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二ヵ月待たせて申し訳ありません(謝)
失踪したと思ったか? まだだよ! 遅れたのは仕事のせいだよ! ……というか、失踪するつもりは毛頭ありません。ウォークマンを新調しLALの全曲を自由に聞けるようになった自分に既に死角などないのだわははw
そんなわけで、蓬莱編第五話。また筋道的には脱線しつつありますが、YdmtⅣ初登場の回となります。

さて、それでは第五話の始まり始まり♪
蓬莱編5:新生と相場
 私は今日も鉄を鍛つ。
 罪に苦しむこともなく。
 罰に怯えることもなく。
 ただ約束を果たすため。
 私は今日も鉄を鍛つ。


 ほんの少し前のことだ。
 姦しい出発式が終わり、ようやく月面調査船は打ち上げに入る。
「………………」
 私はそれを黙って見つめていた。
 結果が失敗に終わると分かっていて、黙って見つめていた。
 この月面調査は失敗に終わる。いや……月面調査自体は上手くいくかもしれないが、その途中になんらかのトラブルが起こる。
『別に、パチェの好きにしていいのよ? その代わり、幻想郷は滅んでしまうかもしれないけどね。……ま、運命なんてどう転んでも一緒だから。滅ぶも八卦、滅ばぬも八卦、少なくとも私は進んで滅びを享受するほど、ぬるく生きてはいないつもりだけど』
 そう言いながら、私の親友である吸血鬼は凄惨に笑った。
 私はいつも通り黙殺して、結局黙って見送ることにした。
 滅ぶも八卦、滅ばぬも八卦。
 レミィはともかく、私は月面調査船がどのような運命に見舞われるかは知らない。月面調査船のクルーにも知らせるつもりはない。
 そもそも、未来と過去は同時に存在する立体だ。因果は幻想、順序は主観、時は全方向に無限かつ主観意識の選択も自由。……故に、レミィが知り得た運命をクルーに伝えてしまった時点で、滅びの運命は確定する。
 レミィには『パチェの言うことは相変わらずわけがわからないわ』とのことだけど。
 ともかく……私は、なにもしないことを選択した。
 なにもせず、月面調査船を見送り、幻想郷を守ることを選んだ。
 胸が痛いはずもない。そんなものはとっくに置き去って捨て去った。
 私は魔女だ。魔法使い、パチュリー=ノーレッジ。とっくのとうにそんな感情とは無縁になるほどの長さを生きてきた。
 知識と引き換えに、置き去りにできるものはなるべく捨ててきた。
 と……その時だった。

「あ、こんな所にいた」

 無防備に私に近づいてきたのは、月面調査船のクルーの一人。
 アリス=マーガトロイド。魔法構築の緻密さと精密さで右に出る者はいない……まぁ、私ほどではないけど……と、私は勝手に思っている。
 魔法に実力差など意味はない。個人個人が好き勝手に、自由な発想で極めればいい。
 私は主に知識の集積と実践、魔理沙は弾幕ごっこ、彼女は人形制作……多種多様でジャンルは様々な魔法というおもちゃを好き勝手にいじればいいのだ。
「ったく……謙虚というかなんというか、あの船を作ったのはパチュリーなんだから、もっと表に出てじゃんじゃん宣伝しちゃってもいいのに」
「魔理沙やレミィと違って、騒がしいのは苦手なのよ」
「それは同感だけどね」
 苦笑しながら、アリスは私を見つめて笑った。
 出発時間は刻一刻と迫っている。私と彼女が話すのも、多分これが最後だ。
 感慨はない。空虚もない。ただあるがままに事実を受け止めればそれでいい。
「で……賭けの話だけどね」
「え?」
「だから、パチュリーと魔理沙は私が自律人形を作れない方に賭けたでしょ? なら、私は『私が自律人形を作れる』方に賭けるわ。それで賭けは成立ってわけ」
「成立させて、どうするの?」
「そうね……私が勝ったら、二人に人形を作ってもらう」
 人形。人の形。ヒトガタ。
 アリスほどじゃないけど、媒体としては珍しくない方なので、それなりの数を作ってきたような気がするけど……。
「魔法の媒体じゃなくて、魔法で作った人形よ」
「なんの意味があるの?」
「罰ゲームなんだから、意味なんてないわよ。まぁ……強いて挙げるなら、今回魔導技術を学んでみて『視野を広げなきゃいけない』ってことを学んだだけ」
「視野を広げる?」
「そう。例えば、パチュリーがいくら魔法の天才でも美鈴さんの体術は真似できない。まぁ、仮にできたとしてもパチュリーの趣味じゃないからやらないでしょうけど、それでも個人でやれることには限界がある。思考は行き詰まるし、発想は滞る。……魔法使いとしては、それは致命的なことよ」
 目を輝かせながら、アリスは不敵に笑った。
 それは……多分、私が捨ててきた笑顔だった。
「ま、講釈はともかく……単に二人が作る人形に興味があるだけよ。なにせ、絶対に私じゃ作れないような人形を作るのが確定してるから、今から楽しみだわ」
「……ご期待に添えるものは作れないかもしれないわよ?」
「その時はその時で、『パチュリー=ノーレッジは人形一つ作れない魔法使いだった』ってだけのことで……それはそれで、意外と悔しいでしょ?」
 そう言って、アリスは意地悪っぽく笑った。
 魔法使いだけあって……私のささやかなプライドを刺激する挑発をしてくる。
 少しだけ溜息を吐いて、私は口元を緩めた。
「ふん……大口を叩いたこと、後悔させてあげるから」
「そうそう、その調子よ♪」
 そう言って、アリスは笑いながら手を差し出す。
 一瞬……ほんの一瞬だけ、心が揺らぎそうになった。
 心を殺して差し出された手を握って……私は、いつも通りに笑った。
 笑えたつもりになっていた。
「なによ、その泣きそうな顔は?」
「多かれ少なかれ、成果が出るというのは嬉しいものよ。……月面調査船が飛ぶのは嬉しいけど、騒がしいのは嫌い。ついでに握手は久しぶりだから、複雑な気分ね」
「なるほど。……パチュリーらしいといえば、らしいわね」
 人心に疎い魔法使い。アリスも例外じゃなく、人の心には疎かった。
 輝くような笑顔を浮かべて、彼女は私の手を強く握った。

