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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第3章 冒険者 揺籃編

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第30節 トーナメント開幕


いよいよ、研修生たちが研修の成果をお披露目するトーナメントの日がやってきた。

トーナメントは、王都の闘技場を使って行われる。
闘技場は、ヴューベルにあるギルドに併設されているような規模ではなく、古代ローマのコロッセウムに似た円形闘技場だ。
客席は3階まであり、舞台と観客席の間には安全のため魔道具による障壁が設けられている。
Sランク冒険者のスキル、魔法に耐えうる強度だというから、研修生の攻撃ではビクともしないだろう。
1階は、皇族や貴族、学園の関係者用であり、2、3階が一般民衆用に割り当てられていた。

トーナメントは、王都でも数少ないイベントの1つでもあり、闘技場は入場料さえ払えば一般客も入場することができた。
そのため、娯楽に飢えた民衆がチケット売り場に長蛇の列を作っていた。

また、コロッセウムの周りには露店が数多く出店しており、どの露店も賑わっていた。

しかし、カムイが一番驚いたのは、どのパーティが優勝するかトーナメントを賭けの対象としていることだった。
5社のブックメーカーが独自のオッズを付けチケットを販売しており、どのブックメーカーテントの周りは一攫千金を夢見た民衆が人だかりを作っていた。
中には、複数のブックメーカーをハシゴして狙ったパーティに一番高いオッズを付けているブックメーカーからチケットを買っている者も見られた。

さすがに、予想屋までいたときには失笑してしまったが・・・・。

1番人気は、やはりと言うかファブリスのパーティだった。
予想屋の話を聞いていると、元々学園内での成績もいいことに加え、深紅の傭兵団が鍛錬したことまで知れ渡っており、それが人気の要因にもなっているようだ。

ある予想屋にファティマのパーティについて聞いてみた。

「マルティロシン伯爵家のお嬢さんのいるところかい?ん~ちょっと厳しいな」
「どうしてです?」
「なんでもDランク冒険者が鍛えたとの噂だからな。まぁ噂をそのまま鵜呑みにするほど俺も馬鹿じゃないが、パーティお披露目では他のグループがCグレード装備だったにもかかわらず、Dグレード装備だったそうだ」
「お披露目は昨日ですよね?そんな情報よく入手できましたね」
「まぁな。蛇の道は蛇じゃないが、情報収集で食ってるようなもんだからな」
「なるほど」
「で、見たところニーチャンは冒険者のようだが、ご存じの通り装備の差はそのままパーティの戦闘力に直結するからな。よほどのことがない限り優勝は難しいと読んだわけよ」

ファティマたちを鍛えた本人が目の前にいるとは露とも思ってない予想屋が自信あり気に根拠を披露する。
こっちの世界の人間であれば予想屋の説明に納得しているところだ。

「参考になりました」

そう言って予想屋に金貨1枚を渡す。

「いいのかい?こんなに」
「面白い話が聞けたお礼ですよ」
「悪いな、ニーチャン。俺は予想屋のガロッツォだ。なにかと贔屓にしてくれよ」

どうやら、カムイを上客と思ったようだ。

この出会いが、後々切っても切れない縁になるのだが、まだこの時点では2人とも知る由はない。

カムイは、5社のブックメーカーからファティマのパーティのチケットをそれぞれ白金貨1枚分購入した。
どのブックメーカーも、購入金額を聞いて賭けを受けるかどうか一瞬迷っていたが、購入対象が10番人気あたりに位置するパーティと知って『優勝は難しい』と判断したようだ。
どのブックメーカーも賭けを受けてくれた。
ちなみに、その時のオッズはブックメーカーでまちまちだったが、概ね20~23倍だった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

トーナメントは、王をはじめ皇族、研修生を派遣されなかった貴族らも観戦するようだった。
カムイは、ロトクルイド男爵家の関係者として1階に割り当てられたエリアに案内された。

そこから2、3階を見回し感嘆の声を上げる。
2、3階で約15万人収容できると説明してもらったが、超満員で立ち見まで出ていた。

「すごい観客ですね。毎年こんな感じですか?」
「そうだ。こういったイベントは少ないから、珍しいもの見たさに盛況になるな」

元々、人間は狩猟民族であり、こういった戦いに異常に興奮を覚えると何かの本で読んだのを思い出した。
こちらの世界でもそれは変わらないようだ。

「剣闘士はいないのですか?」
「剣闘士?なんだね、それは?」

どうやらこの世界には、いないらしい。

「俺の国では、定期的に闘技会が開催され、闘技会に参加する戦士を剣闘士と呼んでいました。一種の職業みたいなものです。そこで剣闘士同士、あるいは剣闘士と魔物などの戦いを民衆の娯楽として提供していました。強い剣闘士には莫大な賞金と名誉を与えることで、それこそ命を懸けて戦わせる訳です」
「面白そうだな。我が街でも開催できるものなのか?」
「可能だと思います。だた、魔法に対する備えがありませんので、あくまで剣技のみという条件にはなりますが・・・・。あと、まったく武器を使用せず、己の肉体のみで戦う拳闘士という職もありました。普段は武器を使っていても、素手に自信がある冒険者も沢山いるでしょうから、どちらも参加者には困らないと思いますよ」

