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と、いうわけで蓬莱編第三話。
コメディ成分が多少割り増しになっているけど、それは後半をドシリアスにしなきゃいけない影響だからだよ?
ソイレントベースまでなんや! こんなことができるのは!
はい、そういうわけで始まり始まり♪
蓬莱編3:事件と異変
 偉業を果たしたその先に。
 待っていたのは二つだけ。
 見捨てた後悔、果たせぬ約束。
 悔やんでも悔やみきれぬは己の業。
 下らぬことだと己を笑い。
 魔女は一人で鉄を鍛つ。


・スペック
 全長 21メートル。
 全幅 15メートル。
 体重 ヒミツ。
 産地 幻想郷。
 動力 多様なエネルギーに対応。現段階では魔力を想定。
 弱点 特になし。
 特記 システム『ALICE』、セーフティシャッター付き脱出ポッドを搭載。

・武装
 螺旋:スピンニードル
 放出エネルギー 62万ダイオード。
 連発数 1~2発。
 発動時間 0。
 出力レベル 1。

 左腕に取り付けられたドリルによる突進攻撃。

 日輪:ロイヤルフレア
 放出エネルギー 286万ダイオード。
 連発数 1発。
 発動時間 2。
 出力レベル 2。

 指向性を持たせたフレアで敵を殲滅する。
 私ことパチュリー=ノーレッジが使用するスペルカードとほぼ同等の性能を有する兵器ではあるが、各種賢者の石を用いて構築した魔法の増幅及び最適化を行う、システム『ALICE』により、私単体で放つ時の数十倍~数百倍の威力を発揮する。

 剛破:バベルノンキック
 放出エネルギー 167万ダイオード。
 連発数 1~3発。
 発動時間 0。
 出力レベル 3。

 自重+キック力+重力加速度にさらなる加速を加えた超絶技。
 古代バビロニアより再現した絶技に、パチュリーロボ独自の後背部バーニアユニットにより発揮される突進力を加えたことにより、ダメージはさらに加速した。

 現在は試作段階だが、アイ・ビームとレーザー砲、主魔砲を実装予定。


「……あの、パッチェちゃん。俺にこんなものを見せてどうするつもりだ? 俺はスーパーロボットとか大好きだけどスペックとか見せられてもにんともかんとも」
「感想を聞かせて。……あと、パッチェちゃんはやめてくれない?」
「やれやれ、パチュリーちゃんはわがままだなぁ」
「ちゃん付けもやめて。一応、私はあなたより年上なんだけど?」
「どう見ても俺より若い子は大体子ども扱いでいいんだよ。まぁ、それ考えるとみんな俺より若いんだけど、苦労してるか否かで表現は変える方向性だから」
「……だからって『ちゃん』付けはどうかと思うけど?」
「ちなみに、あえてこのスペックに文句を言わせてもらうとしたら武器の名前が格好悪いことくらいだな。外見はアホみたいにださく、武器は格好良く。基本だぜ?」
「例えば?」
「真とかギガとかジェノサイドとか付ければ、とりあえず格好良く聞こえる。このドリルも二段変形してギガドリル●●●●とかになれば最強だったに違いない」
「……参考になりそうもないわね」
「まぁ、そうかもな。……で、話は変わるが、こいつの名前は?」
「え?」
「このロボの名前だよ。もちろん……形式番号とか、そういう身も蓋もないものじゃなくて、格好悪いのを考えてあるんだろうな?」
「……もちろんよ」

 魔女の額に流れた冷や汗を、俺は瀟洒な感じでスルーした。
 ロボの名前なんて考えちゃいないのは明白だったが、見て見ぬふりをするのも大人の役目。実際に魔法使いが俺より年上だろうが、そんなことはどうでもいい。。
 パチュリーちゃんの方が明らかに若いのだから、俺が大人で問題ないのだ。
 そして、大人の役目は、にやにや笑いながら子供の隙を突いてやることだ。
 いやらしかろうがなんだろうが、子供が狡猾に、強く生きられるなら、伸びた鼻っ柱はガンガンへし折ってやるべきだろう。
 まぁ……それはともかく、七曜の魔女は不敵に笑った。

 急ごしらえでみっともなく、多分後悔するだろう名前。
 しかし、故に誇り高く、ただ一心に創り上げた故に名付けられた名前。
 そのロボの名は……。


 GO!GO!パチュリーロボ

 遥か昔の伝説 遠い異世界の 物語。
 忘れ去られたチカラが この世に 甦る。
 神のごときその姿 鋼の魂 奮わせて。
 悪魔のごときヤカラに 怒りを 振り下ろせ。
 Shining Flame!(燃え上がれ!)。
 賢者の石 たずさえ。
 Freezing Ice!(研ぎ澄ませ!)。
 無限のパワー。
 不屈の闘志を (おの)が胸に。
 今ここに 伝説が 始まる……。


