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あの変態はなぜパンツを求めるのか? 作者:すなぎも

第一章:三人の変態

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エピソード8:咲き乱れるは百合の花

 まずい。
 たぶん、常森は瞬間移動ができる。
 これは計算外だった。
 予想外の出来事に、混乱する。
 だが待て。
 落ち着くんだ。
 まだあわてるような時間じゃない。
 何か弱点があるはずだ。
 ヤツにも何かあるはずだ。
 「わりぃな。ここまで痛めつけるつもりは無かったんだが、動かれるとやりにくいんで」
 常森が竹刀を振り上げる。
 それは死神の首切り鎌に似ていた。
 断頭台にかけられた気分は、たぶん、こんなにも恐ろしい。
 「そのカメラ、ぶっ壊させていただく」
 逃げろ―――!
 しかし、体を動かそうとすればするほど、横隔膜が軋みをあげる。
 背筋に悪寒が走る。
 もうだめだ。
 竹刀が揺れる。
 全てを諦めかけた。
 そのとき。
 「うわぁぁぁああああ!」
 猪突猛進。
 山田は読んで字のごとく、常森に激突した。
 もみくちゃになって転がる二人。
 数秒後、常森は仰向けで、山田はそれに馬乗りとなる形で二人は停止した。
 「ってぇ、何しやがる!」
 「瞬間移動するとき、服や竹刀も一緒に移動しましたよね? たぶん、あなたは肌に触れているものごと瞬間移動してしまうんじゃないですか?」
 山田は常森の手を握る。
 「―――離しやがれ!」
 「いやです、離しません」
 何かを確信したらしい。
 山田はそう強く言い張ると、


 指を。
 山田は自分の指を常森の指とからめた。


 「はぁ!?」
 「ェへへへ……」
 山田はいやらしい笑みを浮かべる。
 「逃がしませんよ………………」
 「ちょ、ちょっと待て! バカ、やめろ! ひぃいぃぃいい!」
 二人の距離が、どんどんと縮まる。
 それは瞬間移動のようにあっという間にではなく。
 縮まる距離を楽しみながら、ゆっくりと。
 まぁ、楽しんでるのは山田だけだが。
 そして。
 「ん……」
 「んむぅ~~~~!?」
 何かに衝き動かされたかのように。
 両者の唇が絡みあう。
 いや、山田が常森の小さな唇を一方的についばんでいる。
 こうなったらあの百合乙女はもう止まらない。
 山田は常森の背中に腕を廻した。
 「ちゅ……んっ! ……ん……」
 優しく。
 包み込むかのように。
 山田は静かに唇を重ねる。
 「ん……むごぉ! んぁ………ん~~!」
 一方の常森は必死になって逃げだそうとしていた。
 が、その抵抗も虚しく、乙女の唇からは逃れられない。
 「ん……ちゅ……。んんんぅぅ、ん、ん……」
 「ん、んぉ……、んっ! んうぅ……ちゅ、ちゅ……ん……」
 あれ? おっかしいな。さっきまですんごい勢いで戦ってたのにな。
 雰囲気けっこうでてたと思ったんだけどなー。
 「んちゅる、んっ、んんっ、んぅ……。ちゅ、んっ……ん、ぅんん……」
 「ちゅるっ、ん、ん、ん……んうっ! ふぁ、ん……ちゅ、ちゅ……んん……」
 あれれ? 山田が舌を入れはじめちゃったぞう?
 常森も目がとろ~んとしてるなー。
 ……うわ、なんだあれ。
 見ちゃいけない気がする。
 すんごい生々しい。
 「……米倉くん、これは見事な眼福ものだね」
 いつの間にか俺の隣に部長がいた。
 「部長、彼女たちのためにも顔を背けるべきだと思うんですけど、目が離せないんです。なぜですか?」
 「坊やだからさ」
 「わかりやすい答えをありがとうございます」
 つまり我々はチェリーボーイであるからと。
 だから目を背けられないと。
 非常に説得力がある。妙に納得してしまった。
 急に山田が顔を上げると、
 「部長、先輩! ここは山田が引き受けます! ですから、はやく裏ミス鷺森のところへ!」
 「や、やめてぇ……お願い、もう。だ、め」
 「無理矢理やるのは趣味じゃないんですけどね……すみません」
 「て、てめぇ、いいかげんにんぷぅ!?」
 「ちゅ、ん……、ちゅぷ、ちゅるる……、ん、んちゅ、ぬろ……ん、れろ、れろぉ……、ちゅ、んちゅ、じゅるる、ちゅ、ちゅぷ、ちゅるるっ……っ」
 「ん~~!! んむ~~~~!! ぷぁ、ん、んぁ、むぅ~~~~~~~~~~ぁ!!!」
 あ、はじまった。
 乙女の周りにはユリの花が咲き乱れる。
 ……うわぁ!
 すっげぇ、なんだあれ!?
 舌と舌がこう……すげぇ!
 えっ? どうなってんのそれ。
 人体って不思議。
 乙女の 力って すげー!
 「米倉くん、そろそろ行こうか」
 「え、でも部長」
 もうちょっと見ていたいんですよね。
 だって美女二人が絡みあいを拝めるなんて滅多にないじゃありませんか。
 「君は、あの幸せそうな二人の邪魔をするのかい?」
 「! そうですね。俺が間違ってました」
 幸せになってるのはどう考えても山田だけでしたが。
 「行きましょう、俺たちには裏ミス鷺森が待っている。ですよね?」
 「その通りだ、米倉くん」
 常森は山田に任せよう。
 俺と部長は百合空間を後にした。
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