王子様と改造人間 sept
うわさってのは、どんなに最初は些細でも、人から人に途切れなく伝わり、
尾ひれなどがついてすごいことになったりする。
俺らがあいつに負けたことは、あのときまわりで俺らをこっそり見ていた
先輩から後輩へと伝わり、学校のひま人たちの話題は数日後それで持ちきり
になっていたのは言うまでもない。
中等部にて
「ねぇ、聞いた? 王子たち改造人間に負けたんでしょ」
ある女子のグループの一人が言って
「汚い手使ったんでしょ」
また違うグループの女子が言って
「色仕掛けだっけ」
また違う女子が言って
「私は真っ向勝負で、なんでも男顔負けの怪力で圧勝したとかって聞いたよ」
またまた違う女子が言って
「テレポートみたいな超能力つかったんじゃないの」
様々な言葉が飛び交っていた。
「みんなひまだねぇ・・・・・・」
アウイが正式なクラス替えがしていない去年のクラスを繰り上げたままの
仮クラス、つまり七クラスのベランダのさんに頬づえをついて呆れていた。
チーム申請後、正式なクラス替えが行われることになっている。
隣にいるハイゼも小さくあくびした。
「ちょっと、アウイッ! あの子に負けたって本当なの?」
「ヤナ・・・・・・」
綺麗なソプラノ声が飛んできて、アウイはその方向に顔を向けた。声の主は、
この前アウイがチームを組むのを断った少女であった。綺麗な栗毛のストレートの
長髪、青紫色の瞳。ヤナと呼ばれた少女は、クラスをずんずん横切って
二人の元にやってきた。
「で、どうなのよっ?」
ヤナはアウイに顔がついてしまうんじゃないかとばかり近づいていった。
両手は腰に当てられ、仁王立ちとも言わんばかりである。ヤナの背は
アウイのちょうど目線の高さと同じくらいだった。
「どうって、負けたけど」
ヤナの瞳をしっかり見据えてアウイが言うと、ヤナはアウイから少し離れ、
肩の力を少し抜いた。
「何でよ?」
「なんでって、あの反則的な能力のせいだろ」
アウイがへらへらと笑っていって
「なるほどね」
ヤナは溜め息一つ。
「で、誰とチーム申請したのよ?」
ヤナの鋭い眼が光り、アウイの唇がひきつる。
「まさか、まだとか言わないでしょうね」
アウイは作り笑顔のまま何も返さない。
「期限は四日後よ」
アウイは何も返さない。
「今年は三で割るとチームが綺麗に作れるいい生徒数で、二人だけなんて
絶対認められないと思うけど」
「まじ?」
アウイが驚いていって
「まじ」
ヤナは冷たい瞳をアウイに向け
「せいぜいあまりものの中からいいくじ引くのね。じゃ」
さっそうと帰っていった。
二人のそんなやり取りは盗み聞きしていた女子から女子へと伝わり
「やっぱ、本当だったんだ。負けたのー」
「ショックー」
そういった会話が廊下で途切れなく続いていた。アウイとハイゼが近くを
通っていることにも気がつかない様子である。二人がどんどん廊下を横切っていると
「ねぇ、どんな卑怯な手を使ったのかしら?」
「さぁ、あの子、性格悪そうだもんね、いろいろありそう」
ある二人組みの女子が好き勝手言っていると、片方の女子が近くにいた
女子の一人に向かって
「あ、リム。改造人間がどんな汚い手つかって王子たちに勝ったと思う?」
そう言った。言われた本人は
「汚い手使うような子じゃないよ、メーべは」
困ったような顔をしていった。
リムと呼ばれた少女は、あまり明るくない肩ほどの茶色の髪を持つ、
つり目のとにかく細い体をした少女であった。
「リム、お前あいつと知り合いなの?」
その話をそばで聞いていたアウイが急に立ち止まり、驚いてリムに聞いて
「あ、アウィ。うん、一年のときクラス一緒だったから」
突然の話しかけにびっくりしながらもリムは言った。
リムに話しかけた二人組みはリムをうらやましそうに、三人から少し離れた場所で
三人を見ていた。
「そういや、そうだったな。てか、あいつ友だちいたんだなー」
「まぁ、アウィに比べれば少ないかもね。それより、負けたんだって! 強かったでしょ、
メ―べ」
「たく、どいつもこいつも慰めの一言もなしかよ、別にいいけどさ。
ま、俺らの代じゃ強いだろうな。お前、あいつと戦ったことあるの?」
「うん、かなり手加減されたけどね。メーべ、なんだかんだいって優しいし」
「ふーん」
アウイがそう言うと
「メーべ、だいじょぶかな、心配だな・・・・・・」
リムがいきなり独り言のようにつぶやき
「あぁ、こんなうわさたっちゃってか」
アウイが納得したかのようにいった。
「いや、まぁ、それも少し心配だけど、チーム申請平気かなって」
リムが本当に心配そうに言って
「そういうこと、・・・・・・お前はもう申請したの?」
「うん、最初メーべ誘ったんだけど、断られて。女の子とは極力組みたくないんだって。
友だちならなおさらだっての一点張りで、変なとこ頑固なんだから」
リムは苦笑いして言うと、アウイは首をかしげ
「なんで、女と組みたくないんだ?」
「もしかして、自分のレベルに合わせられた練習や仕事にかせられて同じチームになった
人に迷惑だからとかか?」
そういったのは、今までただ二人の会話を流しながら聞いていたハイゼだった。
リムは驚きながら
「うん、そう、まさにその通り」
「何で分かったんだ?」
アウイは目を丸くしていった。
「ま、あいつの性格とか考えたら、な。あとは勘」
ハイゼがさらりと言うと、アウイとリムは目を合わせ
「そんなもん?」
アウイが言って
「さすが王子、天才って感じだね」
リムは感心した。
「ところで、どっか行くつもりじゃないの?」
リムのその何気ない一言に
「あぁ、二組行くとこだったんだ。あいつに会いに」
「なるほどね、でも、行くだけ無駄だと思うけどな」
「何で?」
アウイが訝しげに言った。
「行って見れば分かるよ」
「なんだそりゃ? まぁ、いいや。ハイゼ、行こーぜ」
アウイがそう言うとすぐに歩き出し、ハイゼは何も言わずついていく。
その二人の後ろ姿を見ながら
「メーべのこと、ほんっとわかっちゃいないな」
リムはポツリつぶやいた。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。