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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第3章 冒険者 揺籃編

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第29節 前夜祭


カムイは、研修生を無事に王都に帰したあともあり、翌日は牛歩亭でゆっくり惰眠を貪ることができた。
といっても、日課である柔軟を含む鍛錬は欠かすことはないため、起床する時間は変わらないのだが・・・。

「おはよう、ユスフィ」
「おはようございます、カムイさん。朝食ですか?」
「うん。もう男爵邸に行かなくてもいいからね。いつもの頼むよ」
「はい!」

それを聞いたユスフィは、満面の笑顔で厨房に向かう。
研修期間中は、コミュニケーションの一環ということもあり男爵邸で研修生たちと摂っていた。
それも終わり、こうしてまたいつもの日常が始まったことにホッとする。

ユスフィと入れ替わるように、厨房から女将であるカミアが出てくる。

「おや、カムイ。もう研修はいいのかい?」
「えぇ、無事に終わったので、こうしてまた朝食を頂きにきました」
「そうかい、そりゃよかった」
「よかった?」
「カムイがいない間、娘が寂しそうにしてたからね。また相手して「お母さん!!」」

カミアが全部言い終わる前に、朝食を運んできたユスフィに遮られる。

「余計なこと言わなくていいの!まったく。はい、カムイさん。いつものモーニング」

いつもと変わらぬ母子の会話、出された朝食、たった1か月だというのに全てが懐かしく感じるカムイだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

朝食のあとギルドに向かうカムイ。
指名依頼の完了報告を行うためだ。

「おはようございます。カレリーナさん。シータさん」
「「おはよう、カムイくん」」

まずは受付のカウンターに行く前に、いつものように併設されている酒場のカウンターに行く。
特に注文は出していなかったが、カムイがカウンターに着くと同時にミックスジュースが差し出される。

「ありがとうございます」

笑顔のカムイの言葉に、酒場のマスターは笑顔で目礼を返す。

牛歩亭でもそうだったが、いつもと変わらぬ日常に笑顔が自然とこぼれる。

行儀は良くないが、ミックスジュースを片手に受付カウンターに向かう。

「指名依頼の完了処理をお願いします」

そう言って、男爵の署名入りの依頼カードをカレリーナに渡す。

「お疲れさま。じゃ、ギルドリングを翳して頂戴」

ギルドリング:八岐大蛇
======================================

 冒険者ランク:Dランク

 クエスト達成数:16

 魔物討伐総数:2369

 討伐レイド:1
  ティーラーク Lv28(D)
  フンババ Lv29(D)

 踏破ダンジョン:6
    元始のダンジョン(7)
  ウーヌム(第1)ダンジョン(12)
  クィーンクェ(第5)ダンジョン(18)
  ノウェム(第9)ダンジョン(25)
  デケム(第10)ダンジョン(10)
  トレデキム(第13)ダンジョン(12)

 踏破モニュメント:3
  光と闇の神殿(3):ロトクルイド男爵領
  オーラキ神殿(2):アガシャン侯爵領
  旧遺跡跡地(2):ケトエフ子爵領

 踏破ラビリンス:0

 踏破タワー:0
======================================

「はい。更新完了よ。Cランクが見えてきたわね」
「ありがとうございます」

クエスト完了件数が累計20件に達するとCランクに昇格する。
カムイとしては、特に急ぐこともないと思っており、焦ってつまらない依頼だけは受けないよう注意することにしていた。

「そうそう、ギルド長が用があると言ってわ。ちょっと待って呼んでくるから」
「ギルさんが?」

(また、つまらない指名依頼じゃないだろうな)

そう思っている間にカレリーナがギルバードを伴って戻ってきた。

「研修生の鍛錬ごくろうじゃったな」
「ほんとうですよ。次からは指名依頼出す前に相談して欲しいですね」
「そんなことしたら、おヌシは断るじゃろうが」
「つまんない依頼は御免被りたいですからね」

指名依頼は、本来依頼主が指名した冒険者の実力や信用を評価して依頼するものだが、カムイはそんな事情には関心がない。
単にその依頼が冒険心をくすぐるような面白い内容なのかが重要なのだ。
そのため、今回のように自分の知らないところで決められることに、嫌悪感を示したのだった。

「まぁ、ええわい。今日は例のトーナメントの観覧招待が来ておってな。実際に彼らを教えたのはカムイ、おヌシだからどうかと思ってな」

どうやら、学園からトーナメントを観覧するための招待状が男爵のところに届いたらしく、その中の1枚をカムイに渡したいと思っているようだ。

他の研修生がどういった戦いをするのか気になるし、当然自分が鍛えた研修生がどう戦うのか見てみたいとは思っていた。
観覧は、ロトクルイド男爵、コロバルトとギルバードが一緒にすることになるとのことだ。

「行きます!」

思わぬ誘いに、二つ返事で答えるカムイだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

(なぜこんなことになった・・・・・・?)

