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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第2章 冒険者 黎明編

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第22節 革の街ニバックル

防具の素材調達のためにタヌマリ男爵領に来たカムイ。
初めての場所なので、ガイドを雇うことにしたのですが、合格したのは男爵令嬢とその騎士のパーティ。
トラブルの匂いしかしませんが、果たして・・・・

9/23 誤字・脱字と一部文章変更
ウォーター・タヌマリ男爵領ニバックル。
ベギール王国の中でもトップ3に入る革の生産地だ。


ヴューベルの革細工職人に聞いたところ、

「ここから近い産地となるとタヌマリ男爵ニバックルだね」
「また、遠いですね」
「はははは、他の産地はもっと遠いぜ?」
「そうなんですね・・・ありがとうございます」

その後、カレリーナとシータにタヌマリ男爵領ニバックルに行くにはどうすればいいのか聞いてみた。
ベンジャミン男爵領レサンジェールを抜けて更に東に向かえばタヌマリ男爵領アロンに着そうだ。

「他の領地に滞在する場合、その中心ギルドで滞在証明書を発行してもらう必要があるの」
「滞在証明書?」
「そう。カムイくんはギルドリングがあるから身分は保証されているけど、やっぱり余所者には目的も無くうろついて貰いたくないのはどこも一緒よ」
「この街でも当然、他の領地から来た冒険者には理由を聞いて問題なければ発行しているわ」
「そうだったんですね」
「で、カムイくんはなにしに行くの?」
「防具を製作するのに、革が大量に必要なのでその仕入れですね」


そんな訳で、その滞在証明書を発行してもらうため、タヌマリ男爵領の中心地アロンに来ている。
いつものように、初めて訪れる場所ではローブを着込み、深めのフードで顔を隠している。

それと、ヴューベルを出発する際、ベンジャミン男爵領レサンジェール、タヌマリ男爵領アロンと主要地を訪れるため、リターンの登録地が増やせるようLvを上げておいた。

[リターン(5/15) Lv5] (Lv4×1P)

すでに、レサンジェールとアロンは登録済みだ。

アロンのギルドで滞在証明書の発行依頼をお願いしたところ、用紙を渡され『滞在期間と滞在理由を記載してください』と言われたため、滞在期間:10日、滞在理由:革素材の視察及び、仕入れと書いて提出した。
内容を確認したあと、ギルド職員が用紙にギルド印を押して返却してくる。

「退去する際にもう一度提出をお願いします。その間無くさないようにお願いします」
「仮に期間中に戻ってこれなかった場合どうまりますか?」
「その場合は、延滞料金を払って頂くことになります」
「判りました。気をつけます」

これで、手続きは完了のようだ。
あとは、ガイドのため腕の立つ冒険者を雇うため、依頼の申請をする。

===依頼カード=====================================
対象  :Cランク以上(2~3人の小パーティ希望)
内容  :ニバックル近郊のガイド、護衛
報酬  :1日銀貨10枚/人(宿代、食事当方持ち)
追加報酬:なし
依頼期間:10日(その間一緒に行動できる方)
特記事項:護衛のための腕試しあり
     本日15時まで受付:希望者は闘技場まで
依頼主 :冒険者 カムイ
==============================================

申請書を提出して受理されたのを確認したあと、闘技場に向かった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

朝から貼られているカムイの依頼書を見ている3人がいた。
もうすぐ〆切の15時になろうとしているが、まだ貼られているということは、応募者がいないのか、それとも腕試しで合格者が出ないのだろう

「マティアス、これ・・・・」
「確かに今回の任務の隠れ蓑には最適ですが・・・」
「私は依頼主の名前を聞いたことがありませんが、何者でしょう?」
「さぁてな。本当にただの冒険者なのかもしれないし、敵の罠という可能性もありますが・・・」
「あれこれ考えてもしょうがないわ。まずは会って見ましょう」
「そうですな」
「キアラは、いつものようにね」
「はい」

