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  アメジスト 作者:しらせ
第29話
アメジ達の上空を横切った不気味な黒い影は

「黒水晶・・・なんで・・・」
「いなくなったはじゅなのに・・・」
アメジと一緒に不安げに見上げたマリン、小さな体をガタガタと震わせながらも、戦士として戦わなければ、とキッと耳を立ち上げた。

「くそ、祭りで人が集まっている中を・・・
被害が出ないうちに、追っ払わなきゃ。

行くよ、マリンちゃん、アクア!」
アメジ、あれからも常に携帯していたドクロ水晶を手にし、アクアとマリンを呼んだ、が・・・

「アクア?」
「アクアちゃま!」
アクアはずっと震えたままで、アメジとマリンの声にも反応しなかった。
「ちょっとアクア、しっかりしろよ?!」
アメジがアクアの両肩を掴んで、気づかせようとゆすったが
アクアの心は恐怖が現実を越えてしまったのか、まったく反応をしめさなかった。

「アクアちゃま、どうちたんでちゅか?!」
「く、気持ちぶっ飛んじまっているよ。くそっ

しょうがない、ジストとタルを呼んでくる。」
もたついている時間はないと判断したアメジは、ドクロ水晶を構えたまま、黒水晶を追いかけた。
その場に残されたマリンは必死でアクアに呼びかけた

「アクアちゃま!おねがいでちゅ。きぢゅいてくだちゃいでちゅ。」
「・・・・ダメだ・・・ころ・・殺される・・・」






アメジが駆けるよりも早く、黒水晶は人々が密集する通りに到達していた。
自分たちの上に覆いかぶさるように現れた巨大な黒いバケモノに気づいた人々は、恐怖の声を上げ、それから逃げようとパニック状態になった。
恐怖におののく人々の様子を、不気味に赤い二つの目は、その様子をあざ笑うように映していた。


ギャアアアアアアーーーーーー


あの独特の耳に障る鳴き声を上げ、黒水晶は人々の中にと飛び込んできた。
「ギャアアアアーーー」
黒水晶の鋭い鍵爪が人々の肉を抉り、激しい体当たりに潰される者、羽ばたきに吹き飛ばされる者、
息や唾液に触れ、毒に侵され倒れる者。
恐怖によってつつまれたそこは、さっきまでの賑やかで楽しげだった空間は一転地獄と化した。


「待て、黒水晶!!」
アメジがその姿を確認した時、すでにそこは地獄絵図のような有様だった。

「!!?うっ・・」
アメジが思っていた以上に酷すぎるその光景に、一瞬意識が遠のきそうになった。
黒水晶はアメジの存在に気づくと、不気味な赤い目を光らせ、
自分の前から逃げようとしている男を大きな口で噛み捕らえた。
黒水晶はそのまま口の中でぐちゃぐちゃと男を噛み砕き、
潰された男の血は、激しく飛び散り、アメジにと降り注いだ。
頭から、真っ赤な血に染まった呆然とするアメジの前に、
黒水晶は、口に含んだそれをアメジの前に吐き捨てた。
アメジの目の前に転がるのは、ついさっきまで祭りを楽しんでいた男だったとは思えない、いや、人としての姿さえ確認できないほど、無惨な姿になっていた。
アメジ、信じられない現実に、体の下からぞわぞわとくるものがあった。
この時代にきて、何度か戦った黒水晶。
だが、アメジが来てからは、黒水晶によって街が壊されたり、人が殺されたりなどという被害は一度もなかった。
ラルドの話では、アメジたちが倒したのが、最後の生き残りの一体だったということだった。
しかし、今黒水晶は現れた。今アメジの前で
まるでおもちゃを壊すことを楽しんでいる子供のように、
人間を殺し、その様子を喜んでいるかのような

アメジ、遠ざかりそうな意識をぎゅっと縛るように、
手の中のドクロ水晶をぎゅっと握り締め、
自分を見下ろす黒水晶を睨みつけた。


「このアメジ様の前で・・・好き勝手やらせるかよ!」
アメジが手のドクロ水晶から、光の線を描こうとした瞬間
黒水晶はアメジを挑発するかのように、不気味に微笑んだ後、
通りの出店や、建物を壊しながら羽ばたいた。


「あっ、おい待て!!」
アメジの様子をからかうように、黒水晶はさらに人の集まる中央広場へと向かった。





広場では、ジストの手から精霊の面がサファへと渡される儀式の途中だった。
通りの奥から人々のただならぬ騒ぎ声に、広場の人々もなにかあったのかとそちらへ注目した。
こちらへとむかってくる巨大な黒い影に気づいた水晶使いたちの演奏も止まり、祭りの音が止んだ。

「む、なにごとじゃ・・・」
「まさか、あれは・・・・」
ジストたちも儀式を中断し、人々の目線の先を確認する。

「ウソ・・・黒水晶・・・?」
しだいに迫ってくる巨大な影が、そのバケモノと確認した人々は急いでその恐怖から逃れようと、人の波がいろんな方向へと動き出す。パニックに陥る中、その影を違う気持ちで見る者がいた。

「黒水晶、まだ生きていたなんて・・・・

これは、チャンスだよな。」
「えっ、あっ、ガーネ君?

