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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第2章 冒険者 黎明編

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第8節 果たされた約束 後編

初めて連続投稿します。

いよいよカムイとエバンスの模擬戦です。
体力・技のエバンスに対しスピードのカムイ。
はたして結果は・・・・
準備ができた2人は揃って中央にいるギルバードの元に歩み寄る。
それを見て、ギルバードがルールの確認とかを観衆にも聞こえるように説明を行っているが、カムイとエバンスはルールについては事前に判っているため説明に耳を貸すことなく相手を観察している。

(ショートソード?ルロワの時は確かロングソードを持っていたはずだ。威力より速さに対抗するため?色々見せすぎたのは、やっぱマズかったよなぁ~)

(相変わらず短剣か・・・ん?2刀!双剣持ち?今までそんな素振りはなかったが・・・。
ブラフか本物か判断が難しいな。カムイだしなぁ。これまでもどこまで本気だったのか判ったもんじゃないし、しんどくなりそうだ)

「それでいいか?」

ルールの説明が終わったのかギルバードが確認してくる。
2人とも聞いてはいなかったが、同意を示す

「問題ありません」
「問題ない」

「それでは2人とも、正々堂々と闘うように」

2人は、開始線まで下がるが、その間一瞬たりとも相手から目をそらすことはなかった。
それを見届けたギルバードが開始の合図を宣言する。

「はじめ!」


ギルバードの開始の声と共に2人とも戦闘の構えを取る。
エバンスは、左手に装備した盾を前面に構え、ショートソードをダラリと下げた状態、かといって隙がある訳ではなく何時でも相手に対応できるように開始線にどっしり身構えている。
一方、カムイはというとファイティングポーズを取りながら、素人目からは判らない程僅かずつではあるが距離を詰めながらゆっくり左に周りながらエバンスの様子を伺っている。
両拳には、全力が出せるよう厚手の皮を用意してもらい保護していた。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

「やはり格としてはエバンスという冒険者の方が上か」

そう言ったのはロトクルイド男爵である。
おおよそ、1対1の戦闘においては、’格下が格上の周りを回るもの’とされており、目の前に起こっている状況から判断したのだろう。
ロトクルイド男爵の言っていることは、黒狼隊のメンバーを含め同意見だった。
ただ一人を除いては。

「格ってカムイとエバンスの力関係ってこと?」
「こ、これリーア!控えなさい!」
「ははは、構わんよ。妖精のお嬢さん簡単に言うとその通りじゃ」
「ふ~ん。じゃ皆はカムイから言わせると『甘い側』の部類に入る訳だ」
「リーア!いい加減にしなさい!」

領主へのあまりの言い草に、リエーリアが怒りを露にする。
それを制しながらロトクルイド男爵は、リーアに問いかける。

「妖精のお嬢さん。良ければそのカムイ少年が言っていた言葉というのを教えてもらえんかの」
「いいわよ。おじさん悪い人ではなさそうだし、お菓子も沢山もらったから特別に教えてあげる」

リエーリアは、呆れた顔をして恐縮するばかりだった。
コロバルトから『男爵様はいつもこの調子ですからお気になさらずに』と言われたのだけが救いだった。

「以前、ルロワ村でエバンスとカムイの模擬戦をやろうと言う話があったのは聞いてる?」

ロトクルイド男爵もそのあたりの情報は入手していたので頷く。

「その時は、カムイは冒険者にすら登録してなかったし、相手がエバンスということでフィリックをはじめ皆が格が違うから止めておけと言っていたのを覚えている?」
「覚えている」

黒狼隊のメンバーも言ったことを肯定する。

「その後で、カムイが一人になったときに呟いていたのを聞いたの。『格、格というが、その格は一体何を基準に言っているんだろう?実際に闘って勝負付けした訳でもないのに・・・。Lv?冒険者ランク?そんなものだけで格が決まると考えているのなら随分甘いんだな。俺には窮屈な世の中になるかもしれない。まぁその答えの1つが明日出るだろうな』って。言ってる意味は良く判らなかったけど」

