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王子様と改造人間 huit
 そして俺らは行ってみた。












 アウイとハイゼは二組前の廊下で立ち尽くしていた。
「何じゃこりゃ」
 アウイは呆れた。
 二組は人でごった返していた。その大半が、女子である。
「ねぇ、改造人間ってどんなこよっ」
 ある一人の女子が、席に座っていた女子に詰め寄り
「写真ないのっ?」
 またある女子が、見ず知らずであろう男子に訊ね
「改造人間どこなのよ」
 またまたある女子が小さく叫んだ。










「なるほどね、確かに来るだけ無駄だったな」
 アウイが肩をすくめ、
「ま、こんなことだろうと思ってたけど」
 ハイゼが眠そうに言って
「それ、早く言えよ」
 アウイは苛立たしげに言った。











「帰ろうぜ」
 アウイがそう言って歩き出そうと一歩踏み出したとき
「あれ、アウィにハイゼじゃん」
 アウイは話しかけられた。アウイはその人物を見て
「よぉ、何してんだ?」
 話しかけてきたのは、二人の男友達だった。
「そっちこそ、俺はクラス帰るとこ。もうすぐそこだけど」
 その男友達が二組の表札をさすと
「お前、二組なのっ?」
 アウイは驚いていった。
「言ってなかったっけ?」
「知ってたか、ハイゼ?」
「そういや、言ってたな」
 ハイゼがそう言うと
「まぁ、ハイゼ君に覚えてもらえてるなんて嬉しいわ」
 その男友達がからかって言って、ハイゼは呆れながら
「それより、メーベル知らないか?」
「あぁ、それで来たのか・・・・・・。見ての通り、クラスはこんなだし、
朝来て数人のお前らのファンに捕まりそうになってすぐに逃げたぜ。
今もどっかで避難してんじゃねーの」
 男友達はさらりと言う。
「何か、負けたの俺らなのに罪悪感わくな・・・・・・」
 アウイが言った言葉に
「やっぱ、噂本当か! ざまーみろ」
 友達は嬉しそうに言う。
「てめぇ・・・・・・」
 アウイがぎらり睨み
「でも、ほんとあいつは迷惑だろうな。ただでさえ、あの能力ってだけで
白い目で見られてんのに、お前らとちょっと関わっただけでこれだもんな」
 うんうんとうなづくその人物は続けて
「ホント罪な奴らだよな、お前らって。今頃、もしかしたらあいつ女子に袋叩きに
されてたりして」
 遠い目をしながらいった。
「ありえそうでこわいんだけど」
 アウイがなんともいえない顔で言って
「冗談だって、あの強さで挑む命知らずなかなかいねぇよ。したらしたで返り討ちだろうし」
 友達はあははと笑う。
「ったく、帰ろうぜ、ア、レ・・・・・・?」
 アウイはすぐ辺りを見回した。
「ハイゼ・・・・・・?」
 辺りに金髪王子の姿はどこにもなかった。












 その頃、一方ハイゼはあてもなく学校中を歩いていた。通るたび、ハイゼを目にした
女子という女子は見とれたり、こそこそと黄色い声を出したりしている。ハイゼに
とって幸いなのは、アウイと違い話しかけられないことだった。アウイは
人柄的に人間関係も広く見ず知らずの女子にも愛想がいいので、よく話しかけられるが、
ハイゼはアウイが近くにいるとき以外話しかけられたことはないに等しい。話かけても
無視されるか冷たくあしらわれるというイメージがハイゼにはあり、そんな噂も
流れているため、男女問わず無理にハイゼに話しかけようとはしなかった。ハイゼ自身
それをよく知っていた。
 今、ハイゼは階段を降りている。一体ハイゼは何をしているかというと、
メーベルを探していた。アウイと二組に行ったのは、メーベルの身を案じてのことも
少なからずあった。
 










 俺、何やってんだ・・・・・・?
 階段の途中で立ち止まり、深い溜め息をついた。
『―袋叩きにされてたりして―――』
 その言葉を聞いた途端、勝手に足が動いていた。冗談だとはわかっていたが、
勝手に足が赴くまま進み、我に返ったときにはもうアウィたちがいたところから
だいぶ離れてしまっていた。一瞬、アウィの所に戻ろうかという考えが頭をよぎったが、
アウィになんと説明していいか分からず、後戻りできない状態になっていたのである。
 後戻りできないなら、もういっそのこと本気であいつを探し出そうとやけになり、
今に至る。
 右手を額に当ててがっくりと肩を下げていたとき、
「わっ」
 近くを通った女子の声と、どさどさっと物が落ちる音がした。
 ちらり横に目をやると、案の定薄いノートがそこらじゅうに散らばっていた。
 いつもなら素通りするのだが、今日は何故か助けてやるかという気持ちになり、
近くにあった数冊を広い束ね、大体散らばったノートを集め終えたその女子に
無言で差し出した。
 それに気づいた女子が
「ありがとうございます」
 受け取って、顔を上げて目が合った瞬間
「あ」
 その女子がそう言って、続けざま
「アウィ一緒じゃないの?」
 きょとんとした顔で訊ねる。その女子はリムだった。
「あぁ、ちょっとな」
「ふーん、そっか。拾ってくれてありがとう。じゃあ」
 リムはそう言って階段に右足を一歩かけそのまますたすたといくと思われたが、
振り向いて
「メーベ、多分図書館にいると思うよ」
 唐突に言った。
「えっ?」
「クラスにいなかったでしょ? 探してるんじゃないの?」
 リムは首を傾げる。
「いや、まぁ、そうだけど。なんで・・・・・・?」
「拾ってくれたお礼。それに、さっき周りに人いすぎて教えてあげられなかったから」
 すまなそうにリムが言って
「・・・・・・サンキュ」
 俺がそう言うと、リムはさっさと行ってしまった。
 たまにはいいことするもんだな。
 俺はしみじみそう思うと、図書館へと足を動かした。






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