 私の名前は藤原妹紅。案内屋だ。
 とはいえ、そうそう案内屋で食っていけるわけもないので、暇な時や焼き鳥やらおでんやら屋台を引いている。最近は『タイヤキ』というのも始めてみたが、餡子の方は幻想郷ではまだまだ高価な品物なので、あまり焼く機会はない。
 時折、知り合いの目付きの悪い女が持ってきてくれる缶詰を使う程度だ。
 ま、それはそれとして……だ。
「しかし、幻想郷も物騒になったもんだな。妖怪に襲われるなら分かるけど、あんな連中がうろついてるんじゃ子供にお使いを頼むこともできやしない」
「変なスーツと仮面で顔を隠してるところを見ると……組織的な誘拐なのかも……あー、シノブちゃん。さすがに髪を引っ張るのはやめて痛い痛い」
「おねーちゃんの髪きれーい!」
「ちゃんと手入れしてれば自然と綺麗になるわよ。あと、男ってのは綺麗な髪が好きだから、髪の手入れをしておくと後で得をするわ」
 教育的な意味で子供に悪いことを教える女がここに一人。自分で手入れしているわけでもないくせにえらそうなのがまた憎らしい。
 シノブとちゃんと会話をしているあたり……ものすごく意外なことだが、輝夜は子供はわりと嫌いじゃないらしい。
「輝夜のことだから『子供の扱いってよく分からないし、関係ないわね』くらいは言うと思ったんだけどな」
「別に嫌いってほどじゃないわよ。今は留守にしてるけど、永遠亭にはこの子よりよっぽど手のかかる兎が一人いるしね。人見知りで頑固な奴」
「……宇宙旅行か。面白い時代になったもんだな」
「正しくは月面調査よ。ま、大事がなければ無事に戻るでしょう」
 輝夜は、さして気にもしていないような口調で言った。
 まぁ、気にしていないふりをしているのはばればれだったが、そこはあえて突っ込まないでやるのが優しさってもんだろう。
 と、そんな会話をしている間に、目的地が見えてきた。
「さて、ようやく到着だ」
「……妹紅、この寺小屋って前とだいぶ様変わりしてない?」
「いい加減古くなってきたから、改築したんだと」
 以前の古臭い佇まいと比べるとちょっと変わりすぎという気がしないでもないが、子供にはわりと好評らしい。
 いつも通りに寺小屋のドアを開けて、中に入る。
「慧音いるかー? ただいまー」
 私の声に反応して、いつも通りに慧音が奥から顔を出す。
「ああ、お帰り妹紅。後ろにいるのは……輝夜さんとシノブ? 珍しい組み合わせだな。今日はどうしたんだ?」
「シノブを寺小屋まで届けに来たんだ。いやね、竹林の中で変な仮面野郎に襲われててさ、危うく誘拐されるところだったんだぞ?」
「………………」
 慧音は思い切り溜息を吐き、じろりとシノブを睨みつけた。
「シノブ……あれほど外に出るなって言っておいただろ。まったく、お前になにかあったらどうするつもりだったんだっ!?」
「うえーん! けいね先生、ごめんなさーい!」
 慧音の剣幕に驚いてか、あるいは緊張の糸が切れたのか、またもや泣き出すシノブ。
 慧音は安堵の溜息を吐きながら、シノブの頭を撫でてやった。
「ほら、泣くな。外に出る時は、私と一緒じゃないと駄目だからな?」
「……ぐすっ……はい、先生。もうしません」
「分かったならいい。ほら、遊び部屋でみんなと遊んでおいで」
「……先生は?」
「先生はこのお姉ちゃんたちとお話があるから、後で行くよ」
「はーい」