ギルバードからトーナメント観覧の誘いを受け、男爵と一緒に王都にやってきたのはいいが、カムイは今仮面で瞳の色を隠しパーティに参加していた。
壇上には、『トーナメント前夜祭』と書かれた看板が掲げられ、大勢の来賓(そのほとんどは貴族だと思われるが)とトーナメントに参加する研修生を含む学園関係者と思われる人でホールは賑わっていた。
また、ギルド関係者なのか礼服ではなく冒険用の装備で参加している人もいた。
当然そこには、ドゥオ(第2)ダンジョンで見かけた深紅の傭兵団ユーグらの姿もあった。

カムイは、パーティがあることを知らされていなかったため、参加を断っていた。
理由は、パーティ用の礼服など持ってるはずもなく要らぬ騒動が起きることを危惧してだ。
本音は、風貌が目立つだけに注目を浴びるのが嫌だったからだが・・・・。

そうしたところ、コロバルトの入れ知恵だろうカムイが断るだとうと予測してか、用意周到に目元を隠す仮面が準備されていた。

「これなら大丈夫だろ?」

しかも服装は冒険のときに着ている装備で問題ないとのことだった。
男爵は、どうしてもカムイをパーティに参加させたいらしい。

だんだんと断る口実が仮病くらいしかないような状況になってきたため、渋々参加を了承したのだった。
それでも極力目立たないように、観葉植物の陰に隠れながら気配を消して、ひたすらパーティが終わるのを待っていた。

壇上では、貴賓や学園関係者の挨拶が延々と行われていたが、まったく興味のないカムイは話どころか壇上に視線を送ることさえしなかった。

そんな中、男爵のところにマルティロシン伯爵、ルルデスがやってきて言葉を交わす。

「ロトクルイド男爵、この度は(ファティマ)が世話になった」
「とんでも御座いません。当家の(エステル)も同じパーティでしたので」
「それにしても、どういった鍛え方をすればあのようになるのか教えて貰えないだろうか」
「それについては、私も同じく驚いております」
「ん?君のところで鍛えたのではないのかね?」
「その通りで御座いますが、実は鍛錬にはあそこにいる冒険者に一任していましたもので内容までは把握していないのです」

そう言って、観葉植物のほうを指差す。
そこには誰もいないと思われたが、意識をそこに向ける(・・・・・・・・・)と陰に隠れるように壁に寄りかかっている一人の男がいた。
そこでようやくカムイの存在を認識する伯爵たち。

「! 彼が・・・・」

カムイは、コロバルトに『旦那様がお呼びです』と囁かれ、伯爵たちの前に立つ。

「「久しぶりだな(ね)」」
「ご無沙汰しております」

まず、アレクサニン伯爵とルルデスが声をかけてきた。

「なんだ、お前たちは顔見知りなのか」
「リュックとリンスの件をお話したじゃありませんか」
「そうだったかな?」
「ヴューベルで冒険者をやっています、カムイです。田舎者ゆえ無作法のほどはご容赦下さい」
「なぁに、アレクサニン伯爵やルルデスと同じように接してくれて構わんよ」
「ありがとう御座います」

アレクサニン伯爵といい、マルティロシン伯爵夫妻といい、堅苦しいことを言わないことは有難かった。
隣では、伯爵家の当主とそのような関係になっていることを知らなかったロトクルイド男爵の顔が引き攣っていた。

