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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第4章 冒険者 雌伏編

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第04節 蟻の巣


ベギール王国は、他国に比べ緑地の割合が多い。
森林地帯は、豊穣の森のように人々の生活に自然の恵みを与えてくれる。
それは魔物にとっても同様で、しかも奥に行けば行くほど人の手が入っておらず、魔物が隠れるには最適な環境になっていた。
特に厄介なのは、ゴブリン、コボルト、オークといったLvは低くとも繁殖力の高い魔物が人々の生活圏を脅かすことが多かった。
そのため、時々その数を間引くために、ギルドが討伐依頼を張り出すことは珍しくなかった。

ノウェンベル(9月)の終盤に差し掛かろうとしていたこの日も、サフリン子爵領に広がる高丘(たかおか)の森での魔物の間引き依頼が張り出されDランクパーティが受けていた。
高丘の森は、これまで何度もゴブリン、コボルト、オークの目撃情報が寄せられている。
定期的に魔物を間引くために討伐パーティが派遣されているのだが、それでも暫くするとまた増えるといった、完全な(いたち)ごっこ状態が続いていた。
だが、低ランク冒険者にとっては、いい経験値稼ぎになっていた。

「さぁーて。今回もチャッチャとやりますか」
「油断は禁物だぞ」

パーティメンバーの言葉に、リーダーとおぼしき男が注意を促す。

ただ、パーティとしてこの手の依頼は何度も受けているのか、それほど緊張しているようには見えなかった。

「じゃ、行くか」

リーダーがそう言って出発しようとしたときだった。

いきなり地面が揺れだす。

「地震か!?」
「結構大きいぞ!気を付けろ!」

まともに立っていられないほどの大きな揺れだ。
元の世界で震度6に相当するだろう揺れが1分ほど続いた。
イザウルクロウの街は、地震に驚いて家から飛び出してきた人が大勢いてざわついていたが、見たところ家が倒壊するといった被害は見られなかった。

「なんか幸先(さいさき)悪いな・・・・」
「縁起でもないこと言うなよ」
「ははははは」

そんなことを言いながら、出発するパーティだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

「はぁはぁ・・・・、畜生!こんなはずじゃ!」
「煩い!黙って走れ!捕まったらおしまいだぞ!」

高丘の森の調査を請け負ったパーティは何かに追い立てられるように洞窟の入り口に向け逃げていた。


今を遡ること1時間前。

パーティは依頼で受けた高丘の森に向けて歩いていた。
目的の高丘の森は、イザウルクロウの街から北東にあった。
大きく迂回している街道沿いに進むと4日程度かかる場所だが、パーティは多少足場が悪くても森の中をショートカットする近道を選んだ。
この選択が、後に大きな意味を持つのだが、この時点では判る由もなかった。

初日は、単発的にゴブリンと戦闘になることはあったが、パーティの脅威にはならず順調に行軍を進めた。

2日目に入り、それは不意に現れた。

「なぁおい、あんなところに洞窟なんてあったか?」

パーティメンバーの一人が、今までそこにあるはずもなかった洞窟に気がつく。

「いや、そんなことはなかったはずだし、新しく発見されたと言う話も聞いたこともないな」

パーティは、その洞窟に足を止める。
近づいてみると、2m四方の洞窟がぽっかり口を開けており、奥に続いているようだった。

「どうやら、この岩盤で蓋をしていたようだな」
「で、この前の地震で倒れた・・・・・と?」
「結構大きかったからなぁ」
「その可能性が高いだろうな」

入り口の前には、厚さ1m、5m四方の岩盤が倒れていた。
どうやら、その岩盤で入り口を塞いでいたようだが、先日の地震で倒れたようだ。

「さて、どうする?」
「どうするとは?」
「決まってるだろう、この洞窟の扱いだよ。洞窟を調査するか、それともこのまま放っておくか、皆を意見を聞きたい」

リーダーが皆に問いかける。
メンバーは互いに顔を見合し苦笑いをする。

「どうした?」
「どうもこうも、すでに方針は決まっているんだろ?」
「そうそう。そんな顔しているときは、だいたいどうするか決まってるんだよな」

さすがに長年パーティを組んでいるだけあり、リーダーの顔色を窺うだけでどう思っているか判るようだ。

「「「調査するんだろ?」」」


パーティは、リーダーの意向に沿う形で、洞窟を調査することになった。

「でも、どうして調査する気になったんです?」
「ん?」
「洞窟なんて珍しくないでしょ?」

パーティメンバーが疑問を口にする。
いくら、先に受けた依頼に期限がないとはいえ、寄り道するほどのことかと。

「んーその岩が気になってな・・・・」

洞窟を封をしていた岩を指さす。

「その岩、洞窟に封をするには頑丈過ぎないか?よほど出てきてはまずい(・・・)ものがこの中にいるんじゃないかと思ってな。だとするとそれがなにか突き止めないと、大変なことが起こるような気がしてならないんだ。考えすぎならいいんだが・・・・」