でも結局は、その模擬戦は実現しなかったのだが。

リーアからの話を聞いてロトクルイド男爵をはじめ全員がその言葉の意味を考える。

確かに’格’という概念が存在することは否定できない。
例えば、闘う前に戦意喪失して初めから勝負が見えている場合とかがそうだ。
しかし、お互いに闘う意志を持った同士であれば、格付けは意味のないものではある。
時々、勝負に置いて’波瀾が起きた’と言う言葉を使うことがある。
これは周りが勝手に’格上’と思っていた者が’格下’と思っていたものに負けたときに使われる言葉だ。だが、その格付けが誤っており、初めから’同格’であるならば勝った方が強かったというだけだ。
これがカムイの真意なのだが、全員がカムイの言葉の意図を理解できずにいる。


そうしている間にスフライドから声が掛かる。

「動きがありそうです」

 △▼△▼△▼△▼△▼△

相変わらず2人は睨みあったまま、カムイがエバンスの周りを回っているように見えるが、その間隔は、初めの5mほどから3m程に縮まっていた。
1周するかと思われたその時、いきなりカムイが構えを変える。ボクシングでいうところの左ガードを下げた状態のデトロイトスタイルに。
エバンスはもとより、観客席にいる誰もがそのような構えを見た事がない。
エバンスは、一層警戒心を強める。
すると、これが経験なのかそれとも、ただの勘なのか顎にピリッとした感覚を覚える。
咄嗟に前面に構えていた盾を顎を隠すように持ち上げる。

ドカッツ!

次の瞬間、顎の辺りの盾の部分に鈍い衝撃が起きる。
エバンスは、何が起きたのか理解できない。
自分のショートソートどころか、明らかにカムイの拳が届くような距離ではない。
ギルバードが何も言わないということは、禁止しているスキルを使った訳ではなさそうだ。
何をしたのかが判ったのは近くで見ていたギルバードと、観客席にいる一部の人間だけだった。

(あの距離から拳が届くのか・・・)

カムイが使ったのは、プロボクサー、トーマス・ハーンズが得意としていたフリッカー・ジャブを模したパンチだ。カムイのリーチはそれ程長くないが踏む込みの大きさと肩を入れることで一見届かないような距離からでも届くように工夫したものだ。
それから、何度も同じような攻撃が繰り出されるが、その都度盾で防御する。
さすがにこの距離では分が悪いと思ったのか、ショートソードを振りながら間合いを詰めようとするも、カムイに上手い具合に間合いを開けられる。
ただ、エバンスも段々感覚が掴めてきたのか、盾で防御せず避けることも多くなってきた。
すると、これ以上は無駄と判断したのか、カムイは攻撃を止めて少し距離を取った。

「まさか、初見で防がれるとは思いませんでしたよ」
「いやいや、まさかこの距離から拳が届くとは思わなかったよ」
「全て防いでおいてそれですか」
「伊達に冒険者はやってないってことだ」

再度、2人は対峙する。
ただ、今度は直ぐにカムイが攻撃に移行する。
細かなステップを踏みながらスピードを上げてエバンスとの差を詰める。
エバンスを含め周りからも、カムイが3人に分裂したように見えた。

(速い!)

エバンスもショートソードを鋭く振りぬきながら2体までは切りつけたが、どちらも残像だった。

「チッ!」

そういって背後に気配を感じたエバンスは、前転して転がりながらいままでいた場所から距離を取る。
そこには、振り向いての反撃を予想していたカムイが次の攻撃のため待ち構えていた。

「さすがに、思い通り行きませんか」
「年期が違うからな」

そう言いながらゆっくり立ち上がるエバンス。

(不味いな、すっかりカムイのペースになっちまってる。やっぱり防御を考えてるとスピードで後手に回るか)

