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異世界で自由奔放に生きてみました~最強冒険者と呼ばれた男の波乱万丈転生譚~ 作者:西園寺☆桜

第1章 ルロワ村編

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第17節 ノップス商会

ようやくノップス商会の登場です。
特産品の話はどうなることやら。
カムイが、遺跡を攻略してから3日後、王都から行商人の一団が村にやって来た。
以前、特産品の話をしたときに聞いていた、村長の息子が店主のノップス商会だ。

ルロワ村が男爵領ヴューベルや王都セリュルブから遠いため、生活必需品の入手が容易ではないこともあり、こうやって半年に1度王都の店を休みにして近隣の村をはじめルロワ村のために行商にやってくるのだ。
ただ、行商といっても必ずしも儲けが出ている訳ではないようだ。
途中魔物や盗賊に教われないように冒険者を護衛に雇う必要あることや、基本は現金でのやりとではなく物々交換がメインであるため、交換品を王都で売っても大した利益にはならず、それよりも損失を出すことのほうが多い。
それにもかかわらず、定期的に商会がやってくるのは、店主が村長の息子だからというのが大きく、利益を度外視していることが要因なのだろう。
他の商人では、儲けを度外視してまでこの辺りにやって来ることはまずありえない。
まぁ、どうやら孫の顔見せを含めた里帰りも兼ねているようではあるのだが。

村の広場には、大きな幌馬車が幌を全開にして2台止まっている。
その周りには、村中の人たちが我先にと商品の交換を行っている。
中には、少しでも多くの商品と交換したいため、取引量の交渉している村人さえいた。

「これは凄いな・・・」

初めてみる光景に、カムイは驚きの声を上げる。
現代のバーゲンセールなどとは無縁だったカムイも『おそらくこんな風景だったんだろうな』と感想を漏らす。

そんなカムイの元に村長が声を掛けてくる。

「カムイは参加しなくてもいいのか」
「特に欲しいものはないですから」
「そうか。本当は先に息子たちに紹介しておきたかったのじゃが、この状態じゃ仕方がないのぅ」

特産品に関する話は、夜村長宅で主だったものだけで話をすることになっていたし、あの気迫る奥さん連中の中に割り込む勇気はなかった。
顔合わせについては、『まぁ夜のときにでも』ということになったのだが、『そういえば』と護衛についている冒険者について聞いてみた。

「たしか、商会の護衛に冒険者の方を雇ってるんですよね?」
「エバンスたちのことか?」

村長の話では、いつも黒狼隊という冒険者パーティが護衛をしてくれるらしい。
リーダーは獣人族のエバンスというらしく、獣人族2人、人族2人、エルフ1人の5人混成で、黒狼隊という名前はエバンスの見た目から付いてるらしい。

「よければ、紹介して頂きたいんですが」

カムイとしては、この世界の冒険者に会う初めての機会なので、『ぜひ色々話を聞きたい』と村長にお願いしてみた。
商隊はいつも3日は滞在するらしく、その間は黒狼隊のメンバーもノンビリ過ごしているらしい。

「そうか、カムイも冒険者だったな。ええじゃろ、どうせ暇しておるところじゃろうからな。こっちじゃ」

村長に促されて、黒狼隊メンバーのところまで案内されるカムイだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

黒狼隊メンバーのメンバーは、滞在期間中は商会の他の従業員と集会場に寝泊りするらしい。
今も、集会場のそばの木陰で、村人たちから出されたであろうお茶を飲んで休憩しているところだった。
こちらを向いている3人は、村長とカムイが近づいてくるのが判ったようだが、なにやら険しい顔でカムイを凝視している。村長と一緒なので特に何か仕掛けてくる様子はないようだが少し緊張しているようだ。
こちらに背を向けている2人は、まだカムイたちに気が付いた様子はない。

村長が声を掛ける前にエバンスが声を掛けて近づいてきた。

「村長、お久しぶりです。お変わりなさそうですね」
「やぁ、エバンス。そっちも変わりないようじゃな。いつも護衛申し訳ないの」
「いや、これも依頼ですから」

そう言って、懐かしそうに握手を交わす。
その間も、初めから気が付いていた残りの2人はカムイから目を離そうとしない。
そう挨拶をしている間に背を向けていた2人も、握手をしている村長とエバンスのほうに向直る。

