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本の虫
「ねえ、ここお店なんでしょう。 どうしてこんなに薄暗いのよ?」

そんな不満な言葉と共に、店の扉が開いた。

「まだ営業時間前なんだけどな」

「客が来たら開店するのがお店ってものでしょう?」

幻想郷の住人らしい身勝手な台詞を吐くと、頭と背中に鮮やかな赤色の翼がある少女は隅に重ねた本を物色し始めた。
どうやら公言している通り、客人らしい。

「んー……あ、これなんか面白そう」

お目にかなった本があったのか、少女は乱暴に本を引っ張り出す。
崩れなかったのがせめてもの幸いだ。

「それだね、お安くしておくよ」

「何言っているの、ここで読むのだから買わないわよ」

何だって。
ここは立ち読み禁止だぞ。

「ここで読み終えてしまったら、その本の価値が無くなってしまうじゃないか」

「だって私、お金持ってないもの」

一瞬でも客だと思った自分を責める。
そしてお構いなしに表紙をめくろうとした少女から本を取り上げた。

「何するのよ!」

「そんなに本が読みたいなら図書館に行けばいいだろう。
湖の先に紅い屋敷がある、そこに図書館もあるから行ってみるといい」

「行ったわよ! そしたらわけも分からないまま追い返されたの!」

まさか、本当に行ったとは……。
背中の翼に負けないくらい真っ赤な顔で掴み掛かってくる少女を見る限り、強ち嘘ではないだろう。
しかし、普通の妖怪なら近づかないあの不気味な館に単身突入するとは、命知らずにも程がある。

「うわーん! 返せ返せ返せー!」

――ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか

ああ、今日は厄日だ。
泣きながら力のない拳でひたすらに叩き続ける少女を見て、僕は考えるのをやめた。


~~~


 「あら、動かない店主さんがこの館に訪れるなんて……パチュリー様が外を出歩くくらい信じられない事ですわ」

「客人にそんな失礼な台詞を述べるなんて、紅魔館のメイド長も堕ちたものだね」

「これは失礼致しました」

銀髪のメイド服の少女は口先だけの謝罪を述べると、ゆっくりと館の戸を開いた。
さて、僕が何故こんな館に来たかだが……

「おお~……で、図書館は何処、何処なの?」

原因はこの朱鷺色妖怪だ。
あの後「本を読ませてくれるまで此処を動かない!」と駄々をこねられ、挙句の果て僕のコレクションを荒らし始める始末、結局僕が折れ、紅魔館の図書館に連れて行くということで納得してもらったのだった。

「ねえ、図書館は?」

「はいはい、すまないが図書館まで案内してくれないか」

「承知致しました」

軽く会釈すると、メイド服の少女は僕らの横にひっそりと佇んでいた階段を下る。
日の届きにくい地下に引き篭もるとは、魔女というのはそんなに陰湿なものなのだろうか。
ちなみに、魔理沙は魔女ではないらしい。
以前ふと聞いてみたところ、「私は魔女じゃなくて普通の魔法使いだ!」と怒られたのだ。
まあ、確かに彼女が陰湿とは無縁の性格なのは知っているし、似合わないだろう。

「着きましたわ」

「……凄いな、これは」

思わず生唾をのんだ。
魔理沙から広いとは聞いていたが、予想以上だ。
本棚と積み重ねられている本しかないような、壁というものが存在しないような、そんな広さだった。

「あら、ちゃんと入り口から入ってくるお客さんなんて珍しいわね」

我に返り、言葉の主の方を向くと、紫のネグリジェを着込んだ少女がこちらを向いていた。
魔理沙の話から察するに、彼女がここの主である魔女なのだろう。

「それで、何の用なの、古道具屋の主人?」

「ああ、この迷惑な朱鷺色妖怪に本を読ませてやってほしいのだが」

「迷惑は余計よ」

「……まあ、いいけど。 その辺に小悪魔がいるから読みたい本を取ってきてもらいなさい」

「わーい!」

彼女は元気よく飛び上がると、そのまま本棚へ飛び込んでいった。
途端、どっと疲れが押し寄せる。

「お疲れ様、大方あの妖怪に店の品物でも荒らされそうになったんでしょう?」

「大体合ってるよ」

荒らされそうになったのは僕のコレクションだけど。

「その御褒美って訳じゃないけど、面白い本があるの、読んでみる?」

そう言うと、魔女は本棚から一冊の本を取り出し、僕に差し出した。

「これは……歴史書か」

「そう、稗田家のを複製させて貰ったの」

「……少し、少しだけ拝見させてもらうよ」

正直疲れているからな。
いくら興味のある本だとはいえ、全て読みきるほどの体力はない。
少しだけ……うん、少しだけ読んだら帰ろう。
それなら大丈夫だ。


~~~


 「咲夜、いる?」

「ここに」

「悪いけど、紅茶を三つ持ってきてくれないかしら、あの二人、当分帰りそうにないから」

「承知致しました。……ふふっ」

「……何が可笑しいのよ」

「いえ、まるでパチュリー様が三人になったような感じがしまして」

「失礼ね、私は寝転がったり、頬杖をついて本を読んだりしないわ」

「でも、時々本を枕にしていますよね」

「…………」
やっちまった……。
気がついたらもう二月。
一月中に書こうと思っていたのに結局これだよ!
東方の迷宮のバカバカバカ!
……はい、すみません、次はもう少し早く書けるように頑張ります。

ご意見ご感想お待ちしております!
辛口~甘口全てOKです!(ぇ
それでは、今後ともご贔屓に。


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