キアラと呼ばれた女性は、その場から姿を消す。

「時間もありませんから、闘技場に向かいましょう」

そう言って、2人の冒険者は闘技場に歩き出した。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

依頼を張り出してから、何組かの冒険者パーティから申し込みがあった。
申し込んできた冒険者は皆Cランク冒険者のパーティだったが、どれも見掛け倒しでカムイの出した課題をクリアする者はいなかった。

(ん~なかなか腕の立つ冒険者は集まらないもんだな。まぁ、腕があればガイドなんて暇つぶしにもならないか・・・)

チラッと壁に掛かっている時計を見る。
15時まであと5分を指していた。
半ば諦めかけていたところに、男女2人組みのパーティが声をかけてきた。

「あなたが依頼書を出してた、カムイさんでいいのかしら?」
「えぇ、そうです。腕試し希望者ですか?」
「そうよ。私はモニカ。後ろにいるのがマティアス。ともにCランクよ」
「俺はヴューベルで冒険者をやっていますカムイといいます。ランクはDです。」

お互い簡単な自己紹介をする。

「ここに来られたということは、依頼書の内容は了解して頂いたと理解していいですか?」
「結構よ。それで腕試しとは?」
「これです」

そう言ってあるものを指差す。
そこには1辺が3cm程の木の棒が固定されずに立てられ、その上に拳大の石が置かれていた。

「獲物はなにを使っても構いませんし方法も問いません。木の棒から落とさずにその石を切ってください。ただし、木の棒が倒れても失格です。また、切り口は必ず真ん中でなくても構いませんし、縦、横、斜め、好きなやり方で結構です」

この試し斬りを見て、第一声を聞けばだいたいの腕前が判る。

「そんなの簡単じゃない。ね、マティアス」

これまで、依頼の申し込みをしてきたパーティは、モニカと同様に全員『簡単だこんなの!』『この程度でいいのか』とか言っていたが、ことごとく失敗している。
実は、使用する武器より軽く固定されていない物を切ることは思った以上難しく、相手の力量を測るのには十分なのだ。

マティアスは、カムイの意図を見抜いたのだろうモニカにやって見るよう言う。

「では、お嬢。先にやってみますかい?」
「え?いいの?」
「えぇ」

モニカは自信満々のようだが、カムイもマティアスもほぼ間違いなく失敗すると思っている。
モニカは、腰の鞘からショートソードを抜き、正眼に構え石に集中していく。
構えも集中力の仕方も悪くない。

「エイッ!!」

そのまま気合を付けて、袈裟懸けで石を斬りに行く。

シュッ!
ガッツ!! カランカラン!!

しかし、木の棒は倒れ、石も斬れずに切り口が欠けただった。

「もう一度挑戦しますか?」

そう言うと、ショートソードを鞘に戻しながら首を横にふる。

「いえ、おそらく今の私の腕では何回やっても結果は同じよ」

そこには、先程『簡単』だと言っていた少女の面影はない。
出来なくて悔しそうな剣士の顔があった。
自分の腕を過信しない辺りも好感がもてた。

「では」

そう言ってマティアスを見る。
マティアスは、無言で頷く。

欠けた石を交換し、同じように木の棒にのせる。

マティアスがロングソードを抜き正眼に構える。
どうやら、構えからしてモニカの剣の師匠はマティアスのようだ。
マティアスが石に集中しながら袈裟懸けのために右上段に剣を移動させながら気合を溜めていく。
そして、一気に気合を放出する。

「フッン!」

ヒュン!

マティアスの一振りは鋭かったにもかかわらず石にはなんの変化も見えない。
モニカは失敗したのかと思った。

「ふぅ~」
「お見事です」

にもかかわらず、2人はさも試験は終わりで、カムイに至っては『合格』だとも取れる言葉をかける。
キョトンとしているモニカはなにがどうなっているのか判らない。

「ねぇ、どうなったの?」

カムイは、笑いながら石の一角を軽く指で小突いてやる。
すると石は、右上角から左下角までを真っ二つにされ上半分がズルリと下に落ちた。
そこで、石のバランスが崩れ木の棒が静かに倒れていく。
それを見たモニカがハシャギながらマティアスの元に駆け寄る。

