王子様と春 un 新クラス
「まぁ、当然俺らは七だよなぁっ!」
アウイが腕組みをしながら満足そうにいって、ハイゼが大きくあくびを一つ。
第三学年はチーム登録から二日間学校が休みになる。
あのチーム申請が終わり、
「明日から休みなんだし、ちょうどいいから親睦深めるとかすれば?」
チーム申請を行っていた教室から出てきた三人にドゥエインが冗談交じりにいった。
「それもそうだなぁ・・・・・・」
アウイが納得するかのようにいう。
メーベルはふと何か思い出したように
「そうだ、いうの遅くなったんだけど明日仕事はいって行けなくなっちゃった。ごめん、二人とも」
いきなりリムとドゥエインに手を合わせて謝った。
アウイとハイゼはわけが分からず顔を見合す。
「そっかー、仕事じゃ仕方ないね。でも、残念だなー。キルサンだってみんなで集まるの久しぶりで楽しみにしてたのに・・・・・・」
リムが残念そうにいって
「私も本当に行きたかったんだけど、この前急に仕事入れられちゃって・・・・・・。キルサンにも謝っといて」
メーベルが申し訳なさそうにいった。
「にしてもお前も新学期早々大変だな、明々後日クラス分けだってのに学校来れんのかよ?」
ドゥエインが呆れるようにいって
「それは、多分大丈夫かなぁ? そこまで重めの仕事じゃなさそうだったし・・・・・・」
メーベルが微苦笑していった。
そんなやり取りを見ながら
「えっと、あのさ、何の話してんの?」
アウイがいいにくそうに切り出した。
それに三人は互いの顔を見合わせ
「いや、実は明日久しぶりにちゃんとした休みだし、俺らメシ食いに行こうって約束してたんだー」
ドゥエインが説明した。
「なるほどね」
アウイが納得し
「そういやキルサンって誰? 友達?」
さらりと疑問に思っていたことを訊ねる。それにはハイゼも三人を見た。
「ほら、この前話してた私たちのチームのもう一人だよ。一年のときのクラスメートなんだ」
リムがいった言葉に
「一年のときのクラスメートってことは、一クラスってことだよな・・・・・・。こいつといい、しらねぇなぁ」
アウイが悩ましげにいった。
「話したことはなくはねぇだろうけど、まぁこれといって特に印象残るやつじゃないしなー。仕方ねぇって・・・・・・」
ドゥエインが笑っていうと
「うーん、それでもなんか納得いかない」
アウイが不満をこぼすようにいう。
「でも残念だったなー、お前ら。メーべに奢ってもらえなくて」
ドゥエインが腕組みをしながらいって
「はい? ふつう反対じゃ・・・・・・」
アウイが困ったようにいった。
ハイゼもメーベルに目を向ける。
「えー、だって確実にお前らよりメーべのほうが金持ってるだろ? 仕事三昧だし」
当然という風にドゥエインがいうと、メーベルはほとほと呆れ、リムも苦笑い。
「例えそうだとしても、そんな余裕ないよ。貯めてるんだから」
「貯めてたって使わなきゃ損だろ。ケチだなぁ」
「あのなぁ、俺らだっていくらなんでも奢られるのはごめんだって・・・・・・」
アウイが肩を落とすと、
「俺は別にそうは思わないけど」
ドゥエインが首を傾げる。
「ドゥエインが変わってるんだよ」
リムがいって
「食事するのにサイフ忘れてくるとかさ、結構すごいよね」
メーベルが溜め息一つ。
それにはアウイがおいおいという目をドゥエインに向け、ハイゼも呆れていた。
「あ、私そろそろ行くね。明日の用意して夜には行かないといけないんだ」
メーベルがそう切り出し
「行ってらっしゃい」
「へますんなよー」
二人がいった。
そして後の二人も
「ま、その様子じゃまた会うのは明々後日だな。怪我すんなよー」
アウイがそういったのに対し
「本は返しとくな」
ハイゼは無表情でそういった。
それにはメーベルは微笑して
「はいっ、じゃあまた明々後日」
そういうとその場からすぐに消えてしまった。
少しして
「本ってなんのこと?」
アウイがそう口にしたのはいうまでもない。
そして、三日後。
校内の木々はあちこち花をつけ、色鮮やかに変わっていた。風が吹くたび、赤やピンクや黄色、オレンジといった花びらが舞い散る。
中等部の校舎の玄関右脇のほうになにやら数枚の紙が張り出されてあった。その周りでは人がたまり、ざわざわとしていた。