エバンスは、ここで1つの決断をする。
持っていた盾を足場の邪魔にならないよう遠くに投げ捨てる。
多少のダメージは仕方がない、攻めて捻じ伏せるという意志表示だ。

「いいんですか」
「構わんさ。もともと判ってはいたが守りを考えていては、お前を捕らえきれんからな」

それは、表情にも表れていた。
その表情を見て初めてカムイがナイフを抜いて構える。

「スピードがお前だけの専売だと思うなよ!」

そう言うが早いか、カムイに対して切りかかってくる。
これに対して、カムイも応戦する。
ショートソード対短剣。
本来であれば、刀身も短く軽い小回りの効く短剣のほうが剣速という意味では分があるはずだが、エバンスはカムイと互角に打ち合っている。
2人とも防御は致命的になると判断した攻撃のみ避けたり、剣で防御したりしているが、攻撃の手を緩めた途端に押し切られると思ってか攻めるのを止めない。

(速い!これが本来のエバンスさんの攻撃速度か!)

カンカン!
ザシュ!
カン!
プシュッ!

2人一歩も引かず、乾いた模擬刀の打ち合う音、服の破ける音や皮膚が裂ける音のみが訓練場に響き渡る。
観客はあまりのスピードの攻防に言葉を失い、ただただ見入っている。

「「はぁ、はぁ、はぁ」」

どのくらい討ち合っただろうか、一旦距離を取ったカムイもエバンスも肩で息をしている。
体力の限界が近いのだろう。
そんな中エバンスが、カムイに声を掛ける。

「まさか、ここまでとは思わなかったな」
「俺もですよ。俺のスピードについて来られるとは思いも寄りませんでしたよ」
「今日は身軽な格好だしな。それにBランクの意地もある」

実はこのとき、カムイは体力的には確かに限界に近かったが、スピードについてはステータス的にまだ全力を出し切っていなかった。
しかも、全力を出し切るべきかでも悩んでいた。
本当であれば、もっとひっそりと勝負を行うはずが、このような大観衆の前で勝負する事になってしまったことで、もし全力を出してカムイが勝ってしまった場合、おそらく黒狼隊の今後に多大な影響がでることは間違いなかった。
それを考えた場合、体力的にはエバンスのほうがカムイより余力がありそうだったため、このまま僅差で負ける・・・それでもいいとさえ思い始めていた。

そんな様子のカムイを見てエバンスが声を荒げる。

「カムイよ、何を迷っている。ひょっとしてワザと負けようなどと考えている訳ではあるまいな。」
「・・・・」
「ハッ!俺も随分と舐められたもんだ。昨日登録したばかりの新米に、仮にも負けた後のことを心配されるとはな・・・」
「しかし・・・」
「しかしもへったくれもねぇ。お前はただ全力で掛かって来ればいい。それもなにか普段から口にしている『「礼」には「信」を持って応える』ってのは嘘っぱちなのかい」

エバンスは、迷っているカムイに後先考えずに全力で来いと発破を掛ける。
カムイは、観客席にいる黒狼隊のメンバーも見るが、全員が頷いている『全力を出してみろ』と。
それでカムイの迷いは吹っ切れた。
そしてワザとおどけた様に言う。

「本当は隠しておきたかったんですがね・・・」

そう言って肩を竦めてみせる。

「面白い!受けて立とう」

カムイは、構えていた模擬刀を腰に戻す。
2人の間に緊張した空気が張り詰めていく。
それは、観客席にも伝わり静寂が訓練場を支配する。

「行きます!」

カムイがゆっくり歩きだしたと思った時にはもうエバンスの前にいた。

「うぉ!?」

そして、カムイが霞むように揺らいだと思った瞬間、左右からエバンスを挟みこむように中段蹴りが襲う。
実際には、尋常ではない蹴りの速さから交互に撃った中段蹴りが左右同時に迫っているように見えているだけだが、周りにはそれが見えていない。

(両方喰らうのはマズイ!)