((((こういった時のこの人の直感は信用できるからな))))

何度もリーダーの直感に助けられているメンバーは、全員が封をしてあったであろう岩を見る。
そして、今回もリーダーの直感の正しさを再認識することになる。


「どうだ?何かいたか?」
「いや、この辺りには何もいないな」
「しかし、まるで迷路だな」

パーティは、洞窟の調査を開始した。
洞窟の中は結構広く、まるで迷路のようにいくつも枝分かれした通路が多数あった。
構造はダンジョンに非常に似ていたが、はっきりとした階層がある訳ではなく、緩やかに下に向かっていた。
リーダーは、この構造に見覚えがあったが、それがなんだか思い出せないでいた。

30分は経っただろうか。
これまで、魔物に遭遇することはなかったが、メンバーがあるものを見つける。

「これは足跡・・・・か?」

50cmほどの竹状の節が付いた印が、判を押したように無数に地面についていた。
まるで、さっきまでここに何かが居たかのようにハッキリと。
よく見ると、これまで通ってきた通路にも僅かだが、その痕跡はあった。

キュ キュキュ キキキュ

そして、通路の奥のほうから、微かになにかの鳴き声なのか、何かを擦り合わせるような音が聞こえてきた。
パーティは、顔を見合わせながら、音のしたほうに慎重に近づいていき、通路の角から顔を覗かせる。
通路の先にいたのは、体長2~3mもある蟻の集団だった。
先ほど見た足跡は、蟻の付節の部分だった。

「ここは蟻の巣か!」

パーティがここまで廻ってきたのは、蟻の巣のコロニー内だったことに、リーダーがいち早く気が付く。
そして、鑑定持ちメンバーに情報の提供を求める。

「鑑定結果は?」

======================================
 名前:ソルジャーアント
 種族:魔物/バグ

 Lv:40
======================================

鑑定できた情報をメンバーに伝える。

「これからどうする?」
「戦うか?」
「いや、Lvが高すぎる。それにここが蟻の巣だと個体があれだけじゃないはずだ」
「それがいいですね。俺たちには手に余る」

コロニーに大きさにより潜んでいる蟻の数が決まるが、とても百や二百で済むとは思えなかった。
Dランクパーティで対処できる範疇を超えている。

「一度街に戻ってギルドに報告しよう。塞いであった入口が開いた以上いつ出てくるか判らないから、指示を仰ごう」

ここは、イザウルクロウの街からそう遠くないし、数百、場合によっては数千の蟻の大群が街に押し寄せて来たことを考えるとゾッとする。

これからの方針を決め入口に戻ろうとしたとき、パーティメンバーが壁の石を崩してしまう。

カラカラカラ!

その音に蟻たちが反応し、先ほどよりも甲高い声を発しだす。

キュキュキュ キキキュ キキキ!

「ま、まずい。入口まで走れ!」

蟻からの逃亡劇が始まった。


「はぁはぁ・・・・、畜生!こんなはずじゃ!」
「煩い!黙って走れ!捕まったらおしまいだぞ!」

シャカ シャカ シャカ

背後からは、まだ奴等が追いかけてくる足音が聞こえる。

「外までもう少しだ!頑張れ!」

パーティは転がるように洞窟から飛び出してくる。
そして、素早く身構え蟻の襲撃に備える。

しかし、パーティを追っていた蟻たちは、入口の直前で追うのを止めたのか、パーティを追って出てくることはなかった。

「皆、無事か?」

警戒したまま、パーティリーダーがメンバーに声をかける。

「なんとかな・・・・」

パーティリーダーの問いかけに、各々から無事を知らせる言葉が発せられる。

「すぐに街に戻るぞ」

ともかくパーティは急ぎギルドに戻るのだった。

お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字等ご指摘があればよろしくお願いします。

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