第9話
アメジの指より放たれた光の線は、空中で羽ばたく黒水晶へと向かった。
それと同時に、ジストの手より放たれた水晶を受けたタルは、輝く光の兵器となり、
アメジの描いた線の上を駆けるように、凄まじいスピードで黒水晶へと向かった。
確実に黒水晶の死角から攻め込むことができた。
光の兵器と化したタルの体当たりによって悲鳴を上げる黒水晶。
タルが黒水晶へと到達したと同時に、アメジが描いた光の線は消滅した。
黒水晶へと一撃を与えたタルはジストのもとへと戻ってきた。
ジストは再びタルに水晶を放ち、アメジの道しるべを待つ。
「アメジ殿、また同じ繰り返しですぞ。」
「よし、なんかコツつかんだかも、任せて!」
調子こいてはりきるアメジ、再びドクロより光る水晶の線を描いていく。
大地を蹴りながら、駆ける、跳ぶ、大きく曲線を描きながら、
ジストたちの周囲を、土壁を駆け上がり、空高く舞いながら、弧を描いていく。
力強く大地を蹴るアメジの足によって砂煙が舞い上がった。
さぁ、いっけーい。と指先の水晶を、光の線を、黒水晶へと再び放った。
同時に光の道を翔る光の生物、アメジ、ジストとタルの連携の繰り返し、
何度も黒水晶に打撃を与え、そのたびに黒水晶は悲鳴にも似たあの耳に障る声をあげた。
「それにしてもあんな戦い方する巫女初めて見たたるよ。サファとは全然違うたる。」
「ああ、なんて力強い舞なんだ。・・・しかし、水晶の量の調整が気になるな。
あれでは体が持たないんじゃ・・・。」
何度か打撃を与えたが、それでも巨大なバケモノは特に外傷もなく、
戦いは長期戦になるかと思われたが、
またしても黒水晶はなにかに呼ばれたかのように、ギャアアーーと鳴くと、山脈の向こうへと飛んで行った。
黒い影が去ったと同時に、アメジは急ブレーキがかかったように止まり、その場へと倒れこんだ。
「アメジ殿、大丈夫ですかな?!」
安全とわかるとすぐラルドはアメジの元へと駆けてきた。
「V?・・・」
「おお、もちのろんじゃよアメジ殿、Vですじゃ。」
やっりー、よっしゃーと叫びたいアメジだったが、立ち上がることができなかった。
「あ、あれ?なんか体変なんですけど・・・・?」
体力には自信のあったアメジなのだが・・・。
「アメジ殿、水晶の量をコントロールする力が、いまいちのようですな?短期決着方の戦い方でしたぞ?」
「はひ・・・?」
アメジ、ろくに巫女の、水晶使いとしての修行をつんでおらず、当然の結果かもしれないが、
とりあえず、ぶっつけ本番であったアメジの初バトルはなんとか成功に終わった。
「おお、アメジ殿、なかなかよくなってきましたぞ。」
「うん、なんかわかってきたかも、やば、やっぱ天才?あたし」
「いやいやまさにそうですわ、アメジ殿は生まれ持っての強い水晶の持ち主のようですからの。やはり救世主なんじゃ。」
ラルドはひたすらアメジを褒めまくる。そのたびにアメジはいやー、当然でしょ。とうれしげに鼻高々。
あの戦いの後、アメジはジストの勧めもあって、ラルドの元で水晶コントロールの修行を受けていた。
寺院の中で親切丁寧に教えを受けるアメジ、たまにラルドにケツをさすられ、そのたびにラルドに飛ぶ鉄拳、
そしてまた修行、を繰り返していた。
「ジジイ、ヨイショしすぎたる。あいつはおだてられるとますます調子に乗るタイプたるよ。」
「たった数日であれだけの上達・・・頼もしいな。アメジがいれば、あの黒水晶も近いうちにきっと倒せる。」
こっそりと様子見にきていたジストとタル。アメジの様子に期待の表情を見せるジストと対照的に不安げなタル。
「まあ、どんなアホでも強ければ文句ないたるけど、ジストとタルの足をひっぱらなければ。」
そう言ってアメジに意味深なウインクをして寺院をあとにした。
その日、ラルドのもとで修行を終えたアメジ。
寺院から出ると空にはもう星空が広がっていた。
寺院を振り返り、アメジの中にふと思い出された顔、それは……。
「トパーズ様・・・。」
本当ならアメジの師はトパーズであった。しかし、アメジはろくに修行を行わず、トパーズの言うことを聞かず、いつもモンドと遊んでばかりいた・・・100年前・・・・。
だが、アメジの記憶の中ではついさっきまでの記憶だった。
「はは、変なカンジだな。本当ならあたしはトパーズ様に教わるはずだったのに……。
ま、ラルじいには感謝だけどね。
エロいのは問題だが・・・。」
ふぅ、と息をついて空へと目をやったあと、ふと街中にむけた目に飛び込んできたのは、
夜風になびく白い髪、月夜に照らされたその後姿の人にアメジの目にはあの人が映った。
「トパーズ様?!」
アメジはその人を追った。
ここは百年先の世界
アメジの知る人は誰一人いないし、いるはずがない
でもまさか、もしかしたら、という思い
もしかしたら幻を見たのかも?
それでも・・・
かすかな望みがアメジを走らせた。
階段を駆け上がり、リスタルの街の一番高い場所まで出た。
その影は、街の外へと消えた。
アメジもあとを追って、外へでた。
真っ暗な山道を登り、最近黒水晶と戦った広い場へと出た。
そこからさらに、アメジのいた水晶神殿へとむかう道の途中、
アメジの耳に入ってきたのは、楽器の音……。
「笛?」
そしてその笛の音に乗せて流れてきた唄い声。
その音の方向へと歩みを進めるアメジ。
そしてアメジの向かう先にいたのは……
笛を吹く白い髪の男と、その傍らで笛に合わせて歌っているタルよりも一回り小柄な聖獣だった。
男はトパーズではなく、アメジと年の近そうな若い男だった。
アメジに気付いた聖獣は唄を止め、大きく丸く揺れる瞳で、じっとアメジを見た。
歌がやんで一秒後、男は演奏を止め、アメジのほうへと向いた。
「だれだ?お前。」
こちらが問いかけるより先に問いかけられたアメジ。
月明かりと同じ光を放つ瞳に睨まれ、お前こそだれだよ!?とつっこむ事を忘れたまま、しばし立ち尽くしていたのだった。
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