王子様と改造人間 cinq
「もらったっ!」
ハイゼがそういった直後
「甘いな」
イジャスラフが冷静にいった。
ハイゼの放った銃弾、ほとんどスアで出来ていて少し光の尾を引くそれは、
ハイゼに突っ込んでくるメーベルの胸元辺りめがけて一直線に向かっていた。
試合開始前、二人が互いにあいさつを交わす前のこと。
「ルールは俺が決めてもいいか?」
ブロック内に入るなり、ハイゼは単刀直入にメーベルに向かっていった。
「はい、構いませんけど」
いきなりだったので、少しどぎまぎしながらの返答。
「じゃあ、どちらかが一発相手の攻撃を受けた時点で終了な。攻撃できたほうが勝ち、
攻撃受けたほうが負けってことで」
「分かりました」
「あと、俺の攻撃当たっても痛みは一時的で、当たった場所は赤くなるだけ
だから。別にそんな必死によけなくても大丈夫」
要するに、どうぞ遠慮なく負けにいってもらって平気ですとでも言うような
その言葉に、
「えっと・・・・・・、はい」
メーベルはただただ苦笑いしか出来ない。
「なるべく、銃壊さないでくれよ」
メーベルに聞こえるか、聞こえないかの声でハイゼが一言そういうと
「はっきり断言は出来ませんが、やってみます」
メーベルもぼそっとつぶやいた。
もうよけきれないであろうメーベルに、銃弾はハイゼの思惑通りあたる、
はずだった。当たるはずだった銃弾は、全部スアで出来ていたそれは、
メーベルに後一メートルいかないかいったかのところで、なんとさらさらと
光の粉に変わり消えてしまった。今メーベルの周りは、光の粒子たちが
点滅しては消え点滅しては消えていた。そんなメーベルの右足の一蹴りが
ハイゼの両手にくりだされた。
手からはじかれた銃が宙を舞い、メーベルはジャンプしてまるでムーンサルトの
ごとく一回転しながらそれを糸もたやすく手中に収めた。光の粉が花火の
打ち上げた後のようにさらさらと落ちていく。
一方、その頃ブロック外では
「な、なんすか? アレ?」
アウイが、目を大きくしてメーベルを見ながら言った。
「ま、アレがスアの適合者っていわれる所以だろうな」
「意味わかんないし・・・・・・」
同じく、ブロック内でも
「お前のそれ、何?」
軽やかに地面に着地したメーベルに、ハイゼは真顔で言った。
「ああ、これはスアです、空気中の。私、さっきみたいに自分に危害が少しでもある
スアを、自分に近くなったら操って無害なものに出来るんですよ。だって、
私スアの適合者ですから」
メーベルが嬉しそうに言った。続けて
「でも、操ったら操ったで周りの空気中のスアも反応しちゃって、こう
なっちゃうんですけどね」
恥ずかしそうに一言。
ブロック内で
「反則だろ」
ハイゼが言って
ブロック外で
「反則だろ」
アウイが言った。
こうして俺らはメーベルに久しぶりの敗北感を与えられたのである。
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