「しかし、なぜ仮面を?」
「どうやら、俺の見た目は魔族に似ているそうで、いらぬ混乱を招かないようロトクルイド男爵が用意してくれました」

そういって肩をすぼめて、口元を綻ばせる。
マルティロシン伯爵は、ロトクルイド男爵が頷くのを見ると、

「素顔が見れないのは残念だが、そういうことならそれはまた次の機会にとっておくとしよう」
「申し訳ありません」

と残念がった。

「ところで、さっきから皆で修練の内容について話をしていたところなんだ」
「そうでしたか」
「一体どんな魔法を使ったら、こんな短期間で強くできるのだ?」

どうやら、ファティマは王都に帰ったあと、修練の成果を伯爵の騎士団相手に見せたそうだ。

「雰囲気とかで、出発する前と比べて強くなっているだろうとは思ったが、隊長、副隊長クラスでなければ太刀打ちできないのは驚きだった。なにか秘訣があるのか知りたいと思うのは私だけではあるまい?」
「その通りです。我が娘は魔術師ですが動きに無駄がなくなり、なにより魔法以外での戦い方もサマになっておりました」

マルティロシン伯爵の言葉にロトクルイド男爵も頷きながら同意を示す。

「特別なことはなにも。戦いに対する準備、心構えとパーティでの戦い方を教えただけです」
「そうなのか?」
「えぇ、それに俺が教えたのは、冒険者としての戦い方です。騎士団のように戦争のような大規模戦闘を想定した戦い方とは根本的に違いますから。1対1であれば騎士団の戦い方とは相性がいいと言いますか、そういう戦い方を教えましたから。それよりも1対1で負けない、隊長、副隊長のレベルの高さが伺えるというものです」

ファティマに負けた騎士団のメンツを立てる意味でも、ここは多少なりともフォローを入れておく。

「ふむ、そう言われるとそんな感じにも見えなくはなかったな」

カムイの説明に納得するマルティロシン伯爵。

そんな話をしている間にも、壇上ではトーナメントに参加するパーティの紹介が始まっていた。

「あなた、そろそろ行きませんと」
「お、そうだな。すっかり長話をしてしまったが、困ったことがあったらいつでも尋ねてくるといい」
「ありがとう御座います」

アレクサニン伯爵、マルティロシン伯爵夫妻は壇上近くの元いた位置に戻るのだろう、人垣の波にのまれて見えなくなった。
アレクサニン伯爵は、ずっとマルティロシン伯爵の話を聞いているだけだったが、別れ際にカムイから『あれからなにか進展がありましたか?』との問いに、無言で首を振るだけだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

壇上では、トーナメントに出場する学園の生徒たちが緊張した面持ちで上がっていた。
全16チームでトーナメントを行うことが、壇上の司会者が説明する。

カムイは、また隠密で気配を消し観葉植物の陰に隠れながら、壇上のパーティを鑑定していく。
どのパーティもLv20前後のようで、ファティマたちの相手ではなさそうだ。
ただ1つのパーティを除いては。
そう深紅の傭兵団が鍛えたファブリスがリーダーのパーティだ。
Lvは27とファティマたちより若干低めだが、なにせ鍛えたのが、Aランクパーティである。
どんな戦い方を教わっているか判らないし油断はできない。

そうしている間にも壇上では、トーナメントの組み合わせを決める抽選に移っていた。
パーティの代表者が次々とクジを引いていき、司会者がクジを読み上げると『オーッ!』という歓声があがり、

そして、最後のパーティの枠が決まったことで、トーナメント表が完成した。

懸念していたファブリスたちとは違うブロックになり、決勝までは当たらない。
これであれば、それまでの戦い方で対策も立てられるだろう。
もちろん、その逆も考えられる訳で、いかに決勝まで手の内を明かさないかにかかっている。

あとで早速皆と作戦会議でも開こうか。
そんなことを考えているカムイだったが、同様のことを考えている者がいた。
そう、深紅の傭兵団のユーグたちだ。

「どう鍛えたらあの期間で二次職までいけるんだ?」
「スキルもきちんと上がっているみたいだから、パワーレベリングで無理やり上げたという訳でもなさそうだし・・・」
「よほど教えた人間が優秀だったんだろう」
「そうね。これならちゃんと調べておけばよかったわね」

ユーグたちもカムイ同様他のパーティの情報収集は行っていた。
ただ、ファティマたちを鍛えるのがDランク冒険者と聞いて、動向調査の対象から外していたのだった。
そのため、デケム(第10)ダンジョンでレベル上げをしているなどと夢にも思わなかった。

「これは作戦会議をしたほうがよさそうだ」

そう言って明日からのトーナメントの準備に入るカムイとユーグたちだった。

お読み頂きありがとう御座います。
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