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王子様と改造人間 quatorze




 彼女の口から出た言葉は




「嫌です、無理です、お断りします」

  



 それに当たりはしんと静まり返る。その彼女の意思を絶対変えないというような目を見ながらハイゼが口を開きかけたとき、メーベルはさっと二人のほうに翻り



「ごめん、リム。さき帰るっ! ドゥエインちゃんと送ってってあげて」
 そういうと、体育館の反対側、うっそうとした森の中に逃げてしまった。




 残された四人は
「なんで帰っちゃうのっ?」
 リムが小さく叫び
「メーべ、ナイスッ! じゃなくて、なにもったいないことしてんだよっ!」
 ドゥエインがこぶしを振り回し
「ふつう、逃げるか。あれじゃ、いい逃げだな。いや、きき逃げか」
 アウイががっくりと肩を落として言うと
「理由は?」
 ハイゼが何故か独り言のようにいって
「ほんとだよ、理由も聞きもしねぇで」
 アウイがまるで返答になってない返事をする。
 それから呆然と四人が立ちすくむ中
「でもさー、メーべが即イエスって言ってもうちらショックだったよね・・・・・・」
 リムのぼそりといった一言に
「まぁなー。俺は別にいいけど、リムは何度もアタックしたもんな」
 ドゥエインがなだめるように言う。それがたまたま耳に入ったアウイが
「お前ら、もしかしてチーム一緒なの?」
 驚いてきく。
「うん」
 二人が同時に言って
「あと一人は?」
 アウイが何気なくきくと、二人は顔を見合わせ
「名前言ってもわかんねぇだろうから言わないけど、男だよ。地味に強いやつ」
「そうそうって、・・・・・・失礼でしょっ」
「えー、だって実際そうじゃん、リムも思ってたくせに」
「思ってても、ドゥエインみたいに口にしたことないからっ」
 そんな二人のやり取りを尻目にアウイが呆れているとき
「そこまでして組みたくない理由はなんなんだよ・・・・・・」
 ハイゼが誰にも聞こえない声で小さくつぶやいた。ハイゼが見つめる先にはただ薄暗い森が広がるばかりであった。





















「でもびっくりしたー、まさかアウィたちがメーベ誘うなんて」
 四人で帰る中、一番左を歩いていたリムがいった。
「俺もさすがに冗談で口にしたけど・・・・・・、実行されるなんて」
 ドゥエインがぼそりとつぶやく。
「え! なに、それってつまり、もともとドゥエインが悪いのっ?」
 リムが起こったようにドゥエインに攻め寄って
「だって冗談で口にしたんだぜっ! まさかだろっ?」
 言い訳がましくドゥエインがいった。
「そりゃそうだけど・・・・・・、いくらなんでもそれはいっちゃいけないでしょ。メーべ絶対アウィたちよく思ってないもん。というか関わり持ちたくなかっただろうし。ドゥエインいつかメーべに友達の縁切られるよ、って友達とも思ってないかなぁ、メーべ」
 リムが一気にいうと
「そもそもあいつ他人ひとをよせつけさせなすぎるんだよ。いっつもぶすくれて機嫌悪そうだし、とっつきも悪いし。もうちょっと愛想よければかわいく見えなくもないのに」
 ドゥエインはやれやれといわんばかりに肩をすくめる。
「・・・・・・ほんと、もうすこし周りに自分のことさらけだしたって罰当たらないのにね。私ももうちょっと愛想よければ絶対もっとかわいいのにとは思うよ。でもさ、もしメーべが今とは違ってたらうちらきっと仲良くならなかった気がするんだよね」
 しみじみというリムに
「そうだなぁ」
 ドゥエインは微苦笑して同意した。
「もしかしたら彼氏とかいてさー」
 遠い空を見ながらリムがいって
「今じゃ想像もつかないけどな」
 ドゥエインがポツリいう。
 そんな二人のやり取りを横で聞きながら
「よくお前らあいつと仲良くなれたな」
 感心するかのようにアウイがいった。
「まぁ、いろいろあったからなぁ」
 目線を上にしながらドゥエインがいって
「そうだね」
 リムが懐かしそうにいう。
「でもあそこまではっきり断られるとはな・・・・・・、そんなに俺のこと嫌いか」
 アウイが嘆息をもらした。一番右側にいるハイゼが、左隣のアウイをちらりと見るが何もいわない。
「そりゃメーべがアウイには散々な目に合わされたのは否定しないけど、メーべは二人を嫌ってるというか二人の肩書が嫌なんだろうね」
 リムが腕組みをしながらうなるようにいった。それにはドゥエインもどうにもいえない表情になる。
「はぁ? どういうことだよ?」
 アウイが眉をよせて訊ねた。
「つまり、その、メーべ、もう先にいっちゃうと天邪鬼というか、人気があるものとかが嫌いなんだよ」
 リムが歯切れ悪く答える。
「・・・・・・はい?」
 首を傾げるアウイに
「だから、例えば今すごい人気のある本がみんなに読まれてるとするじゃない? メーべ、それを意地でも読まないのよ。それで人気がなくなったころに読んで、それであぁほんとうに人気出るほどおもしろかったんだって思うわけ。そういう子なの」
 リムが困ったように笑い
「簡単にいっちまえば、お前らが人気者だから嫌いってわけだ」
 ドゥエインがそっけなく一言。
「・・・・・・なんだよそれ、そんな理由で断られたのか」
 呆れて思わず額に手を当て首を振るアウイ。そんなアウイの右隣で
「へぇ」
 めずらしくハイゼが口を開いた。
「断ったのは、それが一番の理由じゃないだろうけどね」
 リムがいうと
「だな、一番の理由は目立ちたくないからだろうなぁ」
 ドゥエインがうんうんとうなずく。
 それにアウイは
「俺らだって好きで目立ってんじゃねぇよ・・・・・・」
 小さくつぶやいた。

