「っつ!魔族!」

すると突然、振り向いた若い獣人族の男がカムイを見た途端に驚きの声を上げながら、いきなり腰のナイフを抜いたかと思うと、カムイに切り掛かってきた。

「止めろ!フィリック!」

フィリックと呼ばれた若い獣人族は、エバンスの制止する声も聞かず、構わずカムイに向かっていく。

(なんだ?こいついきなり)

カムイにとっては、特に脅威となるようなスピードでも無かったので、軽く半身をずらしてナイフを躱すと、身体の脇を通り過ぎるフィリックの脚を引っ掛けながら、逆に背中を軽く押してやった。
フィリックは、足を引っ掛けられた状態で背中を押されたものだから、踏ん張りきれず頭から地面にスライディングしてしまう。

(((ほぅ・・・)))

どうやら、先の3人はカムイが何をしたのか判ったらしく、感心の表情を見せる。

「ちくしょう!」

そう言って再度ナイフを構えて向直ったところで、今度は女性の声でフィリックを制止する声が響く。

「止めなさいフィリック!その子は魔族じゃなく人族よ」

その声にフィリックの動きが停止する。声を掛けたのは、エルフの女性だった。
フィリックを転がしている間、誰かに視られている感じがしていたのは恐らく彼女の鑑定スキルのせいだろう。

「マジかよ・・・」

そう言ってカムイを見たあと、エルフの女性のほうに目を移すと大きく頷く彼女がいた。
そんなフィリックの頭にエバンスの鉄拳が落ちる。

「いっつっっ!!」

頭を抱え鉄拳の痛さにしゃがみこむフィリックをよそに、エバンスが近づいて謝罪をしてくる。

「大丈夫だったか少年。うちの馬鹿な弟が失礼した。黒狼隊というC級パーティのリーダーをしているエバンスだ。よろしく頼む」
「カムイです。弟さんも本気じゃなかったようですし大丈夫ですよ。こちらこそ宜しくお願いします」

そういってエバンスと握手をする。
フィリックは、まだ兄の鉄拳制裁の痛みに悶えていてカムイの言葉を聞いていなかったようだが、フィリックが本気で向かっていたのは全員が判っていた。

(それを本気じゃなかったというこの少年はいったい・・・)

そう思いつも、パーティメンバーの自己紹介を行っていく。
エバンスは獣人:狼でリーダー兼戦士(物理攻撃職)
サブリーダーは人族のカップスでこのパーティの守りの要タンカー(盾職)だ。
あとは、カムイを人族だと擁護してくれたエルフ族のリエーリアメイジ(魔法攻撃職)と、人族のナタリーでパーティ唯一のヒーラー(回復職)だ。
で、残りがカムイに突っかかっていったエバンスの弟のフィリックファイター(物理攻撃職)で、聞いたらLvも歳もパーティで一番低いらしい。
それなのに、あの思慮の無さは普段からパーティに迷惑を掛けてるのが手に取るように判ってしまう。

一通り、自己紹介が終わったところで、『カムイも冒険者になりたいそうなんでな。少し話をしてやってくれんか』という村長の申し出に、約1名を除くエバンスたちは快く引き受けてくれた。

質問形式で話を聞いた内容としては、以下のような感じだった。
・冒険者になるには、冒険者ギルドに登録料を払えば登録が可能
・この辺りだと、冒険者ギルドがあるのは、ロトクルイド男爵領のヴューベルが一番近い
・冒険者にはランクがあり、クラスに合った依頼を行っていくことでランクアップしていく。ただし、CからB、BからAといったように上位クラスに昇進するには資格試験があるとのこと。
・個人と同じく、黒狼隊のようにパーティで登録することも可能。
・ランクは、Fから始まり最上位はSランクとのこと。(Sランクは全体の5%ほどしか存在していないらしい)

「色々聞かせて頂いてありがとうございます」
「なぁに、登録時にギルドからもっと詳細なことが聞けるだろうよ」

といって話を切り上げることになった。
別れ際に、カムイから1つのお願いをしてみた。

「そういえば、エバンスさんたちは商隊がいるあいだ村に滞在するんですよね?」
「そうだな。それがどうかしたか」
「できれば、模擬戦という形でいいので滞在中に1度手合わせお願いできませんか?」

