。

「兄から連絡がありました。祐理ちゃんのパソコンですよね。いま用意しているので中へどうぞ」

 やっぱり、連絡が行ってたんじゃないですか、と言いたげな視線で雪村は振り返る。藤江は無言で玄関に上がった。

「お邪魔します――あら可愛い」

 リビングの床の上で、赤ん坊がこちらを見上げている。

「何ヶ月なのかな?」

「まだ五ヶ月です」

 キッチンからお茶を運びながら早苗が答える。

「祐貴くんと二ヶ月違いで」

「……祐理さんのこと、ご愁傷様でした」

 雪村の声に憂いがかかる。お気遣いありがとうございます、早苗も小さく答え、椅子を勧めた。そして、棚からピンク色のノートパソコンを出してくる。

「ご用は、これでしたよね」

「そうです」

「充電はしておいたんですけど、動くかどうか……」

「起動したりはなさってないんですか」

「ええ、私、機械音痴なもので。いまはパソコンがなくても、スマホで何とかなるでしょう。なので……」

 ちらり、と早苗が時計を見上げた。二時五分前。胸騒ぎの手がかりを得ようと、藤江は何気なく見えるよう、尋ねた。

「……何かご予定があったのでは?」

 その問いに、なぜか早苗の動作が一瞬止まる。やはり何かある。藤江の予感は確信に変わる。しかし、すぐに早苗はにこやかな笑顔を返した。

「ええ、実は今日、『ママといっしょ』のショーを見に行く予定だったんですけど、息子のお昼寝が長引いちゃって。せっかくだったけど、諦めたんです」

「あ、変な時間に起きちゃうと、夜寝られなくなって困ったりするんですよね」

 私の姉に子供がいて、と雪村が口を挟む。

「そうなんですよ。それに珍しくよく寝てるものだから、起こすのが可哀相になっちゃって」

「とはいっても、チケットだって無料じゃない。何か他に理由でも?」

「警部」

 詰問するような口調になる藤江に、雪村が困ったように目配せをする。

「他に理由、ですか」

 早苗も困惑気味に首をかしげる。しかし、それがうわべだけの表情であることは、藤江の目には明らかだ。

 何かが起きている。いや、起きてしまった。そう刑事の勘が告げている。でもそれがなにかわからない――。

 さらに早苗を問い詰めようとしたとき、再びポケットの携帯が鳴った。

「どうぞ、お出になってください」

 なぜか少しほっとしたように、早苗が勧める。この女は何かを隠している――そう思いながらも藤江は廊下に出て、携帯を耳に当てる。瞬間、緊張した菊池の声が飛び込んだ。

「いま、連絡があったんですが――」

「何だ」

 胸騒ぎが現実のものとなった、そう藤江が直感したのと、菊池の声は同時だった。

「寒川が、現行犯逮捕されました。銃刀法違反です。親子連れしか入れない会場にチケットも持たずに乱入しようとしたそうで――」

 藤江は思わず唇を噛み締めた。そうか、そういうことだったのか。理解と共に、悔しさが胸に落ちた。気づいていたなら防げたはずだ。それなのに、どうしてもっと早くに気づかなかったのだろう。

「……和田早苗が行く予定だった『ママといっしょ』の会場、だな」

「ええ。区民劇場ですけど……、警部、なんでわかるんですか?」

 菊池が間抜けな声を出す。藤江は携帯を握りしめた。

「菊池。和田早苗は予定をキャンセルして家にいた。彼女のツイッターに、今日の予定のほかにも居場所を特定できる情報は無かったか」

「待ってください……」

 タイピングの音が響く。そしてすぐに音はやんだ。

「ええ、和田早苗はほかにもいろいろ書いていますね。例えば明日は子供を区の五ヶ月健診に連れて行くとか、それから明後日は赤ちゃんマッサージの教室に予約を入れたとか――」