「じゃあ、またね。……行ってくるわ」
「ええ、また会いましょう。……行ってらっしゃい」

 アリスは手を離し、あっさりと背中を向けて、船に向かって走り出す。
 私は……その背中を見送った。
 胸が痛いはずもない。そんなものはとっくに置き去って捨て去った。
 そう――思いたかった。


 気分は重く、機嫌は悪く、頭は重く、体はだるい。
 夢の内容は覚えていない。いつも通りにベッドから這い出て、溜息を吐く。
「……ああ」
 魔法使いらしく分析しよう。
 胸が痛くて気分が重い。
 制作が上手くいかなくて機嫌が悪い。
 睡眠不足で頭は重い。
 寝不足で体がだるい。
 それでも、この馬鹿げた行為をやめることができないのは。
 罪悪感か、贖罪か、使命か、それとも……ただ、人形作りにはまっただけか。
 いや……分かっている。
 これは、ただの約束だ。アリスが『できる』と言ったのだから自律人形は完成する。
 だから私はこうやって……罰ゲームを前倒しでやっているだけのこと。
 それも言い訳だと知っていた。知っていながら……私はこうして続けている。
「なんでもいいわ……理由なんて、もうなんでもいい」
 投げやりになりながらも、苦笑する。
 月面調査船を見捨てるしかなかった。
 アリスを見捨てるしかなかった。
 幻想郷を守るために見捨てるしかなかった。
 しかし、理由や理屈をつけたところで、心は納得していない。
 納得できないから作る。作りながら考え続ける。アリスなら絶対にやる。絶対に作る。なら、私はどう作る? システムでは勝てないと踏んでおく。ならばアリスが絶対に作らないものを作ろう。アリスが作らないものは? アリスが作ろうとすら思わない下らない人形とはどんなものか? そんなことを考え続けてきた。
 分かっていても止まらない。私の行為はどう考えても無意味だ。こんなものを作ったところで意味などない。それでも……私は、止まることだけは許さない。
 なにかができたはずだった。
 なにかをすれば良かった。
 それでも沈黙を選んだ。アリスより幻想郷が大事だったから、私は口を閉ざした。
 世界と個人を秤にかけて、世界を選んだ。それは当たり前のこと。恋人や家族ならまだしも、ただの他人でちょっとした知り合いの魔法使い。
 世界を選ぶのは当然のことだと……そう納得できればどんなに良かったか。
「仕方ないわよね。……『また会おう』って、言っちゃったし」
 色々な言い訳を理由にしながら、私はゆっくりと起き上がった。
 納得できないままに諦めず、いつも通りに足掻くことにした。


 ぽよん、ぽよん、ぽよん、ぽよん。
 部屋の中を跳ねまわっているのは、蘇ったまりさ。
 いや……なんというか、それを『まりさ』と呼んでいいものかどうか。
「確かに『生まれ変わらせて』とかなんとか言ってたけどさ……これっていいのか?」
「別に構わないだろ? ゆっくりは生き延びることができる。僕も仕事を果たせた。シノブちゃんだって嬉しがってるじゃないか。みんなが得をした、いい商売だったよ」
 幻想郷に最近普及し始めた電気……扱いを間違うと感電する……に思い切り引っかかった霖之助は、ちょっと焦げながらも満足そうだった。
 まぁ……いいのか?
 本当にいいのか? 本人たちが納得していても、私だけは納得しちゃいけないんじゃないかという気分になってしまうんだが。