エバンスは、中段蹴りで身体を挟み込まれると思った。
そのため、一瞬の判断でショートソードを持っていた右側の中段蹴りを防御するように縦に構える。
片側1発であれば耐えて反撃して見せると。
しかし、その予想は見事に裏切られる。
模擬刀で受けようとした蹴りは残像だけ残し、右中段蹴りを左脇腹に受ける。
しかもそれだけでは終わらなかった。
残像だと思った左中段蹴りはそのまま変化して上段からエバンスの右鎖骨に蹴り下ろされる。
また、右中段蹴りも更に変化し上段回し蹴りでエバンスの側頭部を捉える。

「グハッ!」

(なんじゃ、今の技は・・・・)

近くで見ていたギルバードですら一瞬の出来事でなにが起きたのかわからなかった。

カムイが使った技は、エバンスの右側を襲ったのはブラジリアンキックと言われるハイキックの応用版であり、左側を襲ったのはナイマン蹴りという中段から上段回し蹴りへと繋げる蹴りの複合技だ。
当然左側の中段が防御されれば、左右逆で同じことができる。
あまりの速さのため、3発の蹴りが同時に襲ったように見えただけで、タネを明かせば空手の応用だが、この世界の人間には何が起きたのか判らなかっただろう。

それでもなお、エバンスはショートソードを振り上げ反撃の意志を見せたがそのまま気を失ってしまった。

「はっ!し、勝負あり。勝者カムイ」

ギルバードも一瞬勝ち名乗りを上げるのを忘れるくらい、衝撃の結末だった。
勝ち名乗りを上げた途端、訓練場は割れんばかりの大歓声が起きる。

(まさか、エバンスが負けるとはな・・・。こりゃ明日から大変じゃぞ)

そう思いながら、へたり込むカムイを見ながら思うのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

介抱されるエバンスを見ながら、黒狼隊のメンバーは呆然としていた。
全力を見せてみろとエバンスの言葉に同意を示したが、よもやこのような結末になるとは思っていなかった。
最初、これまでのカムイは本気を出していないといったリエーリアでさえ、ここまでとは思っていなかった。

「何かの間違いだろ・・・・」

フィリックは、現実を受け止められていないようだったが、カップスはカムイが思っていた事と同じ事で頭を悩ます。
エバンスは、この後のことは気にするなと大見得を切ったが、この話は直ぐに王都中に広がるだろう『BクラスのエバンスがFランクのカムイに負けた』と。
カムイがいくら規格外とはいえ事実は事実だ。
エバンスを気に入らない連中は、ここぞとばかり誹謗中傷してくるだろう。
そして王都での仕事がやり辛くなることは間違いないと。

(皆と相談が必要だが、いっそのことここヴューベルに拠点を移すか)

そんなことを考えるカップスだった。


「スフライド、この結果をどう見る」
「俄かに信じがたい事が目の前で起きたとしか」
「最後の攻撃、お前なら防げたか」
「無理でしょう。普段の装備を着用していれば耐えることも可能だとは思いますが・・・」
「そうか・・・」

ロトクルイド男爵はそう言うとなにやら思案する。

「配下に入るよう手配致しますか?」

コロバルトの言葉に対して『暫く様子を見る』と。

「暫くは、カムイの周辺も騒がしくなるだろう。それに腕が立つのは判ったが、飼えるような男か判断するには材料が足らんからな」
「畏まりました」
「しかし、面白い男がヴューベルに来たものだ」

そう呟いて訓練場を後にするロトクルイド男爵一行だった。
結局、カムイのスピードにエバンスの技が追いつかず、スピード対スピードの対決になりました。
最後は、スピードに任せたブラジリアンキック(本来は、中段蹴りではなくハイキックからそのまま鎖骨部分に膝を曲げて落とす技)とナイマン蹴りの複合技でカムイの勝利でした。
エバンスには申し訳ないかったですが、カムイばかり目立ってしまう結果となっちゃいました。
本当は、文中にあった理由で僅差にカムイ負け・・・を考えてたんですが、書いてくうちにこのような結末になりました。


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