そうは言って見たものの、ギルドに併設してある闘技場は娯楽用に作られていないため、客製も数える段差しかなく興行として行うには改造もしくは新設する必要があることは説明として付け加えた。

「カムイよ」
「はい」
「帰ったらその話をもっと詳しく教えてくれ」
「分かりました」

こうして、ヴューベルを発祥の地として各地で剣闘士、拳闘士の闘技会が開催されるようになり、王都で全国大会が開催されるまでにそう時間は掛からなかった。
また、その功績を称えられロトクルイド男爵が陞爵(しょうしゃく)することになるのだが、それはもう少し後の話になる。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

トーナメントのオープニングゲームは、アガシャン侯爵家に派遣されていた研修生とケトエフ子爵家に派遣されていた研修生の対決だ。
ちなみに、ファブリスのパーティは、第3試合、ファティマたちは第6試合に組まれていた。

闘技場に設けられた東西の門が開き対戦する研修生が入場してくると、大歓声とともに迎えられる。
オープニングゲームということもあり、両パーティとも相当緊張しているのが判る。
審判である教師を挟み、5mほどを空けて対峙する両パーティ。

審判が両手を広げ観客に静まるよう合図を送ると、歓声も次第に収まっていく。

審判の声が聞こえる程度まで静まると、審判の合図あわせて王に一礼、そしてお互い向き直り一礼する。

『お互い準備はいいか?悔いの無いように全力を尽くすように』

その言葉に両パーティのリーダーが頷く。

『第1試合、始め!』

審判に宣言と同時に両パーティが陣形を組む。
陣形は、武器や職が異なるため異なる陣形に見えるが、両パーティともに横隊の陣形だ。
横隊の陣形は、17世紀から18世紀のヨーロッパの軍隊で多用され、3列が一般的で縦隊と合わせてで運用されることが多かった。

アガシャン侯爵家側は、1列目に重装備と盾を持ったタンカー、アタッカーを配置し、2列目に重装備で槍を持ったアタッカーを配置、3列目にメイジとヒーラーを配置した構成だ。
Lv的には、アガシャン侯爵家のメンバーのほうが若干上といった程度で、ほぼ互角だった。

ケトエフ子爵家側は、1列目はアガシャン侯爵家と同様の構成だったが、2列目には誰も配置せず、変わりに3列目に弓を持ったアタッカーが配置されていた。

闘技場という限られた空間での戦いのため、横隊の弱点である移動速度の遅さを気にする必要がない。
ただ、側面や背面からの攻撃には脆弱なのだが、両パーティが同じ横隊の陣形のためそれも気にする必要がなかった。

カムイは、事前の情報収集により、ファブリス以外の騎士団に鍛えられたパーティはこの横隊の陣形を取ることが判っていた。

騎士団は、ひとたび戦争が始まれば各領地から集められ国のために戦う。
この際、領地ごとにバラバラの陣形をとっていたのでは、統率が取れない。
そのため、騎士団で訓練される陣形は、横隊と縦隊と決まっていた。
『騎士団は、縦隊で前進し、敵前で横隊に展開して攻撃を開始し、敵陣突破の際には再び縦隊を組む』とロトクルイド男爵第一近衛隊隊長スフライドから聞いていた。
このことからも、騎士団に鍛えられたパーティは、どのパーティも横隊の陣形を取りながら訓練していた。

戦いは学園内の成績が示すとおり、地力が上で2列目の槍士が前衛3人の間から効果的にダメージを与えているアガシャン侯爵家が押していた。
ケトエフ子爵家側は、3列目の弓士が前衛の隙間を狙うほどの腕を持っていないこともあり、戦力的には半減していた。
陣形に拘らず自由に遊撃の役割を果たすように訓練していれば、また結果は違ったのだろうが、そこまでの転機は利かないようだ。

そうするうちに、ケトエフ子爵家の前衛の1角が崩れると形勢は一気にアガシャン侯爵家に傾いた。
次々と前衛が倒され、壁役がいなくなったことで後衛もあっという間に、アガシャン侯爵家に飲み込まれていった。

『それまで、勝負あり!』

それまで、固唾を呑んで見ていた民衆も、審判の勝利宣言とともに沸きあがり、勝利したパーティに惜しみない歓声と拍手を送る。
こうして、第1試合はアガシャン侯爵家側が勝利で終わるのだった。

お読み頂きありがとう御座います。
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