「すごいわ!マティアス!私失敗しちゃったのかと思ったわ」
「師匠の私を信用してなかったと?」
「あ。いや、そういう訳では・・・・」
「ハハハハ、冗談ですよ。で、カムイ殿、私どもは?」
「もちろん合格です。こちらからお願いします。では、手続きに行きましょうか」

そう言って3人は出口に向かう。
カムイは、キアラがいる場所を暫く見つめたあと、同じように出口に向かった。

(まさか居場所がバレた?隠形は発動しているはずなのに)

そう思いながら、もう1つの気配も闘技場を後にするのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

「では、改めまして。よろしくお願いします」

ここでようやくカムイは、フードを取る。

「魔、魔族!?」

そう言って後退るモニカを見てマティアスが訂正する。

「違いますよ、お嬢。カムイ殿はちゃんとギルドリングをしているでしょう」
「ほ、ほんとだ・・・」
「よく間違えられるので、普段はこうやってローブを被ってます。黙っていてすいません」
「こっちも驚いたりしてごめんなさい。」
「改めてよろしくカムイ殿」
「さっそくなんですが、俺のことは呼び捨てにして下さい。あ、敬語もなしで」
「いや、さすがに依頼主を呼び捨てには・・・」
「いいんじゃない。本人がこう言ってるんだもの。私も堅苦しいのは嫌いなのよ。私のことはモニカでいいわ」
「お嬢・・・それなら、私のこともマティアスで」
「いやいや、さすがに年長者を呼び捨てにはできませんから、マティアスさんで」
「判りました」


再度、挨拶をしたところで、今回の目的をマティアス、モニカに話す。

「今回の目的は、装備品製作に必要な材料の調達です。1つは、ステルシュ村の奥にいるベルデロンを狩ってその皮を入手すること。2つ目は、レザー、スウェードが必要なため、ニバックルもしくはステルシュでの買い付けの2点です。お2人を雇ったのは、俺がタヌマリ男爵領に来るのが始めてなのでガイドと狩りの手伝いをお願いするためです」
「了解した」
「判ったわ」

「では、まずニバックルに行きましょう。そこでまずはレザー、スウェードに市場調査を行います」

そう言って再度フードを深く被る。

カムイは、2の契約後後馬を調達していた。
2人にニバックルまでの先導をお願いする。
その間、マップ上にピタリを付いてくる人影を確認している。

(闘技場にいた奴か?狙いは俺・・・って訳はないか。するとこの2人のどちらかになるが・・・)

2人のステータスを見て見る。

======================================
 名前:マティアス(男)
 年齢:27歳
 種族:人族
 クラス:騎士
 職業:第三騎士団副団長
 状態:健康

 Lv:35 
======================================
======================================
 名前:モニカ・タヌマリ(女)
 年齢:16歳
 種族:人族
 クラス:アタッカー
 職業:男爵家3女
 状態:健康

 Lv:24 
======================================

(はぁ!?ちょっと待て!タヌマリ?なんで男爵家のお嬢様が冒険者なんかやってんの?しかも護衛は第三騎士団副団長って)

2人の背中を見ながら、もっと早めにステータス確認しとけばよかったと後悔する。
トラブルの予感しか浮ばない。
しかし、既に依頼契約は完了した以上キャンセルもしづらい。
このまま行くしかないと諦める。

(さて、これが意図したものか偶然か・・・。まぁ偶然って訳はないよな。俺自身が目的って訳でもなさそうだしベルデロンでも当然ないだろう。とすると、ニバックルに行くための口実が欲しかったのか、それとも別に目的があるのか・・・。何にしても面倒なことにならなきゃいいがなぁ・・・。あと、アレが敵か見方かどっかで確認が必要だな)

カムイはそれとなく2人に話しかける。

「アロンからニバックルまではどのくらいかかりますか?」
「カムイが馬を調達してくれたから、1日半といったところね」
「そうですか。どこか適当な場所にキャンプ地はありますか?」
「そうだな。ここから2時間くらいいったところに確かあったはずだ」
「では、中途半端に進んで野宿するより、そこで1泊しましょう」
「判った」

