ニ、開かれし心
「頭…」
「今はそっとしておいてやろう」
「……そうだな」
永久がこの世を去って、三日が過ぎた。
しかし、陽水の哀傷は未だ冷えきったままだった。
三日三晩泣き続け、何故あの時自分が行かなかったか、と忌々しく自分を呪った。
若々しい白い肌を荒らし、いつも一つに結っていた、艶のあった漆黒の長髪も、所々傷みかけ。
それでも、次の日出勤した時には、皆驚く程、もとの明るさを取り戻していた。
そして彼は、早朝の集会でこう言った。
「みんな、世話をかけたな。もう、大丈夫だ」
それは、もとの彼そのままだった。
「頭……」
「だが」
陽水は言葉を改める。
その一瞬、僅かに顔が厳しくなったかのように見えたのは、気のせいだろうか。
「俺は永久を殺した非道の者を、どうしても許すことが出来ない」
辺りがしんと張り詰めた空気に変わる。
「だから、頼む」
「お、お頭?」
いきなり陽水が部下達に向かって深く頭を垂れた。
「永久を殺した白柳家の当主を、一緒に探してくれ」
あまりに懸命な彼を見て、そこにいる誰もが心動かされた。
普段はあまり仕事などせず、肝心な時にしか役立たないうえ、仕事中も寝てばかりの彼が、この一件で全く変わってしまった。
「何言ってるんですか」
部下の一人がにやりと笑う。
「俺たちだって同じ考えですよ。まして、頭からのお願いですからねえ……」
そう言って、他の男に促す。
「断れないよな」
「どっちにしろ、白柳は探さなきゃなんないんだしな」
「みんな……」
その一人に続き、御庭番衆は頭からのその願いを、引き入れた。
「すまねぇ、本当にすまねえ…!!」
陽水は顔を伏せたまま、込み上げてくる涙を必死に堪えていたのであった――…
それから、数日後の御庭番衆・執務室。
陽水は、というと……。
「頭!!起きて下さい!!書類に印を」
……部屋の中央に構える筆記台で深く寝入ってしまっていた…。
「頭!!……ちっ、仕方ない」
困り果てた部下は、舌打ちを一つし、陽水の背後に回った。
そして。
「はっ!!!」
「ぐっ、いででででで!!く、首くび…」
……開き直りには注意しましょう…。
――始まりは、目前…
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