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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第1章 ルロワ村編

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第18節 後味の悪い模擬戦

前節で行うことになった模擬戦です。
フィリックがこのまま黙っている訳がないというのは想像が付いた方もいると思いますが、はてさてどうなりますか。

7/13 誤字脱字の指摘を修正しました。
カムイは、いつもと同じ時間に目を覚ます。
この世界に時計というものがあるのかは判らないが、長年染み付いた時間に対する感覚は鈍っていない。

いつもと違う点としては、リエーリアの精霊だろうか、昨日からカムイの様子をうかがっているような気配がする。
カムイには、精霊の姿が見えないので勘違いかもしれないが、カムイが起床するとその気配はどこかに行ってしまった。
主のもとにでも戻ったのだろう。


カムイは、いつも通り日課の柔軟体操と鍛錬を始める。
柔軟をしながら身体に不調箇所かないか丹念に確認していく。
柔軟を始めて30分くらいしたところでカムイを見つめる目線に気が付いた。
どうやら隠形スキルで身を隠して木の陰から様子をうかがっているようだが、マップ上には黄色のマーカーが表示されている。

(この気配はリエーリアさんか)

おそらく、カムイが起きたのを精霊にでも聞いて様子を見に来たのだろう。
カムイは、視線に構わずいつも通り柔軟を進める。

一通り柔軟が終わったあとは、鍛錬を始める。
ただ、カムイの鍛錬は剣を振るったり、魔法を撃ったりするものとは一線を画する。

まずは、座禅を組み姿勢を正して坐った状態で精神統一しながら、姿勢、呼吸、心を落ち着かせていく。
併せて、体内に“気“を循環させ“気“の質やコントロールする能力を高めながら、身体に必要な良い“気“を外から体内に入れ、身体に合わない悪い“気“を体外に排出させ“気“の交換を行う。
いわゆる座禅と気功法を独自に取り入れたものだ。

(あの身体の周りのオーラのようなものは一体・・・魔素(マソ)とは性質が異なるようだけど)

素人目からは、単に座っているように見えるが、遠目から見ているリエーリアには七色の清らかなオーラがカムイの体内に取り込まれ、黒く濁ったようなオーラが体内から放出されているように見えた。

次に、空手の突技、打技、蹴技、受技の型を鍛錬していく。
元の世界ではあるが黒帯を所持しており、中量級クラスでは世界でもトップクラスの実力を持っていた。
型の鍛錬は、実践にあわせて早く動くというよりも、思いっきりゆっくりな動作で時間を掛けながら行っていく。
これは、動作中に軸がブレることなく重心が安定しているか、また、自分がイメージした通りの動きができているかを確認していくとともに、動作を身体に覚えさせるのが目的だ。
これを左右対称に繰り返していく。
実はこのゆっくり動作するというのは、見ている以上に身体に負担が掛かる。
カムイは、普段から実践しているため難なくやっているように見えるが、初めて行ったものは必ず途中でダウンする。

(ねぇリエーリア、あれはなにをやってるの?)
(私に判る訳ないでしょう!)

リエーリアには、あの動作がなにを意味しているのか理解できていないようだったが、興味はあるようで、隠れて様子を見るつもりだけだったが、いつの間にかカムイの一挙手一投足に目が離せなくなっていた。
そんなカムイの鍛錬も終わりを迎える。

「ふぅ~ そろそろ出てきても大丈夫ですよ。リエーリアさん」

まさか、隠形が看破されるとは思っていなかったリエーリアは内心驚いたが、観念して隠形を解いて木の陰から姿を現す。

「ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったんだけど・・・。いつから気づいていたの?」
「柔軟をやってる途中からですね。こんな美人の熱い視線に気づかないほうが変ですよ」

そういって、カムイは笑う。

(最初からバレてたってことね。なんて子かしら)