マティアスの言うとおり、2時間ほどでキャンプ地についた。
野営のため、準備を始める。

「モニカは俺と薪拾いをお願いできますか。マティアスさんはテントの準備をお願いします」

それぞれ、任された作業を行っていく。
カムイは、モニカと巻き拾いをしていたが、心配ごとがあるのか声をかけてきた。

「ねぇカムイ。1つ聞いていい?」
「なんです?」
「アロンであまり食料や水、買ってなかったようだけど大丈夫なの?」

まだ、マティアス、モニカに無限袋のことは話ししていない。

「あぁ。そのことですか。大丈夫ですよ。なにも心配はありませんから」
「そぅ・・・それならいいけど・・・。もし夕飯なしなんて言ったら首絞めるわよ」
「はははは、こりゃ怖い。魔物よりモニカに気をつけなきゃ」

そんなことを言いながら、拾った薪をキャンプ地に持って帰ると、2つの商隊がキャンプ場に到着しており、キャンプの準備を始めていた。

自分たちのテントのほうは既に出来上がっており、マティアスがかまど作っていた。

「マティアスさん手伝います。モニカはテントの中を」

カムイはそう言って、マティアスの正面に位置取り、モニカに聞こえないようにマティアス囁く。

「声には出さなくてもいいので、答えて下さい。闘技場からずっと付いて来ているのはマティアスさんたちの仲間ですか?」

マティアスは、驚いた顔をする。
こんなに早くキアラの存在がバレるとは思っていなかった。

「どうなんです?」

マティアスは頷く。

「判りました。何か目的があるようですが、お互い不干渉でお願いします」

これについても、マティアスは頷く。

「ただし、火の粉が降りかかる場合には敵味方関係なく払うつもりですので、その点だけ肝に銘じておいて下さい」

(こいつだけは、敵に回してはダメだ)

マティアスの中で警鐘が鳴る。
これまでより力強く頷くのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

キアラは、3人のあとを付かず離れず付いていきながら、ギルドの闘技場での1件を思い返していた。

(あれは、明らかに私に気が付いていた。一体何者?)

キアラは、タヌマリ男爵家の密偵の中でも3本の指にはいる隠形の使い手だ。
今回のキアラの任務は、モニカの護衛及びマティアスの支援だが、これまでの任務で自分の隠形が見破られたことは1度もなかった。
密偵にとっては、それが命綱といっていスキルを看破されたとあって、心穏やかではない。

しかし、いつまでもそれを引きずっていては密偵としては未熟である。
そう言い聞かせながら、落ち着きを取り戻すよう努め、3人の後を警戒しながら付いていく。

どうやら、3人はニバックルとの距離を考え、早めにキャンプ場で1泊することに決めたようだ。

(なら今の内に仮眠でも取っておくか)

3時間程仮眠を取って気が付いてみるとキャンプ場では、他の商隊と一緒に酒盛りが行われていた。

(ん?モニカ様もマティアス様も驚いているあれはマジックアイテム(魔道具)?)

カムイは酒は飲まないが、無限袋から色々な料理やツマミを出して商隊に振舞っていた。
そして、商隊の商人や、護衛の冒険者に色々話しを聞いているようだ。

(したたかだな。私たちでは出来ない情報収集のやり方だな)

その様子を見ながら、栄養価だけを考えた味も量も粗末な携帯食で食事を取る。

モニカとマティアスの様子を見ているほんの一瞬のうちに、酒盛りの輪の中にいたはずのカムイを見失う。
すると背後から突然カムイの声がする。

「おい」

キアラは、カムイの声が聞こえるまで、まったく気配を感じ取ることができなかった。
慌てて腰のソードブレイカーに手をかけようとするが、カムイにそれを制止させられる。

「慌てるな。そのまま動かずに聞け。マティアスから味方だと聞いている。残り物で悪いが少し食い物を持ってきた。携帯食よりはよっぽどマシだろう。食ったら残りは土にでも埋めておけ。じゃぁな」

