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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

騎士と

護られる者

作者: ポン



数百年も過去の話。


東西南北に分かれた国々で争いが起きました。

西の国が南の国を攻めたり、北の国が東の国を攻めたりと、長い長い争いが続きます。


その最中、東の国で、1人のお姫様が生まれました。

東の国の王は、お姫様を育て、いずれ争っている何処かの国へ嫁がせようと考えていました。


そして、お姫様が大人になると、何処からともなく一人の騎士が、王の元へやってきました。

騎士は王に願いました。


「私が全ての争いを収めたら、姫を頂きたい」


王は、只の騎士の戯言かと思い、首を縦に振る事は有りません。

なんせ、もうすぐお姫様が南の国の王子の元へ嫁ぎに行くからです。


それでも、騎士は諦めませんでした。

何度も何度も王の元へ行き、同じ言葉を言うのです。


争いが酷くなる中、1人の騎士に割いている時間は、王にはあまりありません。

余りにも騎士が諦めない為、王は適当に返事をしました。


「良いだろう。もしもこの争いを収めることが出来た暁には姫をくれてやろう。だが、期限は1週間だ。それ以内に収められなければ…貴様は姫に会う事は無い」

「……分かりました」


1週間後には、姫は南の国へもう到着している事に、王は教えなかった。

何年も続いている争いを、たった一人の騎士が止められるはずが無い。

そんな気持ちで、王様は騎士を嘲笑っていた。


だが...1週間どころか、2日で、全ての争いは収まってしまった。


王は知らなかった。


水面下で、着々と準備は進んでいたことに。

東の国以外の国は、とっくに協定を結び、争ってなどは居ない事に…。


孤立した東の国に、為す術は無い。

降伏をし、西、北、南の国と協定を誓い、争いは収まった。


王は急いで、姫を連れ戻そうとしますが、南の国には、姫は居ませんでした。

西の国に居るのかと、急いで西の国に行きますが、姫は居ません。

残る、北の国に居るのかと、大急ぎで北の国に行くが、やっぱり姫は居ません。


疲れ果てた王のもとに、あの騎士が現れました。


「こんな所に居たのか。さあ、私の姫は何処にいる?」

「………」


騎士は何も語らない。


「私の姫は何処だ!?大事な姫なんだぞ!!?」

「………」


王様が怒鳴っても、騎士は語らない。


「頼む…姫を、姫を返してくれ。この通りだ…!!!」

「………」


涙を流して懇願しても、騎士は語らない。


そしてついに、王様は言いました。


「アレは私の大切な道具なんだ!言え、アレは何処にいる!!!?」


その瞬間。

王様は騎士の剣で、身体を両断させられました。

音も無く、ただ切られた身体が地へと滑り落ちる。


東の王は、最後まで気付かなかった。


騎士は王に使えるわけではない。

騎士が仕えるのは主只一人。


生まれ墜ちた瞬間から、騎士は主を得た。

どれほどの長い時をかけて、念願の主を手に入れた喜びは、きっと誰にもわからない。


喜びと同じく、怒りもあった。


主を只の道具としか見ていない男に…だ。


狭い部屋に閉じ込め、毎日拷問の様な時間を勉学につぎ込ませ、挙句には争いを止めさせる楔にしようとした。

何度、切り殺してやろうかと思った事は、数知れない。


しかし、主と交わした約束があった。


”その時が来るまでは、決して殺してはいけない”


その時は…もう来た。

主が王となる日が…ついに来た。


王が自分の道具を取り返そうと、必死に他国へ赴いている間、主は王になる準備を進めた。


王が西へ行けば、主は民の信頼を得る。

王が北へ行けば、主は権力を得る。

王が南へ行けば、主は…王となる全てを得た。


騎士は切った男を冷たい眼差しで見下ろし、首を刎ねた。

血が付いた剣を払い、鞘に納めると、主の元へ寄る。


「...何も首を刎ねなくてもいいんじゃない?もう死んでいるんだし」

「私の気分だ。それに、お前の分だ」

「え、私ってそんな首を刎ねる趣味なんて無いんだけど...」

「違う。もういい、さっさと城に戻るぞ」

「うーっす」


主と騎士は、仲良く隣を歩いて、自らの国である東の国へと帰って行きました。


その後…

王が変わると、東の国は素晴らしく、緑と水の溢れる国へとなり、豊かになりました。


あの騎士は…主の傍を離れることなく、何時までも何時までも、お姫様を隣で護っているのでした。



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