挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
三国志の世界に転移したけど戦えません、文官です 作者:三ツ谷細汰

第0章 夢破れて

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1/28

さよならさよなら

はじめまして、三ツ谷と申します。
初めての作品なので、誤字・脱字・分かりにくい表現などがあると思います。それらについて、出来ればご指摘していただければ嬉しいです。
 ぽつりと。
 まだ三月というのに、独りぼっちの汗が地面に落ちる。

「まじかよ……」

 手の中の紙切れに記された番号。震えながらも再度確認。もしかしたら、もしかしたらと糸のような希望を抱きながら前を向く。目に映るは、大きな掲示板と人の群れ。
 近くで吠えるような歓声が聞こえる。近くで消え去りそうな泣き声が聞こえる。
 雑多な音の洪水に吐きそうになりながら、掲示板に貼られた番号を照合する。

「やっぱ、ない」

 情けない姿を晒すものか。そんな微々たるプライドで、崩れ落ちそうな体を必死に支える。
 力は全て出し切った。
 この一年、友人の誘いも、趣味のゲームも完全に断ち、一つの目標に向かい死に物狂いで努力した。
だというのに、これは。

「いや、そうだ」

 確か、ネットでも合格発表していたはず。
 乾いた喉から、血を吐くように声を搾り出しながら。
 未だ震えの収まらない手で携帯電話をコートのポケットから引っ張り出す。手袋を脱ごうとするも、スマートフォンの操作が可能な手袋をしている事を思い出す。
 暗い画面には、酷く情けない顔をした一人の男が映っている。
 六桁の暗証番号。三度間違えて、ようやくホーム画面に入る。まず彼女に連絡するか、と一瞬迷うも思い出す。まだ仕事中だ。俺より早く、2年前に就職した彼女に、何と伝えればいいのだろう。
 その時、悩む彼の携帯に、一つのメッセージが届く。

『貴方の人生、やり直しませんか?御希望の方は以下のURLをクリック!』

 くだらない迷惑メール。
 普段の彼ならば、馬鹿馬鹿しいと一笑にふすところか、流れ作業のようにゴミ箱に放り込むような、話のネタにもならないメール。

 しかし、この時、この場所、このタイミングでは。
 彼が何となく、本当に何の期待もしていなくとも。
 どうせお金はかからないし、請求されても無視して大丈夫だろうし。
 ほとんど無意識にURLをクリックしてしまっても、仕方のないことだろう。

 その瞬間、彼の姿はその場から消え去る。
 周りの人たちは気付かない。自分の、もしくは家族のことで精一杯だから。彼の存在を示す人混みの中の僅かな空白もすぐに埋まる。
 この世界に彼の居場所は無くなった、とでも言うように。

 かくして、彼は世界から旅立った。
 彼の連絡を待つ、黒い髪の美しい彼女を置き去りに。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