 そもそも罠は仕掛けられていたのだ。藤江はさらに聞いた。

「彼女が、松崎祐理のパソコンを譲り受けたという記述は?」

「ええと――はい、ありますね。そのチケットの記事のすぐ前ですが」

「そうか、わかった」

 どうしたんですか――菊池の声を無視して、藤江は電話を切る。そして、リビングに戻ると、早苗の前に腰掛けた。

 会話が漏れ聞こえたのだろうか、視線がつと逸らされる。やはり早苗は知っている――そう確信し、藤江は口を開いた。

「寒川俊太が区民劇場で現行犯逮捕されました。劇場に乱入したそうです」

「区民劇場って――」

「和田さんが行く予定の場所でしたね」

 まさか、といった表情で雪村が早苗を見る。早苗は微動だにしない。藤江は言った。

「あなたが仕掛けたんですね」

「どういうことですか、警部」

 一人、話についていけない雪村が、藤江と早苗を交互に見つめている。早苗はやっと小さく口を開いた。

「そんなに怖い顔しないでください。仕掛けたって、一体何をですか」

「全部です」

 藤江は祐理のものだったパソコンに手を置いた。

「区民劇場へ行く――あなたはツイッターにそう書いて、寒川俊太をおびき寄せた。そう書けば、寒川は来ると知っていた。なぜなら、いま寒川は窮地にあるはずだからです――会社の名刺がネットに出回り、携帯は鳴り止まず、会社にすら抗議の電話がいくことで」

 早苗は表情を崩さぬまま、赤ん坊をあやしている。藤江は続けた。

「パソコンに触れていないというのは嘘ですね。祐理さんのブログをネットに広めたのは、あなたでしょう。これは私の推測ですが、祐理さんはブログに鍵を掛けていたはずだ。しかしその鍵をあなたが解き、不特定多数の目に触れさせ、寒川を『炎上』させた」

「早苗さん――」

 本当ですか、そう言うように雪村の目が早苗を見つめる。

「……何のお話でしょう」

 静かに、けれどやはり目は伏せたまま早苗は言った。頬が少しが引きつっている。藤江の視線に負けるように、早苗は顔を上げた。

「ええ、仰る通り、パソコンに一度も触れていないというのは嘘です。立ち上げて、使ってみようとしました。けれど、私、本当に機械音痴なもので。動かしてみようと、あちこち触ってみたので、そのときに何かしてしまったのかも知れません。でも、仕掛けたとか、何とか、そんなことでは断じてありません」

「そうですよ。大体、早苗さんが寒川のことを知っているとは――」

「ブログの鍵を解いたなら、知っていて当然だろう」

 藤江は早苗から視線を外さずに言った。

「あなたはお兄さんから祐理さんのパソコンを譲り受け、中のブログを見つけた。そして、寒川のことを知り、怒った。あなたの目には、寒川が祐理さんを殺したと映ったのかもしれない」

 咳払いをする。早苗を糾弾することが正しいのか、ふと胸に浮かぶ思いに見ぬふりをする。

「だから、罠を仕掛けたんじゃないですか。誰にでも見られるツイッター上で、祐理さんのパソコンを持っていることを明かし、自分の居場所を特定できるものを載せて。その上で、祐理さんのブログを公開した。それが誰かの目に留まるように、掲示板か何かに書き込んだのかもしれない。そして、思惑通り、寒川は炎上した」

 そうなればあとは簡単だ。藤江は無表情を装う早苗を見つめた。

 ネットの炎は、現実まで燃え広がった。追い詰められ、必死になった寒川はネットの情報をさかのぼり、きっと早苗に辿り着くだろう。

 祐理と親しく、パソコンも譲り受けた人物。こいつだ――短絡的な思考で、寒川はそう確信したに違いない。

 そしてもしかしたら、早苗の行く場所に――親子ショーが開催される区民劇場に、子供の検診会場に、寒川は現れる。さらに運が良ければ寒川はそこで騒ぎを起こすかもしれない。そうしたらネット上ではなく、現実の彼の身に、制裁が下されるかもしれない――。