ど、どこ行くの?うわっ」
人々と違うほうへと走り出したガーネを呼び止めようとしたガラスは、逃げる人たちに押され、ガーネとはぐれてしまった。



「クッ、どういうことじゃ、まったく。」
「まずは皆を非難させねば・・・」
「そうじゃのう。寺院の中にでも誘導させよう。

落ち着かんか、みなこっちじゃあ。」
ラルドが大きな声を上げ、広場の人々を寺院へと誘導する。
エメラも一緒になって人々を誘導しながら、寺院の中へと入って行った。

「・・・あ、私、ドクロ水晶を置いてきて・・・

すぐに取って戻ってきます。」
花嫁姿でドクロ水晶を持っていなかったサファは花嫁から巫女の顔になり、その場をたった。

「サファが戻るまで、私達で奴をひきつけようタル。」
ジストは持っていた面を座っていた椅子の上に置くとテントから出て、上空の黒水晶を見た。
黒水晶は逃げる人々を上空からじっと見ていたと思うと、
くるりと向きを変え、なぜか広場入り口近くの建物へとぶつかった。
激しい音をたてて崩れるそれは、人々の流れを止めた。
「くっ」
ジストたちがさっきまでいたテントの上にも建物の残骸が降り注ぎ、巨大なテントも瓦礫と共に崩れ落ちた。

「なんだ・・・あの黒水晶、今までの奴と。違う。

それにあんな赤い目のものは・・・・初めて見る。」
ジストも感じていた。今までの黒水晶とは違うその存在に。
しかも赤い目の黒水晶など見たことがなかった。

「タル!」
ジストの相棒は隣にいなかった。
ハッ、と後ろを振り返ると崩れ落ちたテントの下から声がした。



「タル!!」
ジストが崩れたテントを持ち上げると、タルの姿を確認した。

「ジスト!」
自分を呼ぶその声にタルは反応し、顔を持ち上げた。
テントの中は瓦礫によって押しつぶされ、タルの姿を確認できた以外は真っ暗でなにも見えなかった。
ジストはテントを左肩で支えながら、手を伸ばし、タルへと近づけた。
「タル、今だ、早く出て来い。」
それにタルは首を振った。

「ダメたる。引っかかって出られないたる。」
ジストの目では確認できなかったが、タルは身動きの取れない状態にあるらしい。

「まさか、足でも挟まれているのか?」
それにまた首を振るタル。
「タルの体はどこも挟まってないたる。」
「?タルどういう・・・」
タルの言っていることが理解できなかった。
体が挟まっていないのに抜けられない状態?

「ジストのお面が途中で引っかかってるたる。
タルなんとか守ったるけど・・・」
「タル?!

面なんていい、早く手を離して抜けてこい。」
それにまたしても首を振るタル

「いやたる。大事なものたる。

タルだって守りたいたるよ。

黒水晶なんかに壊されたくないたる。」
ぎゅっと手に掴んだ面を離そうとしないタル



「・・・・わかったタル、じっとしてろ。

すぐ助けてやるから・・・」
ジストは伸ばした右手から少しずつ水晶を出し、タルの手周辺の瓦礫を壊していく。

「くっ」
左肩にかかるテントの重みとも戦いながら、ジストはタルの周辺の瓦礫を壊していく。

「!
抜けたたるよ。

ジスト!!」
面を取り出せるスペースができ、嬉しそうにジストの側へと駆けて来たタル。
ジストが伸ばした右手にタルが触れようとした、その時

「!!??」
「ジ・・・」
ジストの腹部を鋭い物が貫いた。

「く、しま・・・・」
ジストの背後には不気味な黒い影が、まるでこの瞬間を狙っていたかのように、ジストの体から鋭い爪を抜き去ると、不気味に目を光らせながら羽ばき上昇した。
激しい痛みと出血に気を失いそうになりながらも、目の前のパートナーを救いたい強い思いがジストの体を支えていた。

「タル・・・早く・・・」
無意識に心配をかけまいとする思いからか、ジストはタルに優しく笑いかける。
テントから出るとタルは今にも倒れそうなジストの側へと駆け寄った。

「ジスト・・・嫌たる。・・・しっかりするたる。」
涙と鼻水でぐじゅぐじゅになりながらも、必死でジストを励まそうとするタル。
その様子を楽しむように不気味に見下ろす黒水晶は自分の後方からやってくる存在へと今度は目を向けた。


「ジストーー!タルーー!!」

ドクロ水晶を抱えて走ってきたアメジを確認したジストはほっとしたようにそのまま意識を失った。
ジストの負傷に気づいたアメジはジストの元にと駆け寄った。

「アメジ、ジストをジストを助けてたる・・・」
ぐしゅぐしゅな顔でアメジにしがみつき懇願するタルに無言で頷いたアメジは黒水晶へと向き直った。



アクアもジストも戦えない・・・・水晶使いが戦えないこの状況で、どうすりゃいいってゆーのよ。
だけど、なんとかしなきゃ、この聖乙女さまが


ここまでバカにされて逃げるわけにはいかない。


アメジはジストの前に立ち、ギッと黒水晶を睨みつけ、ドクロ水晶へと指を当て、水晶を集めた

その瞬間

パキーーン

パラパラとアメジの足元に落ちる透明な欠片

アメジが水晶をドクロへと集めた瞬間、ドクロは粉々に砕けてアメジの足元に無惨な形になって落ちていった。

壊れてしまった、ドクロ水晶


「な・・・・マジで・・・・?」
そんなアメジの様子をまるであざ笑っているかのような黒水晶。
アメジの体を汗が伝った。



アメジ様・・・マジで絶体絶命?!
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