東方LALの体験版をやっていれば分かることだが、蓬莱編の結末は……まぁ、アレでアレなことになるので、小説もそういうことになる。
当たり前のことではあるが、多少脇道に逸れようがオリキャラを出そうが、結末が変化することは在り得ない。小説でやっていることはあくまで主に帰還編でやった『掘り下げ』と『補完』、そして門番編でやった『作者的にこんなシーンがあったらいいな♪』の追加なので、過度の期待は禁物なのである。
さてさて、そういうわけで蓬莱編は新たなる試み。
『裏舞台』……あるいは蛇足と呼ばれるものの描写を試してみようかと思う。
まぁ、実際のところは大したことはやらない。
最後にほんのちょっと、不必要なものを追加するだけのこと。
その関係でオリキャラの影がちょこちょこ見え隠れするけど、それはあくまで裏方の話。本筋とは一切関係がない。
……関係があるのは、最後の最後だけだ。
それが読者様方の目にどのように映るかは……各々の感想に任せようと思う。
さてさて、そういうわけで蓬莱編第二話の始まり始まり♪
蓬莱編2:変化と停滞
三途と浄土と極楽と。
閻魔すらにも見放され。
苦痛と痛苦と煉獄と。
終わらぬ日々の不老不死。
無限の地獄のその果てに。
見つけたものはただ一つ。
黒い御髪の宿敵に。
秘めし思いはただ一つ。
終わりがないのが終わり。お前には意味がない。
それでも生きろ。かかさまはお前と私を助けるために死んだのだ。
私も生きる。精一杯生きる。死ぬまで生きる。生きて子を成し命を繋ぐ。
お前は……私が死んだ後も生き続けるがいい。私の子の子の子の子が死んだとしても永遠に生き続けるがいい。
己が宿業を受け止めるその日まで、死に続けるがいい。
異形の彼女のその娘。私に憎悪を向けてきた彼女は、ただそれだけを告げて私の前から姿を消した。
口から出る言葉は毒とも思えるほどの激痛を伴っていた。
しかし……その言葉は事実であり、真実だった。
胸から湧き上がるのは、爆発的な歓喜と憎悪。
見紛うはずもない長い黒髪。願い思い続けたのは復讐の二文字。
それすらも意味がないと羅刹の娘の彼女は言った。
分かっていると私も切り返した。
復讐が無駄なことだと、分かっていたはずだった。
それでも足は止まらない。灼熱の炎は胸を焦がす。
全力で跳躍しながら、私はとりあえず……そいつをぶん殴ることにした。
それが、八つ当たりだと分かってはいたけれど。
ぶん殴ることにした。
拳の中に石を握り込むと、とても痛い。
そんなことを知ったのは……数百年前か、数十年前か、まぁ……なんでもいいか。
直情的で、激情家で、頭に血が上りやすく怖い者知らず。
と、見せかけて計算高く、熱いようで存外冷静で、付け加えるなら臆病者。
藤原妹紅とは、そういう女だ。
「……全く、あいつにも困ったもんよね」
その妹紅に少しばかり用事があったのだけど、連絡を取ろうとしても不在だった。
案内屋と焼鳥屋を兼任しているせいで、いざという時にいなかったりする。
まぁ、だからこそ私自らが足を運んだわけだけど、それもこれも全部欲しいものが外の世界にしか売っていないのが悪い。
外の世界の品といえば香霖堂だけど、今私が欲しいものは香霖堂では取り扱っていない品物が多い。
私が欲しいものは、役に立つ道具ではないけど暇潰し程度にはなるものだ。
そういうモノを手に入れる手段があるにはあるが……外の世界からやって来る彼女はあくまで人間なので、案内なしでは迷いの竹林に足を踏み入れようとはしない。
閉鎖空間である幻想郷にどうやって侵入しているのか、隙間妖怪をどうやって丸め込んだのかなど気になることは多々あれど、あえて詮索はしないことにした。
世の中には、触れていいことと悪いことがあるのだ。
例えば……そう、子供のお茶目でスカートをめくられたからといって、スカートをめくった子にスカートを履かせ、そのスカートをめくり上げるような残虐プレイをする女性に近づいてはいけないと、私の本能がひしひしと伝えている。
ちなみに、当然のごとく慧音さんから頭突きをもらったのは言うまでもない。