そう言うとカムイの気配はまるで消えるように感知できなくなった。

キアラの背後には、更に盛られた温かい食事だけが残されており、キャンプ場にはまたカムイが所狭しと情報集めにせいを出している姿があった。

(自信なくすなぁ・・・)

そう言いながらカムイが持ってきた食事を食べるキアラだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

3人はニバックルの街を散策していた。
目的は、レザー、スウェードに市場調査をするためだ。

「タヌマリ男爵領の革製品は、質、量ともに国内有数と聞いて楽しみにしてるんですよ」
「そ、そうね」
「ロトクルイド男爵領では、ヌマリ男爵領の革製品はとてもじゃないけど高すぎて、製作に使うには資金が足らなくなりますからね。かと言って、地元の製品で妥協すると良い鎧とか作れませんから、現地だと安く買えると思ってベルデロンの討伐ついでに調達できればと思ってるんですよ」
「ほ、掘り出し物が見つかるといいわね・・・・」

なんかモニカの受け答えの歯切れが悪い。
マティアスに至っては、言葉すら発しない。

「じゃ、さっそく市場とか商店見てまわりましょうか。先導してもらえますか?」
「こっちよ・・・」

モニカに案内された先は十字路で左右正面と革製品の露店やら店が軒を連ねていた。
観光客やカムイと同じ用に素材の調達だろうか、元の世界の○原の竹○通りみたいな混雑振りだ。
本来は、こういった人混みは嫌いで人酔いするのだが、今回は目的があるだけに我慢するしかない。

「こりゃすごい!さすが本場ですね。さっそく見て回りましょう」
「カムイ、ちょっと悪いが私は人と会わねばならん。暫くはお嬢と2人で回ってくれ」
「それは構いませんが、あまり遅いと護衛料から引きますよ」
「ハハハハ、それは簡便願いたい。すぐ戻る」
「判りました」
「お嬢、あとはお願いします」
「判ったわ。じゃ行きましょうか」

カムイとモニカは、混雑する人波の中に消えて行った。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイ、モニカと分かれたマティアスは、周りを警戒しながら1軒の商店に入っていった。

「いらっしゃいませ!」

愛想よく店員が駆け寄ってくる。
入ってきたのがマティアスだと判ると、ほんの一瞬だけ真顔になるが、またすぐに笑顔に戻る。

「店主はいるか?先日、頼んでおい物を引き取りにきた」

マティアスの声を聞きつけたのか、奥から店主らしき男が出てきた。

「それならできていますよ。ささ、奥へどうぞ」
「すまんな。失礼する」

マティアスは、勧められるまま奥に入っていく。
店主は、従業員に目配せしたあとマティアスに付いて奥に入っていった。
従業員は、何事もなかったように店番をするのだった。


「それで、状況はどうだ?」
「芳しくありません。依然品質のいい皮はバルボーザ商会に買い占められている状況で、地方の村から商工会議所に持ち込まれるのは相変わらず品質の悪い皮ばかりで・・・」

通常、動物や魔物から取れた皮は、専門の革細工職人により革にされる。
さらにそこから防具に使用するレザーやスウェード、生活で使用するベルトといった製品に加工される。
当然、品質のいい皮からは品質のいい製品ができる。

これまでの皮の流通と言えば、生産者が卸売り業者である商工会議所に一旦持ち込まれ、そこで販売者の間でセリが行われていた。
ところが、今年にはいってバルボーザ商会が生産者から品質のいい皮を安値で直接仕入れるようになった。
たしかに以前から、極稀ではあったが生産者から商工会議所を通さず販売者に売られることもあったが、全体の1割にも満たなかった。
現在と言えば、約4割がバルボーザ商会に直販されている。
噂では、生産者の弱みに付けこんだり、暴力や脅しをしたりしているとのことだったが証拠がないし、村人たちもバルボーザ商会の報復を恐れてか重い口を開こうとしない。

