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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第1章 ルロワ村編

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第7節 若い薬師と鍛冶師の火傷 後編

前編に続く後編です。

長くなりそうだと思って分割したんですが、思いのほか後編も長く成っちゃいました。^^;

前編のあとがきに追記しましたが、ゴージュの火傷の箇所を足から手に変更しております。
あれから2日が過ぎた。
カムイは、約束通り薬師の家に向かう。
家には、既にイエリュージュが待っていた。
家の中は、イスリーが掃除をしたあと、カムイのほうで必要なものとそうでないものを仕分けし、不要なものは処分しており小奇麗になっていた。
カムイが家に入ると、直ぐにイエリュージュが近づいてきて頭を下げてきた。

「先日は、助けて頂いたと母から伺いました。ありがとうございます。改めましてイエリュージュです」
「初めまして・・・と言っていいのか判りませんがカムイです。俺がここに来た理由については、聞いていますか?」
「はい。村長さんとルークさんに聞いています」
「俺が錬金術はまだ初級程度しか使えませんが、それでも基礎は教えられると思いますのでがんばりましょう」
「よろしくお願いします」

軽く挨拶を済ませたあと、本題に入る。

「さて、まずはこれまでイエリュージュさんがどのようにポーションを作成していたのか見せて頂けますか」
「判りました」

そう言って、奥に薬草を取りに行こうとしたが、何か思い出したように振り向いてこう告げた。

「そう言えば母から聞きましたが、カムイさんは私と同い年と聞きました。ですから私に敬語は不要です。名前もイエリと呼んでください」
「判りましたイエリ。なら、俺のこともカムイと呼んでください」

同い年だし、そのほうが気楽でいいと思って了承したのだが、イエリのほうはカムイを呼び捨てにすることに抵抗を示した。『教えてもらう方にそういう訳には行きません。』と。挙句には『師匠がいいかなぁ?それとも先生がいいですか?』とか言い出したので、

「もう、”さん”付けでいいです・・・・・」

と、最後はそう言ってカムイが折れてしまった。

(うわぁ、父親と違う意味でこいつも面倒クサイ部類かよ・・・。おかしいなぁ、俺のイメージではドワーフはもっと豪快で、細かいことは気にしない種族だというイメージがあったんだがなぁ~。ゴージュさんもイスリーさんもイメージと違ってなかったし。イエリだけが特別なんだろうか・・・)

そう思っている間に、準備が出来たようだ。

「準備ができました」
「では、始めてください」
「はい」

イエリは、何度も繰り返したであろう手順をテキパキと進めていく。初級ポーションの製作自体はそう時間が掛かる物ではない。準備さえできていれば市場に出せる200cc程度は10分も掛からない。

「・・・・出来ました」

自信なさそうに小声でイエリが差し出したものは、見るからにポーションとは明らかに色が違う深緑の液体だった。
鑑定してみると、

薬草を搾っただけの緑汁 効果:なし

イエリは、失敗なのが判っているかのように肩をうな垂れ搾り出すような声で呟いた。

「ポーションの色が水色系なのは私も知っています。でも、何回、何十回やっても緑色の液体しか出来ないんです。私ってやはり才能がないのでしょうか」

何十回、いやそれこそ何百回と失敗し、一向に上手く行かないことに相当自信をなくしているようだ。

「才能・・・・ですか。俺が一番嫌う言葉の1つですね」

そう言って、イエリを見つめる。

「俺の世界の言葉に、このような言葉があります」

~生まれつきの能力(才能)の問題もまったく無視はできない。
それでもやはり、これはおまけみたいなものだ。
絶え間なく、粘り強く努力する。
これこそ何よりも重要な資質であり、成功の要といえる。~

(たしか、アメリカの発明王トーマス・エジソンの言葉だったかな)

「要するに生まれつきの才能はオマケだと。努力することが重要だという意味です。俺からすると独学でここまで出来てるほうが驚きです。見たところ改善点もはっきりしていますし、これなら早い段階でなんとかなるかもしれません」

と言うと、沈んでた顔が一転して『本当ですか!』と笑顔を見せるイエリだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

「まずポーションに必要な、材料は何か言ってみて下さい」
「リカバー草、プロモチ草、蒸留水です」
「じゃ、もう一度その材料を持ってきて見てください」

そう言うと、イエリは奥の倉庫から先ほど使った薬草を持ってきて机に並べる。
蒸留水は、先代が作り置きしてあったビーカーを持ってくる。

「持ってきました」

カムイは机に並べられた素材を見て間違いを指摘する。

「プロモチ草といって持って来たこの薬草は、葉の大きさ、形は良く似ていますがプロモチ草じゃなくレイプロモチ草というハイポーションの素材となる薬草です」

カムイは、そう言って奥の倉庫から1つの薬草を持ってくる。

「これがプロモチ草。違いがどこにあるか判りますか?」

イエリは、2つの薬草を比べながら、交互に見ていたがその違いに気が付いた。

葉脈(ようみゃく)の数が違う?」

良く見ると、プロモチ草の葉脈は左右とも5本ずつ。一方レイプロモチ草は左右8本と明らかに葉脈の数が異なっていた。

「気が付きませんでした・・・・」
「まずは、このことを良く覚えて置いて下さい」
「はい!」

ここまでは、問題なさそうだ。

「では次に、このリカバー草とプロモチ草、いつ頃採取したものか判りますか?」

少し答え難そうだったが、先代が採取した物だと小声で答えた。
そうすると2週間以上前ということになる。

「ポーションを製作するためには、薬草の鮮度が大事です。採取してきたその日、もしくは翌日には処理するのが通常で、長くて3日が限度です。だから、今倉庫にある薬草をいくら使っても、ポーションの製作はできません」

