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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第2章 冒険者 黎明編

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第21節 イルア山地と女鍛冶師

イルア山地に到着したカムイ。
マップで示された採掘場所に行くと途方に暮れた女鍛冶師に出会います。
なにやらお困りの様子ですが・・・

さて、どんな展開になりますやら。

ちょっと急いでUpしたので、チェックがいつも以上に甘いかもしれません・・・><


【御礼】
どうやら通算で10万PVを超えたようです。
拙い作品にもかかわらず、お読み頂いている皆様に感謝申し上げます。
オークの森でレベリングに時間をかけたため、1日遅れでイルア山地に到着したカムイ。
イルア山地は、図書館にも載っているだけあって大勢の冒険者や鍛冶師が訪れるのだろう。
ちゃんとした山道が整備されていた。

カムイはさっそく山道を登っていく。

イルア山地の山道には、険しい斜面を登坂・降坂するためにエスカレーターのようにジグザグに整備されていた。
元の世界では、体力にはまったく自信がなかったが、今は持久力のステータスのお陰で苦も無く登っていける。
ただ、山道を登っていきながら、カムイは気になることがあった。
そう、人影を示す黄色いマーカーが1つも見当たらないのだ。

まだ、山地全体のマップを開放した訳ではなかったが、少なくともマップ上に表示されている鉱山には人がいる様子がない。

鉱石は武器の製作には不可欠で、鍛冶師自身が採掘に来る場合や依頼として冒険者が受けることもあるはずで、まったく人がいないということは考えにくかった。

(この山地に何か異変でもあったのか?)

カムイは、少し警戒を高めながら更に山道を登っていく。
それから20分ほど山道を登っただろうか。
ようやく1つの鉱山に人影を現す黄色いマーカーが表示された。
ただ、その黄色いマーカーは鉱山の入り口で動いている様子もなくじっとしている。
鉱山で採掘を行えば、少なくとも採掘したり、採掘した鉱石を選鉱したりとなにかしらの動きがあるはずだが、近づいている間も動く様子は見られない。

(怪我でもして、動けないのか?)

カムイとしては、動かない理由がそれ以外思いつかなかったため、警戒は維持したまま登る速度を速めるのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

「チッ!参った!ここもダメか・・・」

ツルハシを担ぎ、なにやら地図のような紙を片手に冒険者らしき女性が、呟きながら鉱山から出てくる。
どうやら、鉱山に入って採掘を行ったようだが得るものがなかったようだ。

「どうやら、あいつ等の言うとおり、もうこのあたりの鉱山はお仕舞いなのかねぇ~」

どうやら、ここに来る前に仲間連中から何か言われていたのだろう。
入り口にある道具箱の上にドカッと座り込む。

(爺さんや、オヤジから受け継いだこの地図も役に立たなくなっちまったかぁ・・・。かと言ってこれから他の鉱山を探す時間もない・・・)

しみじみと地図を見つめながら、爺さんやオヤジの顔を思い浮かべる。

「チクショー!アタイもこれまでかー!」

その女性は、無造作にクシャクシャと髪を掻き毟りながら思いっ切り叫ぶ。

すると突然背後から声をかけられる。

「どうかしましたか?」

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイは、鉱山の入り口で動かない人影は、怪我をしていると勝手に思い込んで急いでいた。
ようやくその人影が見えるところまで来たところで、突然叫び声が聞こえた。

「チクショー!アタイもこれまでかー!」

どうやらその人影は声からして女性のようで、装備からして冒険者のように見えた。
しかも、叫び声の内容から、その女性になにかあったのだと早合点する。
急いで駆け寄り声をかける。

「どうかしましたか?」

その女性は、突然声をかけられたことに驚き、慌てて飛び退り振り向く。
そして、カムイの風貌を見て更に驚く。

「ッツ!魔族!」

手にしていたツルハシを構え、警戒態勢を取る。

(なんか久しぶりに魔族に間違えられた気がする)