「ゆゆ~ん、ありがとうお姉さんたち! YdmtⅣはとっても嬉しいよ!」

 部屋の中をぽよんぽよんと跳ね回っているのは、生まれ変わった『まりさ』だった。
 いや……そいつはもう『まりさ』ではない。新たに生まれ変わり、ゆっくりの体を捨て去り、生体アンドロイドへと姿を変えたYdmtⅣ(ワイディーエムティーフォー)……えっと……とにかく、不思議生物から不思議アンドロイドへと進化したのだ!
 アンドロイドとか言ってたくせにYdmtⅣが跳ねるたびにぽよんぽよんと音が鳴る。そのくせ、どこからか知らないが、時折『ヴーン』とか妙な機械音が響く。
 声はゆっくり特有の間延びしたものではなく、ちょっとだけ高い感じの機械音声で、その響きにはちょっとした知性を感じさせられないこともない。
 見た感じ、頬に線が増えただけという気がしないでもないけど。
 正直……店主の野郎が色々言っていたけど、ぶっちゃけどうでもいい。
 私としては今の不思議現象に目を丸くするのが精いっぱいだったわけで。
「なぁ……輝夜さん」
「なにかしら……妹紅さん」
「みんな納得してるみたいなんだけど、私だけ納得できないのはなんでだろう?」
「奇遇ね。私も納得できていないわ。納得は全てに優先するというのにね……」
 そう呟く輝夜の表情は、なんだかちょっとげんなりしていた。
 いくら幻想郷でもこれはないわ。幻想っていうかSF(すこしふしぎ)の領分だろうと、その表情は如実に物語っていた。
 私も、全くの同感である。
「っていうかさ……どうやって動いてんだ、この……えっと、ゆっくり(機)」
「流体アンドロイドだよ。具体的な構造は知らないけど、この機械の体にはとある魔女が作った英知が詰め込まれていてね、液化生物を流し込むと動き出す仕組みなんだよ」
「……かなり曖昧な説明だな」
「僕も具体的には分からないよ。ただ……液化した生物には曖昧な意識しか存在しない。なぜなら肉体という自我を固定させる依代が存在しないからだ。この機械の体は、その肉体を補うための物でね、内部は精密な神経系により構築されている。その神経系に液体生物を流し込み、電極で刺激を与えると液体生物は機械の体を己の体と認識し、自我が復活するというわけだ。ちなみに、燃料は主に電気。動いている間にも自分で発電し、ついでに太陽光発電も行うというハイブリッド設計になってるらしいよ」
「輝夜、コイツなに言ってるんだ? 少なくとも幻想郷の言葉じゃないよな?」
「きっと卑猥なことよ。私たちが分からないと思って卑猥なことを連呼しているに違いないわ……いやらしい」
「……いや、まぁ、こうなると思ったから省略してたんだけどね」
 霖之助はポリポリを頭を掻いてから、思い切り溜息を吐いた。
「とにかく、技術は素晴らしいものだと理解してもらえればいいよ」
「じゃあ、その技術で今度私の釣竿も素晴らしくしてくれよ。大物が釣れても絶対に折れなくて、よくしなって、根がかりもしにくくて、魚を自動的に釣り上げるやつ」
「私はあの流体アンドロイドの可愛いのがいい。えーりんより優しくて、てゐより腹黒くなくて、鈴仙より愛想が良くて、文句一つ言わずに私に絶対服従で、料理がすごく上手で欲しいものはなんでも買ってくれるの」
「無茶を言うな! 欲望丸出し過ぎて、技術も愛想を尽かすよ!」
 ちなみに、輝夜の方はともかく、私の方はしかるべき金を払えばわりと簡単に実現できてしまうことを後に某おでん屋に聞くことになるのだが……それは後の話。
 輝夜の方も『飽くなき男の執念があれば、いずれ実現すんじゃね?』とのことなので、外の世界の技術というのはわりと怖いものなのかもしれない。
 霖之助は大きく溜息を吐いて……YdmtⅣを見つめて不意に目を細めた。
「いや……待てよ。このボディは電気を動力にしているけど、もしも神経系に流れる液化生物を直接燃料にできたら……」
「輝夜、眼鏡ってどうして会話の途中で押し黙ったりするんだ?」
「いやらしいことを思いついたからよ」
「キミたち……ちょっと黙っててもらえるかな? お願いだから!」
 そう言われても、いきなり意味不明なことを言い出したら、普通に頭が小春日和になったことを疑うだろう。輝夜の言うこともあながち間違いではなさそうだし。
 なにやら色々考えていたのか、店主は不意に嬉しそうな表情を浮かべた。
「これだぁ! そうか……この原理を使えば……これならいけるぞ!」
「いけるってなにが?」
「説明はまた後だ。僕はとりあえず店に帰るよ!」
 なにやら興奮した様子で、店主は慌てて部屋を出て行った。
 その後ろ姿を見送ってから……私はそこで裾を引っ張るゆっくり(機)に気付いた。
「ゆゆっ! おねーさんありがとう!」
「……えっと、いや、まぁ……それほど大したことはしてないし……」
 シノブに頼まれただけだし、交渉したのは輝夜だし、治療したのは店主の霖之助だ。
 私はちょっと足を運んだだけ。それほど、大したことはしてないだろう。
「YdmtⅣはおれいがしたいよ! おねーさんたちについていくよ!」
「ちょ……待てッ! 別にいらないから! 大体、ゆっくりなんて連れて行ってもなんの役にも立たないだろうが!」
「だいじょうぶだよ! YdmtⅣはじゅうらいのまりさの1024万倍のぱわーをはっきできるよ! せんしゃもいちげきだよ!」
「……輝夜、お前もなんとか言えよ」
「あら、別にいいじゃない? ちょっと風情に欠けるけど、アンドロイドってそれなりに燃えるキーワードだと思うし」
「あの……シノブ。なんとか説得を……」
「頑張ってね、まりさ!」
「…………けーねぇ……」
「せっかく恩返しがしたいと言っているのだから、受けてやるのが礼儀ではないか?」
「………………」
 四面楚歌。私の味方は誰もいない。
 だってほら……万が一死なれでもしたら、せっかく助けたのに後味悪いし。
 アンドロイドっていっても、所詮はゆっくりだろ?
「おねえさん、ゆっくりよろしくね!」
「……はぁ……仕方ないか」
 なし崩しに仕方なし。いつも通りに巻き込まれ。
 まぁ……そういうものかもしれない。
 命の保証はできないが、できる限りでは力を尽くしてやろうと、思った。