その事実を知って愕然とするイエリ。

「・・・今まで私がしてきたことは何だったの・・・」

目に涙を溜めながら呟くのが聞こえた。
それはそうだ。いくらがんばっても元々できる素材ではなかった事実は辛いだろう。

「ほらほら何故そんなに肩を落とすのですか?」

カムイは、敢えて明るく声を掛ける。

「さっきも言いましたが、製作する手順は誤ってません。あとは素材があれば良いだけですよね?」

イエリは、最初カムイが何を言いたいのか判らなかった。
それだけ、落胆が大きかったのだろう。
しかし、カムイは満面の笑みを浮かべてこう言った。

「では、これから採取にいきましょうか」

 △▼△▼△▼△▼△▼△

確かに、2日前ゴージュに森に行くから、イエリの装備を用意してもらうよう両親にお願いはした。
チラッとイエリを見るが、どう見ても薬草を採取に行く格好ではない。
身の丈ほどありそうなツーハンドアックスに、軽装備ながら全身を固めたフル装備だ。
まるで戦いにでも赴くかのようだ。
さすがに、これは行き過ぎだと思い出かける前に『もっと軽装でもいい』と言ったのだが、

「カムイさんに何かあれば大変ですから」
「いや、これでも冒険し「大丈夫任せてださい!」」

といって聞き入れて貰えなかった。
女の子に守ってもらう俺って・・・・少し凹んでしまった。

======================================
【武具属性】
 [片手斧 Lv1] [両手斧 Lv1]
 [重装備 Lv1] [軽装備 Lv1]

【戦闘補助】
 [攻撃力向上 Lv1] [体力最大容量増加 Lv1]
======================================

こっそり鑑定してみたが、スキルだけみるとどう見ても女の子のスキルじゃないよな。
やっぱりドワーフなんだなと。


「じゃ、早速探そうか。俺は注意点があった時だけ助言するから」

カムイには、マップ上になにがどこにあるか見えているが、そこまで教えるのは今後のイエリのためにならないので必要最低限の助言だけすると言っておく。
薬草を探し方や採取の仕方に関しては、先代から教わっていたのか特に問題はないようだ。


「葉脈を良く確認して。そのリカバー草の葉脈は4本ですよね?」
「本当だ」
「それはまだ成長途中のリカバー草です。無駄な素材を採取しないのも薬師の仕事ですよ。資源は無限ではないのですから」
「判りました」

それ以降も、注意事項だけ指摘しながら採取はイエリに任せていく。
お昼頃には、ある程度の数が揃えることができた。

「そろそろお昼ですし、戻りましょうか」

イエリの家に戻ると、イスリーだろうお昼が用意されていた。
カムイの分も用意されているようだったので、二人で食事を美味しく頂いた。


「さて、では素材も揃いましたので、ポーションの製作を再開しましょう。といっても、これまでの手順どおりやれば問題なくできるはずですから、間違っても焦って失敗しないように」

いますぐ始めたくて、ウズウズしているイエリに一応釘を刺しておく。
イエリは、気持ちを見透かされたのが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして頷く。

新しく採取してきたリカバー草とプロモチ草を使って今朝と同じ手順で作業をしていく。
明らかに、出来ているポーションの色が変わっていることで、イエリも少し興奮気味だ。

ポチャン!

最後の1滴がビーカーに落ちた。
カムイは、出来上がったポーションを鑑定してみる。

ポーション 効果:低級 20%の体力や軽度のケガを治すことができる。回復量は、品質に依存する。 品質C

「これが回復用のポーション・・・」

先ほどまで興奮気味だったイエリを見ると、目に涙を溜めている。
初めてできたことに感動しているのだろう。

「初めてで品質Cとは・・・やはりこれまでの失敗は無駄ではなかったようですね。おめでとう」
「ありがとうございます。カムイさん!」

これで、ゴージュの火傷は治せるだろう。
イエリは、棚からポーション用の100ccの試験管を取り出し適量に別けていく。
これで準備は完了だ。


今ゴージュ宅は緊張に包まれていた。

「カムイよ。本当にできたのか?」

不安げにゴージュが尋ねてくる。イスリーも少し心配な表情だ。
無理もない。カムイが手伝い始めて2日しか経っていない。

「大丈夫です。既に基礎は出来てましたらから、俺は誤っている点を修正するだけで済みましたから。イエリ」

そう言って、イエリを両親の前に促す。

「初めてだから自分ではどこまで効くか判らないけど、カムイさんが大丈夫って言ってくれたから」

イエリは、大事に抱えていたポーションが入った試験管を1本ゴージュに差し出す。
ゴージュはカムイが頷くのをみて、イエリが差し出した試験管を受け取る。

「母さん、包帯を取ってくれ」

ゴージュに言われ、イスリーが手に巻かれていた包帯を外していく。
その間に、カムイが補足を入れる。

「ご存知かもしれませんが、ポーションは怪我の部分に直接振りかけても効果がありますが、直に飲んだほうが効果が上がります。味は決して美味しく・・・というか不味いですが」