リエーリアは、まさか最初から隠形が看破されていたことに照れ笑いとも苦笑いとも取れる微妙な笑顔を見せる。

「あっそうそう、短剣の件では無理を言って頂いてありがとうございました」

昨日の女神マイアの短剣の値踏みのことを言っているのだろう。
確かにリエーリアの付けた金貨15枚は、カムイの予想をも超える破格とも言える金額だった。
そのため、リエーリアがなにかしらの意図があってあの金額を評価額にしたであろうことは理解していた。

「気にすることないわ。ただの気まぐれよ。ただ・・・貴方が何者か興味があったと言ったところかしら」

と言うリエーリアだが、本音は違った。

(昨日のフィリックをあしらった動きといい、冷静な分析でエバンスを模擬戦の相手に選んだだけでも気になってエバンスにどの程度通じるかと思っただけなんだけど、さっきの鍛錬の様子を見る限り案外模擬戦を仕組んだのは正解だったかもね)

「ふぅ~ん。では、その期待に応えるように頑張りましょう。ところで・・・・、さっきから虫みたい(・・・・)にまとわり付いてるコレ、紹介してもらうなんなりしてなんとかして貰えませんか」

そう言って、カムイの全身を舐めるように飛び回る精霊を指差す。

「あら、ご「ムッキーーーーーーー!虫みたいとかコレって失礼な奴ね。あんたこそそんな風貌で本当に人間なの?」」

そういって、自分から姿を現す。その姿は約10cmの4枚羽のフェアリー(妖精)だった。

「フェアリー? いや口の悪さからからいったらピクシーか!?」
「ばっかじゃないの? こんな可愛くて可憐なピクシーがどこにいるっていうのよ!」

(自分で可愛いっていうか?しかしやけに口の悪いフェアリーだな)

「リーア!ごめんなさい。彼女は私の使い魔のフェアリーよ。ちゃんとご挨拶して」
「フン!リーアよ。リエーリアのお願いだからよろしくしてあげるわ!「リーア!」 べ~~~~だ!」

リエーリアの注意も聞かず、最後にあっかんべーをしてどっかに飛んでいってしまった。

「ハハハ、ずいぶん嫌われてしまってますね」
「普段はあんな娘じゃないんだけど、ごめんなさいね」

そういいながら二人は森を後にした。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

約束の時間になり、指定した場所に向かうカムイ。
そこには、すでに黒狼隊の面々が集まっていた。
その場所は、今朝柔軟や鍛錬で使用していた場所から更に奥に入った場所で、普段カムイが実践向けに訓練で使用している場所だった。
見るとリーアもリエーリアの肩に座っており、目が合うと『フン!』とか言ってソッポを向かれ、リエーリアに苦笑いされた。

「お待たせしましたか」
「時間前だし気にするな」

そう挨拶をすると、エバンスから短剣用の模擬刀を渡される。
彼らは冒険者らしく、普段から訓練用の模擬刀を用意しているようだったので、借りることになっていた。
ちなみに戦い方は、無手と短剣であることは申告している。
エバンスは、ロングソードにスモールシールドを使用するようだ。

『お互い準備ができたら』ということで、カムイはソードブレイカーを無限袋にしまい代わりに模擬刀を差し、抜き差ししながら感触を確かめる。
エバンスは、既に準備ができているのか、リラックスしながらカムイの様子を見ている。

「いつでもいけます」

カムイがそう答えると、エバンスも頷き前に出ようとしたところに、一人の男がエバンスの前に立ちはだかった。
立ちはだかったのはフィリックだった。

「兄貴、いや、リーダー。この模擬戦、最初に俺にやらせてほしい。この通りだ」

そういって、エバンスに頭を下げる。
エバンスは、フィリックの乱入はある程度予想はしていた。
しかし、こうやって面と向かってしかも頭を下げてまでお願いしてくるとは思わなかった。しかも、初めて自分のことをリーダーと呼んでだ。それでも、カムイから報酬を提示され依頼を了解した上で模擬戦の約束をしたのはエバンスだ。フィリックではない。