「偶然に頼った――いや、頼りすぎたような仕掛けです。けれど、あなたはそれでも寒川に報復をしたかったのじゃありませんか」

 祐理が死んでしまう一因を担った男に。それでものうのうと生きている寒川に。

 藤江は瞬きもせずに早苗を見つめる。ピンと緊張した糸が二人の間に張られている。

 しかしややあって、彼女は緩く首を振った。

「何を言われても、身に覚えのないことには頷けません。寒川さんのことは、祐理ちゃんに相談されていたので知っていますし、その人がネットで炎上したという話も、兄からの電話で知っています。けれど、私が何か仕掛けただなんて、そんなこと。それどころか、いま、刑事さんにお話を聞いて、ぞっとしました。もし、予定通りに区民劇場へ行っていたらと思うと……」

「でも、あなたは行かなかった」

「ええ」

 でも、それは子供のお昼寝が長引いてしまったからです――早苗は曖昧に笑って首をかしげた。それとも刑事さん、ツイッターに行く場所を載せることは、何かの罪になるんでしょうか。

「いえ……」

 藤江の隣で、雪村も俯いた。証明のできない思惑。偶然の積み重なりが招いた、報復。

 もし、ブログを公開したのが早苗だと証明することができれば、寒川への名誉毀損で訴えられるかもしれない。

 けれど、現実的な問題として、そもそもブログに名刺を載せたのは松崎祐理であって早苗ではないし、それも、寒川が現実に罪を犯し、逮捕された今となっては、会社がいつまで彼をかばうかもわからない。

「ご用はそれだけでしょうか」

 あー、と楽しげに赤ん坊が声を上げた。勝ち誇ったような笑み、そんなふうに見えてしまうのは穿ち過ぎだろう。二人の刑事はパソコンを手に、無言で玄関へ向かった。徒労感が足を重くした。

「ご苦労様でした」

 早苗が会釈する。履きつぶした革靴に足を入れ、藤江は立ち止まった。

 このままでは終わりにすることができない。何か言うべきことがある――藤江は意を決し、もう一度早苗に振り返った。

「……寒川が銃刀法違反で逮捕された、ということは、たぶん彼は刃物を所持していたんでしょう」

「そうですか」

 何が言いたいのかという表情の早苗に、藤江は向き合った。

「刃物を持って劇場へ乱入する――彼がそこまで追い詰められているなんて、あなたは思わなかったのかもしれない。いや、それ以前にあなたは行かなかったのだからいいでしょう。けれど」

 藤江は低く言った。

「現実に他の親子に危険が及んだ可能性があったのですよ」

 はっと息をのむ音。その言葉に、初めて早苗は怯んだような表情を見せた。

「だから、さっきから言っているでしょう。私はそんなことは知りません」

 早苗は言い切り、口を閉じた。その先に続く言葉があるはずだ――経験からの感覚に、藤江は静かに待った。すると、思った通りに、けれど、と小さな声で早苗は続けた。

「……じゃあ、どうすればよかったんですか」

「どうすればよかった、とは」

 慎重に藤江が聞き返す。早苗はきっと目を上げ、強い声で言った。

「刑事さんだって分かってるでしょう。祐理ちゃんのことです。祐理ちゃんを殺した人のことです」

「でも祐理さんは、自殺で――」

「いいえ、違います」

 雪村の言葉に、早苗は首を振った。

「祐理ちゃんは、たしかにノイローゼでした。不安定で、辛そうで、でもそれは祐理ちゃんのせいじゃないんです」

「どういうことでしょう」

 藤江が聞くと、早苗は赤ん坊を抱きしめたまま俯いた。

「刑事さんは、赤ちゃんを連れて外へ出ることがどれだけ大変か、知っていますか? 例えば買い物一つ行くのだって、おむつやおしり拭きやティッシュや……、たくさん荷物を抱えていかなくちゃならないし、それに子供だって、いつむずがるともしれない、時限爆弾みたいなものです。幸い、うちの子は大人しい方ですけど、祐貴くんは――大変な子で」