「……やれやれ、それにしても」
しばらく見ない間に、人里も様変わりしてしまったものだ。
月の文化には及ばないまでも、外の技術を取り入れたせいでまるで別世界。様々な所で外の世界の技術が使われ、仕事が楽になったと大評判だ。
私が彼女から受け取った品々も、外の世界の技術が使われたものだし。
ただ……少しだけ気になることはあった。
『……本当は、さ』
楽しそうにテレビを見る子供たちを見つめて、彼女は呟く。
それは――――驚くほどに、優しく暖かく……寂しい目。
『輝夜ちゃんやあいつらみたいに、技術なんてもんは《お遊び》に使ってやるのが一番なんだがね』
工夫と試行錯誤なんて、作った当人だけの問題だ。
技術なんてその程度のものだ。楽なぶんだけ誰かが汗と血を流し、苦労と努力を重ねていることを、使う人間は知ったことじゃない。
そして……作った人間も、いずれ自分の目的を見失う。
最初にあった情熱や喜びなど忘れて、喜んでくれた誰かの言葉に一喜一憂した自分を見失い、よりよくしようと努力して、その努力が重責となることに気づき、一生懸命にやったぶんだけ馬鹿を見て……足掻き、苦しみ、血を流して、それでもなにかを作る。
その時点まで行き着けば、もう既に『つくる』という行為が己の全てだからだ。
馬鹿でいいじゃないかと開き直れればそれでよし。
そうじゃなければ……後に待つのは絶望だけだ。
彼女はそんなことを呟いて、手を振って自分の場所に帰っていった。
意味は分からない。
分からないまでも、言いたいことはなんとなく分かる。
恐らく……外の世界の技術は、幻想郷には過ぎたものなんだろう。
彼女がなにを憂いているのは分からないけど、私にもそれくらいは分かる。
私は死ねない。死ねない体だ。それでも、正常と異常くらいは理解できる。
今の幻想郷は……少しだけおかしい。
まぁ、もっともどんなに幻想郷が変わろうが、変わらない奴もいるんだけど。
そう……例えば、初対面で拳の中に石を握り込んでくる奴とか。
「よお、しばらくだな!」
聞き慣れた声が響く。いつも通りでなんの変化もない声。
姿を見せたのは、紅いツナギに真っ白い髪。日に照らされるとキラキラ光って滅茶苦茶綺麗な……個人的にはとても羨ましいと思っている長い髪。
ちょっと生意気そうで、少し人見知りで、直情なようで冷静。
案内屋で焼き鳥屋。藤原妹紅がそこにいた。
「そんな顔するんじゃねぇよ。私もずいぶんと嫌われたもんだ」
「いや、毎度毎度私を殺しに来る相手をどうやって好きになれってのよ?」
「なぁに、私は嫌いじゃないから安心しろよ。それどころか……今じゃ、恋人同士のような気さえするぜ。だがそれも……今日までだ!」
「……え? なにそれ百合こわい。むしろ気持ち悪い」
「あれ? ……おかしいな、知り合いから借りた『荒野の血闘7 三人のガンマン 怪盗ヤークモの軌跡!』だと滅茶苦茶格好よかったんだけど」
「………………」
妹紅が好きそうなタイトルだけど、とりあえず趣味は悪いと言っておこう。
「荒野をさすらう凄腕のガンマン、サンダウン=キッドと、その首を狙う賞金稼ぎジェイムズ=エイトクラウズ、そして街を守る伝説の保安官ワイアット=アープが共闘するっていう荒野の血闘シリーズでもかなり燃える一作でな、それぞれ主役を張れるこの三人が共闘するってんだから敵の方が哀れってなもんだが、そこはそれきっちり構成が考えられてて敵のボスがこれまた100丁のマシンガンを操る……」
「心底どーでもいいわね」
「少なくとも、輝夜のやってるゲームよりはましだと思うが? あの白いナイトの言ってることはさっぱり意味が分からないんだけど!」
「これだから三級廃人は困るわ。ブロント語は理屈ではなく『魂』で感じることが一番大事とwikiに書かれてることを知らないのかよ?」
「知らないしどーでもいい」
「ググレカス」
「よーし、殺意がみなぎってきた! 今すぐ燃やす! いつも通りに死ねかぐY」
『キャアアアアアアアアアアアッ!』
竹林に響く絹を裂く叫び声。
炎を出しかけた妹紅は肩をコケさせて……それから、私に向かって口を開いた。