実はこのとき、エバンスの心の中にある種の葛藤があった。
1つは、依頼として受けた以上、それを反故にすることができないという冒険者としての思い。
もう1つは、初めて自分をリーダーと呼び人前で頭を下げてまでカムイと模擬戦を願う兄としての思い。
それでも、依頼として受けた以上はパーティリーダーとしての心情を優先させるしかない。
複雑な表情をするエバンスの心情を、カップス、リエーリアは察していたが口出しはしない。

「そこをどけフィリック。依頼を受けたのは俺だ」

フィリックもそれは判っているが、頭を下げたまま動こうとしない。
埒が明かないと見たエバンスは、フィリックの横を通り抜けようと歩を進めようとした時だった。

「なら、フィリックからカムイに依頼を出すってことにすればどうだ?」

そんな提案がカップスから上がる。リエーリアも『その手があったわ』とウンウンと頷く。

「幸いにも報酬として払えそうな“女神マイアの短剣”もあることだし、エバンスとの順番は前後するが、カムイさえよければどうだろう?」
「しかし・・・」

そう言われたエバンス自身が困惑の表情を見せる。
すると、カップスとリエーリアに首根っこ捕まれ無理やり隅に引っ張られて行く。

(フィリックからあんなこと言ってくるなんて初めてだろう。これで一皮剥けるかもしれん)
(そうよ!この機会を逃したら次いつくるか判んないわよ。パーティリーダーの意見もあるのも判るけど、今回は兄として弟の成長を優先すべきよ!)

そして、小声で2人から捲くし立てられる。

(判った判ったつーの!離せよもう!)

エバンスは、無理やり二人を引き離すと、カムイの前まで言って申し訳なさそうに新たな依頼を口にする。

「カムイには申し訳ないが、俺より先にフィリックとの模擬戦の依頼をお願いしたい。報酬は“女神マイアの短剣”なんだがどうだろうか」

エバンスの肩越しには、カップスとリエーリアが申し訳なさそうに手を合わせて無言でお願いのプレッシャーを掛けてくる
元々、“女神マイアの短剣”で無理やり受けてもらったエバンスとの模擬戦だし、カムイとしても同じ条件を出されると断りにくい。

「はぁ~」

とため息をついて『判りました』と了解するしかなかった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

結局、最初の模擬戦はフィリックと行うことになった。
それぞれ、模擬戦の準備を行って行く。

その間、エバンス、カップス、リエーリアは、謝罪を兼ねて声を掛けにいく。

「カムイ、申し訳ない。ある程度こうなることは予想していたんだが、フィリックの本気度に免じて許してやってくれ。」

と3人が頭を下げる。

「よして下さいよ。もうやると決まったことですし、俺としてはさっさと終わらせてエバンスさんとの模擬戦に備えるだけですよ」

そう言いながら柔軟を進めるカムイにリエーリアから思いもよらぬ提案があり、カムイは露骨に嫌な顔をする。

「ねぇ、カムイ。そこなんだけど、今回の模擬戦フィリックに稽古をつける感じでやってもらえないかしら」
「俺に手を抜けと言っていますか?」

エバンス、カップスもリエーリアの話に驚く。

「お、おい」
「気分を害したのなら謝るわ。ただ、手を抜いて欲しいと言っている訳ではないの。フィリックの技や動きを見て改善点等を指摘して欲しいの」
「俺からすれば同じことです。はっきり言って彼の実力からして倒すのに2分も掛からないでしょう。そうなれば、技も動きもみることなく終わるでしょう。昨日も言いましたが、格下や同格といくら戦っても俺に得るものはありません。エバンスさんとやれば俺は負けるでしょう。その負けの中から次のステップのためのなにかを感じ取りたかっただけなのですが・・・。それに、本来その役は、あなた方3人の役目ではないんですか」

非難するようなカムイの正論に3人は反論できない。
それでも、なんとか今回の件をきっかけに変われるんじゃないかと期待しているだけに、なんとか食い下がろうとする。

「確かに、あなたの言う通りこれまで何度も私たち3人と模擬戦は行って来たの。でも、その都度『Lv差があるから』『職が違うからスタイルが合わない』とか言ってこれまで真面目に自己鍛錬に取り組もうとしないのよ。だからあなたに「無理ですね!」」