何度か町長にも相談にいったのだが、違法性がないことに手は出せないとこちらも腰が重い。
噂の一部では、町長にも賄賂が渡っているとの話もある。

他の商売仲間も、背に腹はかえられずバルボーザ商会傘下に入る者まで出始めていると言う。

「このまま、放置すれば、街はバルボーザ商会にいいようにされ、ダメになっちまう」
「そこまで深刻になっていたのか・・・」
「そろそろ他の仲間も限界になりつつあります。領主様の方でなんとかして貰えないでしょうか」
「そのためには、なんとしてでも不正を行っている証拠が必要だ。なんとしてでも見つけるから、もう少し辛抱してくれ」

そう言って、店をあとにするのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイとモニカは、商店や露店を見て回る。

(なんか、すごい違和感があるな)

その理由は、店によって品質に差があることだった。
ある商店は、品質は高いが仕上がりがイマイチな上に値段もヴューベルに比べて結構高い。
また一方では、品質は低いが丁寧に仕上げられ値段もリーズナブルだ。

(この二極化はなんだ・・・)

そう思いつつ、商店や露店を見て回っているうちに、2人の男たちに尾行されていることに気が付く。

(俺か・・・?いや・・・おそらく狙いはモニカか)

そのモニカとは、人混みで何度かはぐれそうになっていた。

「モニカ?」
「ここよ、カムイ」

手を上げて答えるモニカの側までいって手を握る。
モニカは突然を握られ、『なにすんのよ!』と言ってカムイの手を振りほどく。

あまりの大声のために周りの視線を集める。

「あ、連れなんで大丈夫です」

そう言ってまわりに説明すると『人騒がせな』とか言いながらまた商品に目を移す。

「いきなりなにすんのよ!」
モニカはカムイに抗議する。

(手握っただけなんだけどなぁ)

しかし、この状況は伝えておかない拙いため、
カムイそっとモニカの耳元で囁く。

「尾行されてます」
「えっ!?」
「キョロキョロしないでください」

カムイに指摘されて静かにする。

「いきなり手を握ったのは誤りますが、でもこうしておけばはぐれることはないでしょう?」

といって、再度手を握る。

「最初にそう言いなさいよね。びっくりしたじゃない」

今度は、手を振りほどくようなことはしなかったが、なぜか顔が真っ赤になるモニカだった。


キアラは、カムイたちから少し離れた路地から隠形を使って警戒していた。

カッ!

潜んでいた場所に小指程度の大きさの仕込みナイフが刺さっており、(ふみ)がくくり付けられていた。
(ふみ)を開けてみつると、尾行されていること、尾行している男たちの背格好、誰に雇われているかの調査してマティアスに報告するよう書かれていた。

カムイの言う、尾行している2人は直ぐに見分けが付いた。

(私のいた場所は、死角で見えないはずなんだけど、どうやって判った?)

また1つ自信をなくしたキアラだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイとモニカは一通り商店と露店を回って、最初の十字路に戻って来た。
そこには、ニヤニヤしながらマティアスが待っていた。

「もう用はいいんですか?」
「こっちはな」
「ところで、お嬢たちのデートのほうはもういいんですかい?」

戻って来ても手を繋いだままの2人を茶化す。
モニカが慌てて手を離し、お顔を真っ赤にしながら言い訳をする。

「こ、これは、カムイが尾行がいてはぐれないようにっていうから、仕方なくよ、仕方なく!」
「あれ~そうでしたっけ~」

シラを切るカムイに『なんですて!』と首を絞めてくる。

「参った、参りました。そ、その通りです」
「ムフゥ~!初めからそう言えばいいのよ!」

マティアスが笑いながらそんな二人のやり取りを見る。

(しかし、会って間もない男にこんなに早く心許すことなんて初めてじゃないか?)

「と、とりあえず、いったん宿に行きましょう。聞きたいこともありますし、明日の予定も含めて話をしましょう」

そう言って宿に向かう3人だった。
ニバックルに来たのはいいが、予想を裏切る思わぬ高値。
しかし、これにはどうやら裏がありそうです。
しかも、モニカを尾行する不穏な影。
マティアスが接触した商人の陳情からも次節以降波乱がありそうです。


お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字等ご指摘があればよろしくお願いします。
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