「落ち着いて下さい。俺は魔族なんかじゃないですよ。ヴューベルで冒険者をやっているカムイと言います」

そう言ってギルドリングを見せる。
ギルドリングを見て、一応ツルハシを下ろすが警戒は解かずにいる。
まだ、完全に信用はしてないようだ。

「ヴューベルの冒険者がこんなところに何の用だい?」

訝しげに聞いてくる。

「え?鉱山にきてやることは1つだと思うんですけど・・・?」

カムイは、この人なに聞いてるんだろう的な顔をする。
その顔を見てようやく女性は警戒を解く。

「あはははっ!そりゃそうだ。疑って悪かったね」

女性は破顔しながら近づいてくる。
カムイも身長は180cmはあるのだが、その女性はそのカムイより背は高く、しかもカムイより筋肉質でガッチリとした体格をしていた。

「ソイリエームで鍛冶師をやってるラウラだよ」

そう言って手を差し出してくるのでそれに応えるように握手をする。
ソイリエームと言えば、アイザック・ブルトヤン男爵領の中心の街だったはずだ。
鍛冶師というのは嘘ではないのが判るくらいに、握ったその手は大きく所々火傷痕が見て伺えた。

「ところで、さっきなにか叫んでたようですが、何かあったんですか?」

カムイを見てツルハシを素早く構えたことから、怪我とかしている訳ではないようだ。

「聞こえちまったのかい?とんだ醜態を晒しちまったね」
「ひょっとして、ラウラさん以外に誰もいないことに何か関係があるんですか?」

苦笑いを浮かべるラウラに、カムイが不思議に思ってたこととなにか関係があるのではないかと思ったからだ。

「あんたカムイとか言ったね。ここは初めてかい?」
「えぇ、そうです」
「そうかい。来てそうそう面白くない話かもしれないが、ここいら一帯の鉱山はもうダメだね」
「ダメ?」
「あぁ。長年掘り続けたせいか、もうまともな鉱石が掘れなくなっちまった」

そう言いながら、先ほどまで座っていた道具箱に腰を下ろす。

「さっきもいったが、あたいの家は代々ソイリエームで鍛冶屋をやってるんだ。爺さん、オヤジから引き継いで7代目になる」
「7代?結構老舗なんですね」
「そうさ。あたいん家だけじゃない。ソイリエームの鍛冶屋は、代々ここイルア山地の鉱山とともに歴史を刻んできたんだ。だがここ数年、鉱山から掘れる鉱石の量、質とも低下するようになった」

(おいおいちょっと待ってくれよ。ここまで来て空振りの流れ?)

「鍛冶師仲間は、もうここの鉱山はダメだと言って他の鉱山を探し始めたが、あたいは代々引き継いできたここを離れることができなくてね。それでもなんとか注文や依頼をこなせてはきたんだけどねぇ・・・」
「ならラウラさんも他のお仲間と同じように他の鉱山を探せばいいのでは?」

掘れなくなったのなら他の場所を探すなり移るなりすればいい。
簡単な道理だ。
だが、ラウラはここで採掘をしていた。
となるとそこから導かれる答えは1つだ。

「ひょっとして期限付きの注文か依頼を受けている?」
「察しがいいねぇ。その通りさ。得意先からの製作依頼があってここに来たんだけど見た通りさ」

鉱石が入っているであろう麻袋を放り投げてくる。

「中を見ても?」
「あぁ」

カムイは、麻袋の中を確認する。
中には石炭が少量だけ入っていたが、どれも品質はCだった。

「依頼に必要な鉱石じゃないし品質も見た通りさ」
「必要な鉱石を聞いても?」
「品質B以上のミスリル鋼さ」

(あちゃー。もろ被りじゃんかよ)

カムイの目当てもミスリル鋼だ。
品質はともかくミスリル鋼自体が採掘できないとなると、カムイの武器製作にも支障がでる。
この様子だと、コランダム、石炭も期待できそうにない。

これからなにをすればいいのか自分でも判らないのだろう。
ラウラはじっと地図のような絵が描かれた紙を見て動かない。
1度受けた依頼が達成できないとなると信用の失墜に繋がる。
得意先と言っていたのですぐに全ての関係がなくなるとは思えないが、それでも信用を回復するには相応の時間がかかるだろう。