「ふざけんなテメーら! とんでもねーもん持ち込みやがって!」
「逃げろ、逃げろテメェら! 殺されちまうぞ!」
「火がぁ! 熱い! 熱いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 よくもやってくれやがったなテメーら、ヤキ入れてやんよと絡んできたマスクマンたちだったが、彼らはいつものように……あるいは、いつもよりもさらに凄惨な表情を浮かべながら逃げ去った。
 後に残されたのは、爆発炎上して残骸となった戦車が数台。
 あとは、機械化された警備犬が何匹かばらばらになって火花を散らしていた。
「輝夜さん。これって見つかったら確実に捕まりませんか?」
「妹紅さん。見て見ぬふりをしましょう。私たちはなにも見なかった」
 この戦場から早く逃げ出したいと、心は叫び続けている。
 まぁ……妹紅や私はこんなものじゃない修羅場を潜り抜けているけど、今問題になっているのは一介の古道具屋の店主が、どういう手段でこの破壊兵器という名のアンドロイドを入手したのかとかそういう問題なわけで。
「おねーさんたち! あとじゅっぷんでしゅえいさんがきちゃうよ! ゆっくりいそいでにげてね!」
「輝夜、とりあえず行くぞ!」
「分かったわ」
 破壊兵器という名の賢いゆっくりに連れられて、私たちは走る。
 さて……もうお分かりの通り、あの惨状を生みだしたのは私たちの前をとんでもない速度で走るゆっくりまりさ改めYdmtⅣ。
 ミサイルを吐くは、目から破壊光線が出るわ、機械犬を一撃で押し潰すわと、どう考えても戦闘を考慮して作られたとしか思えない戦闘能力を発揮し、あっさりと敵を撃退してしまった。
 ミサイルと破壊光線に関しては、敵から奪ったパーツを換装してサブウエポンとして使用できるけど、どちらか片方しか装着できないとかもうそんなことはどうでもいい。
 アンドロイド化した影響か、知能が発達したらしく状況判断は的確で、少なくともミサイルを乱射するようなことだけはないのが救いと言えば救いだろう。
「妹紅、分かってるわね?」
「もちろんだ。万が一のことが起こったら、あの店主に全責任を押し付けよう」
 まだ、七日以内だ。責任のクーリングオフくらいはできるだろう。
 知能や人格的にはともかく、こんな危険物を押し付けた人間にも責任はある。
「とにかく、取扱いに関しては十分な説明が必要だな」
「そうね。あとは保証書と契約書とマニュアルがあれば完璧だわ」
「まにゅあるはあるよ! YdmtⅣのまにゅあるはYdmtⅣにゆーえすびーせつぞくすれば、ぴーでぃーえふけいしきでえつらんできるよ!」
「……輝夜さん、この子は一体なにを言ってるんデスか?」
「あー……妹紅って外の機械とかあんまいじらないわよね」
「いいもん。学がなくてもそれなりに生きていけるもん。悔しくないもん」
 妹紅は決してお馬鹿さんではない。パソコンも多少は使う。
 が……機械を使うよりは体を動かす方が好きなので、最近の幻想郷の発展についていけていないらしい。
 そういうことに関してはえーりんが一番敏感なのかもしれない。
 鈴仙は元々軍所属で機械の扱いはお手の物だったけど、てゐは苦手そうだった。
 慧音さんは……さりげなく使いこなしてそうだ。頭ガチガチで授業も面白くないけど、大抵の場合理系の人というのは説明下手だけど新しいもの好きだし。
 さて、そうこうしているうちに香霖堂に到着。私たちは前回訪問した時と同じように、なんの遠慮もなく店内に踏み込んだ。
「……って、誰もいないな」
「まぁ、こういう時は上か下でしょ。で、怪しい所といえば……」
「当然下だな。行ってみるか」
 この辺は阿吽の呼吸というか、妹紅も分かっているようだった。
 普段殺し合いばっかりしているわりに、あるいは普段殺し合いばっかりしているせいか、お互いの考えてることは大体分かるのだった。
 階段を下りて地下へ。地下一階は物置のようで、つい最近焦げたばかりと思われる機械っぽいガラクタが鎮座してあったけど、それは無視しておく。
「なんつーか、分かりやすく隠し階段だな」
「隠してあるってことは暴かれたくないものが地下にあるか、あるいは地上に収容できないようなものを地下にしまっているか。……行けば分かることだけどね」
「じゃ、行ってみようぜ」
 妹紅に促されるまま、地下の階段を下りる。
 鬼も出ないし蛇も出ない。そんなことは分かり切っているけど、平凡な古道具屋の地下にこんな階段があったりしたら、誰でも心は躍るだろう。
 少しだけわくわくしながら延々と続く階段を降りる。
 いくつの階段を降りただろうか、永遠に続くと思われた階段は途切れ、最下層に辿り着く。
 そして、長い通路の先に、私たちはそれを見た。