 涙を拭いながらも元気良く返事をして、シノブは遊び部屋の方に走って行った。
 その後姿を見送ってから、私は思わず口元を緩めていた。
「相変わらずの先生っぷりだね~。……一瞬、お母さんかと思ったぞ?」
「まだそんな歳じゃない……と、言いたいところだけど父兄からはやたら結婚しろしろとうるさく言われてはいるな」
「はっはっは、まぁそれはお約束ってやつだよ。……で、何だ話って?」
「そうだな。……玄関先で話すのもなんだし、私の部屋で話そう」
「私は席を外すべきかしら?」
 輝夜の言葉に、慧音は少し悩んでから首を振った。
「いや、輝夜さんにも聞いてもらおう。人手は多い方がいい」
 人手は多い方がいい。その言葉が指す意味は……既に状況は動いているということ。
 寺小屋の奥にある慧音の部屋、外の世界でいう教務員室のような場所で、私たちは話を聞くことになった。
 慧音の入れてくれたお茶を飲みながら、私は口を開く。
「で、話ってなんだ?」
「うむ……それなんだが、この寺小屋の生徒の親が何人か行方不明になっていてな」
「行方不明?」
「仕事のために家を出たっきり、消息が分からなくなるんだ。自警団が里を捜索したり山狩りを行ったりしたんだが、まるっきり手がかりがない。親が見つかるまでの間、子供たちは私が預かっているんだが……いつまでもこのままではいかんだろう」
「………………」
 子供が行方不明というケースなら分かるが……親が行方不明、か。
 シノブをさらおうとしていた連中はかなり間が抜けていたが、繋げようと思えば引っかかる部分がなくはない。
 ノルマ……あいつらはそう言っていた。
「つまり、その行方不明になった親を見つければいいんだな?」
「ああ、そうだ。……どうだ、やってくれるか?」
「当たり前だろ。慧音と私の仲じゃないか。この妹紅様にお任せあれってもんだ!」
 笑いながら言い放ち、それからちらりと輝夜の方に視線を向ける。
「おい、輝夜。お前も手伝え。こんな状況じゃおちおち殺し合いもできねーし、人探しってのは人手がいる。お前のことだからどーせ暇だろ?」
「……ねぇ」
「ん?」
「人探しって仕事に入るのかな?」
 質問を質問で返すのは失礼だぞとか、せっかくいい感じで貶したのに完全にスルーされてちょっと寂しかったりとか、そんなことは思ってなかったぜ!
 輝夜の疑問には、慧音が答えていた。
「人探しは立派な仕事だぞ。自警団にはある程度の謝礼が支払われているし、探偵という人探しを専門にしている仕事もある」
「やります! 喜んで探させていただきます!」
 ものすごい食い付き具合だった。
 普段は『仕事とかめんどいし、関係ないね』とか言いそうな輝夜が、である。
「……お前、頭大丈夫か?」
「大丈夫に決まってるでしょ。さぁ、妹紅。早速情報収集よ! 早く行きましょう!」
「…………お、おう」
 なにやらやる気一杯の輝夜に背を押されながらも、なんとなく理由を察する。
 輝夜が人里に向かっていた理由。
 それから、私を呼び出そうとしていた理由も。
 まぁ、仮にも姫様だし、あの薬師が働かせてくれないってのも分かる。
 が、内職くらいはできるだろうし、コイツの能力ならどこでも引く手数多だ。
(ったく……金くらい定期的に稼いでおけっつーの)
 こっそりと溜息を吐きながら、私は背中を押されるまま走り出した。


