挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

95/220

懸賞金

 
 翌朝、朝食を取った後、商人ギルドへと飛んだ。
 三人には片づけや洗濯を頼んでいる。
 セリーにもまだ鍛冶はさせていない。
 モンスターカードを入手したら融合がある。

「こちらが芋虫のモンスターカードです」
「確かに」

 鑑定で本物と確認し、受け取った。
 ルークが贋物を出してきたらと思うとちょっとどきどきする。

 出してきたらどうなるんだろうか。
 ルークはハルツ公の騎士団とも付き合いがあるので、その場で成敗というわけにもいかないだろうし。
 どこかに訴えて賠償金をふんだくる感じだろうか。

 手続きを考えると贋物を出されるのも面倒だ。
 ルークが変な考えを起こさないよう、たまにはギルド神殿で確認してみるのもいいかもしれない。
 ギルド神殿というのも一度見てみたいし。

「それから、これが賊の手配書です。ハルツ公の騎士団から預かってきました。くれぐれも気をつけられたいとのことです」

 ルークがパピルスを渡してきた。
 手配書とのことだが、似顔絵が描いてあるわけではない。
 ブラヒム語か何かでだらだらと説明が書いてある。

 ハルツ公の騎士団では手配書まで作ったのか。
 もう倒しているのに。
 無駄な出費をさせてしまった。

 モンスターカードと手配書を手に入れて、家に帰る。
 ミサンガとモンスターカードをセリーに渡した。

「それは何ですか」
「賊の手配書だ」

 手配書まで取り上げられた。
 セリーが横目で読む。

「兇賊のハインツですか。それと、狂犬のシモン」
「狂犬のシモンですか?」

 ロクサーヌが声を上げた。

「知ってるのか」
「はい。狼人族の間では有名な海賊です。かなり強いのではないかと言われていました。片手剣を使わせたら狼人族で右に出るものはいないとか。ただ、私が子どものころ誰かに敗れたと聞きました。無敵ではないようです。私も一度戦ってみたいです」

 戦ってみたいとか。
 相変わらず恐ろしいことを平然と言ってのける。

「まあ、戦うのは無理らしいぞ。この間ハルバーの迷宮で倒した賊がこいつらみたいだ」
「この間の盗賊ですか?」
「多分な」
「そういえば賊の中に狼人族も一人いました。そうですか。あれが狂犬のシモンですか。そうすると、このレイピアが……」

 ロクサーヌが持っていたレイピアをかざして見上げた。

 大物とされる割りに、シモンが持っていた武器はしょぼい。
 どこか他に隠していたのか。
 所詮は海賊なのか。
 弘法は筆を選ばずなのか。

「そういうことになるな」
「狂犬のシモンを倒すなんて、さすがご主人様です」

 倒した海賊がシモンだったとしても、魔法で倒したからな。
 反則みたいなものだろう。
 というか、剣で戦わなくて本当によかった。

 セリーがモンスターカードを融合する。
 身代わりのミサンガができた。

「できたな。さすがセリーだ」
「ありがとうございます」

 セリーが身代わりのミサンガを渡してくる。
 いったん受け取った。

「これはセリーが着けろ。どこに着ける?」
「足に着けます」
「分かった。足を出せ」

 セリーの足首に身代わりのミサンガを巻く。
 小さくて華奢な足だ。
 可愛らしい。

 纏足でもしたのかというくらいに小さかった。
 背も低いのでこれくらいのものなんだろうが。

「ハルツ公の騎士団はかなり困っているようですね。懸賞金を払うとき、インテリジェンスカードのチェックはやめるそうです」

 ミサンガを何重にも巻いていると、セリーが声をかけてきた。

「そうなのか?」
「手配書に書いてあります」

 インテリジェンスカードのチェックをやめるのか。
 俺のジョブがチェックされないなら、盗賊のインテリジェンスカードはすぐにも持ち込める。
 しかし何故?

「抜き打ちでチェックするとか」
「それはないでしょう。そんなことをすれば、次からは盗賊がインテリジェンスカードを持ってこなくなります」
「ああ。盗賊にカードを持ってこさせるためなのか」
「盗賊がどこにいて何をしているか、一番知っているのは仲間の盗賊です。盗賊にも懸賞金を払うようにすれば、彼らが率先して賊を倒してくれるでしょう。凶悪な盗賊が現れたときなどに過去にも使われた手法です」

 蛇の道は蛇ということか。
 確かに、盗賊についてよく知っているのは盗賊だ。
 盗賊を倒すのは盗賊にやらせれば効率がいい。

 逆にいえば、盗賊には懸賞金を渡さないという現行のシステムは盗賊を仲間の裏切りから守ってやっていることになる。
 仲間のインテリジェンスカードを持っていけば金になるなら、盗賊が徒党を組むことは難しくなるだろう。
 盗賊を殺してきた盗賊にも黙って懸賞金を渡してやる方が、仲間内での裏切りを推奨し、盗賊を減らすことになるに違いない。

