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ごきげん氏
作:ごはんライス


 ごきげん氏、というのは、本名が、五木源太郎だから、五木源ごきげん、というのもあるし、いつもごきげんだから、そう呼ばれている、というのもある。
 ごきげん氏は怒ったことがない。いつもニコニコ、ごきげんだ。

 母親が死んだ時も、葬式でずっとニコニコしていた。
 弔辞。
「えー、生前は、母が、ぷっ、お世話、ぷぷっ、ぶわーっはっはっは。ひー。ひー」
 どうも、坊さんのハゲ頭にハエが止まってるのを見て吹き出してしまったようである。
 妻を始め、親族一同は、みな、鬼のような顔をしていた。
 でも、カンケーない。
 ごきげん氏のモットーは、「悲しいときこそ明るく」だからだ。

 しかし、そんなごきげん氏でも、思わず、怒ってしまうことも、たまにはあるもんだ。
 妻の屁を聞いてしまったのだ。
 女性、といえど、人間なのだから、屁くらいする。
 しかし、ごきげん氏の妻は、とても美人なので、なるべくなら聞きたくなかった。
 しかも、妻は、街の居酒屋で歌手をしている。
 屁にまで音色があり、その音は、何かの曲と同じメロディであった。
「プップーププップープー、プープープー」
 二分くらい演奏(?)していた。
 食事中に、である。
 ごきげん氏は、号泣したくなってきた。
 怒鳴って、妻をはったおしてやろうかとも考えた。
 しかし、ごきげん氏はごきげん氏。イメージを崩してはいけない。ニコニコしながら、さんまを食っていた。
 妻はお茶をすすると、また演奏(?)を始めた。
「プップープープープップップ」
「ねぇ。君・・・・・・ははは、いけないよ。ごはん中に、そんなことは・・・・・・はっはっは」
「プップーププッププー」
「ははは。いけない、いけない。美しい君がそんなことしちゃ、ははは」
「プップーププッププー」
 ごきげん氏は、耐えかねて、テーブルをドン!と叩いた。
「いいかげんにしないか!」
 妻が急に笑顔になった。
「よかった」
 ごきげん氏は目が点である。
「へ?」
 はしに持ってたさんまを床に落としてしまった。
「あなたでも怒ることがあるのネ」(了)














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