カムイからの予想外の申し出に直ぐに回答できずにいると、リエーリアから疑問が上がる。

「なぜ、エバンスなの?ナタリーは戦闘職じゃないからいいとしても、みたところフィリックのほうがLv的にも近いと思うんだけど?」

リエーリアは、鑑定スキルでカムイのLvを確認している。そのため、Lvの離れたエバンスよりLvの近いフィリックのほうが適任だと思ったからだ。

「そうですね。ただ、模擬戦をするのに格下や同格とやっても俺に得るものはありませんから。おそらくですが、このパーティで一番実力があるのはリエーリアさんで、次がエバンスさんでしょう。ただ、リエーリアさんは魔法と弓の連携があってでしょうから、さすがに森の中で魔法を使うのはどうかと思いましたので、エバンスさんしかいないと思ったまでです」

カムイは、注意深くLvが高い3人を鑑定していた。
その結果から、導き出された想定を口にしただけだったが、エバンス、カップス、リエーリアの3人は、この言葉に驚きを隠せなかった。
カムイの分析通り、制限なしの1対1の模擬戦では6:4でリエーリアのほうが優勢だった。しかし、それは普段からパーティでの戦いや模擬戦を見てればの話であって、今日会ったばかりのカムイにそこまで見抜かれていることに愕然とする。
しかも、上位者と模擬戦をする意図としても間違ってはいない。
空気を読めない一人を除いてはではあるが。

「ちょっと待てよ、誰が格下だって!?」

カムイが言ったのは、エバンスを模擬戦の相手に選んだ理由を説明しただけなのだが、どうやらフィリックは『カムイは自分を格下と見ている』と思ったようだ。

「さっきは油断しただけで、本気を出せばテメェなんか相手じゃねーんだよ!」

と息巻いている。
『自分から不意打ちしといて、油断したとはなんちゅう言い草だ』と皆が呆れる中、エバンスから思わぬ話が出た。

「俺たちは冒険者だ。今のカムイの話は、個人的な依頼として模擬戦を受けることについては問題はないが、報酬は貰えるのか」

エバンスとしては、個人的にカムイに興味が出てきていたので受けても良かったのだが、たしかにLv差が大きく模擬戦にならない可能性があることやパーティリーダーという手前、『それなりに筋は通せ』と言うことで報酬の話を出したのだった。

カムイとしては、報酬を要求されることについて予想していなかった訳ではなかった。
ただ、これまでの村と商会とかの関係から、『ひょっとしたら』との思いがあったことも事実だ。

「残念ながら、今の俺に出せる金額はそう多くはありません。代わりにと言ってはなんですが、模擬戦を受けてもらえるようであればこれをお譲りします」

無限袋から、女神マイアの短剣を取り出す。
こうした事態に備えて、考えていた案を言ってみる。これでダメなら諦めるしかない。

「武器の性能としてはイマイチですが、装飾品としての価値としては結構な値が付くんじゃないかと思ってるんですが」

エバンスは、カムイから女神マイアの短剣を受け取るとリエーリアに渡す。
リエーリアは、暫く短剣を見つめたあと評価を言う。

「そうね、武器の値段としては銀貨300枚といったところかしら」
「そうか・・・残念だが、その額じゃ受けら「ただ、装飾品として見た場合は、金貨15枚ってとこかしら」」

その評価額に一同が驚く。

「本当か?」
「あら?私の評価を疑うのかしら?」

リエーリアの評価を聞いて、エバンスは少し考えたあと『判った。模擬戦の依頼受けよう』と言って、それを面白くなさそうに見るフィリックを残して模擬戦の段取りを決めるのだった。

 △▼△▼△▼△▼△▼△

その夜、村長の家にルーク、サリィ、ゴージュを始め村の主だった者と、ノップス商会のノップス、エリィが集まっていた。

「最初に、ノップスとエリィは初めてになると思うが、そこにいる少年はカムイと言う」
「カムイです。宜しくお願いします」
「ノップスだ」
「そこにいるサリィの妹のエリィです」

