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刺客、御庭番
作:麗蘭



四、白柳 秀次


決戦当日――…



「静かだな…」
「だな…」
 江戸城内、御庭番衆たちの間に閑古鳥(かんこどり)が鳴く。
「五月蝿いお頭がいないからなあ…」
「なあ…」
「そういえば、頭と副頭の任務先って、どこだっけ」
「ん?たしか樋渡っちゅう貴族だと…」
「はあ!?」
 バタンと音を立て、一人が急に立ち上がる。
「樋渡って……、あの樋渡か?」
「いや、どの樋渡」
 彼を除き、ほかの御庭番たちは相変わらずのほほんとしている。
 しかし、一人慌てる男にとっては、それどころではないらしく。
「樋渡って、たしか白柳と裏で繋がりあるって噂の…!」
 彼らの間に、暫しの沈黙が流れる。
「「……頭、副頭!!!」」
 次の瞬間には、彼らは江戸城を飛び出していた。



「ふぁ…」
「頭、眠いのはわかりますが、夜警は油断大敵です。気を引き締めて下さい」
「へいへい……」 しかし、眠いものは眠い。
 佐木桷の眼下にも、青いクマができている。
 二人は今、月明かりの江戸の一角、樋渡家の屋根瓦の上で夜警をしていた。
 ちなみに、御庭番は夜の活動を主とするため、少々暗くとも物を見ることができるのである。
「にしても、そろそろ現れても………ん?」
「……おいでなすった」
 二人の眼力が一変し、同時に刀を抜く。
 乾いた音が月夜鈍くに轟き、二人は向かってきた刀と、暫し一戦を踏まえた。何処のどいつが雇ったかは知らないが、相当な数の人材を寄越してきたらしい。
まだ、軒下に身を隠しているが、気配だけでざっと三十人は下らないだろう。
それもかなりの腕前。身の潜め方が素人並ではない。
恐らくは、何処かの雇われ人。剣の腕も一筋縄にはいきそうもない。
しかし、二人はそれに全く動じない。
そればかりか、一人は薄ら笑いまで浮かべている。
「行くぞ、若頭!!」
「(若頭……?)はい」



――その目に、普段の彼らの甘さは欠片も見られなかった。



力無く項垂うなだれている男たちを見下ろし、二人は少しも息さえ切らさずに、己の手を払った。
「まあ、死んでないことだけでも感謝するんだな」
ケッ、と陽水が鼻で笑う。
「でもまあ、彼方から動いて下さったお陰で、此方も示しがつきましたね」
襲われたというに、何故か佐木桷は上機嫌のようだ。
「そうだよな、ねぇ……?匙之助さん!!」
「ひっ……」
残兵に紛れ、二人の後ろに回り込み、刀を振りかざしていた匙之助に、恐怖の色が広がる。
「何故俺たちを殺そうとした。あんな見え見えな嘘までついて。金宝なんざはなからないくせに」
「そ、それは……」
陽水は無言でくないを匙之助の首筋に当て、佐木桷が先を続ける。
「わ、わかった話す!!じ、実は、白柳の御当主から、命じられ…」
「白柳……」
陽水が眉を潜める。
「あ、ああ。御当主・秀次様の命は絶対で……。める。
「あ、ああ。御当主・秀次様の命は絶対で……。白柳家は代々我が樋渡家を支配していた故……」
「待て!!じゃ、白柳の当主は、秀次っていうんだな!?」
「ぐっ……」
陽水がくないを放り、匙之助に掴みかかる。
「頭!!」
それを佐木桷が慌て止めに入る。
「……悪い…。取り乱した」
ゆっくりと陽水は匙之助から手を離した。
「すまない。先を」
「ああ」
匙之助の額に汗が滲む。
「つまり、私達樋渡家は、白柳家に逆らえないんだ。樋渡だけじゃない。ほかにも白柳に束縛され、罪に手を染めた奴らは沢山いる」
「それで、お前はなにを頼まれた」
佐木桷が尋ねる。
「……あんたら、御庭番衆頭を誘きだし、殺害することさ。そうでもしなければ、私達樋渡は、皆殺しだ……!!」
「成程」
佐木桷は顎に手を添え、言った。
「ま、とりあえずは江戸城に戻りましょう。こいつの裁決、御庭番衆や御上への報告もありますしね」



その後、多数の残兵は、駆けつけた御庭番衆によってお縄となった。
また、御上の馴染み、また貴族だということもあって、樋渡 匙之助は一時釈放された。
しかし。



(白柳秀次…か…)
「頭!!」

「ん?」
調査班の一人が、突然頭部屋へと入り込んで来た。
「なんだよ、声ぐらい……」
「樋渡家が、何者かの集団により、襲撃されました」
陽水の手が止まる。
「……なに…?」



それにより、樋渡家は使用人や用心棒含め、ほとんどが命を落とした。
生き残った匙之助や、数人の使用人に話を聞こうにも、震える一方で、全く口を割らないのだそうだ。



「白柳に殺される…」
彼らは皆口々にそう言っていた。庭番衆頭を誘きだし、殺害することさ。そうでもしなければ、私達樋渡は、皆殺しだ……!!」
「成程」
佐木桷は顎に手を添え、言った。
「ま、とりあえずは江戸城に戻りましょう。こいつの裁決、御庭番衆や御上への報告もありますしね」



その後、多数の残兵は、駆けつけた御庭番衆によってお縄となった。
また、御上の馴染み、また貴族だということもあって、樋渡 匙之助は一時釈放された。
しかし。



(白柳秀次…か…)
「頭!!」

「ん?」
調査班の一人が、突然頭部屋へと入り込んで来た。
「なんだよ、声ぐらい……」
「樋渡家が、何者かの集団により、襲撃されました」
陽水の手が止まる。
「……なに…?」



それにより、樋渡家は使用人や用心棒含め、ほとんどが命を落とした。
生き残った匙之助や、数人の使用人に話を聞こうにも、震える一方で、全く口を割らないのだそうだ。



「白柳に殺される…」
彼らは皆口々にそう言った。







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