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  アメジスト 作者:しらせ
第59話
紅水晶より延びる赤い光は眩く光りながらふわふわと宙を漂う。
アメジ、驚きから暫しそれを呆然と眺めていたが、黒水晶の鋭い気を感じ、気を引き締め戦闘モードへと戻る。

いつもと同じ感覚でいけばいいのかな

アメジはいつもと同じように、指の代わりに紅水晶で線を描いていく、それはいつもと違いより太く、そして赤く輝く光の道しるべ。

「おっしゃーいっけーー!」
アメジ翔りながら、上半身をねじるように、大きく振りかぶって、黒水晶へと赤い光を投げつけるように放った。

黒水晶、その赤い光に反応を示したように、巨体をびくりと振るわせた、その直後にその線に乗って突撃してきたタルを受け

「ギャアアアアアーーーー!!!」
激しく鳴いた黒水晶の体の首の付け根の一部分が少し抉れたような傷が見えた。タルの攻撃が効いていた。
その部分からはじわりと血が滲み出していた。

「すごいたる。今まで無い手ごたえがあったるよ!」

「ああ、すごい。いけるぞ。」
初めて赤目の黒水晶にダメージらしきダメージを与えることができた。ジストもタルも強い手ごたえを感じ、その手に力がこもる。

「すごいです、アメジさま。」

「ほんとうに、紅水晶の力、すごいわ。」
エメラとサファも感嘆の声を漏らす。

「さすがはアメジ殿!さあ、どんどん突撃あるのみじゃ!」

ジストはすぐにタルにと水晶をこめ、タルは輝きアメジの次の道を待つ。

調子のでてきたアメジも気合が入り、再び同じように紅水晶をドクロへと当て、自分の水晶の流れと紅水晶に込められている水晶を引き出すように、ぶつける。

「!」

再び赤い線が描かれるが、今度は先ほどよりさらに大きい、太い赤い線が水晶より引き出された。

「うっわっ」
アメジも予想以上の強い水晶に上手く制御できず、赤い光はアメジの手を離れ、暴走、黒水晶ではなく土壁にとぶつかり、光は土の中へと吸い込まれていった。

「び、びっくりした。」
紅水晶のコントロール、アメジが思っていたより簡単ではないようだ。
そんなアメジたちに黒水晶は向かってくる。傷を受けたとはいえあの程度の傷、黒水晶にとってはかすり傷程度。
傷を受けた怒りから、さらに敵意の篭った攻撃が襲い掛かってくる。

「きゃあ!」「エメラ!」
地面へと急降下してくる黒水晶の突撃から、サファはエメラを庇いながら、岩陰へと逃げる。
アメジは横っ飛びしながら、攻撃をかわし、再び紅水晶をドクロへとカチンと当て再チャレンジ。

「うっしゃあ!」
またすさまじい水晶の力をその体に感じながら、アメジは今度こそはと、至近距離から黒水晶に真っ直ぐな太い線をぶつける。

「バカアメジ!」
すでに走り始めたタルはその線に乗った瞬間叫んだ。
アメジのいる場所から一直線にと黒水晶の顔へと向かうタル。
黒水晶は大きな顔を右へと傾け、タルの突撃をかわした。その瞬間赤い線も宙に溶け込むように消失。
黒水晶はそのままアメジへと巨大な口を開け、その顔をアメジへと迫らせる。

「だああーー!」
アメジ、黒水晶の顔を蹴り上げ、宙へ舞い、攻撃をかわす。
黒水晶に睨まれ、慌てて紅水晶を使う。

「バカアメジ!直線はダメって巫女の常識たるよ!」
叫ぶタル。アメジ初めての紅水晶の力に焦っていたのかそんな常識もうっかり忘れていた。
黒水晶は直線の動きにはやたらと強い。攻撃は曲線、の動きを意識することはリスタルの水晶使い、そして巫女にとっては常識であること。

「見てろ、次こそ!」
アメジ再びチャレンジ、赤い線を描いて駆ける。それを追いかける光るタル。
赤い線は黒水晶を捉え、光の兵器タルは赤い光に乗り、わずかにその赤い光を纏いながら駆け、黒水晶の腹部へと直撃!
黒水晶は悲鳴のような声を上げ、山脈の向こうへと飛び去っていった。

「紅水晶・・・・、これが結晶化した水晶の力・・・。」



「紅水晶を使ったのか?!」
アメジは報告も兼ねてアクアの元を訪れていた。
アメジの話を聞いていたアクアの表情は突然焦った顔で、アメジの手から紅水晶を奪いとると

「ムダ撃ちしたと言っていたな?」
鋭いアクアの視線にアメジ一瞬どきりと額を汗が伝う。

「それ水晶の力はたしかにすごいけど、だから余計にコントロールしづらいというか・・・」

「結晶化された水晶に籠められている水晶には限りがある。
お前が戦いで引き出した分、すでに消費されてしまっている。」
アクア真剣な面持ちで紅水晶を握り締め、その中の水晶を確認しながら言う。
たしかにアクアが手にした時より、籠められた水晶は少なくなっていた。

「えっ、てことはムダ撃ちできないってこと?!」
アクアはそれに強く頷く。アメジは、たはー。と息を吐きながら頭を叩いた。それは失敗が許されない、かなりのプレッシャー。

でもたしかに、この紅水晶の力はあの黒水晶にダメージを与えられることができた。この力を使えば今度こそ、黒水晶を倒せる気がする。
だが、この紅水晶、アメジにもコントロールは難しかった。引き出す水晶の量の調整も上手くいかなかった。