 それは……外の世界の言葉を借りるなら、巨大ロボットだった。

 紫の威容。ドリルにアーム。鋭くコミカルな目付き。寸胴鍋のような胴体。見た目は間抜けだが、自分の身長の数十倍の質量をもつそれを間抜けと口に出せる奴はそういないだろうい。
 大きさとは力の象徴とイコールであることは、言うまでもない。
「な……なんだこりゃ!」
 妹紅は分かりやすく驚いていた。もちろん、私も驚いているけど、私の場合は驚き過ぎて開いた口が塞がらなくなっているだけだったりする。
 そのロボットの前で、店主……森近霖之助はなにやらノートパソコンのようなものをいじりながらにやにやしていた。
 どうやら、いやらしいことではなく気持ち悪いことを考えていたらしい。
「思った通りだ! 巨大ロボットを動かす燃料として、液体生物が一番適している! 電力と比較しても排気効率、神経パルスの接続、ブースターへの燃焼速度……あらゆる面で圧倒的じゃないか! これなら、もうすぐこいつも完成だ!」
「完成させてどうするんだ? 幻想郷でも征服すんのか?」
「なにを言っているんだ。巨大ロボットが動くというのは、男っていうか人類の夢って言い換えてもいいと思う……ん、だ?」
 言葉が尻すぼみになっていく。
 霖之助はゆっくりと後ろを振り向いて、思い切り口元を引きつらせた。
「……キミたち、なんでここにいるのかな?」
「テメーがとんでもねー危険物を押しつけやがったから、返品……じゃなくて、ちゃんとした取扱いの説明をしてもらおうと思って来たんだよ」
「そう言われても、YdmtⅣを作ったのは僕じゃないから詳しいことは分からないんだけど……今回も作り置いてあったのをテキトーに持ち出しただけで……」
「試作品が一つなくなってると思ったら、そういうことだったのね」
 不意に、霖之助の言葉を、静かで早口な言葉が遮った。
 廊下の向こうから姿を見せたのは、店の隅で本を読みふけっていた誰か。
「試作四型は、頭の後ろにセーフティスイッチがあるから、それを押せば兵器の類は使えなくなるわ。もっとも、液体生物を入れることを前提にしていたから、機能を完全に停止させることは考慮の範疇外だけどね」
「……あんたは、確か紅魔館の……」
「パチュリー=ノーレッジよ」
 寝巻のように見えなくもない紫色の服を着た、幻想郷でもかなり有名な魔法使い……パチュリー=ノーレッジは大きな欠伸をしながら疲れたように溜息を吐いた。
 よく見ると、目元には大きな隈が浮き出ていた。
「それから……このロボの燃料として液化生物を使うのは無理よ」
「なぜだい?」
「試作四型を見れば分かるでしょ? 液化生物は体さえあれば自我が戻るのよ」
 つまり……そういうことだ。
 液化された生き物の意のままに、このロボットを操れるということ。
「暴走予防のために試作四型にはロボット三原則と知能強化プログラムを仕込んであるけど、それはあくまで予防でしかない。……正直、ゆっくりのボディを模したものを作っておいてなんだけど……この子が暴走していないのは奇跡に近いわ」
 YdmtⅣをちらりと見つめて、パチュリーは少しだけ口元を緩める。
 ネガティブなことを言いながらも……ちょっとだけ嬉しそうにも、見えた。
「じゃあ、自我が戻らないように複数の生物を混ぜて使ったらどうたい?」
「さりげなく恐ろしいことを考えるのね、霖之助さんは」
「なに……多分君ならとっくの昔に考えて……やめたんじゃないかと思ってね」
「ご明察。文系はこれだから嫌だわ。大人しく元の職場に戻ったらどうかしら?」
「あいにくだけど、僕は今の商売が気に入っていてね、しばらくやめるつもりはない」
「そう」
 仲がいいのか悪いのか、微妙なやり取りを繰り広げる二人。二次元や異次元やファンタジーあたりだと仲がいいやり取りなのだけど、二人の口調から察するに『仕事仲間』といった感じに見える。
 まぁ、どっちでもいいことだけど。
「結論から言うと、二種類以上の液化生物を同じボディに押し込むと、意志の統合が上手く取れずに自壊して使いものにならなくなる。液化生物を燃料として使うことを前提とした場合、ボディとなる機械の動きはほぼその生物の意志に依存することになるから、これは廃案にするしかなかった。動物なんか使っても使い物にならないし、人間をさらってくるわけにもいかないでしょ? 大体、操縦席すら出来ていないのに何を考えているのかしら?」
「できてないの? 操縦席」
「アドバイザーが色々うるさいのよ。……正直、燃料も操縦席も手段を選ばなきゃなんとでもなるけど、それは開発理念から大きくかけ離れることになるから」
「ま、資金には余裕があるからね。しばらくは自由にやってもいいよ」
「しばらく、なんて悠長なことは言っていられないのよ。……まぁ、要塞の完成まで含めるとまだ数ヶ月はかかるから、慌てる必要もないけどね」
 やっぱり、仲がいいんだろうか?
 あと、要塞ってことは……このロボットを使って異変を起こすつもり満々らしい。なんとなく予想はできていたけど、やっぱり作ったものがどの程度の力を発揮できるのか試してみたいのだろう。
 と、私の気持ちを代弁するように、妹紅が口を挟んだ。
「あんたら、どういう関係だ?」
「私が愛人五号。一号は白黒の魔法使い、二号は博麗の巫女、三号は小悪魔で、四号は時折ご飯を作りにくる短髪ショートの煮物屋。その他にも咲夜や永遠亭の玉兎、レミィから隙間妖怪(幼女化)まで幅広く手を出しているわ」
「違うし出してないし、しれっと最悪な嘘を吐くな!」
「私が発案、企画、製作者で、彼が出資者って所かしら?」
「良く言えばスポンサー、悪く言えば財布、もしくはCD男ってところか」
「そうそう」
「そうそうじゃないだろ! そのCD男のCDってのはキャッシュディスペンサーの略かなんかだよね? 既に外の世界じゃ死語な上に誰も知らないと思うんだけど、なんでここでキャッシュディスペンサーって言っちゃったの? 引き落とし自由ってこと?」
「いいえ、そんなことはないわ。『できちゃったの♪』っていうパスワードを言わないと引き落としはできない仕組みになってるもの」
「その生々しい表現をやめろ! 僕の人格が誤解されるだろうが!」
「あれ? でも、今朝に小悪魔や煮物屋と一緒にできるできないの話を……」
「今日の夕飯の話だよ! 鍋焼きうどんだってさ!」
「そう。楽しみだわ」
 それで会話は終わりだ、とばかりにパチュリーは本を数冊置いて立ち去った。
 妹紅は少しだけ溜息を吐いて……ちらりと霖之助を見てから、口元を緩めた。
「アンタ、もてるんだな?」
「……勘弁してくれ」
 霖之助は心底嫌そうに顔をしかめて、大きく溜息を吐いた。
 お金を出している身分のくせに、なぜかとても苦労しているようだった。