「先程から見ているそれは?」
「あぁ、これかい?オヤジから引き継いだ鉱山の位置を示す地図さ」
「見せて頂いても?」
「構わないよ」

ラウラから地図を受け取る。
その地図は、イルア山地を横から見たようにジグザグに山道を示す線が引かれており、その山道を目安に途中途中に×印が3つ描かれていた。

(全部の鉱山を見つけている訳じゃないんだな)

なぜなら、カムイのマップ上には7ヶ所の鉱山が示されていた。
地図を見ながら、自分のマップに示されている鉱山の位置と比較するが、受け取った地図が手書きなため尺度が合わず位置が一致しない。
逆にカムイのマップは上空から見下ろす形で表示されているため、ジグザグに整備された山道の何階層目にあるのかが判らない。

(こんなこともあろうかとダウジングの準備してきといてよかったよ、ホント)

「どうかしたのか?」

ラウラの地図を見ながら考えことをしているカムイを見て、不思議そうに声をかけてくる。

「あ、すいません。ちょっと気になることがあって・・・」
「気になること?」
「えぇ、俺の事前調査ではあと2ヶ所、鉱山があるはずなんですが・・・」
「事前調査?さっきここは初めてって言ってなかったかい?なのに何故そんなことが判るんだい」

カムイは、あえて残りの2ヶ所の鉱山の存在を隠した。
全ての手札を晒す必要は、今は必要ないと思ったからだ。

だが、そんなカムイの言葉を疑うラウラ。

「確かにここに来たのは初めてなんですが、別に現地に来なくても鉱山の場所はともかく数を確認することはできるんですよ」

カムイは、無限袋から紐の先にヴューベルのアクセサリー屋で買った安物のイアリングの片方を括り付けたダウジング用の道具を取り出す。

「なんだいそれは?」
「これですか?ダウジングに使う道具です」
「ダウジング?」

ラウラは聞いたこともない言葉に首を傾げる。

「ダウジングは、地下水脈や鉱脈、鉱山を見つけるための方法です。流石に場所の特定となるとこうして現地で行う必要がありますが、何ヶ所くらいあるかは地図の上からダウジングすれば判るんですよ」

実際、図書館にあったような大まかな地図ではなく、詳細な地図があれば現地にこなくても場所まで特定することができる。

「見ていてください」

カムイは、今いる場所から少し山道を下りダウジングを始める。
カムイの手からぶら下げられたイアリングは、最初は微動だにしなかったが鉱山が近づくにつれ少しずつ揺れ始め、鉱山の入り口前では大きく円を描くように周り始める。
そして入り口を過ぎていくにつれ段々とその動きを小さくし、一定以上離れるとまた動かなくなった。
その様子を見てもラウラはまだ信じられないようだった。

「まぁ、最初は信じない人がほとんどですが、決して俺が手で動かしている訳ではありませんよ」

カムイはラウラに借りていた地図を返しながら、これからどうするか一応聞いてみる。

「俺はこのまま2ヶ所の鉱山探しに行きますが、どうしますか?」

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイは、ダウジングをしながら山道を登って行く。
その後には、ラウラが付いてきている。
結局、カムイのダウジングを完全に信用した訳ではないようだが、あのままあそこにいても状況が変わる訳ではないため付いて行くことにしたようだ。
カムイは、マップに表示された鉱山の位置に近づくとイアリングの動きに注意を払う。

先程いた場所から同じ傾斜の山道で、1度マップの鉱山と重なったがイアリングは動かなかった。
そのまま登っていき1度目の折り返しを迎え、更に山道を登って行く。
すると先程重なった鉱山の印に近づくにつれ、今度はイアリングが反応を示し出す。

「どうやら、1つ目の鉱山が近いようですね」
「ホントかい!?」

今登っている山道には、ラウラの地図に示された×印がない山道だ。
イアリングが反応を示してから少し登ったところで、先程試しに見せたようにイアリングが激しく円を描き出す。

「どうやら、ここのようですね。試しに掘ってみますね」
「手伝うよ」

2人はツルハシを持ち出し、示された場所を掘り始めた。
30cmほど掘ったあたりから、品質はCと悪いながらも鉄鉱石や石炭が出始めた。

「間違いないようですね」

ラウラは、採掘された鉱石を手に取りながら、信じられないような顔をしていたが、カムイの言っていることが本当だと判り謝罪してきた。

「信じてなくて悪かったね」
「いつものことですから気にしてませんよ。じゃ、次いきましょうか」
「ん?ここで掘るんじゃないのかい?」
「大量の鉱石持ったまま登りたいのなら止めはしませんけど・・・」

