刺客、御庭番(6/26)縦書き表示RDF


※更新に大分間が開きましたこと、御詫び申し上げます。
今回は本編から抜けて、少々娯楽番外編を作って見ました。
ちょっとした息抜きにでも御覧になって下さると、幸いです。
それでは、どうぞ。
刺客、御庭番
作:麗蘭



五、五月雨越え(番外編)


葉月も中頃を迎えし、江戸城御庭番衆。
彼はこれからしばしの間、別の事件に首を突っ込む事となる――…



「佐木桷〜!!お前なんかえらいことなってんぞ!!」
「……ほっといて下さい」
ぶすりとした顔で出勤して来た佐木桷を見て、その場にいた全員が吹き出す。
特に頭、陽水などは腹を抱えて転げる始末。
それほどまでの、佐木桷の姿とは…
「ちっ……。あんまり騒ぐと、刺しますよ」
彼は足元に群れる五匹の猫を跨ぎ、ゆっくりと刀を抜いた。
しかし、笑えるものは笑える。
ましてあの無口で冷静沈着な彼のこととなれば、爆笑ものだ。
「……黙れ…」
ダンッ―――…
遂にキレた佐木桷は、抜いた刀を勢いよき床に刺した。
「「「……はい。すみません…」」」
一同、一斉に膝をつき、頭を垂れる。
しかし、あの冷静かつ忠実な副頭が―――









―――猫に好かれるとは。猫も物好きなものだ。
数刻の後、刀を下げ、ようやく落ち着きを取り戻した佐木桷の話によると、こうだ。
朝方。
早めに職場へと足を走らせていた佐木桷は、皆が出勤する前に、先に仕事を始めようと江戸城へと向かっていた。
彼は人に見つからぬよう高らかに跳躍し、人様の家々の屋根瓦をひょいひょいと踏み、いつものように快適な朝を迎えていた、筈だった。



「で、気がついたらそいつらがついて来てたと?」
全員一致の表情の一同を代表し、頭の陽水が猫の群れを指差す。
「そうゆうことです……」
急にぐったりと項垂れて、佐木桷は弱々しく頷いた。
「猫に……いや、動物に好かれた試しなど、これといってこの十数年、一度もなかった筈が……」
佐木桷の溜め息が一層深くなる。
しかし一同は余計に笑みが増す一方。
もう佐木桷はそれを咎める気さえ湧いてこない。
「まぁ副頭。頑張って下せぇ」
「そうですよ。若い美少年が勿体な……」
そう言った一人の忍びに、佐木桷はドスッ、と音をたててクナイを投げた。
「……二度はない…」
クナイは瞬時に彼の手を離れ、皆が気付いた頃には、既に先ほどの忍びの間近に突き刺さっていた。
ちなみに言っておくが、クナイはそう簡単にドスッ、などと音をたてない。……普通は。
しん、と静まりかえる任務室の中、其処そこを去る佐木桷の背中を、彼らは呆然と眺めながら、“この方が何故御庭番衆一の忍びなのだ…?”
と、誰もが皆、彼や神さえもを恨んだという。



〜おまけ〜

その後――…
猫1:
「にゃぁ〜」
猫2:
「み〜…」
佐木桷:
「はあぁ〜…」
溜め息をしつつ優しい副頭は、彼にしては珍しく僅かな微笑みを見せ、隠れて猫の世話をしていた。


それを忍びの一人が目撃し、またもやりずに仲間に告げ口し、黒笑顔の佐木桷に半殺しにされたのは、言うまでもない。


ちなみに、その日真昼の江戸中に、この世のものとは思えぬ奇声が聞こえてきたという―――…









―――まだ、始まっては、いなかった。


こんにちは。
もしくは“今晩は”でしょうか?
麗蘭と申します。
この度は、本編に止まらず後書きにまで目を通して下さり、本当に有り難う御座いました。
まあ本編もようやく一つ山を越え、落ち着きました故、此処に御挨拶に参りました。
また、この度は更新が大変遅れまして、すみませんでした。
次回はなるだけオフと両立するように致します……。
さて、長くなりましたが、今後ともどうぞこの連載を御贔屓願いますよう、御願い申し上げます。
それでは、この度は御愛読、誠に有り難う御座いました。






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