王子様と春 trois 実戦練習2
『お手並み拝見といこうか』
ナイフが空中に放り投げられた直後、銃声と金属音が鳴った。
ナイフは、ハイゼのスアで出来た銃弾にあてられたことによって進路をわずかにずらされ、そのナイフをキルサンがいとも簡単に真っ二つに切り落とす。ナイフはメーベルに五メートルも届かずに、床に落ちた。
「ザン、ふざけんのもたいがいにしろよ」
ハイゼが冷たくいって
「あー、こわいこわい、さすがだねぇ王子様」
ザンがにやりとほくそえむ。
ハイゼが溜め息をつき
「べっつにお前がずらさなくても、最悪左肩かするだけだったっての」
ザンが悪びれる様子もなくいった。
それにはアウイとヤナは大きく溜め息をつき、ロジェも申し訳なさそうな顔をする。
そのころ狙われた本人は無表情で
「・・・・・・ありがと」
キルサンにいうと
「なんだかご不満ですね、余計なお世話でしたか?」
キルサンは苦笑いしながらいった。
「そうじゃ、ないけど。なんていうか、んー、うまくいえない」
メーベルが呻くようにいって
「・・・・・・なんとなく分かりますよ、あなた負けず嫌いですし。でも、彼と私が動かなかったら、あなた今頃私の手に負えないようなことしそうでしたから」
キルサンが意味ありげに笑う。それにはメーベルはばつが悪そうに
「ほんとキルサにはかなわない」
ぼそりと一言。
「でも、安心しましたよ」
キルサンがふっと笑って
「何が?」
メーベルが首を傾げる。
「いいチームメイトを持ったみたいで」
ハイゼのほうを見ながら冗談めかすようにいったその言葉に
「いい、チームメイト、ねぇ・・・・・・」
メーベルは目を細めてハイゼを見ながら小さく一言。
「そのお友達に狙われたんですが・・・・・・」
「あれあれっ? みなさんおそろいでこんなところで何してるんですっ?」
そういってアウイ、メーベル、ハイゼたちの真ん中に現れたのはラザレスだった。
まるで瞬間移動でもしていたように気配なく一瞬にして現れたラザレスに、アウイだけが少し驚きあとの者はあまりそれを顔に出さない。
「他のみんなは仲良く戦ってるのに、どうかしました?」
またもや楽しそうにいうラザレス。続けて
「さぁさぁ、早く相手を見つけてくださいっ!」
その言葉にその場にいたものがちらりと誰かの顔を見る。
アウイとヤナは顔を見合わせ、キルサンがロジェのほうを向き、ロジェがキルサンにほほえみかえす。そして、ザンは挑発するかのような眼差しをメーベルに送り、メーベルは無表情でザンを見返した。そんな二人をハイゼは少し呆れ顔で眺めていた。
その様子をラザレスは楽しそうに見ながら
「もうみなさんの中では決まっているようですね」
それだけいった。
ヤナはアウイににっこりと
「いいの? 私で?」
「あぁ、久々に、な」
アウイが頭をかく。
「手加減不要だから、私もしないし」
うれしそうに右手で短槍を器用にくるくると回すヤナに
「へいへい」
アウイが苦笑いする。
「彼に任せておけばだいじょぶそうなんで、私行きますね」
キルサンがいって
「・・・・・・私は平気。それよりも、楽しんできてね」
メーベルがほほえむ。
「あなたは無茶しないようにしてくださいよ、特に相手には」
キルサンが意地悪そうにいって
「けんか売ってきたのはあっちだよ」
メーベルはすました顔で楽しそうにいった。
アウイとヤナはハイゼたちのところに来ると
「ザン、あとで俺の相手してなー」
アウイがザンに笑っていった。ザンは珍しいものでも見るような顔でアウイを見るが
「暇があったらな」
さらりとそれだけいった。
そんなアウイをハイゼが意味ありげな目で見ていると
「じゃあ、俺たちは行くから。ハイゼあとは頼むなー」
アウイはそれだけいうと手を振ってヤナといってしまった。
そのあと、ハイゼたちのところにキルサンがすたすたとやってきて、
「はじめまして、お願いしますね」
ロジェが丁寧な口調でいって
「こちらこそよろしくお願いします」
キルサンも丁寧に言い返す。キルサンは他の二人に目もくれない。
しかし去り際
「彼女のこと頼みます、無茶しないように」
ハイゼだけに聞こえるようにぼそりといった。ハイゼはただちらりと目を横に向けただけで、何も返さなかった。
「これで残ったのは、あなたがた三人ですね」
ラザレスが楽しそうにいって、ザンとメーベルの鋭い視線が火花を散らす。
ハイゼは小さくため息一つ。
ザンとメーベルがどちらともなくお互いのほうに近づいていき、五メートルほどの間隔をあけて止まった。
ラザレスはハイゼのほうにやってきて
「いやぁ、おもしろい戦いになりそうですね」
独り言のようにいって
「どうですかね」
ハイゼが心の底からどうでもいいといわんばかりに一言。そしてちらりとハイゼはラザレスを見て
「いいんですか、このまま戦わせて?」
ハイゼのその質問にラザレスは
「・・・・・・、そう、ですねぇ。確かにここは止めるほうが正しいのかもしれませんが、でも止めたら逆に怒られちゃいそうじゃないですか二人に」
悩ましげにいった。
「でしょうね」
ハイゼが呆れながらいって
「それに、ハイゼ君も見たいでしょう? この二人の戦い?」
ラザレスが興味深そうに二人を見る。
それにはただハイゼは黙り込み、緑の瞳を細めるだけだった。
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