説明している間に包帯が取れたようで、手の甲から指先まで真っ赤に腫れており、一部には水ぶくれができ膿んでいるような状態だった。見ていて、良くここまで我慢していたものだと半ば呆れてしまう。
包帯が取れると、ゴージュは何の迷いもなく試験管を開けポーションを一気に飲み干した。
それを心配そうに見つめるイエリ。
しかし、その心配をよそにゴージュの手は腫れが引いていき、見かけはほぼ元の状態に戻っていった。

「お父さんどう?」

見た目は成功に見えたが、心配してイエリが声を掛ける。
ゴージュは、無言のまま手を握ったり開いたりを繰り返す。
そして、鍛冶用のハンマーを手にし、握った感触を確かめる。

キン!キン!キン!

握ったハンマーで軽く金床叩いてみる。

「ふむ・・・・・」

ゴージュは、そう呟くと今度は思い切り叩き始めた。

ガン!!ガン!!ガン!!

「ちょっと、お父さん!」

いきなりの行動に困惑したイエリがゴージュを止めに入ろうとしたが、それをイスリーが手で静止する。

「お母さん!?」

ゴージュは、額に汗を浮かべながら一心不乱にハンマーを振り下ろす。
5分ほど続けていたが『ふぅ~』といってようやく手をとめた。

「問題ないようじゃ。ありがとうイエリ」

そう言って、イエリに笑顔で答えた。

うわ~~~~~~~!!

ゴージュのその言葉に、イエリが声を掛けようとするより早く、いつの間にか家の周りに集まっていた村人から歓声があがった。

(いつの間に!?)

どうやら、久しく途絶えていたゴージュのハンマーを振るう音に自然に集まってきたようだ。
村人の歓声は、ゴージュの怪我の完治を祝福するとともに、新たにイエリュージュという薬師が誕生したことによる祝福も含まれていた。

イエリを見ると、ゴージュとイスリーと抱き合って泣きじゃくっていた。

(とりあえず最後の一仕事で俺の仕事はこれ終わりだな。)

カムイは、感動に浸っているイエリのもとに近づいて『最後に伝えることがある』と言うと、流れる涙を拭い俺の前に進んでくる。

「俺が教えられることはここまでです。厳しいようですがあとはイエリの努力次第です」

そう言って、1本のポーションを取り出す。
カムイが話をしだすと、先ほどまで喧騒に包まれていた広場は鳴りを潜め、全員がその言葉に耳を傾ける。
イエリは、それが何かすぐに判ったようだ。

「そうです、これは先代の作成したポーションです。俺やイエリが作ったものより遥かに良い品質のものです。これからは、これと同等、いやこれ以上の品質を目指してお互い精進する必要があります。もちろん生半可な努力では追いつけないでしょう。それを乗り越える覚悟がありますか」

イエリは、しばらくカムイから目を離さず、それから力強く頷いた。
その目には、もう迷いはなかった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

その夜、カムイは今日の出来事を考えていた。
もちろん、イエリのポーション製作に関してだ。
ただ、その内容は、製作とは別の話だった。

確か、森に入ったときにイエリを鑑定したときには、錬金術のスキルは持っていなかった。
しかし、ポーションの製作ができたとき、もう一度鑑定をしたときには錬金術のスキルを取得していた。

======================================
【武具属性】
 [片手斧 Lv1] [両手斧 Lv1]
 [重装備 Lv1] [軽装備 Lv1]

【戦闘補助】
 [攻撃力向上 Lv1] [体力最大容量増加 Lv1]

【生産】
 [錬金術 Lv1]
======================================

そのことについて、ずっと考えていた。
それは、この世界に着てからの疑問でもあった。
カムイは、ポイントによって能力値やスキルを習得する。では、この世界の住人はどうやって(・・・・・)スキルを取得しているのか。自分と同じではないと思っていたが、今回の件である結論に行きついた。

(熟練度システム)

現代のMMORPGでも時々スキルアップの方法や隠しパラメタとして採用されていることがあるシステムで、武具や職に付随するスキルを使えば使うほど経験値が溜まるというシステムだ。どうやらこの世界では隠しパラメタの扱いになってるようだ。
そう考えれば、今回イエリが錬金術のスキルを習得した説明が付く。

この世界のシステムが1つ判っただけでも、今回引き受けた甲斐はあったなと思うカムイだった。
この世界の住人のスキル取得システム(熟練度システム)が判明しました。
※熟練度システム:そのキャラの取った行動によって成長が変化して行くシステム

お読み頂きありがとう御座います。
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