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ニート革命軍 5
あけみちゃん
作:六角オセロ


「ロボット用ローラースケート?」
『着払いになっています。三万八千円です。」
姉さんは、配達員に尋ねた。
「えっ、わたしに?」
帽子をかぶった配達員は無表情に答えた。
『受取人は、福之助様になっています。』
姉さんは、福之助を呼んだ。
「福之助〜〜〜!」
奥のほうから福之助が、すたこらさっさと出てきた。
『はいはいはい、は〜〜い!』
姉さんが、福之助をギョロっと睨んで言った。
「またなんか買ったの?」
『はい、三万八千円!』
用意してたかのように、福之助は配達員に、さっさと現金を渡した。
『毎度ありがとうございます!』
配達員は頭を下げ、ドアを静かに閉めると、さっさと去って行った。
福之助は、そそくさと自分の部屋に戻って行った。
姉さんが、ビデオルームでテレビを見ていると、福之助が青いローラースケートを履いて、よたよたと出てきた。
『どう姉さん、これ?』
姉さんは、クールに答えた。
「なにやってんだ?」
『姉さん、外に行って練習してきます。じゃあ行ってきます。』
福之助は、足元がフラフラしていた。まるで踊ってるみたいだった。
「お前は、B52'sビーズ の、フレッドおじさんか!?」
福之助は、よたよたしながら答えた。
『何ですか、それ?』
「よたよたダンスのフレッドおじさんだよ。」
姉さんは急に立ち上がり、踊りだした。
「ロック・ロブスタ〜♪ た〜た〜た〜たた、たたたた〜〜♪」
『何ですか、それ?変なの!』
姉さんは踊りをやめた。
「おまえ何やってんだよ、朝から?」
『アーユーレイディ!ベイビー!』
「何言ってんだ、おまえ?大丈夫か?」
『行ってきます!』
福之助は、よたよたしながらドアを開け、出て行った。
「大丈夫か、あいつ?」
ドーム型の家の窓から眺めていると、近くの駐車場で福之助が踊っているのが見えた。
「まだ、あいつ踊ってるよ。」
珍しく日曜日の朝から電話が掛かってきた。姉さんは、直ぐに出た。
「もしもし・・」
『あけみですけど、福之助さんいますか?』
「あっ、ちょっと待ってください。」
姉さんは、福之助の内蔵トランシーバーにつないだ。窓の外の福之助を眺めた。

福之助が戻ってきた。
『姉さん、今から弥生西公園まで行ってくる!』
「あけみって、聞いたことないけど、誰なの?」
『いいじゃないですか。そんなことはどうでも。』
「なんだか、若そうな女の人の声だったけど。」
『今日は日曜日だから、自由にさせてくださいよ。フリーダム!』
「ああ、いいよ。」
『いいじゃないですか。人生いろいろ。ロボットもいろいろ。』
福之助は、『じんせい〜〜いろいろ〜〜♪ ロボットもいろいろ〜〜♪』と歌いながら出て行った。
「あいつ、なんか怪しいなあ。つけて行いこう。」
福之助は、空中スクーターにローラースケートを入れ、公園に向かった。その後、姉さんもピンクのスクーターに乗り、公園に向かった。

弥生西公園には、十分ほどで着いた。
公園の、ほぼ真ん中にローラースケート場はあった。
福之助は、ローラースケート場の近くにスクーターを止めたので、姉さんは、離れた場所に止めた。
福之助の声が聞こえた。
『あっけみちゃ〜〜ん、待ったぁ〜!』
グローブみたいな四本指の手を振って、左手にはローラスケートを持って、バタバタと駆けて行くのが見えた。
「なぁにが、あっけみちゃ〜〜ん、待ったぁ〜!だ。偏平足ロボットが。」

あけみちゃんは、ジーンズに蠍の絵が入ったピンクのTシャツ姿だった。赤いローラースケートを履いていた。
「だいじょうぶか、福ちゃん?」
『だいじょうぶ、だいじょうぶ!』
「今日は、暑いなぁ。」
『だいじょうぶだよ。このくらいの暑さは。』
ロボットで滑っているのは、福之助だけだった。

☆☆☆

 僕は ひたすら 静寂のなかを歩いてる
  心の中を覗き込む悪魔達の目から 逃れようとしている
 疲れ果てた心が 虚しく笑いながら 歩いている

少年は、窓から雲を見ていた。
ふと、少年は思った。引きこもってから何ヶ月だろう・・・。
ドアの向こうの階段の下から、祖母の声がした。
「宏明、ごはんだよ!」
少年は、精一杯の大きな声で答えた。
「食べたくない。」
「少しは食べないと、身体に悪いよ!」
「分かった。もう少ししたら!」
兄の声がした。
「ばあちゃんが甘やかすから、駄目なんだよ。」
「あの子は、病気なんだよ。」
兄が、階段を登ってくる足音がした。
「宏明、キャッチボールしないか?」
少年は、少し考えた。
「うん。」
「じゃあ、外で待ってるぞ。」
「うん。」
宏明は中学2年、兄は高校1年だった。