まず、最初に村長からカムイの紹介があり、今日の商いについてノップスに確認する。

「そうだな。全体的に見れば普段と変わらないように見える。塩と菜種油を除いてだが」

ほぼ、全員が予想通りの回答に頷く。

「逆にこっちが聞きたい。油はともかく塩は人が生きていく上で必需品だ。なぜ、今回交換されなかった!」

塩の交換が無かったことに、驚きと苛立ちが混じったような声で問うてくる。

「はっ!?ひょっとしてうちの商会以外から買ってるわけじゃないだろうな!?」

挙句のはてには、村のみんなが自分の知らないところで、他の商会から物を買っているのではないかと疑う始末。
これには、流石に村長も嗜めるように声を荒げる。

「ちっとは落ち着かんか!ばか者が!今からその説明をしてやるから、大人しく聞いとれ!」

ノップスはそれでも納得がいかないようだったが、説明するといわれて渋々黙った。

「まずは、そこにいるカムイが豊穣の森で迷子になってるところに、偶然この村にやってきたところから始まる」

と淡々と話し始めたと思ったら『まぁここに至るまでの詳しいことは端折るとしてだ』といきなり本題を切り出そうとした。

(話、端折りすぎじゃね?)

カムイも、村の人たちもそう思いつつ苦笑いをしている。
その空気を察してか『うぉっほん!とにかくじゃ』を大きく咳払いをして話を続ける村長。

「そのカムイが物知りでな・・・」

と前置きをしたあと、ノップスも知っていた白い地層の岩から上質の塩が取れること。
森に群生している(ハゼノキ)から、菜種油を使わない蝋燭という明かりの道具が作れること。
森にある果物からジャムという加工品が作れること。

試作はカムイが行い、ノップスたちが来るまでの間村人たちと試行錯誤しながら製品化に向けて改良を重ねてきたものだ。
塩と菜種油が交換されなかったのは、自給自足できるようになったからで、その上で『これらの品々を王都で、村の特産品として売れないか相談したい』と話した。

ノップスの意見としては、塩の品質も今まで以上だし、蝋燭にしても長時間灯ることや安全性も考慮されているとなると間違いなく売れるだろうとの見解だった。
ただ、流通のさせ方には気をつけないと、出所を突き止められたり、製法を真似される、それならまだしも粗悪品も出回る等商人ならではの注意点が色々上がってくる。
このあたりについては、価格を含めノップスに一任するつもりだったので、今回、試作として在庫の幾つかを持って帰ってもらうことにし、その様子を見ながら今後については相談することになった。

集まった村人たちも、ヤレヤレと一仕事終わった感でいたのだが、エリィの一言で渋い顔をすることになる。

「塩とかの話は判りましたけど、皆さんまだなにか隠してますよね。」

村人が、驚きの表情で一斉にエリィを見る。
それは明に石鹸水(石鹸もどきは印象が悪いのでそう呼ぶことにした)やリンスについては、注意を払って森に近い目立たない場所で作業を行っており、今日着いたばかりで行商で忙しかったエリィに見られているはずはないと思っていたからだ。

「特に姉さんにはその髪についてじっくり教えて欲しいものだわ」

どうやら、エリィは昼間から村の奥さん連中や子供たちの髪がやけに綺麗なのに気が付いていたようだ。
そのときは、忙しくて話を聞く暇がなかったが、この集まりでサリィの髪がやはり綺麗なことを指摘してきた。

作業場を見られた訳ではないとホッとしたのも束の間で、エリィに散々問い詰められることとなった。
とうとう村人たとが根負けし『まだ、在庫も余り無く商品として売り出すにはもう少し時間が掛かる』と説明したのだが、それでも納得がいかないようだった。

「商品化に時間が掛かる点については理解はしましたが、その商品があるというのを私に(・・)隠す必要はないでしょう?」

結局のところ私たちと言わず私にという当たり『自分にも使わせろ』と言いたいのだろ。
ただ、素直にはそう言わず『やれ自分はのけ者にされた』だの小一時間ほど愚痴られて、結局在庫の一部をエリィに渡すということでようやく怒りを収めてもらうことになった。

(なんで俺まで愚痴られる・・・?)

と不条理に思っていたが、以前ルークから『サリィに負けず劣らずこちらも相当気が強い』と聞いていたのを思い出したカムイだった。
ノップス商会のことを中心にと思ってたのですが、結局は次節の伏線の話のほうが大きくなっちゃいました。
しかも特産品について、サラッとした流れに・・・なかなか難しいですね^^;
ということで、次節は模擬戦ですが、初めての対人戦になりま。


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