アウイとハイゼがやってきたのは人がまばらになったころであった。二人は真っ先に七と書かれた紙を見て、自分たちの名前が当然のごとくその紙に載っているのを確認すると、さっさと今までと変わらない七クラスに向かった。
アウイたちと入れ替わるように、メーベル・リム・ドゥエイン、そしてもう一人見知らぬ少年がやってきていた。メーベルはおもしろくなさそうな顔をして張り紙に近づく。
「どうせお前は七だってっ! あいつらと一緒じゃなぁ」
ドゥエインがなだめるようにいって、メーベルは溜め息をもらす。
「成績優秀、戦闘能力も桁違い。それにメーベルもうちじゃ上位のほうだし、どうあがいても特選クラス行きだって」
リムもそういうと、
「覚悟はしてたんだけどね」
メーベルは肩をすとんと落とす。
第三学年、チーム登録が終わってクラス分けになるわけだが、その分け方は今までとは違っていた。チームで実習も多くなるため、チームのメンバーは必然的に同じクラスにされる。そして、三人の成績・戦闘能力を平均的に見て上位に当たるチームは、特選クラスと呼ばれるほかのクラスよりも実習が厳しいクラスに回されるのである。そのクラスというのが七クラス、七組なわけである。
「てか確定だろー。そう考えるとお前らクラス分け楽しくないよなぁ。さてと、俺らも探すか」
ドゥエインはそういって、三人も自分たちのクラスを探し出す。
「リム、キルサ、見つけた?」
「四、五はないよ」
リムがいって、
「ありましたよ」
キルサと呼ばれたやや長めの黒髪に赤い瞳をした少年がぼそりといった。
キルサの指差した紙を見ながら
「へぇ、アウィにハイゼにメーべに、あぁマドンナも一緒なんだー。・・・・・・って俺らも七かよっ!」
ドゥエインが頭を抱えていった。それにリムも
「手ー抜けないじゃんっ!」
あーあというようにがっくりして
「サボりにくそー」
ドゥエインもうなだれた。
二人のその様子にメーベルとキルサと呼ばれた少年もほとほと呆れる。
そしてメーベルは
「キルサンはともかく、二人はもう少しまじめにやれば? まじめにやれば普通に五位内はいるくせに・・・・・・。実力あるくせにやる気ないんだから」
そう溜め息混じりにいった。
「まぁとにかく、また四人一緒だねっ!」
リムがうれしそうにいうと
「うんっ」
メーベルも素直に喜んだ。
二人のうれしそうな様子に男二人も顔を見合わせてふっとほほ笑んだ。
そのころ、颯爽と自分たちのクラスに向かうアウイとハイゼを見ながら
「やっぱり王子たち七クラスだよねー」
ある女子がささやき
「あれ? 二人だけなんだ」
ある女子が不思議そうにいった。
「ねー、てっきりあの子も一緒かと思ってたけど・・・・・・」
相槌を打つようにまたある女子がいうと
「まぁ、あの子はそこらへんの女子と違ってあいつら男としてみてなさそうだからねー」
固まっている女子たちのそばでそんな声がした。
固まっていた女子たちはその言葉にぎくりとして声の主を探すが、近くにはそれをいったものはいなかった。
少し先のほうにただ軽やかな足取りで進む、きれいな長い栗毛の少女が一人ほほえんでいた。きれいな青紫色の目をきらきらとさせながら。
「にしても、あいつもぎりぎりだなぁ、まさか来ない気じゃ」
アウイが教室の黒板上にかけられた丸い時計を見ながらいって
「さぁなー」
ハイゼがどうでもいいといわんばかりに一言。
「誰が来ないの?」
きれいなソプラノ声に、アウイは右を向く。
「おはよ、いやもう一人のチームメイトがまだ来なくて。つーか、やっぱりヤナもこのクラスか」
「おはよう。そうなんだー、まぁそろそろ来るんじゃない? それにしても私が同じクラスじゃ不満かしら?」
誰もが見ほれてしまうような笑みに
「不満もなにも、クラスに花があってなによりです」
アウイがにっこりそういうと
「あら、しらじらしい」
ヤナが冷めた目を送る。
クラスの左隅に固まっていた三人のもとに
「よっ! 朝から痴話げんかか?」
黒い髪をオールバックにしたハシバミ色の瞳のいかつい目をした少年がやってきた。