「弥生西公園まで、自転車で行こう!」
「うん、いいよ。」
兄は、宏明にグローブを渡した。
「ほら、おまえのグローブ!」
宏明は、自転車の前カゴに入れた。
「この俺の自転車、光ってるよ。」
「さっき、油を注して、拭いておいたんだよ。」

弥生西公園は、十分ほどのところにあった。日曜日の朝だったので、人は、まだ多くなかった。
宏明が公園の注意書きを見ながら兄に言った。
「野球禁止って、書いてあるよ。」
「その下を見てみろ。」
「但し、バットを使用しないソフトボールでの遊びは可。」
兄は、自転車の前カゴからボールを取出しして、見せた。
「これ、ソフトボールだよ。」
「あっ、ほんとだ。」
「あそこが、キャッチボール広場だよ。」
キャッチボール広場の隣には、ローラースケート場があった。

☆☆☆

「福ちゃん、踊り上手だね。」
『踊ってるわけじゃあないんですけど。』
福之助が、尻餅をついてドスンと転んだ。
『オー、ノー!』
「だいじょうぶか、福ちゃん?」
『だいじょうぶ、みたい。』
「見本を見せてやるから、ちょっと、ずらかってて。」
『だいじょうぶですよ。バランスを崩しただけだから。』
「いいから、ずらかってて!」
『はい、ずらかってます!』
福之助は、アスファルトの広場から外に出て、ベンチに座った。
「ちゃんと、見てろよ!」
『はい!』
ベンチに座って、あけみちゃんを見てると、足元にボールが転がってきた。
福之助は、右手の四本の指でボールを拾い上げた。フェンスの向こうから子供が叫んでいた。
「すみませ〜〜ん。取ってくださ〜い!」
福之助は立ち上がり、フェンスに向かって思いっきりボールを投げた。
ボールはフェンスに当たって、隠れてる姉さんほうに転がってきた。姉さんは、あわてて頭を下げた。
「あいつ、ノーコンだなあ。」
ボールは、姉さんから十メートルくらいのところで止まった。
福之助は、ボールを拾うと、フェンスの近くまで行って投げた。
「ありがとうございま〜す!」と言って、子供は頭を下げ、駆けて行った。
福之助が元の位置に向かって、ドタドタと走っていると、近くで福之助を見ていた子犬が驚いて、福之助に飛びかかってきた。
福之助も驚いて、『シッ、シッ!』と言って、両方の手で追い払おうとした。
子犬は、得体の知れない物に興奮して、牙を剥いてワンワンと吠えながら、福之助の足元に襲いかかってきた。
『シッ、シッ、あっち行け!』
子犬の飼い主が、あわてて駆け寄ってきた。
「アビ!やめなさい!」
飼い主の女性が、首輪についている引き綱を取ろうしたら、子犬はローラースケート場のほうに逃げて行った。
飼い主は追いかけた。
「アビ、アビ!」
子犬は、ローラースケート場を、面白そうにグルグルと回りだした。
福之助も追跡に加わった。福之助が、ドタドタと子犬を追いかけていると、後ろから声がした。
「ずらかってろ〜〜!」
あけみちゃんだった。
あけみちゃんは、スルスルと福之助を追い抜くと、子犬の背後に追いつき、腰を低くして、右手で子犬の引き綱を掴んだ。
福之助は、手を叩いた。『あけみちゃん、かっこいい〜!』

「兄ちゃん、あのロボット、なんだか可哀想。」
宏明は、フェンス越しにロボットを見ていた。
「さっき、ボールを取ってくれたロボットだろう。」
「うん。」
「何が可哀想なんだよ。」
「一生懸命に人間のマネしてる。」
「そうかなあ。」
「きっと、人間のように自由になりたいんだね。」
「ロボットだから、自由のマネをしてるだけだろう。」
「俺も、自由のマネをしてみよう。」
「えっ?」
「兄ちゃん、俺、夏休みが終わったら、学校に行くよ。」
「・・・」
「発作の薬を持っていくから大丈夫だよ。」
「そうか!じゃあ担任の先生に話しとこう!」
「うん。」

ロラースケート場では、相変わらず、ロボットの福之助が踊っていた。
『おぅっとっと。』
隣には、あけみちゃんがいた。
「もっと、腰をかがめて!」
『こう?』
「もっと!」
『こう?』

「ずらかってろ〜〜!」

姉さんは、一人自由だった。
「わたしは、およびじゃないみたいだから、フライド・ロックロブスターと、ブルーベリー・コーラでも買って帰っえろっと!」

今日も、勝手気ままな風が吹いていた。





【 第五話 おわり 続きは、第六話 ニート革命軍6 】







☆ 六角オセロゲーム

☆ 頭脳革命・ドラゴンリバーシ





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