 もういない赤ん坊を思い浮かべたのだろう。目に涙が浮かぶ。

「親の育て方どうこうじゃなくって、大変な子はいるんです。いくらあやして抱っこしても泣きわめいたり、なかなか機嫌が直らなかったり。それが幼稚園や小学校の子だったら話も違うかもしれません。しつけの問題も出てくると思います。でも、赤ちゃんにまでそんなことを求められたって、無理なものは無理なんです」

 何かにせき立てられるように、早苗は続けた。

「でも、赤ちゃんに関わったことのない人って、きっとそれがわからないんです。だから、親がちゃんと泣き止ませろ、迷惑だ、だなんて勝手なこと言って。祐理ちゃんもそうでした。一度スーパーで買い物中に見知らぬ人に怒られて以来、いつもびくびくしながら急いで用事を済ませるようにしていて……。泣き止まない祐貴くんを抱いて、祐理ちゃん、言ってました。『この子が泣き止まないでいると、すごく冷たい目で見られる』『あの人たちの中にいると、私はこの子を殺してでも黙らせなきゃならないような気がしてくる』って」

「そんな、殺すだなんて……」

 物騒な言葉に、雪村が息をのむ。しかし、早苗は首を振った。

「失礼かもしれませんけど、子供のいらっしゃらない方にはわからない感覚かもしれません。でも、そういうふうに感じること、私もありますから」

 少しの沈黙があった。赤ん坊が不満げに早苗の髪を引っ張る。思い出したように早苗は続けた。

「……だから、祐理ちゃんは外へ出るのが怖くなって。祐理ちゃんは真面目な人だったんです。だから、非常識だと思われることに人一倍敏感で。だけど、どうしても赤ちゃん連れで出かけなきゃならない用事もありますよね。普段の買い物とか、検診とか、それから……」

「ラッシュアワーの通勤電車に乗ったときのこと、ですか?」

「はい」

 濡れた瞳が強く光った。

「あの日、祐理ちゃんは会議の資料を届けて欲しいって兄に頼まれて、仕方なくラッシュアワー時の通勤電車に乗ったんです。祐理ちゃん、兄の前では元気そうに振る舞ってましたから。でもそのときに……」

 寒川が彼女を怒鳴りつけた。そもそもラッシュアワーに子供連れなんて非常識もいいところだ――そんな電車内の皆から放たれる空気が凝縮して、一気に爆発したみたいに。

 迷惑だ非常識だうるさい死ね――視線が一斉に彼女を襲う。いたたまれなくなりながら、彼女は赤ん坊を抱いていた。ごめんなさい、ごめんなさい、と謝り続け、どうか泣かないでちょうだいね、そんな思いで赤ん坊を力一杯抱きしめて。

「祐貴くんが吐いたのだって、祐理ちゃんはすごく謝ったと思います。もちろん、それで済んだと思ってるわけじゃなくて、弁償だってしようとしてて、私もそう相談されました。でも問題はそこじゃないんです」

「どういうことですか」

 早苗は赤ん坊を抱きしめ直した。

「刑事さんはごらんになったでしょうか。祐理ちゃんのことで、ネットではたくさん意見が飛び交ってます。寒川さんを非難するものも――もちろん、反対に擁護するものもあります。赤ちゃんを連れて通勤電車に乗るなんて非常識だとか、もっともらしく赤ちゃんが可哀相だから乗るべきじゃないとか、空いている時間に乗るべきとか、タクシーを使えとか」

