二一、魚釣りも程々に
「はい!!こちらは実況の謙助です。江戸の上流河川では、激しい闘いがひぃ〜とあっぷしている模様!!」
「謙助。そこはカッコつけてカタカナで言うところだぞ」
横から陽水が座布団の上から口を挟む。
「あぁ、もう五月蝿いなぁ!!“ヒーとアっぷ”している模様です!!これでいいんでしょ!?」
「また、ビミョーだなぁ」
「お頭、あんたの発音も微妙ですよ。日本人なら平仮名ですって、この時代」
「時代とか言うなよ、佐木桷。ネタ丸出しじゃねぇか。ほら、作者も液晶通じて泣いてんぞ」
“ネタとか言わないでよ……、陽水さん…。 by.麗蘭”
「ほら、ネタとか言わない!! 作者は亡(無)き者と思ってください」
“それはそれで酷いよ、佐木桷さん……。 by.麗蘭(以上、特別出演)”
「おお――!!どうやら制限時間が残すところあと四刻半(約30分)となりましたぁ!!」
やけに熱の入った謙助が再び解説を入れる。
マイク代わりの木筒に、奮起のあまり謙助が強く握ってしまい、みしりと亀裂が入る。
「さて、ここで挑戦者の方に話を訊いてみたいと思います。―――失礼、今のお気持ちは?」
謙助が一番出前の参加者にマイク(木筒)を向けると、
「うるせえェェー!!こちとら有給休暇がかかってんだ。邪魔すんなや!!!」
と、強く押されてしまった。
これにはさすがに、謙助の頭に青筋がたった。
「あぁ!?あんた誰にもの言ってんだ」
「なんだと?このませ餓鬼がぁ」
「なにをぉ?」
御庭番とは、ここまでにガラの悪い輩だっただろうか。
さらに青筋だった謙助が男に拳を入れる。
「いてぇ!!なにすんだよ!!」
今度は男が拳を上げるが、運悪くそれが後ろの男に当たってしまった。
「だぁ!?……おい、魚逃げちまったじゃねぇかよ」
「知るか、そんなこと」
「んだとぉ!?」
さらに男が足蹴りを入れようとするが、さらに悪運が続き、その蹴りはそのまた後ろの男に当たってしまった。
さらにさらに、足蹴りを受けた男が横に倒れ、やがて波打ったかのように次々と男たちが倒れていく。
「がぁぁあ!!」
「おい、魚逃げちまったじゃねぇかよ!!どうしてくれる」
「何で俺だよ!?俺じゃねぇ」
何故か、乱争へと変わってしまった、平和なはずの魚釣り大会。
御庭番の総勢は煙と騒音を立てて争っている。
「あちゃー、大変なことになっちまったな、佐木桷」
「…………」
「? ……さ、佐木桷、さま…?」
俯いていて表情は読めないが、これは絶対にキレている。心底嫌なのだが、陽水にはわかった。
気付くや、陽水はさすがはお頭、一瞬後には霧の如く消え失せていた。
静かに抜刀する佐木桷。
ここで副頭として、修羅の威厳を射るところなのだが。
それより先に、
「あんたたち、五月蝿いよ!!」
「公共マナーっての知らないのかい!?」
「しつけ直したろうか?」
「いてぇ!!」
突然、川へ洗濯しに来たおばさん方に跡形もなく片付けてしまった御庭番一同。
「ふんっ。ちっとは考えりぃ」
「そうじゃ。迷惑極まりない」
仁王立ちするおばさん方。
「す、すみません…」
一同は傷だらけで平伏した。
「わかりゃいいんだよ。わかりゃ」
「……あのさ〜、何で副頭と謙助は無事なん、…ですか?」
怨めしげに二人を睨めつける御庭番一同。
「あら、そりゃそうよぉ」
「だって、こんな別嬪さんたちを手にかけるなんて、……ねぇ?」
少女のように頬を朱に染めるおばさん方。
そして沈黙は流れ、
「「さ、差別だぁ〜!!!」」
一同は小川に悲鳴を轟かせたのであった。
一方、陽水はというと。
「やっぱ、逃げるが勝ちだな」
近くの茶屋で団子を頬張り、高見していたとさ。
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