一、始まりの空紅く
早朝、御庭番衆は、毎朝江戸城へ出勤すると、各自仕事に浸っていった。
しかし。
「た、大変です…!!」
「伊庭ぁ、何事だ。朝早くから」
頭、陽水を初めその場にいた十人弱が眠そうに目を向ける。
特に陽水は欠伸まで見せた。
しかし、一瞬後にはその眠気もふっ飛び、辺りが氷ついた。
「…篠崎副頭が……、白柳家の当主に殺害されたとの事です……」
からん、と誰かが筆を溢した。
御庭番衆副頭・篠崎永久は、部下からの信頼も厚い、無口だが優秀な男であった。
「本当に済まんな。折角の非番を…」
「いえ。これでも頭の代理ですから」
その日、陽水にはある任務が下された。
内容は白柳家の極秘調査。
頭、又は副頭級の上級任務―――。
しかし、陽水は出発時になって、急遽出国する将軍の護衛に就かされた。
よって、代わりとして調査に出たのが、副頭永久であった。
そして、その任務先で、彼は、朽ちた―――。
……永久を斬り伏せた時、白柳の当主は、救護駆け哀愁に暮れる御庭番衆を見て、こう言ったそうだ。
まるで紅蓮のように真っ赤な、その鮮血の走った刀を鞘に仕舞い、
「笑止。そう嘆くな。この者が死んだところで、情を施すほどの器ではなかろう……」
と―――…
その後、強堅にこの世を生き、儚く散った彼の葬儀が、盛大に執り行われた。
その際、彼の唯一の上司は、どうしても笑みを見せれず、葬儀場の端で一人悲しみに浸っていたという。 |