カムイは、無限袋を持っているため、実際にはいくら大量にあっても困ることはないのだがラウラはそうではない。
ラウラもカムイが言わんとしていることを理解したようだ。

「それもそうだ。新しい鉱山が見つかって浮かれてたようだね」

カムイはまたダウジングをしながら登りはじめた。

結局2つ目の鉱山が見つかったのは、山道を2つ折り返したラウラの地図の×印の更に山頂に近い山道であった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイは、採掘を始める前に昼食を取ることを提案する。

「少し遅くなりましたが、お昼にしませんか」
「そうだね」

カムイは、昼食の準備をしながら、ラウラの今後の予定について聞いてみる。

「ラウラさん、立ち入ったことを聞くようですけど、ミスリル鋼はどのくらい必要なんですか?」
「30kgってところだね」

当然、選鉱を終わらせての量だとは思うが、品質B限定ってのが曲者だ。

「そういやカムイは何が必要なんだい?」
「俺ですか?ミスリル鋼、コランダム、石炭ですね。まぁ、ラウラさんみたいに品質はそこまで拘ってませんが」
「ミスリル鋼、コランダム、石炭・・・ミスリルダガーかい?」

カムイは、驚いた表情をみせる。
ミスリルダガー製作に必要な素材を全ては答えてないにも係わらず言い当てたからだ。

「なぜ判ったんですか?」
「これでも本職だからな。ミスリル鋼、コランダム、石炭が必要で、ランクにあった武器で絞れば答えは簡単さ。まぁカムイがククリを持ってなけりゃ短剣以外を言ったかもな」

そう言って肩を竦めて見せる。

「で、カムイは何日くらい採掘する予定なんだい?」
「2~3日を予定してますが、どんなに延ばしても5日が限度ってとこですね」
「2~3日・・・大体あたいと同じくらいだね。ただ、あたいの分を含めて採掘、選鉱する時間を考えると、お互いにちょっと厳しいかねぇ~」

難しい顔をしながら、頭の中でこれからの予定を考えてるんだろう。
カムイは、最初無限袋のことを言うつもりは無くこれまで黙っていたが、この少しの時間話をしただけだが、なぜかラウラを信用しても言いように思えていた。

「そのことでちょっと話があるんですが・・・」
「なんだい話って?」
「俺こう見えて無限袋を持っています」
「無限袋?」
マジックアイテム(魔道具)の一種と思って貰えればかまいません」

ラウラは、カムイがなぜ無限袋の話を持ち出したのか理解できない。

「で、その無限袋ってのがどうかしたのかい」
「実は、無限袋には鉱石がそれこそ掘ったら掘っただけ入れられ、自動で(・・・)選鉱までできるんです」
「そうかい自動で・・・・・って、ホントなのかい!?」

ラウラもそこまで話を聞いて、ようやくカムイがなぜ無限袋の話を持ち出したのか判ったようだ。
必要な鉱石を入手するには、採掘したあと選鉱をする必要があり、時間の約6~7割がこの選鉱に取られてしまう。
もし、それが本当で採掘に専念できるなら、必要数の鉱石を揃える時間の短縮ができる。

「ただし、それには条件が付きます」

真剣な表情でそう言うカムイを見て、ラウラもカムイの条件がなにか察しが付いた。

「あたいがカムイを信用する必要があるってことだね」

カムイは無言で頷く。
カムイが無限袋に入れたのはいいが、数を誤魔化したり、持ち逃げしたりするかもしれないというリスクに対して、アウラが受けてくれるかどうか。
そんなことを心配するカムイに、ラウラは笑いながら『問題ない』と答える。

「元々、カムイが来なければ新しい鉱山を見つけることもなく、成果なしで帰るところだったんだ。しかも、その袋だってマジックアイテム(魔道具)って言うくらいなんだから貴重なんだろう?それをあたいに言うということは、逆にカムイがあたいを信用してくれたってことだ。だったらあたいもカムイを信用するよ」

さも当然のことのように言う。

「ありがとうございます」

そう言って頭を下げるカムイに対し、

「よしとくれよ。礼を言うのはあたいのほうさ」

そういって恥ずかしそうに笑う。

「じゃ、さっさとメシ食って作業開始と行こうじゃないか」

そう言いながらラウラは、荷物が入ったリュックから見るからに硬そうなフランスパンのような塊を出す。
カムイは、初めて見るその物体に釘付けになる。
おそらくパンなんだろう。
たぶんパンだよな。
えっと・・・パン?