少年の後ろにゆるくパーマをかけたようないい感じの、黄色みがかった茶色のくせっ毛で優しそうな顔立ちのした少年も立っている。こげ茶の瞳がやさしくハイゼをとらえ
「これから一緒のクラスだね、ハイゼ」
柔らかにほほえむ。それには珍しくハイゼもふっと笑みをもらし
「あぁ、よろしくな。ロシュ」
「あー、俺にはなしかハイゼー」
いかつい少年が心外だとばかりにいって
「まぁ、ザンはロシュと違って癒し系じゃないしなー」
アウイがにやりと一言。
「それいうならお前もだろっ!」
ザンも挑むような目でアウイを見る。
「賑やかねー」
ヤナがそうもらすと
「そういや、お前たちチームなんだよなー。なんかこう見るとすごいチームだな」
アウイが感慨深そうにいって、三人を見た。それに三人は顔を見合わせ
「アウィたちにいわれたくない」
「お前ら人のこといえねぇだろ」
「うん、ハイゼたちにはあんまりいわれたくないなぁ」
一斉にそういった。
そんなことを話していると
「あ、来たよ。アウィたちのチームの紅一点」
ヤナがいった。
全員が教室の出入り口に目を向けると、ドゥエインとリムが話しながら入ってきて、そのあとにメーベルとキルサンが話しながら入ってくる。
「なんか、ぱっとみあんま強そうじゃねぇな。おたくらの女子は」
ザンが正直にそういうと、アウイとハイゼが顔を引きつらせ
「それはどうかな」
同時にいった。
そろそろ席に着く時間帯になり、それぞれのチームがなるべく近くに座っていく。
「後ろがよかったけど、仕方ない、真ん中らへんでもいいだろ?」
早く来て後ろの席はほぼ埋まっていたため、アウイはそういった。
ハイゼはあくびをしてうなづく。
そしてアウイは黒板前辺りで話しているメーベルたちに近づき
「おはようっ!」
明るくいった。
「はよっ!」
「おはようアウィ」
ドゥエインとリムがいって、
「あ、おはようございます」
キルサンと話していたメーベルも話を止めてにこやかにあいさつした。
そのご機嫌振りにはアウイともう座ってその様子を眺めていたハイゼはちょっと驚く。
「お前ら、そろそろ座んないの?」
アウイがいうと
「それもそうだな」
ドゥエインがそういってぞろぞろと席についた。
アウイとハイゼが真ん中の少し後ろの席に座り、その前にドゥエインとリム、そしてハイゼの左隣にメーベルとキルサンが座った。
話が盛り上がっているメーベルたちをちらりと見ながら
「なぁなぁ、あれがこの前いってたお前らのチームメイト?」
アウイが前に座るドゥエインの肩を叩いていった。
「そうだよ、な、地味で特に印象残んねぇだろ?」
普通にドゥエインがそういうと
「地味、というか普通だな。・・・・・・うん、とにかく普通」
アウイはちらと左を見ていう。
アウイのいったとおり、キルサンはとにかく普通の少年だった。良くも悪くもない、普通の顔。年相応の身長に、服装も普通。いい意味で目立たない少年だった。
「・・・・・・なんか、やけに仲いいな」
珍しくハイゼが口にすると
「そうかぁ? 普通じゃね」
ドゥエインがいって
「まぁ、キルサンとは一年からの付き合いだし。なによりキルサンは一年のときからメーベに普通に接したつわものだからね」
リムもさらりという。
「つわものって?」
アウイが訊ね
「いやほらさぁ、メーべってとっつき悪いしあの能力で結構一年の最初みんなメーべに話しかけるとき何かしらこわがられてたんだけど、キルサンだけは最初からメーべに普通に接してたんだよねー。今でも思い出すな、キルサンの紳士的な態度に逆にメーべびっくりしてて・・・・・・」
リムがそんな説明をする。
「なるほど」
アウイは納得し、ハイゼはまたちらりと左を見る。
二人は自分たちの話しがされていることにも気づいていないようで、話し続けている。メーベルはいつになくよく笑顔になり、とても楽しそうに見える。
本当にそれだけか?
俺は小さく息を吐き、右ひじを突いて時計を見ていた。そしてまたちらりと横を見る。
ま、関係ないか。
そう思いつつ、やはり見慣れない笑顔の少女をまた物珍しさで見てしまう。
こうして俺たちの新しい学園生活が始まったのである。
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