 幻想郷の住人……特に、妖怪連中はわりとのんびりしている。
 長寿だからか、あるいは人間の動きに頓着していないからか、あの八雲紫ですら見落としていることがたくさんある。
 そう、例えば人里を歩くだけで異常を察することはできるのだ。
 道が舗装され歩きやすくなった人里。しかし……そのわりには客足は少ない。馴染みの蕎麦屋ですら客はおらず、ガラガラの状態だ。
 もちろん、こんな状況ではおでんは売れないので開店休業となっている。
 ガラの悪そうな連中の顔もちらほら見るが、幻想郷の人間はわりと大らかなのでそんなことには頓着しない。……もっとも、最近のガラの悪そうな連中は、髑髏のマスクなんぞを装着しているため、訓練を受けた守衛以外に注意をする奴はいない。
 問題なのは、そいつらが特定の人物に過剰な攻撃を加えていること。
 そして……一切関係がないように見えるが、実は思い切り関係のある……この人里の閑散とした様子だった。
 人の出入りがないということは、貨幣の流通がないということ。
 逆を返せば……みんながお金を出し渋っているということでもある。
 香霖堂のように、他の誰も真似できない特殊なものを扱えるわけでもないので、俺たちのような物売りは金銭の流れに注目しておかないと損をする。
 下手を打てば破産だ。
 そういうわけで……ちょっとした裏技を使うことにした。
「ちーっす」
「おや、珍しい顔だね。そろそろ倅をもらってくれる気になったかい?」
「残念ながらここに居着く気はないんだ。ばーちゃんには悪いがね」
 ばーちゃん。そう呼んだが正式な名前は知らない。
 人里の長……正確には『元』だが、今もある程度の実権は握っているので、元は外してもいいかもしれない。
 人里で商売する場合には、人里ごとの決めごとに従わなきゃいけない。
 俺のような露店商でも、里の中で商売をする場合は上納金を納めなきゃいけないし、定期的に開催される商店ごとの寄り合いにも参加しなきゃいけない。
 もっとも、寄り合いと言いつつもほぼ飲み会なのだが。
「で……その倅はどこに行った?」
「今は凪の時期だからね、下手に動かないようにあっちこっちに打診して回ってるよ」
「…………ふむ」
 凪の次は嵐が来る。正直、どう転ぶかは分かったもんじゃないが。
 それでも、嵐が来る想定で動かないとまずいってことか。
「で……なにが知りたいんだい?」
「知りたいことは三つ。ここで知り得る限りの相場状況。それから潰れた店と新しくできた店の推移。新参者の有無。特に、新参者が出張ってきた結果どんなことになったのかを知っておきたい」
「知っておいてどうするんだい?」
「俺が損をしない」
「こっちにもアンタが知り得る情報を寄こすって条件なら、教えてやらんでもない」
「じゃ、商談成立ってことで」
 ばーちゃんから極秘の帳簿と人里の地図を受け取って、広げてみる。
 相場とはつまり価値の変動だ。米が取れ過ぎれば安くなり、取れなければ高くなる。それと同じように人の価値観は時間によって容易く変動する。相場屋はこの時期を予想して、安い時期に買い叩き、高くなったら売却する。その差分で利益を得る。
 株のようなもんだと思ってもらえればいい。
 相場は米も麦も豆も綿も炭も……珍しいことに、主要な商品に変動はない。
 高くなってもいないし、安くなってもいない。横ばいの状態が続いている。
 ただ、『薬』の相場だけが微妙な上下を繰り返している。
「老舗の漢方薬屋が潰れて……そのまま新参者の薬問屋に取って変わられてるな。届け出は……あん? なんて読むんだ、この名前。ぜろじ?」
「さぁねぇ。倅が戻ってくれば分かると思うけど」
「まぁ、名前はどうでもいいか」
 動かない相場。それが長々と続き、薬の相場だけが微妙な上下。
 ああ……嫌な気配がする。嵐どころか台風が来そうな勢いだ。