「ラウラさん、ちょっと聞いていいですか?」
「なんだい?」
「その・・・今出されたのは・・・?」
「これかい?パンに決まってるじゃないか。見て判んないかい?って無理もないか」

ラウラが言うには、採掘に遠征する時はだいたい2週間程度を見込むらしい。
そのため、日持ちがして腐ったりしない食料というのが前提になってくる。
ただ、そういった食べ物は限られており、どうしてもラウラが出したような日持ちがする物になるそうだ。

「もう慣れっこさ」

と言って笑っていたが、逆にカムイは呆れていた。
身体が資本の作業なのに、食を軽く考えすぎていると。

「はぁ~。今回の食事は俺が用意します。そのパンだけでは十分な力が出せないでしょう」
「そう言ってくれるのは有り難いが、これ以上迷惑はかけられねーよ」

ラウラは、遠慮がちに言う。

「今回は俺との共同作業です。ラウラさんにはちゃんと力を発揮して貰わないと俺が困るんです。それに『腹が減っては(いくさ)ができぬ』という言葉があります」
(いくさ)?」
「何事も腹が減っていては、(いくさ)だろうが仕事だろうがよい働きはできないという意味です。それだけ食事は大事ということです」

カムイがそう言うと、急に真剣な顔つきになり頭を下げる。

「なにもかも世話になりっぱなしですまないが甘えさせて貰おう。その分はちゃんと働きで返すよ」
「頭を上げてください。もとより期待してますから」

カムイは、笑いながら無限袋から食料を出す。
今回、イルア山地に遠征すると言って、宿のザヒリに数日分の弁当や飲み物を頼んでおいた。
また、イルア山地では沢山の鍛冶屋、冒険者に会うことを想定し、親睦を深めるには料理だろうと考え、ヴューベルの各飲食店にもお願いし料理を作って貰っていた。
無限袋の中は、時間という概念がないため、素材や食料は入れた時と同じフレッシュな状態のままずっと保持される。
そのため、食材が腐ったり、素材が枯れたりすることはない。

ラウラは、カムイが用意した食事を食べながら『イルア山地でこんな温かい食事や冷たい水が飲めるとは思わなかった』と言って感動していたが、その食事風景からはとても女性であるとは思えないほどの豪快な食べっぷりであった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

カムイとアウラは、新しく見つけた鉱山を掘りに掘りまくった。

最初こそ、品質Cの鉄鉱石や石炭が多かったが、堀り進むにつれミスリル鋼やコランダム、品質Bの鉱石が含まれるようになってきた。
中には銀鉱、金鉱といったCグレード装備以上で使用する鉱石まで出るようになっていた。
ラウラがいうには、新しく見つけた2つの鉱山は『今までの鉱山より鉱脈が大きい』とのことだった。

採掘に関しては、坑道の大きさから、崩れなくするための補強、掘り進む方向など基本的にラウラの指示に従い採掘を行った。
さすが本職だけあって、その指示は的確でトラブルらしいトラブルは1度も起きなかった。

ラウラの従業員の迎えが来る日を聞いたカムイが、『じゃそこまで付き合いますよ』と言ったため、初日の半日と丸々3日間堀まくることになる。
結局、2人で約3tの鉱石を掘り出した。


