八 契り
三人は無事に塚本家に帰った。
善太夫は拍子抜けしたようにその場に座り込んだ。
大祐は父に諫言しようとしたが、舎人は病気と言って誰にも会おうとしなかった。元々、十五の元服の時から屋敷内でもあまり顔を合わせる事が無くなった父子であった。亡くなった母をこよなく愛したという。それだけで父を守ろうなどと決心した自分がおかしかった。
佐多に心付けをやり、家に帰した。その蟹のような顔が精悍に笑った。
この男は信じられる。
少し休もうと鈴太郎を伴って自室に入った。
命を捨てて付いてきてくれた可愛い人を胸に懐いて眠ろうと思った。
お互いに背を向けて部屋着に着替えた。
大祐が振り向くと、そこには全裸で髪を解いた鈴太郎が立っていた。
「鈴・・・それは」
「大祐様!」
鈴太郎は大祐に抱きつき、顔を上げて大祐の口を請うた。鈴太郎の左手は大祐の股に差し入れられ、その一物を撫で上げた。
「抱いて下さいませ」
「良いのか」
「大祐様は・・・私には勿体ないほど素晴らしいお方。こんな私と契って頂けますか?」
「嗚呼・・・鈴。儂は遂に見つけた。お前という愛しい者を」
二人は激しく絡み合った。
お互いの肉体の隅々を吸い、その匂いを確かめ合った。鈴太郎の白い肌の下には激しく脈動する血管が妖しく浮き、その肩の傷は深紅に染まった。三十朗に愛され、大きく勃つようになったその胸の飾りは、大祐に囓られ透明な甘い露を出し始めた。
艶めかしく蠢く鈴太郎の汗ばんだ肉体の中に、疲れを知らぬ大祐が入って行く。
死を覚悟して、忘れていた体内の精虫が目覚め、大祐のそれを限りなく滾らせていた。
だが、大祐はまぐわいに没頭する反面、頭の片隅に冴えた意識があった。
(儂の決死の覚悟の弔いが鈴の心を捕らえたようじゃ。儂は本当にあの母子に謝ったのだろうか・・・儂は父を守るという名目で行動しただけではないのか?・・・そうだ、儂の心身がまるで稽古の組太刀を行うように独りでに動いた?)
大祐は、新陰流に潜む奥義と恐ろしさを垣間見たような気がした。
そして最後の愛の瞬間に向かう時、ちらと市兵衛の顔が浮かんだ。何かを為そうとしている意志の顔!だがすぐに消え去り、鈴太郎の喘ぐ声が聞こえた。
そして周期的に訪れる快感の突き上げに昇天していった。
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