「こりゃ、まずいな」
「どういうことだい?」
「市場は警戒しているから停滞しているのは分かる。なら……どうして薬の相場だけ常に変動しているんだ? 老舗の漢方薬屋が潰れちまったら、普通は薬の値は急に上がるはずだぞ。なんせ……需要はそのままなのに、供給が一気になくなっちまったんだからな」
 薬問屋はあくまで客と薬屋を繋ぐ仲介でしかない。
 漢方薬屋がなくなったら、商売にならないと考えるのが自然だろう。
 しかし、急激に値が上がってもいいはずが、緩やかな上下を繰り返す。
 つまり……漢方薬屋が潰れてもそれをフォローできるほどの、それなりに大きな商売が転がり込んでいるということ。
 潰れた漢方薬屋に匹敵するほどの薬売りが存在しているということ。
 事実、大きなマイナスを、大きなプラスで補っているから値がぶれない。
 少しどころかかなり怪しかったので調べてみたが、その薬問屋で買った湿布やら軟膏は幻想郷で再現することは困難なほど……『外の世界』の薬品にそっくりだった。
 しかし、効果は段違い。昨日ゆいさんに噛まれた跡も翌日にはなくなってしまったほどで、最近は重用させてもらっている。
「それから……ももんじい屋(肉屋の意)にちょいと寄ってみたが、その薬問屋経由で、なにやら得体の知れない、奇妙な肉をお試しって名目で入荷したらしい。幻想郷の人間はあまり肉は食わないからまだ市場には出てないけど、その辺も差し止めておいたほうがいいかもしれん」
「賢い女は婚期を逃すよ? ま、あたしゃそれでも一向に構わんがね」
 むしろ婚期を逃した方が倅とくっつきやすかろうとかなんとか言いながら、元気なばーちゃんは破顔した。
「分かったよ。アンタの言うとおり、とりあえず見慣れない品に関しては市場に出さないように徹底しておくさ。私らも損は嫌だからねぇ」
「俺が嘘を吐いてたらどーすんだよ?」
「今嘘を吐く利点はどこにもないねェ」
 ケラケラと笑いながら、ばーちゃんは礼のつもりか、ちゃぶ台の上に置いてあったおはぎを俺に押し付けた。
 ったく……相変わらず、やりづらいばーちゃんだこと。
「疑う時は疑うよ。必要なだけ、どの程度の嘘を吐いているか、ね。今は里の商店全体の危機だからね。商品の出所は不明なのに、やたら高品質で低価格。こっちとしちゃ無許可でそんなものを売られたらたまったもんじゃない」
「もっとも……米や麦なんかの商品は手がつけられていないみたいだけどな」
「利点が薄いのさ。育てるまでに時間もかかるし、手間もかかる」
 ……確かにそうかもしれない。
 幻想郷の薬品の主な原料は、薬剤師や医者が独自に育てたり、山で見つけた野草を調合したものだ。米や麦と違って……ある程度は代替がきく。
 正直、この時点で薬品を作って売りさばいているのが誰かは分かっている。悪いことだとは言わないし、善意でやっているなら口は出さない。
 だが……なんの意図があろうとも、里の商店のパワーバランスを崩しかねないほど高品質の医薬品を流通させるのは、気に食わない。
 人間には人間のルールってもんがある。どんな事情があるかは知らないが、天才が平気の平左でそれを崩すような真似は感心しない。
「じゃ、とりあえず俺は行くよ。色々ありがとな、ばーちゃん」
「倅に会っていかないのかい?」
「しょっちゅう会ってるから今日はいいや。特に用事もねーし」
「そうかい。……じゃあ、有用な情報があったらまたおいで」
「あんまり来たくはねーな。景気が悪い時にしか小知恵が働かない性分でね」
 そんなやり取りをしながら、里長の家を出る。
 さてと……これからどうしたもんか。紫さんに相談するには証拠が足りないし、博麗さんに押し付けるほどの異変ってわけじゃない。かといって、直接乗り込んで万が一ビンゴだったりしたら、俺の命がマッハで終わる。
 と、なると……あとは釣りか。