 早苗は言葉を切った。ずっと堪えていた、とうとうその目からは涙がこぼれ落ちた。

「私は皆さんに聞きたいんです。じゃあ、祐理ちゃんはどうすればよかったんでしょうか。最初から、兄の頼みを突っぱねればよかったんでしょうか。それとも祐貴君を一時保育に預けてから行かなきゃならなかったんでしょうか。公共の乗り物に乗ることが非常識といわれてしまうなら、祐理ちゃんはどうしたらよかったんでしょう。教えてください、通勤電車に母子連れが乗るには、どんな理由なら許されるんですか。突然親が倒れたとか、お葬式とか、そんな理由ならあの人たちは許すというのでしょうか」

 でも、個人の理由なんて誰にもわからないですよね――悲鳴のような声が小さく漏れた。

「教えてください。タクシーを使えというなら、どうして子供連れが嫌な人たちがタクシーを使わないんですか? 毎日のことだからですか? それとも私たちは自由な時間もお金もあるだろうと? でも、そこまで言うなら、究極的には毎日働いているのだって個人の都合ですよね? それなのに、あの人たちはどうして自分たちを常識の側だと言い張るんでしょう」

 いつのまにか早苗は、子供連れを私たち、と、寒川の側をあの人たち、と呼んだ。そして言い切った。

「子供が生まれてから、祐理ちゃんはあの人たちに少しずつ殺されていったのだと思います。迷惑だ、非常識だ、そんな目で見られて責められて――あなたたちがそれを社会というのなら、祐理ちゃんは社会に殺されたんです」

 藤江と雪村はのまれたように立ち尽くした。

「それなら社会に殺された、その報復は一体誰がしてくれるというのですか」


     *


「あ、お父さん? 悪いんだけど、買い物に時間がかかっちゃったから、家まで子供たちを送ってきてくれる?」

 妻と一緒にデパートに出かけた娘から、やっと電話が掛かってきたのは、もう夜の七時を回った頃だった。

 幼稚園児二人と家に残された藤江は、何をして過ごしたものかもわからないまま、五時頃にはもう風呂に入り、六時には作り置きの夕食を食べさせ、風呂と夕食は順序が逆だったな――と反省しながらやっとのことで食べこぼしを掃除し、再び汚れた洋服を着替えさせたところだった。

 しかし、娘の家まで送れ、そう言われても、車はその本人たちが乗って行ってしまった。どうすればいいんだ――そう問うと、バスがあるからバスに乗れという。

「バスでお家に帰るか」

 ため息をついて電話を切り、そう提案すると、航太と結は喜んで靴を履いた。

「おじいちゃん、バスわかる?」

「ああ、お母さんに聞いたからな」

 夜の道を、二人の手を繋ぎゆっくりと歩いて行く。飛び出しちゃうから、絶対に手を繋いでね、と娘に念を押されたのだ。

 確かに子供の面倒を見るのは大変だ。すぐに走り出そうとする子供達を注意しながら、藤江はぼんやりと考えた。けれど、ノイローゼになるほどのこととも思えない、そんな考えも一方で浮かぶ。

 早苗は子連れがどんなに大変なものか訴えた。祐理はその重さに押しつぶされ、幼い命を道連れにしてしまった。けれど、電車に乗って白い目で見られるくらい、何だというのだ。

 赤ん坊と関わったことがなければわからない、そう言われても、育児と仕事のどちらが大変か――そう聞かれれば、当然仕事だと言い切れる傲慢さが藤江の中にはあった。

 寒川の訴えていた名誉毀損の件は、あのあとあっけなく片が付いた。

 刃物を持って子供連れの中に乱入する――寒川が逮捕されたことで、T社も彼の人間性について擁護できなくなったのだろう。会社としては、被害届を出したことで面目は保てるので、それ以上、祐理の遺族に負担を掛ける進展は望まないとのことだった。

 逮捕された寒川の処分はどうなるか、まだ未定だと聞く。しかし、もし解雇されなくとも、閑職に回されることにはなるには違いない。早苗の言った、「社会に殺された報復」を、社会が仕返したのだ。