「うーん。じゃあなんで普段からそうしないんだ」
「確かに盗賊であろうと誰であろうとインテリジェンスカードを持ってきた者には懸賞金を渡してしまうのがよいと私も思います。帝国では基本的に盗賊に懸賞金を支払うことを認めていません。賊の利益になるからとされています」

 セリーは盗賊に懸賞金を渡すことに賛成らしい。
 やはりそれが合理的なんだろう。
 この世界の現在の治安基準から考えれば、特に。

 ただし、短期的には有効であるとして、長期的にどうかは分からない。
 日本でも江戸時代に博徒に十手を持たせて二束の草鞋をはかせたりしたが、うまくいったかどうかは疑問だ。
 そういう優遇措置が暴力団につながっていったともいえる。
 マフィアの発祥だって外国に支配されたシチリアの自治的な扶助組織だったというし。

 現在騎士団に盗賊を取り締まるだけの力がないとしても、将来力を持ったときにどうなるか。
 盗賊に盗賊を倒させるやり方が悪しき慣例となる恐れはある。
 盗賊には懸賞金を払わないというのは、一つの見識ではあるのだろう。


 翌朝、盗賊のインテリジェンスカードを持ってボーデに赴いた。
 インテリジェンスカードのチェックがないなら、すぐにも換金できる。

 盗賊はすでに倒してしまっている。
 時間がたてば、目撃情報との差異が広がるだろう。
 早ければ早いほど話に矛盾が出にくい。
 手配書をもらってすぐに行くのも待っていたみたいに思われるおそれがあるので、一日だけ時間を置いた。

 探索者はまだLv41になったばかりだ。
 おそらく、レベルが上がれば上がるほど、レベルアップに必要な経験値は加速度的に増加していくのだろう。
 獣戦士Lv31のロクサーヌに鍛冶師Lv31のセリーが追いついたのはいいとして、海女Lv30のミリアまでが追いつきそうだ。
 Lv1からLv30まで上がるのに必要なすべての経験値と、Lv30からLv31に上がるのに必要な経験値とで、何倍もの違いはないのだと考えられる。

 あるいは、適正なレベルの範囲があるのかもしれない。
 十六階層のLv16の魔物を倒しても、こちらがLv40だと半分の経験値しか入らないとか。

 レベルアップの仕様は完全には分からない。
 英雄はつけっぱなしにしているのにまだLv37だ。
 ジョブによってレベルの上がりやすさに違いがあることは間違いがない。

 いずれにしても、冒険者に必要な探索者Lv50まではまだ時間がかかる。
 冒険者のジョブを得るまで待つことはかえって危険だ。
 早めに換金した方がいい。

 ハルツ公の騎士団以外のところに兇賊のハインツのインテリジェンスカードを持ち込むのも駄目だ。
 公爵から兇賊のハインツの話を直接聞き、手配書まで渡されてしまった。
 他へ持っていった話を知られたら、何故うちに持ってこないのかとなる。

 一応最悪の事態を想定して、ボーデの冒険者ギルドの壁に出た。
 公爵の住む城にはボーデの町から入る。
 インテリジェンスカードをチェックされても、探索者に戻ったと言い訳できる、かもしれない。
 見知った顔の騎士にインテリジェンスカードを渡した。

「団長を呼んでまいります。少々お待ちください」

 騎士が奥に引っ込む。
 呼ばなくてよかったのに。
 さすがに金を受け取るだけというのは虫がよすぎるか。

 公爵やゴスラーがいない時間帯を狙って換金するという手も考えた。
 ただ、仰々しくなりすぎるのもどうなんだろう。
 ボーデに行ったことのない時間に現れれば、いかにも事件を引き起こしたかのように捉えられかねない。
 いつもの時間に現れていつものような態度を取り、定時連絡でもしているかのように振る舞うのが、特別なことは何もないというアピールになるのではないだろうか。

 しばらく経って、ゴスラーが現れた。

「ミチオ殿、インテリジェンスカードを持ってこられたとか」
「先日、何者かに襲われた」
「実は昨日、ハルバーの十二階層で迷宮の壁に遮蔽セメントが塗られているところが見つかりました」
「ああ、多分その場所だ」

 盗賊の待ち伏せしていた場所が見つかったようだ。
 ぎりぎりセーフ。
 早めに持ってきてよかった。

 いつもの時間に持ってきたのも正解だ。
 変な時間に持ち込んだら、倒してから間をおかずに持ってきたと判断されただろう。

「そうですか。仕掛けだけがあって盗賊がいないので変だと思っていましたが、すでに倒された後でしたか」

 ゴスラーが勝手に解釈している。
 事実には違いない。
 ちゃんと約束どおりハルツ公領内の迷宮に入っていることが示せたし、万々歳だ。

「団長」
「どうだ」
「ハインツの一味です」

 最初の騎士が戻ってきて、ゴスラーと会話した。
 やはり兇賊のハインツの一味だったか。

「間違いないか」
「はい」
「それではミチオ殿、こちらにお越し願えますか」

 騎士に確認したゴスラーが振り返って俺を誘う。

「分かった」

 城の中へ入っていった。
 今まで入ったことのない方向に連れて行かれる。

「ハインツの一味と戦ったようですが、ご無事でしたか」
「なんとか」
「ハインツの一味を倒すとは驚きました。実にたいしたものです」
「まあ、一味を倒しただけかも」

 城の廊下を歩きながらゴスラーと会話した。
 少なくとも、爆殺した海賊のインテリジェンスカードはない。
 ハインツの一味で一番強いのはあの海賊だろう。
 海賊のインテリジェンスカードが四散して残らなかったことは、よかったのかもしれない。