「お前だな、あちこちで調べ回っている女というのは」

 背後で響いたくぐもった声に、ほんの少しだけ口元を緩める。
 首を突っ込んで口を出して……あっちこっちに助言らしきものを吹聴して回った甲斐があるってもんだ。
 振り返ると、そこにはドクロのマスクをつけた人物が四人。
 幸いなことに戦車や機械犬といった兵器は連れていなかった。
「大人しくしろ。抵抗すれば容赦はしない」
「はいはい」
 大人しく手を上げる。
 四人のドクロ仮面は俺を取り囲み、拘束用の手錠を取り出した。
 俺の手を握り、手錠をはめようとした……その時。
「ぐびゅぇ!」
 手首を捻りつつ足を払っただけで、ドクロ仮面の一人があっさりと地面に転倒。
 転倒した隙に顔面を地面に打ち付けると、脳しんとうを起こして気絶した。
 固い鎧と武装で誤魔化しちゃいるが……素人の動きだった。
「で……さぁ。お前らって、なんで俺が抵抗しないとか思ってるわけ?」
 気絶した一人の頭を踏みつけながら、俺は口元を緩める。
「美少女でもねぇし。可愛くもない。俺の商売の邪魔をする。そんな連中に手加減も逃走もしてやるわけねーだろ」
 奇妙な格闘術を祖母に叩き込まれた。
 まぁ……一般的に古武術と呼ばれるもので、主に人を殺すための技術だ。
 もちろん、殺しはしないが腕を折るくらいはやるかもしれない。
「こ……このぉ!」
 殴りかかってきた一人の拳を避けて、その拳を引いて足を払う。
 前のめりに転倒した瞬間、思い切り頭を踏みつける。
 この『踏みつけ』という攻撃は五歳の少年でも三十歳の屈強な男を悶絶させることができるという、人類に託された必殺技の一つである。
 そんな調子で、残り二人も昏倒させる。一人は一目散に逃げ出したので、赤ん坊くらいの大きさの石を投げつけた。なにやら鈍い音がした後にぐったりとして動かなくなったが、呼吸はしているので大丈夫だろう。たぶん。
「しかし……なんかダイバーみたいな連中だな、こいつら。なんで地上で酸素ボンベ背負ってるんだかよく分からないが……」
 まぁ、こいつらの事情はどうでもいい。
 ドクロ仮面から手錠を奪い取って拘束し、一人に活を入れて起こした。
「な……なんなんだ、お前は!」
「大人しくしろ、抵抗すれば容赦はしない。具体的には俺の質問に答えなきゃ、熱々のコーヒーを色々なところに流し込む」
「………………」
 うむ、実に反抗的な目だ。いい度胸をしていると言い換えてもいい。
 とはいえ……脅しに屈しない態度だけで、背景事情は大体分かった。
 どうやら、この『事件』は一筋縄ではいかないらしい。
 拷問するつもりもないし、かといってこれ以上の尋問は無意味と判断したので、俺はドクロ仮面の頭を石で殴りつけて昏倒させた。
 さっきから力技が多いが、殺していないので大丈夫。
 前後の記憶が吹っ飛ぶかもしれないが、その辺は知ったことじゃない。
「さて……と」
 もう少し、調査を進める必要があるかもしれない。
 まぁ、俺とは別に調査を進めている二人は派手に暴れているようだし、しばらくは近代兵器の類を向けられることは少ないだろう。
 戦力としては間違いなくあっちの方が目立つだろうし、下っ端四人が返り討ちに遭った程度で報復はされないはずだ。
 まぁ、向けられたらその時は、その時。さっさと逃げればいいだけだ。
 本当は、さっさと自分の家に帰ればいいだけのことだが。
「……逃げるのは、いつでもできるしな」
 適当な言い訳で逃げつつ、俺はゆっくりと歩き出す。
 とりあえず、人里は危険なのでパチュリーちゃんの所にでも身を隠そう。
 そんなことを思いながら、歩いていた。
と、いうわけで第五話でした♪
・・・念のために断っておきますが、何回でも繰り返しますが、パチュアリとかそういう概念は東方LALにはありません。魔法使い三人組は仲がいいんだか悪いんだか微妙な線で通させていただきます。
YdmtⅣの生き様はLALっぽくて非常に好きなのですが、元がゆっくりということもあり、扱いにしばし悩んだキャラクターでもあります。
ちなみに、自分は悪辣な人間なので気に入ったキャラクターの出番は露骨に増やします。例外としてはおでん屋さんが挙げられますが、あれは気に入っているというより『背景事情の説明』といった意味合いで使っているので、今回は出番が増えています。
ゲームでは語れない『なぜ?』を考えるのはわりと楽しいです♪
さて、次回ですが今回と同じくコミカルベースになる予定。本編でも妹紅さんが仮面をはがすまではわりとコミカルなので、そんな感じになるかと思います。


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