 情報収集の基本は足下から。
 行方不明といえど、拉致から家庭環境の不和まで理由は様々。今回は一度に複数の生徒の親がいなくなったということだから拉致と考えていいだろうが念には念を入れるのが情報収集の鉄則ってもんだ。
 とりあえずは、寺小屋周辺の情報収集から始めることにした。
「……と、いったものの大体予想通りの情報しかないな」
「まぁ、そりゃそうでしょ。家庭の不和だったとしたら慧音さんがそれを言及しないのはおかしいし、なんの痕跡もなくいなくなってるから問題になってるわけだし」
「………………」
「なによ、その鳩が豆鉄砲食らったような顔は」
「いや、びっくりしたわ。輝夜って思考とか高尚なことができたんだなと思って」
「できるわよ! 人を不定形生物みたいに言わないでちょうだい!」
 輝夜はそう叫んでいたが、普段が普段なので説得力はない。
 そして……なにを思ったか、不意ににやりと笑って、口を開いた。
「そうね、この際どっちがどっちかあらかじめ決めておきましょうか」
「どういうことだ?」
「つまり、どっちが探偵で、どっちが助手役か決めようってことよ!」
「……ごめん、意味がさっぱり分からない。もう一度聞く。どういうことだ?」
「ほら、小説とかで事件に巻き込まれる探偵と助手とか、そんな感じで。もしかしたら密室で起きた殺人事件の謎とか解かなきゃいけないわけでしょ?」
「いや、そんな機会は生まれてこの方一度もなかった。そしてこれからもないと断言できる。大体密室で殺人をするメリットがないだろ」
「……なんで?」
「密室に見せかけてるのに『人を殺した』って痕跡を残してどーすんだよ。普通、密室で人が死んでたら『自殺』だって思わせた方がその後の展開が圧倒的に有利だろうが。密室で痕跡を残すメリットなんざ、他の奴に罪をなすりつけるとかそういう他のメリットがない限りは普通に考えてやらないだろ?」
「なんでもかんでも揚げ足ばっかり……そういう人生って、楽しい?」
「なんでちょっと密室に文句つけただけで人生を問われなきゃいけねーんだよ!」
 いや、確かにお約束にツッコミを入れるのは野暮ってのは分かるけども。
 同じようなことを慧音に言ったらものすごい勢いでぶん投げられたけど。
 納得できないからミステリーなのか。ミステリーだから理不尽なのか。
 と、不満顔だった輝夜が、なぜか不意に真顔になった。
「……ねぇ、妹紅」
「ん?」
「あれ……なに?」
「慧音の家だ。お前も何回か来たことあるだろ?」
「いや……そうじゃなくて」
 輝夜の言いたいことは分かるが、私に聞かれてもにんともかんとも。
 寺小屋の裏手には私も住まわせてもらっている慧音の家がある。
 その庭には太く大きな柿木が生えていて、毎年秋には大きな柿の実がなってくれるのだが、今その柿木にぶら下がっているのは柿ではなく大きなサンドバックだった。
 さらに付け加えるなら、輝夜が『あれ』と言ったのはサンドバックそのものではなく、そのサンドバックを素手で打ち据えている胴着姿の女。
 いや……素手というよりは無手と表現した方がいいかもしれない。実際に、彼女はサンドバックを殴りつけているのではなく、掌を叩きつけている。
 どんな技術を使っているのか、掌を叩きつけているだけなのにドスンズバンと重々しい音が響いているのが印象的だった。
 彼女は、私にとっちゃ商売敵のような奴だった。
 どの程度の商売敵かというと、焼き鳥屋の隣で平然と……さながら営業妨害のようにおでん屋台広げちゃうくらいに商売敵だ。
 と、そいつは不意にこちらを振り向いて、いつも通りシニカルに笑った。
「なんだ、妹紅ちゃんと輝夜ちゃんじゃねーか。二人仲良くお出かけか?」
「仲良くもないしお出かけでもない。あんたこそなにやってんだ?」
「俺は輝夜ちゃんを待つついでにトレーニングだよ」
 汗をタオルで拭いながら、彼女はゆっくりと息を吐く。
「危険からは逃げ回ってりゃいいと思ったんだが……さすがに、今の状況じゃそうも言ってられないんでね、一から鍛え直すことにしたんだよ」
「危険?」
「ああ、幻想郷じゃいつ何時命の危機があるか分からないからな。この前なんて慧音先生に『おっぱい大きいけどサイズどれくらい?』って聞いたら、次の瞬間目の前が真っ暗になって気がついたら30分ほど時間が飛んでたからな」
「………………」
 この女は命が要らないんだろうか?
 というか、普通に考えてそういうこと聞いちゃうのは失礼過ぎるだろ。
「っていうか、急な雨に降られた時に下着の替えを取りに行ったんだけど、わりと……その、下着が想像以上にアレだったから、ちょっと気になって……慧音先生が着替えた後にさりげない話題のつもりでサイズを聞いたらゴスッとやられたんだよ」
「いや、そりゃどう考えてもアンタが悪い」
「ほう、妹紅ちゃんは他人の胸部パーツは気にならないとでも?」
「気にならねーよ。そもそも胸のサイズがどうとか、正直どうでもいいし」
「おお、さすがは妹紅ちゃん。俺たちには言えないことを平気で言ってのける。そこに痺れる憧れるゥ! ねっ、輝夜ちゃん♪」
「……なんでそこで私に話を振るのよ? そんなもの、気になるけどあえて血の涙を呑んでなにも言わないに決まっているじゃない。……それはともかく、さっさと頼んだものを出してくれないかしら? 私の怒りが頂点に達する前に!」
「あー……うん。ごめん。調子に乗りすぎた」
