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あの変態はなぜパンツを求めるのか? 作者:すなぎも

第一章:三人の変態

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エピソード7:変態は一人じゃない

 我慢の限界、とばかりに常森が飛びだす。
 それが戦争の始まりであった。
 戦況は五分五分といったところだろう。
 男性風紀委員たちにはあらかじめ退場していただいた。
 もちろん、その手に卑猥な写真を握らせて。
 写真を受け取らないヤツもいたが、そいつらは買収した男性風紀委員たちに引きずられてどこかへと消え失せた。
 「ヒャッハァァァアアア! 汚物は消毒じゃぁぁぁあああ!」
 常森は世紀末なセリフを叫びながら突っ込んでくる。
 「部長! ここは山田めにおまかせを!」
 山田は部長の前に踊りでると、勢いよくフラッシュが瞬いた。
 いない。
 常森がいた場所には、虚空だけがぽっかりとそこに佇んでいる。
 「こっちだよ、お嬢さん」
 山田の背後から聞こえる、声。
 それは俺のものでもなく、部長のものでもない。
 山田の後ろには常森がいた。
 「なっ―――!」
 高く、跳ねる。
 山田はおそらく論理的に跳ねたのではない。
 殺気。
 それが山田をつき動かした。
 逃げなければ、やられると。 
 それは事実。
 山田がいた所を。
 常森の手に握られた竹刀が、空気を切り裂いていた。
 「ちぃ、ちょこまかと……!」 
 「常森! 目標が違うぞ!」
 「はっ、はい! すいません!」
 目標? いったい誰を狙っているというのだろう。
 山田はどうやら違うらしい。
 俺はまずもって風紀委員には見えていないはずだ。
 だとすれば部長に違いない。
 写真愛好部の長。
 頂点をしとめれば、自ずと俺と山田も諦めるという算段か。
 させない。
 「部長、今行きます!」
 俺は部長を守るために、部長の元へ
 「狙いはお前だよ、透明人間」
 ブンッ――――――――――!
 大気を削る重々しい音がしたと同時に、下腹部に衝撃がはしる。
 痛い、と感じる間もなく数メートル吹き飛ばされた。
 「米倉くん!」
 酸素が。
 呼吸が。
 止まる。
 打撃によって狂った横隔膜が正常に働かない。
 肺に空気を送り込もうとするたびに、下腹部の内側から引っ掻き回されるような痛みが襲う。
 「先輩!」
 どういうことだ?
 腹を逆流する血の味を噛み締める。
 あのとき、常森と俺の距離は目測三メートル。
 その距離が、一瞬にして縮められた。
 ありえない。
 理屈を超えた力。
 神が与えた法則さえも書き換えるその能力。
 異能―――。
 「ま……ッ、まさか」
 「やっと気づいたかぁ?」
 いつの間にか常森は俺の足元に立っている。
 ヘラヘラと。
 嗤う常森は悪魔の化身というにふさわしい。
 「そうさ。私もあんたらと同じ、『変態』さ」
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