期待をしたいと思っていた言葉を出す前にカムイに一蹴されてしまう。

「そんな性格の人間が、まだ冒険者登録もしていない、しかもLvが低い俺が色々いったところで、素直に聞くとは思えませんね。逆に自信を無くして潰れるのがオチです。潰れるだけならまだしも、このままいけばパーティメンバーの誰か必ず死にますよ」
「「「!」」」

さすがの3人もこれから起こりうる可能性に言及されると言葉に詰まる。
誰もが1度はそのことを考えたことがある証拠だ。

「さぁ、そろそろ向こうも準備ができたようです。はじめましょうか」

この話はもう終わりだというように、フィリックの準備は終えカムイの準備が終えるのを待っている状態であることを告げる。
3人はまだ何か言いたそうだったが、仕方なくカムイの側を離れて行く。

カムイとフィリックは、広場の真ん中に近づき相対する。
勝負は、どちらかが戦闘不能になるか、ギブアップを宣言するまで行われる。

「なんか色々言われてたようだが?」
「怪我には気をつけろと優しい言葉を掛けてもらったよ」
「ハン!そうすることだな。怪我したくなければ早めにギブアップすることだ」
「忠告ありがたく受け取っておこう」

カムイは、無手と短剣といってあったので、いつもの位置に模擬刀を差したまま自然体に構える。
フィリックは、ショートソードにスモールシールドの装備で、スモールシールドを前面に構えての体勢だった。
判定は、カップスが行うことになった。

「はじめ!」

合図とともにまずは、フィリックが仕掛ける。
スモールシールドを前面の構えての体勢のまま、カムイへの間合いを素早く詰める。
そして袈裟切り、左切り上げ、右薙ぎの順でショートソードの連続攻撃だったが、フィリックの踏み込みが浅いため、それぞれ半歩ずつ身体を後退させるだけで刃を躱していく。

「クッ!まだまだ」

そういって今度は細かく頭、腹、肩に向けて突きを入れてくる。
しかし、この突きもスピードも踏み込みも甘いため、難なくカムイに躱されてしまう。
フィリックは、攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えてきたのか、カムイを挑発する。

「どうした、逃げてばかりじゃ俺は倒せないぞ!」

「はぁ~」

と軽くため息を吐いてから、

「そうしよう」

そう呟くと、アッと言う間にスモールシールドの死角に入りフィリックの背後に回ると、左膝の裏関節を蹴る。
蹴られたフィリックは、バランスを崩し蹴られた左膝を地面に立てスモールシールドを持っていた左腕も自然に胸から上のガードから下がり、顔を無防備に晒す格好となる。
その隙をカムイが逃すはずもなく側頭部を回し蹴りが捉える。当然力はセーブしてある。

「ガッ!」

カムイの回し蹴りで吹き飛ばされたフィリックは、それ以上立ち上がってこなかった。

カムイ以外信じられない光景を見るように、静まり返っていた。
『はっ!?』いち早くナタリーが我に返りフィリックの元に駆け寄る。
それを見て残りのメンバーも我に返る。

「大丈夫です。気絶しているだけで、どこにも怪我はありません」

ナタリーの言葉にカムイを除く全員が安堵の表情をする。

そんな黒狼隊のメンバーにカムイはこう言い放った。

「申し訳ありませんが、興がそがれたのでエバンスさんとの模擬戦はなかったことにしてください。」

そういって、頭を下げその場を後にするカムイだった。
ちゃんとした模擬戦を書くつもりでしたが、人間関係を優先したらカムイからしたら不完全燃焼気味になっちゃいました。
模擬戦を期待していた方(いたかどうかは判りませんが)、とりあえずごめんなさい。
この埋め合わせの模擬戦は、2章の前半あたりで書く予定です。

お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字等ご指摘があればよろしくお願いします。
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