「い、今のお前じゃねえよな?」
「馬鹿言わないでよ。当たり前じゃない」
妹紅の前であんな風に叫ぶくらいだったら、死んだ方がましだ。
台所にいた油虫(Gとも表記するアレ)が顔めがけて飛んできたえーりんがあんな感じの悲鳴を上げていたけど、まぁあれはあれで仕方がないような気がする。
何千年生きていても、人類はアイツとだけは和解できないのだから。
「ってことは……っと!」
妹紅はなにも言わずに走り出す。
別に放っておいても良かったけど、少し気になったので私もついていくことにした。
叫び声を聞きつけてやって来てみれば、そこには四人のマスクマン。
白い髑髏に赤いスーツという『私は不審者です!』と全力で叫んでいるようないでたちの……男だか女だか分からないがとにかく怪しい四人組。
その中心には、涙目になっている女の子がいた。
「こいつを連れてきゃノルマ達成だぜ」
「誰か助けてー!」
「こら! 騒がないでよ! ほら……お菓子あげるから……」
「おかしっ!? れいむにもおかしちょうだいね!」
「うるさーい! お菓子ならあげるからどっか行け!」
「ゆゆーん! ありがとう………………おじさん!」
「悩んだ結果がそれかよ!」
「びええええええええええええええええええええええええええええ!」
取り出したお菓子を遠くに放り投げるマスクマン。喜色満面でそれを追いかけるゆっくりれいむ。ツッコミを欠かさないマスクマン。さらに泣き喚く子供。慌てるマスクマン。ジュースを取り出すが、既に時遅し、臨界点を越えた子供は烈火のごとく泣き喚く。
うわぁ……カオスなコントだなぁ。
まぁ、暢気に見てもいられないし、こういう状況を見逃せない奴が一人いるので結局は首を突っ込むことになるんだろうけども。
「待ちなっ!」
妹紅は怒りの炎を燃やしながら、真っ直ぐに歩いていく。
「このロリコンどもが……」
「何だ、てめぇッ!?」
「私か? 私は、通りすがりの……」
その手に炎を灯し、妹紅はいつも通りに吼えた。
「案内屋さんよ!」
マスクマンたちは、妹紅の執拗なローキックに悲鳴を上げて逃げ去った。
女の子には怪我一つなく、妹紅と私は彼女を人里まで送ることになった。
いつも通りとは少し違う展開。
この時既に、歯車が食い違っていることに、私は気づかなかった。
外の世界の技術が広がっていく幻想郷。
奇妙なマスクマンと人攫い。
仕事のようなそうでもないような、探偵ごっこ。
そして、探偵ごっこの果てに辿り着いた場所で、私は思い知る。
外の世界から来た彼女の言葉の……本当の意味を。
思い知ることになった。
と、いうわけで第二話終了。
物語の構成上、わりと短めになっております。
ちなみに以下は作者の考えた実に無駄な裏設定。東方LALとは微妙に関係ないので、人生に忙しい人はブラウザの戻るボタンを押下でGOGO!
『荒野の血闘シリーズ』は某おでん屋の彼女の世界で30年ほど前に流行した西部劇。ある男の手記を元に作られた書籍『西部の真実』を実写化したものであり、現在でも一部のコアなファン(おでん屋含む)を中心に大人気。
前半五編を第一部、後半三編を第二部としているが、特に第五部では第四部でお笑いキャラでしなかなったデロスの過去や秘密などが明らかにされ、その後のストーリーの伏線となっている。
ただ、第七部の展開があんまりだったために第八部で完結となった経緯があるので名作か迷作かは判断が分かれるところである。
荒野の血闘 西部最強の保安官!
荒野の血闘2 保安官最後の戦い!
荒野の血闘3 狂犬マッド・ドッグ!
荒野の血闘4 クレイジー・バンチとの戦い!
荒野の血闘5 デロスの残したもの。
荒野の血闘6 キラークリチャー大決戦!
荒野の血闘7 三人のガンマン 怪盗ヤークモの軌跡!
荒野の血統8 漢たちの挽歌 西部最後の日!
……はい、すみません。西部劇みたいなノリは最高に大好きです。
と、いうわけで無駄極まりない妄想はこんなもんですw
さて、次回は蓬莱編第三話。……蓬莱編の後半あたりで辛くなったらおでん屋編に逃避予定。
お楽しみに♪