王子様と改造人間 treize
「ドゥエイン、先帰っていいぞ」
そう言ったのは、ハイゼだった。
「は?」
ドゥエインはすっとんきょんな声を上げ
「あいつほんとに来なかったら時間の無駄だろ? だから先に帰ってていいって。
アウイも用事あるなら俺だけ待ってるから帰っていいぞ」
ハイゼが覇気のないぼけっとした顔で言う。
「どうしたのお前?」
「俺は帰らないぜ」
アウイとドゥエインは同時に言った。
「別にどうもしねぇよ。来るかどうかも分からない奴男三人で待ってたって
アホみたいだろ。だから帰っていいって。で、何でお前は帰りたくないんだよ?」
ハイゼはドゥエインに顔を向け
「だって、来なかったら来ないって言いにリムがここ来るだろうし」
ドゥエインがあっさりと返す。
「なるほどね・・・・・・」
ハイゼが半ば呆れて、半ば心の中で感心して言った。
「それに、こんなとこに一人って寂しいし、誰かに見られたら怪しいだろ」
「そうそう。でも、なんかハイゼならこんな薄暗い森に一人でも平気だし、自然かもなぁ」
アウイの言葉に
「あ、それ俺もちょっと思った」
ドゥエインがアウイを指差し同意する。
そんな二人を心底呆れながら
「俺、お前らが友達じゃなかったら、多分本気で引き金引くんだろうな・・・・・・、実践も
練習も」
そんな恐ろしい言葉をぼそりといった。
「にしても、遅いな・・・・・・」
アウイが不満をこぼし
「だな、つってもまだ十五分くらいしかたってないんだけどね」
そう言うとドゥエインは空を見上げた。辺りは少しひんやりとした風が吹いている。
「来たぜ」
ドゥエインは、空を見上げながら二人に言った。見上げる先には、鳥でもない二人の
少女が風を切ってこちらに向かっていた。
「空からお出ましか・・・・・・」
アウイが少し驚きながら言って
「二人ともそろそろ、二人から目を離したほうがいいぞ」
ドゥエインが視線を地上に戻していった。
「何でよ?」
アウイが当然のように訊ね
「お前は、変態呼ばわりされたいか?」
ドゥエインが冷めた目で言った。それはあくまで過去の経験に基づくもので
「見ちゃったんだ」
アウイが同情とも笑いをこらえているともいえる表情で言って
「しっかり見ちゃいました、リムのだけど」
ドゥエインが小さな声で白状する。
その頃、空の二人は
「ドゥエインもいるんだ」
リムのその一言に
「そりゃいるって」
メーベルが苦笑い。続けて
「あぁ、めんどくさいなぁ」
メーベルが溜め息混じりに言う。
「まぁ、うちらがいるだけましでしょ?」
リムが微笑み
「感謝してます、一応ドゥエインにも」
「あはは、一応かぁ」
「そろそろ着地するから、ちゃんと捕まっててね」
その精悍な顔つきに
「はいはい、あぁ、もう。メーべが男に生まれてくれれば良かったのに」
リムが頬を膨らませて言うと
「すみませんね、女で。残念でした」
メーベルが少し呆れて言うと、下降を始めた。真下に下降するというよりは、真横に、
少し前倒し気味になるように二人は落ちていく。リムはスカートの後ろを押さえ、
メーベルはお構いなしにスピードを緩めつつ下降する。
三人の近くに、二人はまるでその場にジャンプしてましたかというように
着地した。乱れた髪や服装を整えている二人に向かって
「よく来たな、来ないと思ってた」
ドゥエインが二人に近づきながら言った。
「行かない気満々だったんだけど、誰かさんと一緒でリムの誘いには弱くてね」
メーベルが低い声で言った。その表情は明らかに冷めていた。
「なるほどね」
「てか、なんでいるの?」
リムのその悪気のない一言に、事情を知っているメーベルとハイゼは苦笑いする。
「何でって・・・・・・、メーベが来なかった場合リムがここに来るだろうから、
一人じゃ心細いと思いましてね」
「そうなんだ、別に気にしなくて良かったのに」
引き続きリムの返事にドゥエインは溜め息一つ。
「それより、お前らメーべに用があるんだろ?」
話をいきなり変えたドゥエイン。
「あぁ」
「おう」
そう言うと二人は三人の近くに来た。
視線を下に向けているメーベルと、向かい合うはアウイとハイゼ。そしてその三人を
真ん中で少し心配そうに見ているドゥエインとリム。そのなんともいえないどんよりと
した、かつぴりぴりした雰囲気に
「俺たちいない方がいい、かもよ」
ドゥエインがゆっくりと口を開き、リムを見て
「で、でも・・・・・・」
リムがドゥエインを見てから、恐る恐るメーベルを見る。
確実に獲物をしとめるような目つきのメーベルが
「二人とも、ちょっと席はずしてもらっていい」
メーベルが二人に目もくれずに言った。
「別にここにいてもいいぜ、どうせお前らにも言うつもりだし」
アウイが真剣な顔で言うと、ドゥエインとリムが困った顔で顔を見合わせる。行けと
いうメーベル、いてもいいというアウイ。二人はお互いの顔を探るように顔を見合わせて
いたが
「じゃ、じゃあ少し離れたとこにいるわ。リム、行こーぜ」
ドゥエインが言って
「そう、だね。じゃあ、メーベル、待ってるから」
リムがドゥエインの後ろについていった。
その直後、
「一昨年は迷惑かけたようで、本当に悪かったな」
アウイが頭をかきながら少しぶすくれたように言って
「本当ですよ、てか、何で知って・・・・・・。ドゥエインか、たくっ」
メーベルが横目でドゥエインを軽く睨んだ。ドゥエインは
「悪ぃ」
それほど悪びれずに笑い顔で言った。
二人が歩き出し、横に並んだとき、まだ三人からそれほど距離は離れていない頃
「おい」
アウイがハイゼを右ひじでつつき
「あぁ」
ハイゼが済ました顔で返した。
そして対面するメーベルは深呼吸し肩を落とすと、やっと二人を直視した、まさに
そのときだった。
「なぁ、俺たちとチームを組まないか?」
二人は同時に同じ言葉をメーベルに言った。
否が応でもその言葉を聞いてしまった二人がその場に立ち止まり、
振り向いていた。二人とも、驚愕とした顔で二人を見ていた。
そして、誰よりも驚いていたのは言われた本人だった。ドゥエインたちからは
見えないが、目を見開き、ありえないという顔をしていた。
そして、目を閉じまた肩を落とすと、重い瞼を開きつつゆっくりと口を開いた。
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