品質C
銅鉱石:280、鉄鉱石:222、石炭:176
コランダム:140、ミスリル鋼:111
銀鉱:33、金鉱:19

品質B
銅鉱石:171、鉄鉱石:145、石炭:123
コランダム:104、ミスリル鋼:88
銀鉱:19、金鉱:8

品質A
銅鉱石:19、鉄鉱石:12、石炭:6
コランダム:4、ミスリル鋼:3

石屑:1302


アウラ曰く『これまでの遠征で質も量も最高だよ』と言って喜んでいた。


イルア山地にきて4日目の朝、ラウラの店の従業員が、鉱石を運ぶための馬車で迎えにくることになっていた。
それを待つ間、分配について話あう。
カムイは、当然のように全て折半のつもりでいたが、ラウラから驚きの配分提示があった。

「あたいは、品質Bのミスリル鋼30kgあればいいから、あとはカムイが持って行きな」

他の人間ならその提案に飛びついたかもしれないが、カムイがそんな提案を受け入れるはもがない。
すこしムッとした顔でその理由を尋ねる。

「どうしてですか?協力して採掘したんですから折半するのが当然ですよね?」
「そういってくれるのは有り難いが、カムイが現れなかったら新しい鉱山を見つけるどころか、ミスリル鋼すら手にできなかったんだ。その上、食事まで用意してもらった。いまのあたいにはカムイに返せるものと言えば採掘した鉱石しかないんだよ。お願いだから受け取っておくれよ」

ラウラの心情を理解できない訳ではなかったが、カムイはきっぱりとそれを断る。

「ダメです。受け取れません」
「どうしてだい」
「では、聞きますが、逆の立場だった場合ラウラさんは受け取りますか?」
「・・・・」
「どうです?受け取らないでしょう?自分ができないことを人にさせようとするのは卑怯だとは思いませんか?」
「だ、だが・・・」

ラウラは、まさかカムイがここまで頑なに拒否をするとは思っておらず焦る。

「一期一会、こういう言葉を知っていますか?」
「一期一会?」

当然、ラウラは初めて聞く言葉だ。

「一期一会とは、人と人との出会いは一度限りの大切なもので、その機会に巡り合ったならお互いに誠意を尽くすべきである、といった意味です。今回、イルア山地で俺とラウラさんが出会ったのは偶然ではなく、必然だったと俺は思ってます」

ラウラはカムイの言った言葉を呟くように繰り返す。

「人と人との出会いは一度限りの大切なもので、その機会に巡り合ったならお互いに誠意を尽くすべき・・・」
「ですから、ラウラさんとここで出会ったのも、新しい鉱山を見つけたのも、一緒に採掘をし鉱石を入手したのも、一緒に食事をしたのも全て起こるべくして起きたことだと思っています」

カムイは笑顔でそう答える。
その顔を見たラウラは、カムイを説得するのを諦めた。

「負けたよ。降参だ!カムイの言うとおりにするよ」


暫くすると、こちらに向かってくる馬車が見えてきたので、ラウラ分の鉱石を出していく。
ただ、どうしても礼がしたいと思ったのだろう、品質Aの鉱石と銀鉱、金鉱については、馬車に積めないだの色々屁理屈を付けて受け取りを拒むのでそれだけは受け取るようにした。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

従業員が鉱石を積み終わり、ラウラも御者の隣に座り出発の準備ができたようだ。

「短い間だったけど楽しかったよ」
「俺もですよ」
「ソイリエームに来ることがあれば是非ウチの店に寄っとくれ」
「機会があれば、そうさせてもらいます」
「絶対だぞ!その言葉忘れんなよ」
「えぇ。あ、そうだ、これを」

渡すのを忘れてたとばかりに、胸ポケットから1枚の紙を渡す。
紙には、カムイが知っている範囲で簡単に作れる保存食のレシピが書いてあった。

「これは?」
「無限袋がなくても保存が効く食料のレシピです。毎回あのパンだと・・・ね」

そう言って軽くウインクしてみせる。

「なにからなにまですまんな」
「道中お気をつけて」

そう言って握手をして、馬車は出発した。
馬車か見えなくなると、カムイはリターンでヴューベルに帰還するのだった。
初めてロトクルイド男爵領以外の領地の人物が登場しました。
本文中には書いてませんでしたが、ラウラは鍛冶師ですがドワーフではありません。念のため。

2人で3.5日で3t・・・フィクションならではですね。

次節は、事後の話を幕間として載せる予定です。


お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字等ご指摘があればよろしくお願いします。
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