「残りの力で、黒水晶倒せると思う?」
さすがにアメジも不安になってきた。アクアもはっきりとは言えなかったが、これこそが唯一の希望と信じるアクアはただ
「アメジを信じる。」としか言えなかった。


寺院へと戻ったアメジはラルドと紅水晶、そして今後の戦いのことについて話し合っていた。
あの戦いを見てからラルドの紅水晶に対する関心度も上がっていたのだ。紅水晶の力に希望を見る。
アメジはラルドに、アクアのもとで話したことを伝えた。

「なるほどのう、たしかに、水晶神殿の青水晶も水晶を使い果たしてただの石になったと言うし・・・。
この石も力が限られておるということか。」
そしてアメジにはルビィの水晶をコントロールできる自信もいまいち足りない。唯一の希望を兵器をムダにできないとなると、さすがのアメジも消極的になりそうだ。この石を取るために、マリンもアクアも命を懸けたと聞くと尚更だ。

その時、アメジが思い出したように浮かんだのは父オルドの言葉。

「水晶結晶化の儀式!」
アメジのその発言にラルドは眉を寄せ、首を振る。

「なんでラルじい、そんなに危険な儀式だから?」

「アメジ殿、それだけじゃないんじゃよ。その儀式にはある条件があるんじゃが、その条件を満たさんことには儀式はできんのじゃ。」

「儀式?

儀式って巫女が黒水晶の水晶を受けて、それを体内で浄化するってことなんでしょ?」
ラルドごくりと唾を飲み、真剣な眼差しでアメジを見ながら答える。

「それは儀式の中の一部じゃよ。

儀式には四人の水晶使いと、四人の巫女が必要なんじゃ、結晶化を実行する巫女を含めて四人。

儀式を行える条件が今は揃わんのじゃ。よってアメジ殿、現実儀式は不可能なんじゃ。」

「えっ・・・。」
たしかに、水晶使いはジスト、アクア、ガーネ、ラルドがいるとしても、巫女はアメジ、サファと一応エメラを含めても、足りないことになる。現代リスタルには戦える巫女が他にいないのだから、ラルドのいう条件が儀式に必要最低限なことなら、行えないことになる。

「その紅水晶とアメジ殿の力に懸けるしかないのう。」
ラルド、アメジに希望の眼差しをきらんと向ける。
プレッシャー・・・。

結局儀式のそれ以上の詳しいことは聞いてなかったが
水晶結晶化の儀式、アメジが思っていた以上にややこしそうだ。
アメジ、ため息ながら通りを歩いていた。

「たしかに、この石はすごいよ。すごい力が秘められているのはわかる。

けど、正直、使いづらいんだよね。」
アメジ左手で太陽にと赤い石を翳してみる。光を受けて赤く反射するが、その石、最初に手にした時よりも黒ずんでいるようだ。この紅水晶も、水晶を使い果たせば、あの青水晶のようにただの黒い石になってしまうのだろう。

失敗できないよなあ、アクアのためにも。
でも、ムダ撃ちできないっていうプレッシャーが・・・。黒水晶のやつはまだそこまで弱ってはいないし、きっとあいつのことだ、あの程度の傷ならすぐに回復してそう・・・。
アメジらしからぬ不安が募りそうな時、アメジの目に映ったのは
生気が抜けたような力なくうな垂れているガーネの姿。

「ガーネ?・・・そういえばあいつ・・・。」
パールという少女が死んでから戦いにも姿を現さなかったガーネ。いつも一緒にいた聖獣のチールさえ寄せ付けない負のオーラを纏っていたその姿からはかつての自信家の顔は消えていた。
アメジの知るガーネとは別人のようなその彼に、アメジは声をかけ近づいた。

「ガーネ、あんたなんで戦いにこなかったのよ?
アクアのやつも怪我で出て来れなかったし、ジストだけじゃね。

せっかくこのアメジ様がこの紅水晶を使ったっていうのに

肝心な時にいないんじゃ使えないっての!」

「オレ・・・もうムリっすよ。」

「へ?」

「パールのいない世界で戦う意味なんて・・・オレには・・・」
どこを見ているのかわからない目で、そうつぶやくように言うガーネからは覇気どころか、生気さえ感じられないほど。

アメジはガーネとパールの関係はよく知らない、だが、ガーネにとってパールはかけがえの無い存在なのだということは感じ取れた。

あたしがどうこう言って、立ち直れるようには思えないが・・・。

アメジが反応に悩みつつ立ち尽くしていると、アメジたちの後ろを二人の男たちが通り過ぎ、ガーネのすぐ後ろのパールのいたあの家屋へと入っていった。
それに気づいたガーネは血相変えて、その後を追った。アメジも何事かと後を追う。
男達はベッドに横たわったままのパールをどこかへ運び出そうとしていた。それをガーネは阻止する。

「おい、こらなにするんだ。」

「それはこっちのセリフだ!パールをどこへ連れて行くんだ!」
もう一人の男が掴みかかるガーネを抑えるように、仲間から引き離す。

「君こそいつまで彼女を晒しておくんだ。早く大地に帰してやるんだ。」
男達の行為は善意だ。パールには埋葬してくれる身内がいなかった。だが今のガーネには彼らの行いも悪にしか映らない。
抵抗するガーネに男達も苦悩の表情を浮かべる。

「ねえ、その娘、黒水晶の毒で死んだのよね?」
家の入り口で事を見ていたアメジが確かめるように聞く。

アメジ、手に持っていた紅水晶を目にしながら、あることを思いつく。

「ちょっとその娘の処分、あたしにまかせてくれない?」
にやりと笑うアメジの言うことがいまいち理解できない男達とガーネは丸くした目でアメジを見ている。

アメジの中で、今とんでもない試みが行われようとしていた。
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