 博麗の巫女も引きそうなほどのドス黒いオーラを放つ輝夜には、さすがの私も勝てそうになかった。あの時の輝夜の形相は本当に忘れられない。
 反省したおでん屋はわりと大人しく、輝夜に頼まれたモノを渡した。
「ん、これが頼まれてたブツだ。一応確認しておいてくれ」
「ありがと。ま……これで遊ぶのは事件が解決してからになりそうだけど」
「……事件?」
「慧音さんから聞いてない? 最近、寺小屋に通っている子供たちの親御さんが行方不明になってるって。私たちはそれを調べようとしてるの」
「………………」
 不意に、商売敵の目が細くなる。
 一瞬だけ剣呑な目付きになった後、彼女はゆっくりと溜息を吐いた。
「行方不明者が増えたのは最近のことだが、結構前から行方不明者はいる」
「え?」
「俺が調べた限りじゃ、表沙汰になっていないケースが結構ある。今の状況には沿っていないが、少なくとも以前に行方不明になっている連中に関しては家庭の不和や親の離縁、家庭内暴力みたいな不和が耐えなかった所ばかりだからな。……逆を返せば、『いつ行方不明になっても誰もなにも思わない連中』が行方不明になってるんだ」
「……つまり、手口があからさまになってるってことか?」
「そういうことだ。もちろん、本当に家庭の不和で行方不明になっていることも考えられなくもないが……自然に考えれば『なりふり構わなくなった』と推測できる。最初の巧妙な手口が段々雑になっているところを考えると、状況が変わったのかもな」
「………………」
 正直なところを言えば、私はほんの少し驚いていた。
 おちゃらけていて、不真面目で、そのくせ子供にはそれなりに人気があり、要領良く受け流し、結局自分じゃなんにもしない。付け加えるなら些細な嘘を平気で吐く女。
 そんな彼女が、事件に対してここまで真剣に考えているとは思わなかった。
 口元を歪めて……彼女は言葉を続ける。
「人が人をさらう理由はなんだと思う?」
「……さぁな。私は人をさらったことがないからよく分からないな」
「ま、そりゃそうだ。しかし……今回の事件で不可解なところはそこなんだ。体重が数十キロにもなる成人を運ぶのは一苦労だし、知恵も知識もあるから防衛手段も豊富で人目につきやすい。中には小刀なんかの武器を持っている奴もいるだろう。……そういうデメリットを無視してまで大人をさらうメリットってのはなんだ?」
「……私には想像もつかないよ」
「ま、そうだろうな。俺も色々調べちゃいるが、ここで行き詰ってる状態だよ」
 軽く肩をすくめて、商売敵は苦笑する。
 もちろん……顔は笑っちゃいるが、目はまるで笑っていないわけだが。
「なぁ、あんたは今回の事件のことをどう考えてるんだ?」
「そーだな。……俺に博麗の巫女程度の実力があったら、事件を起こした連中を皆殺し程度にはするかもしれん。その程度には不愉快だ」
「……さらっと、ものすごいことを言うんだな」
「親を失ったガキの気持ちを考えりゃ、それくらいでも生ぬるいさ。……結局のところ、失ったことのない奴ってのは、自分か大事な他人か、あるいは他の大切ななにかを失うまでは『喪失』の恐怖には気づかないもんだ」
 何事もなかったようにパタパタと手を振りながら、彼女は口元を緩めた。
「俺が調べたのはこんなもんだ。逆を返すとここまでが精一杯だった。自警団の連中には伏せといたが、妹紅ちゃんと輝夜ちゃんには話した。……この意味は分かるよな?」
「ああ、分かった。後は任せておけ」
「ん、じゃあ任せた。今回は『異変』じゃなくて『事件』だからな。博麗さんには頼れそうにない。妹紅ちゃんと輝夜ちゃんの手で、なんとか解決してくれ」
 軽く言い放ち、商売敵はきびすを返した。
 自警団の連中に伏せたということは、一般人には解決不可能だと判断したから。
 付け加えるなら……万が一にも死ぬことがない私たちなら、これ以上被害が広がることはないだろうと思ったからだろう。
 まぁ、そこまでは穿ち過ぎだろうが、そう思っておこう。
 あの女……基本的に性格悪いし。
「よし、とりあえず寺小屋での情報収集はこんなもんかな?」
「まだでしょ。あのシノブって子からはなにも聞いてないわ」
「んー……でもなぁ。さらわれかけた直後に話を聞くってのも、気が進まないな」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? 実際に人が消えてるんだから」
「……仕方ないか」
 思った以上に面倒なことになりそうだと思いながら。
 私たちは、寺小屋の方に戻ることにした。


 事件の全貌は見えず、分からず、結局不明が増えただけ。
 この先になにがあるか――当然のことながら、私たちは考えてすらいなかった。
はい、そういうわけで蓬莱編第三話、いかがだったでしょうか?
パチュリーロボのスペック表についてはLALの攻略本に記載されているブリキ大王のスペックを参照。システム『ALICE』については帰還編の彼女ではなく、ガンダムセンチネルの自律制御システム『ALICE』から。セーフティシャッターについては、散々ネタにされている種死運命から拝借しました。
次回は第四話。まりさ新生になります。
……これでようやく門番編の頃に張った伏線が使えるわけだ。
お楽しみに♪


+注意+
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