 しかし、当の藤江は釈然としない思いだった。逮捕という事態は本人が引き起こしたものとはいえ、果たして寒川に背負わされた罪は妥当なものだろうか。

 否、藤江は首を振った。いま、法の外で裁きが行われようとしている。そして、それを止める術はない。

 けれど、法に仕えてきた者として、それを許していいものなのかと問われれば、否定以外の答えはない。もどかしさばかりが胸に残る結末だった。

 停留所に着くと、すでにサラリーマンが列をなして並んでいた。皆、一様にくたびれた顔をしている。いまごろ帰る人も多いのか――藤江はその列の最後尾に着く。

 しばらく待っている間に、藤江たちの後ろにも人がどんどん連なっていく。すると、航太が興奮気味に前を指した。

「バス、来たよ」

「よし、あれに乗るぞ」

 大きなため息のような音を立て、バスが扉を開く。

「僕、窓のほうがいい」

 航太は乗り込むとすぐに窓側に座る。

「私も窓のほうがいい!」

 結が叫ぶ。

「じゃあ、こっちの席に……」

 そう言いかけたが、どんどん人が乗り込んでくるバスに、子供のわがままを聞く余裕はないようだ。

「二人とも静かに座れ」

 二人がけの椅子に三人で座る。しかし、子供達は窓の取り合いで注意の声など耳に入らないようだ。あまつさえ、靴のままで藤江の膝に上がり、甲高い声でケンカを始める。

「僕だよ!」

「私だよ!」

「静かにしなさい」

「やだ!」

 大騒ぎの末、とうとう窓際をとられた結が泣き叫ぶ。藤江は仕方なく結を膝に抱き上げてあやし――と、その瞬間、ふと水を打ったような周囲の静けさに気がついた。

 ふと顔を上げると、目、目、目。バスに乗った全員の目が藤江を見つめていた。まるで心の底が冷え切るほどに、ぞっとするような、異物を蔑むように光るたくさんの目が。

 うるさいのはどこだ、誰だ、どんなやつだ――藤江が顔を上げるのと同時に、その目は何気なく逸らされた。けれど、一度、その目を見てしまったからだろうか、呪いにでもかかったように、藤江の無意識を突き刺すような、彼らの声はやまなかった。

 うるさい、黙らせろ、こんな時間にどうして子供が乗ってんだ、何考えてるんだあのジジイ、非常識きわまりない、クソが、死ねよ、そのうるさい子供をさっさと殺せよ――。その声に藤江は戦慄した。責めの圧力を感じた。見知らぬ誰かの悪意が、切っ先が容赦なく投げつけられ、わけもわからず、焦燥感だけが体の中で膨れあがった。そのとき――

「おじいちゃん、苦しい!」

 何かが強く膝を蹴った。はっと気がつくと、藤江は手で結の口を強く塞いでいた。

「すまん」

 自分のしたことに驚き、慌てて手の力を緩める。げほげほ、と大きく咳き込んだ結が、涙目で藤江を見上げた。しかし、その藤江の目は孫娘に向けられてはいなかった。

 俺はいま、何をした?

 藤江は恐ろしさに身動きもできずに、自分の分厚い手を眺めた。時には凶悪犯を、大の大人を締め上げることもある、いかつい手。それがいま、どうしてこんなに小さな子供の口を無理矢理塞いでいた? 

 ブルン、と大きくエンジンを吹かし、バスが発車する。動き出した景色に魅入られて、子供達はさきほどまでとは打って変わって、大人しく外を眺めている。

 しかし藤江は未だ自分たちを監視するような、びりびりとした、殺意とも思えるほどの強い視線を感じていた。そして理解した。

 常識と非常識。人間がその二種類に分けられるのなら、子供を連れているというだけで、いま俺は非常識の側にいるのだ。

 結の口を塞いだ手を見つめながら、藤江は無言でバスに揺られた。社会に殺されたんです――そんな早苗の言葉が、聞いたこともない祐理の声で耳奥に響いた。

【完】

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