「ハインツを倒したのはミチオ殿だとか」

 ゴスラーに連れられて入った部屋には先にハルツ公爵がいた。

「確かにそのようです」
「おお。さすが余が見込んだだけのことはある。無事か?」
「はい」

 強敵まで倒したとなっては、相変わらず腰の軽いこの公爵からさらに目をつけられかねない。

「最後はエルマーです。シモンのカードはありません」

 部屋の中に白いボックスのようなものがあった。
 インテリジェンスカードがボックスの上に置かれている。
 騎士が一人近くに立ち、インテリジェンスカードを読んでいた。

 人の体から排出されたインテリジェンスカードには何も書かれていない。
 あの装置を使うと読めるのか。

「シモンのインテリジェンスカードはなかったか。だが、ハインツのカードはあった。さすがミチオ殿じゃ。まあ、ハインツのジョブは本当に兇賊になっておったがの」
「ハインツのインテリジェンスカードがあったのですか」

 公爵の言葉をゴスラーが聞き返している。
 兇賊のインテリジェンスカードは持ってきた。
 やはりあれがハインツらしい。
 そうすると倒した海賊がシモンか。

「はい、団長。ハインツのインテリジェンスカードはありました」
「シモンのインテリジェンスカードはないと」
「そうです」

 ゴスラーと騎士が会話する。

「ミチオ殿、シモンについて心当たりはありませんか」
「カードを回収できなかった賊もいますが、そこまで強かったかどうか」

 倒したとはいわなくていいだろう。
 スゴ腕の海賊をどうやって倒したのかという話になる。
 明かしたところで証拠もないし。

「ミチオ殿はシモンを倒していないのか。シモンだけ別行動だったのか。仲間割れでもしたのか。領内のどこかに潜んでいるのか……」
「シモン一人だけが逃げ延びたところでセルマー領でのような脅威にはなるまい。余の領内で好き勝手はさせぬ」
「それはそうですが……」

 ゴスラーが悩んだ。
 治安維持に責任のある騎士団長としては行方が気になるのだろう。
 まあゴスラーにはせいぜい杞憂していてもらおう。

「こちらが賞金です」

 ボックスの横に立っていた騎士がなにやら装置をいじった。
 ボックスからお金が出てくる。
 あの装置は金庫でもあったのか。

「ミチオ殿はギルド神殿から貨幣が出ているところを見るのは初めてか」

 公爵に見咎められた。
 呆けた顔をしていただろうか。

「は、はい」
「あれが余の騎士団のギルド神殿じゃ。騎士の叙任もここで行う。もしミチオ殿が騎士になりたければ、余の騎士団に入るなら今この場で騎士への転職を執り行ってもよいが、どうじゃ」

 ボックスを鑑定してみる。
 確かにギルド神殿と出た。
 あれがギルド神殿なのか。

 俺にはジョブ設定があるからいいが、一般には各ギルドのギルド神殿で転職を行う。
 騎士になるにも、騎士になるためのギルド神殿が必要なのだろう。

「いえ」
「まあわざわざ冒険者から騎士に変わる者は少なかろうがな。それに、騎士になるには戦士として修行を何年、何十年も積まねばならん。ミチオ殿に簡単に騎士になられては立つ瀬がないわ」

 公爵が笑う。
 冗談だったようだ。
 ツボがよく分からん。

 騎士になるために戦士の修行が必要ということは、やはり戦士Lv30が騎士のジョブの取得条件なのだろう。
 戦士はラッシュを使うときにジョブを設定していて、現在Lv29だ。
 Lv30まではもう少しだな。

「これを」

 騎士が賞金の入った巾着袋を公爵に差し出した。

「懸賞金を入れておくと、どこの騎士団の神殿でもインテリジェンスカードと引き換えに取り出せる。まことによくできた装置じゃ」
「なるほど」
「しかし思ったより少ないの」

 巾着袋を受け取った公爵が疑問の表情を浮かべる。

「兇賊のハインツはセルマー領で散々暴れまわっています。確かに少ないかもしれません。ただし、シモンの分がありませんので」
「それにしても少ないが。まああそこの騎士団員が何人もシモンにやられたと聞いておる。シモンにばかり賞金をかけたのかもしれん。ではミチオ殿」

 ゴスラーの説明に納得して、公爵が懸賞金を渡してきた。
 インテリジェンスカードのチェックは宣言どおりなしのようだ。
 シモンのインテリジェンスカードを回収できなかったのは、賞金的には残念だったか。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