「じゃあ、俺たちこっちだから」
 ドゥエインがそういうと
「別にいいよここまでで」
 リムが困ったようにいった。
「いや、送るよ。つっても女子寮の手前までだけど」
 頭をかきながらいうドゥエインに、リムはすぐに返事をしなかった。しばらくして
「うーん、じゃあ本当に寮の手前までお願い」
 仕方ないなという表情でほほえみながら承諾する。
「じゃ、そういうことで」
「今日は残念だったね。じゃあまたね」
 二人がそういうと
「おう、二人とも説得できたらしてくれよな、特にリム頼むぞ」
 アウイが笑っていった。それには二人は顔を見合わせ笑う。
「うん、頑張ってみるよ」
 リムがそういうと
「今日はいろいろありがとな」
 ハイゼが表情はあまり崩さないままいった。それに三人はびっくりしたが、表情には出ないもののその声に感謝の気持ちがこもっていることに二人は気づき、ハイゼにほほえんだ。
 
 女子寮に向かう二人の後ろ姿を見ながら
「きっと時間の問題なんだろうな・・・・・・」
 ハイゼが独り言のようにいった。それにはアウイが訝しげにハイゼを見る。
「何が?」
「イヤこっちの話」
 ハイゼはそういうとすたすたと自分たちの部屋に向かって歩き出す。そんなハイゼにアウイは首を傾げたが、ふっと笑うとすぐに追いかけていくのであった。

























 その夜。ハイゼはまたベットの上に横になりあの本を読んでいた。そして、パタンと閉じると
「なぁ、お前もうあきらめた?」
 出し抜けにアウイにいった。
「まさかっ! あいつにちゃんとなんで一緒に組みたいか説明しないと気が済まないってのっ!」
 アウイが腹筋を止めていう。
「そっか、そうだよな。今日のアレはないな」
 ハイゼが目を細めながら天井を見る。
「ほんとだよ。いくらなんでも、アレはないって。こうなったら意地でもあいつにちゃんと説明して、それで納得のいく断りの理由を聞かせてもらわなきゃ、すっきりしないってまったく」
 アウイがまた腹筋を始めながらいった。
「そうだな・・・・・・」
 ハイゼが目を閉じていった。



























『嫌です、無理です、お断りします』

 あれじゃ納得いくわけがない。ちゃんとその理由聞かせてもらわなきゃな・・・・・・。

 一体そこまでして俺たちと組みたくない理由はなんなんだよ?








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