ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
王子様と改造人間 neuf






「あれ王子じゃない?」
「珍しい、一人だー」
「いつみてもかっこいい」
「目の保養よねー」
 ハイゼがホルスが運営する図書館に向かっている途中、小学部、中等部、
高等部の女子が黄色い声を上げたり、ひそひそと好き勝手なことを言ったりしていた。
 女子のほとんどが、彼とすれ違うたび振り返る。









 ホルスの図書館は、小学部・中等部・高等部などの生徒が兼用する大きい
図書館であった。小学部・中等部・高等部の建物から孤立したように図書館は
立っている。
 ハイゼは足早に図書館にたどり着いた。中に入ると、本のにおいと少し
ひんやりとした空気が漂っている。
 ハイゼは、最上階である三階にまっすぐ向かった。一階は主に最近の雑誌や
人気のある漫画などが取り揃えており、出入り口でもあるので人が多い。一方、
二階は物語やエッセイなどが多く、ここも人が一階ほどではないが多いほうだ。
 そして、残るは三階である。ここは専門書が多くそのほとんどが教授でも
目を通さなそうなマイナーなものばかりであった。そんな分厚い訳の分からないものを
読む人は少ないわけで、ハイゼが来ると案の定人はまばらである。
 ハイゼは、きょろきょろと三階に設けられたテーブルなどを見ていく。テーブルは、
フロアの左右一列にびっしり設けられていた。そのほとんどが空席で
あったが、ハイゼはフロアを時計回りしてやっと探し人を見つけた。
 フロアの左奥のテーブルに探し人はいた。テーブルに突っ伏し、寝ているように見える。
 ハイゼは、ゆっくりと近づいていった。




















 ハイゼが探し人の近くまで来て、探し人のほうに手を伸ばしながら
「おいっ」
 そう言ったのと
「なんか用?」
 ぶっきらぼうな声がしたのは、ほぼ同時だった。
 その声にハイゼはすぐ手を引っ込める。メーベルはむくりと上半身を起こし、乱れた髪を
直しながらハイゼのほうを振り向く。視線は合わなかったが、メーベルが三白眼で
睨んでいるのは一目瞭然だった。
「いつから気づいてた?」
「図書館に入ってきてから」
 メーベルはあくまで視線を逸らしたまま事務的に答えた。
「どうやって?」
「さぁね」
「お前、昨日とキャラだいぶ違うな」
 ハイゼが驚きを少し隠せずに言って
「女なんてこんなもんだよ、昨日のは猫かぶってたって思っていい」
 メーベルがはき捨てるように言い、続けて
「で、わざわざ何の御用でしょう?」
 溜め息混じりに言う。
 ハイゼはメーベルから視線を逸らさず
「大丈夫か?」
 ゆっくりとそう口にした。
 メーベルはそれには即答しなかった。しばらくして
「別にどうもしていませんよ、私は」
 はっきりとした返事。
「そうか・・・・・・」
「用はそれだけですか?」
「そうなるな」
 ハイゼが言うと、メーベルは席を立った。そして、無言で歩き出しハイゼに数歩
離れ背を向けながら
「もう私に関わらないほうがいい。期待のルーキーがこんなのと関わったなんて
汚点でしかないでしょ。私に構ってる余裕あれば、強い人早めに見つけたらどうですか」
 そういい終わると、メーベルはその場から消えていた。
 ハイゼはしばらく呆然としていた。取り残された静けさがハイゼを取り巻いて
いるようだった。
 ハイゼは肩を落とし、帰ろうとしたとき、それを見つけた。


















「おいっ、一人でどこ行ってたんだよっ?」
 教室に戻るとすぐにアウイはふくれっつらをしていった。
「図書館」
 そう言ってハイゼはボーっとした顔で、アウイを見る。その様子にアウイはハイゼの
異変に気づき
「なんかあったのか?」
 そう聞くが、聞かれた本人は遠くを見ているようで何も返さない。
「おい、ハイゼッ!」
 まるで意識がないようにハイゼは何も返さない。
「・・・・・・返事がない。ただのしー、いって!」
 ハイゼからアウイに頭はたきの攻撃があった。
「部屋で話す」
 ハイゼはポツリそう言って、アウイははたかれた箇所をなでながら
「分かったけど、それ何?」
 アウイはハイゼの右手にあるそれを指差した。
「本」
 ハイゼは即答し
「いや、みりゃ分かるよ。で、何の本?」
「さぁ」
「はぁ? お前が借りてきたんだろ?」
 アウイは呆れていった。
「俺が借りてんじゃねぇよ」
「意味わかんねぇ」
 アウイが頭を抱え込んで言い、
「そりゃこっちの台詞だ」
 ハイゼはやれやれと肩をすくめるのであった。

















 そして、二人は寮に帰宅した。
「ふーん、自分に関わるな、か・・・・・・」
 アウイはベットに寝そべりながら言った。続けて
「まぁ、仕方ないんじゃねぇの?」
 アウイが苦笑いしながら言って
「かもな・・・・・・」
 ハイゼもベットに横になり、例の本を読みながら言った。
「でも、見たかったなー、昨日と打って変わった態度かぁ」
「いや、見ないほうがいいぞ。昨日の今日じゃ、あれは」
「ま、ホント女ってのはよくわかんねー生きもんだな」
 アウイが笑いながら言って
「でも・・・・・・」
 ハイゼは本を閉じ天井を仰ぐ。
「でも、何だよ?」
「あいつ、泣きそうな目してたんだよ、ずっと。俺と一回も目を合わさなかったけど」
 そう言うとハイゼはアウイから顔が見えないほうに半分寝返りを打った。アウイは
その後ろ姿を見て、何も言わず大の字になり天井を見上げた。天井はしみ一つない
まっさらな白だった。



 


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。