chapter 1
ついに一台のとてつもなく大きな宇宙船が地球に降り立った。しかし非常に無礼なことにその宇宙船は都市のど真中に着陸し、着陸地点にあったビル、ハイウェイ、人、車、その他は皆完璧につぶされてしまった。結局これでバージニア州のほぼ半分がつぶされたことになる。事態は深刻だが、人々が事件の全容をつかむまでに相当な時間がかかった。なにしろあまりにも大きな代物だったので、何が降ってきたのか、何が起こったのか、てんで見当がつかなかったのだ。
この恐ろしいほどスケールの大きな事件に直面した人々がまず最初に思ったことは『大変なことが起こった』というだけで、その言葉が頭をいっぱいにしてしまい、次に進めなくなっていた。宇宙船が着陸したまわりにいた人々は何万人にものぼるが、その誰一人として一言もしゃべらず、何も考えられず、ただぼーっと巨大な物体を眺めていた。
そしてただそれだけだった。
何も起こらない時間がどんどん過ぎていき、くずれかけたアパートの窓から一部始終を見ていた婦人は、今、この街は平和なのではないかとさえ思っていた。
車の炎上する音、ビルの破壊音、地響き、子供の泣く声が聞こえる。起こったことといえば、車が炎上し、ビルが破壊され、地響きが轟き、子供が泣いただけ。それ以上は何も起きなかった。宇宙船が降りてきたにもかかわらず。
さらに長い時間が過ぎ、宇宙船の最も近くにいた男がふと、
「あれはUFOじゃないのか?」
と言ったちょうどその頃、宇宙船の着陸を見ていたすべての人々がようやく頭を活動し始め、目の前にあるでかぶつの正体を知った。そしてこのでかぶつがしでかしたことによる被害と影響を考え、またこれからの地球、これからの自分の人生について考え、今度こそ本当に、かなり具体的に『大変なことが起こった』のだと確信した。人々はざわめき、悲鳴をあげ、卒倒した。おびえる挙句その場から逃げ出す人々でごった返し、あたりは収集がつかなくなっていた(これでもどれだけ状況が進展したことだろう)。
平和なときは終わった。
突如として巨大な物体の一部分が光り始め、そこから二つの何かが地面に降りてきた。その何かは失敗した粘土細工なのか、泥で作った人形に絵の具で色をつけたものなのかわからなかったが、どうやら知性のある生物のようであった。身長三メートルくらい、全体の形は刻々と変化する不定形。深緑色の皮膚がどろどろと動いていて、時々それが液体となり、しずくとなって地面にしたたり落ちた。目、耳、鼻、口、どれもどこにあるのかわからなかった。気味の悪い姿にもかかわらず、なぜかうまそうだった。異星人の一人はしきりに体の内部から内臓の動く音と思われる奇妙な音を鳴らし始め、くねくねと動く手のようなものをまるで地球を指し示すかのように広げた。逃げまどう人々は異星人が見せたその動きにまたもや思考を停止し、その場に立ちつくした。
「あれは宇宙人じゃないのか?」
と一人の男がつぶやいた。
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